今まで会えなかった時間。
これから会えない時間。
欠片も無かった接触。
寂しさの見えない言葉の温度。

総ての点が線になった。

そしてその線は。
避けられている、という事実にまっすぐ繋がっていた。






「またかよー・・・」

レオナにヒュンケルの遠征の話を聞いたその日、ポップはまるっきり使い物にならなかった。
ヒュンケルと今まですれ違っていた時間も、これから会えない時間も、結局のところ避けられていたのだと思うとため息しか出てこない。
仕事は出来ない、口から出るのはいつもの小気味良い憎まれ口ではなくため息となれば、他の人間には鬱陶しいことこの上ない存在だろう。
自覚のあったポップはその日は早々に引き上げ、自室へと戻っていた。
何をする気も起きず、着替えもしないままベットに突っ伏して何時間経つだろうか。
グルグルと悩んでしまうけれど答えは出てこない。

なんで、あの日から、避けられているのか。

「だー!!!!」

どんどんとマイナス思考になっていく考えに嫌気が差して、一人叫ぶと枕を掴み壁へと投げる。
壁にぶつかった瞬間、枕の中の羽根が少し出てしまい、はらはらと部屋に舞う。
それが床に落ちるのをポップはじっと見つめて、そしてまたひとつため息をついた。

なんで何も言ってくれないのだろう。
こんな風に避けたりしないで、伝えてくれればいいのに。
言葉が上手くないのは知っている。
だから、全部聞くから。

ちゃんと、わかりたいのに。

「そんなに信用ねえのかなあ・・・」

何気なく口にした言葉に、胸が痛んだ。
思ったよりも傷ついている自分を知る。
誰よりも側にいることを許してはくれたけれど、その心までは許してくれないのだろうか。
きっと柔らかくて脆い、硬い身体で守っている、そのココロ。
そこに触れたいと思うけれど。

そこまで考えてポップは頭を振った。
実際、恋人同士になってからもまだそんなに時間は経っていない。
あの一度の触れ合いで、総てが手に入ったと思うほうがおかしいのだろうと思う。
総てを手に入れたいのだと、そう言った時に許してもらえたような気がしたけれど、だからといって本当に手に入るわけではない。
わかっている。
わかっているけれど。

ポップは、何度目かのため息をついた。
今度は落胆からではなく、自らを落ち着かせるために。
心にかかった靄のようなものを吐き出すために。

「あー、もうやめ。やめやめ。」

気持ちを切り替えるためにも、わざわざ声に出して思考の打ち切りを宣言した。
考えたところで仕方が無いのだ。
相手があることだし、もしかすると本当に理由なんて無いのかもしれない。
本当に忙しかっただけとか。
工事の調査だって、見てみたいのかもしれないし。
第一。

「なんでおれだけが振り回されなきゃなんねーんだよ!」

そう言ってポップは口を尖らせ、未だ燻る気持ちには気づかない振りをした。

夜はもう大分更け、いい加減眠ろうと思えば着替えもまだだったことを思い出す。
ポップは気分を紛らわせたい気持ちもあって、バスルームへと向かった。
いつも着ている法衣を脱いで、アンダーシャツも脱ぐ。
一糸纏わぬ姿になりバスルームへと続く扉に手をかけ、何気なく視線を投げた先にあった鏡。
それはポップの上半身を映していた。
その白い肌に、ポップの眉がしかめられた。
男の肌とは思えないほどに、白い肌ははっきり言ってポップにとってはコンプレックス以外のなんでも無い。
幼い頃から肌が弱く、日に焼けたり虫に刺されたりして腫れ上がったりする事も多かった。
アバンに師事してからは更に自ら使用する魔法の影響を受けない様にと露出の少ない衣類や法衣を着用している事も手伝ってポップの肌は酷く白かった。
鏡に手を伸ばし、もう一人の自分に触れる。
熱を分け合ったあの日、執拗なほどに付けられた赤い痕を思い出す。
回復呪文でも治らなかったそれが消えるのにどれだけの時間がかかったのだろうかと思った瞬間、あまりの恥ずかしさにポップは一人焦る。
一人で何をやっているんだ、と口にした言葉は。

