あんたのどれいのままでいい
独占欲とか執着とか、そういったものからとても遠いところにいるのだと思っていた。
物や人にあまり拘らないし、何事にもどこか客観的にものをみているような、少し遠くにいるスタンスで。
平和になって満ち足りたこの世界でも、いろんな事に無頓着だし。
だから自分もそういう素振りを見せたら、重たく思われるんじゃないかとずっと思ってた。
部屋には粘着質な水音と甘い悲鳴が満ちていた。
唇から零れ落ちるのは、自分でも信じられないような嬌声。
「・・・あッ、あぁッ!やだ・・・、も・・・ッ!んんッ!」
「・・・ポップ・・・ッ」
重厚な作りの寝台すら悲鳴をあげるように、強く揺さぶられて。
背骨がしなるほどに後ろから抱きしめられて。
奥のほうにまで感じる、いっぱいの熱に乱されて。
「あッ!もッ、はい・・・ッ、・・・ん、なッ・・・!」
ずるずると引き抜かれ、それを追いかけるように肉壁が閉じてゆく。
その感覚に全身が粟立つ。
そしてまたこじ開けるように熱を捩じ込まれて、悲鳴のような声が知らずにあがる。
「やめ・・・ッ、ああッ!!」
「・・奥に、・・・も、っと・・・ッ」
オレを入れてくれ
そう耳元で囁かれて、もう無いと思っていた奥のその奥へずるりと侵入されて。
「ひ・・・ッ!もおッ・・・あああ・・・ッ!」
「ポ、・・・ップ・・・ッ!」
根こそぎ奪い取られるような、いきなり突き飛ばされて落ちるような、そんな絶頂を迎える。
そして最奥に叩きつけられた、火傷しそうな熱を感じて。
とろりとまたポップの自身から蜜が零れた。
「・・・ん、にゃ・・・。」
息苦しさを感じて目が覚めた。
月明かりに照らされた部屋は自分の部屋ではなく。
「・・・ヒュンケル、重い・・・。」
ポップを覆うような形でヒュンケルは眠っており、息苦しさの原因は明白だった。
乗りあがっている身体を押し返そうとするが、ピクリとも動かない。
仕方ないと諦めて、寝顔を観察する事にした。
悪趣味かとも思ったが、いつもやられている事だし、と自分を納得させて。
長い睫毛。
整った鼻梁。
薄い唇。
「・・・寝てる時まで眉間に皺寄せてやんの・・・。」
その整った総てに悔しくなって眉間の皺に触れながら悪態をついた。
指はそのまま整った鼻をたどり、唇へと移動する。
少しかさついた、荒れた唇。
この唇にさっきまで翻弄されていたのだ。
・・・な、何考えて・・・ッ!?
自分の考えたことの恥ずかしさに一人赤くなり、途端に顔を見れなくなる。
乗りあがったヒュンケルの肩に顔を埋めるが、その彼の体温と匂いに鼓動が早くなった。
ヒュンケルは独占欲とか執着とか、そういったものからとても遠いところにいるのだと思っていた。
思っていたのだけれど。
「・・・にゃッ!?」
いきなり抱きしめられてポップが驚きの声を上げた。
まさかずっと起きていたのではないか、と顔を見ればしかめっ面のまま眠っている。
寝たふりをしている様子はない。
「・・・脅かすなよ・・・。」
口では悪態を付きながら、ポップの表情は喜びを隠せない。
しかめっ面のままなのに。
寝たふりしてるわけでもないのに。
こんな風に、まるで宝物を抱きしめるみたいに抱きついてくるなんて。
反則じゃないか。
諦めたようにその胸に縋りつくと、聞こえるのは彼の心音。
規則正しいその音が、穏やかに眠りをつれてくる。
そういえば赤ん坊は母親の心音を聞くと安心して眠るっていうなあ・・・。
母親じゃないし、赤ん坊でもないけど。
なんとなくそんな事を思いながら、眠りに落ちていった。
彼は独占欲とか執着とか、そう言ったものからとても遠いところにいるのだと思っていた。
思っていたのだけれど。
夢の中でも執着されてるって思っても、いい?
END
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いきおいで書き上げてしまいました。
タイトルは思いつかなかったので、仮タイトルのまま。
ただヒュンケルに「もっと」って言わせたかったのさー(邪笑)
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