「こんなカラダ抱いて何が楽しいんだか。」

何気なく口から零れたというのに、まるで鈍器でこめかみを殴られたような衝撃を与えた。

それが真実なのではないかと。

もう一度、鏡の中の自分と向き合う。
自分でも気味が悪いほどに白い肌。
腕は使う魔法の影響で、見る人間が眉を顰めるほどに焼け爛れ、骨ばかりの痩せ細った身体に残る痛々しい無数の傷跡。
それを恥ずかしい事とは思わないけれど。
女性の円やかなラインと比べること自体間違えていることは分かっているけれど。
彼の腕にあまりにも自分は合わなすぎると思う。

鏡の中の自分と、額をあわせる。
ひやりと冷たい。
裸の身体は冷えていくのに、頭だけに熱がこもったように考えがまとまらない。

ああ、本当に。
こんなカラダを抱いて、何が楽しいのだろうか。
挙句の果てに気を失って心配までかけて。

面倒くさいと思っても仕方がないじゃないか。

ヒュンケルはそんな奴じゃない、となんとか自分で導き出した答えを打ち消そうとするけれど。
そんな奴じゃないからこそ、自分には言えずに避けているのはないだろうか。

意識を無理矢理引き剥がして、バスルームへ逃げるように駆け込んだ。
シャワーのコックを捻って冷たい水を浴びる。
身体は寒さに竦んだけれど、頭は冷えずに熱を持ってガンガンと痛い。
でもポップはそこから動かなかった。
あの日に知ったヒュンケルの体温を肌が忘れるまで、冷たい水に打たれていた。




すれ違いの日々が続く。
会うことすら出来ない日もあれば、顔を見ることはあっても私用で話しかける場ではなかったりと、結局何も状況に変化は無い。
嫌な考えがどんどんと確信に変わっていくようで、気持ちばかりが焦っていった。
何をしていても頭の隅にある恐怖に似た焦燥感。
もうこんな思いをするのは嫌だと思って、傷つく事も覚悟して近くに行ったのに。
あの時、それを受け止めてもらえたと、そして逆に受け止めることも出来たのだと、そう思ったのに。
どうしてまだ、こんな気持ちでいなければいけないのだろうか。
どうして。
誰かを好きなだけなのに、こんな吐き気までするような焦燥感を抱かなければいけないのだろうか。

この気持ちは本当に、恋という名前の感情なのだろうかとまで疑いそうになる。

もうため息すら、出ない。



ヒュンケルが長期遠征へと旅立つ3日前となった。
けれど接触は持てず、いや持てないというよりポップ自身もヒュンケルをどこか避けるようになってしまった。
消えない焦燥感はポップを責め立てるけれど、会えたとして、話せたとして、普通に振舞えるかどうか。
それすらも危うい自分が恐ろしくてあからさまに避けることは無いものの、ヒュンケルが居そうな所には近づかないようになっていた。
ヒュンケルが長期遠征に出るまでの辛抱だと、ポップはそう思っていた。
ヒュンケルが居なければもう少し冷静に物事を考えることができるだろう。
今は何を考えても何も出てこない。
ただ焦るばかりで。
なのに。

細い月すら見えない、新月の晩。
ポップの部屋の扉がノックされた。
こんな時間に誰だと警戒もせずに扉を開けて訪問者を見れば。
月の光のような柔らかな、けれどどこか冷たく感じる光を放つ銀髪の持ち主。
ヒュンケルが立っていた。



「…こんな夜にすまんな」

「別に大丈夫だけど…どうか、したか?」

喉に引っかかるように言葉が上手く出てこない。
それでも平静を装ってヒュンケルへと返答する。
ポップはお茶でも、と逃げるようにキッチンへ向かい、ヒュンケルの瞳どころか姿さえも見ることができずにいた。

「お茶はいつものでいいか?」

「ああ」

久しぶりに聞く声は優しく耳に響くのに、ポップを追い詰めていく。
怖くて仕方が無かった。
何が怖いのかも分からずに、怯えていた。

なるべくゆっくりとした動作で茶をいれていく。
ティーカップなんて洒落たものはポップの自室にはなく、貰い物だのなんだのでいつの間にか溜まっていったマグカップの一つを手に取った。
茶葉の柔らかな香りのお陰で幾分か落ち着いたものの、ヒュンケルの瞳は見ることができずにいる。

「ありがとう、…いい香りだな」

ヒュンケルはポップからマグカップを受け取るとそう呟いた。
返答を求められてるわけではないだろうに、なぜか何か返さねばとポップは焦る。
なのに何も言葉は口から出てこない。
沈黙が怖い。
こんな事は、今まで無かったのに。
けれどヒュンケルはさして気にした様子も無く、マグカップの中身に口をつけた。
ポップはヒュンケルのその動作を見て自分にも紅茶を入れたのだと思い出したようにマグカップへ口をつけた。
その中身は思ったよりも熱く、そういえば自分はこの茶葉の時はいつもミルクを入れていたことを忘れていた。
ミルクも何も入らない茶は高温のままポップの口へと注がれ、その舌を焼いた。

「・・・っ!」

「・・・ポップ?」

「・・・ひた、やけろした・・・」

舌が痛くてまともな発音が出来ない。
歯や口腔内に当たると痛いのか、ポップはその火傷した舌を差し出すように出した。
するとヒュンケルが腕を伸ばしポップの顎を取りその舌を覗き込むと、ビクンと過剰なまでにポップの体が跳ね上がった。
久しぶりすぎるその体温が、舌を焼いた紅茶など比べ物にならないほどに熱くて。
それこそ火傷していまいそうだと思う。
なのに。
その手が解かれ、離れていくのが。
どうしてこんなにも寂しいのだろうか。
思わず、離れていく手を視線で追いかけて、そしてそのままヒュンケルの瞳に視線がぶつかる。
その瞳は酷く傷ついた色をしていた。

「ヒュ…」

「オレが怖いか?」

「え・・・」

「無理もない・・・な・・・」

ヒュンケルはそう呟くとポップに触れた手を見つめた。
火傷したように、痛ましい表情で。
ポップはその表情に胸を痛ませながらも、ヒュンケルの問いを反芻する。

オレが怖いか?

誰が、誰を、怖いって?

「・・・すまん、今日は戻る事にする」

邪魔をしたな、と席を立ち扉へと向かうヒュンケルの背中に、心臓を掴まれたような痛みが胸に走る。
その扉を開けてヒュンケルが出て行ってしまったら。
終わってしまう気がして。
始まっていたのかすら、わからないけれど。
気がつけば座っていたソファから立ち上がっていた。

「そんなの、決まってるだろ!」

夜であることも忘れて大声を出してしまったけれど、そんな事を気にしている余裕もなかった。
驚いて振り返ったヒュンケルの瞳と視線が合う。
今度は逃げずに見つめ返して。
なんとか声を絞り出す。

「そんなの・・・怖いに、決まってる・・・」

ヒュンケルが傷ついた瞳をしたのが分かる。
でも、そうじゃなくて。

「怖くて・・・仕方ねえよ・・・。嫌われるのが怖くて、いつだって・・・怯えてる」

「・・・ポップ・・・」

「怖くて…どうしていいか…わかんねえよ…」

目が熱くなって鼻の奥がツンと痛くなって、思わず下を向く。
泣き顔なんて見せたくなかった。

あの時も、そうだった。
もうどうしていいか分からなくて、泣きそうになって、俯いて。
そんな自分にヒュンケルは手を差し伸べてくれたけれど。

「そんな事、あるわけが無い。…オレがお前を嫌厭するなんて」

そうはっきり言うけれど、決して近づいては来ないヒュンケルにポップは更にどうしていいか分からなくなる。
嫌いじゃないなら、やっぱり。

「じゃあ…なんで避けてんだよ、おれの事」

言葉にした途端、瞳から水滴が零れ落ちた。
一回落ちたら後はもう溢れていくばかりで、止める方法をポップは知らない。
鼻の奥が痛くて、胸が痛くて。
それなのに。

それでも何も言ってくれないヒュンケルが、辛くて。

「…もう、いい。」

ポップはぐい、と涙を服の袖で拭って呟くとポップはヒュンケルへと近づいた。
そしてドアを開くとヒュンケルを部屋から追い出そうと背中を押し始めた。

「ポップ!?」

「うっさい!もうお前なんかしらねーよ!出てけ馬鹿!」

拭った涙もボロボロと溢れてきて、顔は鼻水とでぐちゃぐちゃだったけれど、ポップはそれすらどうでも良かった。
みっともなかろうがなんだろうが、どうせ、もう駄目なのだ。
嫌いじゃない、なんて言葉にすら期待を持てない。
縋りつけない。

嫌いじゃないけれど、触れてこない。
理由は、もう分かっている。

「…どうせ、おれは男だよ!そんなの最初から分かってただろ!」

「…何を…」

「カラダだって傷だらけだし、ガリガリの痩せっぽちだし!そりゃつまんねえだろうよ!でも!」

お前に求められて、嬉しかったのに。
触れてくれて、嬉しかったのに。

涙が、瞳から一気にあふれ出て。
ヒュンケルを突き飛ばそうと思い切り腕に力を込めた、その瞬間。
力を込めた腕を取られて、腕の中に閉じ込められた。

香りも体温もずっと焦がれていた、その腕の中。
でも。
また、こうして誤魔化されて、丸め込まれて?

「…ッ、は、なせよッ!」

焦がれていた腕の中、逃げだそうと暴れるけれど力で叶うわけも無い。
だったら大声で喚いてやる、と息を吸い込んだその唇に重ねられる、薄い唇。
これは何だろうかと思う。
どうせ愚図る子供をあやすつもりなのだろうと思うのに、振り切る事が出来ないほど甘いそれに初めて触れた時にその唇が暖かいことに驚いた事を思い出す。
ずっと冷たいのではないかと疑っていた唇が熱くて、触れ合った唇が火傷したかのように痺れたあの時。
確かに戸惑ってはいたけれど、幸福だった。
なのに今、どうしてこんなに情けない気持ちで一杯なのだろうか。
どんなに腹を立てても、こんな風に触れられるだけで自分はもう駄目なのに。

お前は、別に平気なんだろ?

唇が、離れた。
逃げないようにとでも言うのだろうか、抱き締める腕に力が籠もる。
最初逃げようとしたのはそっちのクセに、と思いながらももう口も回らない。
せめてもの反撃で、涙と一緒に出て来た鼻水でもつけてやろうかと思っていると、上から声が降ってきた。

「…そんな事を、考えていたのか…?」

ため息と共に降ってきた声は、呆れやからかいを含んだ声ではなくどこか苦いような色をしている。

「…違うのかよ」

「違う。」

即座に否定されるけれど、この男が嘘をつける人間でない事はよく知っているがその言葉を簡単に信じる事はもう出来なかった。

「じゃあ…なんでなんだよ…」

ポップは呟きながらもう逃がさないとでも言うようにヒュンケルの背中へと腕を伸ばし抱きついた。
そのせいで体が密着しヒュンケルの鼓動が聞こえた。
早い、気がする。
その事に気がついて顔を見ようと身じろいだが、それを許さないように腕には更に力が籠もる。
顔を見ることが出来なくて、でもヒュンケルは口を開かないままで、ポップの胸はまた痛み出す。
こんなに近くにいるのに、なんだかとても遠く感じてポップは抱き締められた腕の中からくぐもった声を出す。

「…ちゃんと、聞くから。お前の言う事」

ちゃんと、知りたい。
言葉数少ないお前の、その思いを。
頼りないし、信用できないかもしれないけれど。
それでも。

「…知っている」

「え…?」

「お前はいつだって俺の言葉を聞いてくれている。わかろうと、してくれている」

ポップは抱き締められたままヒュンケルの体温を感じながら、じっと紡がれる言葉をを聞いた。
信用されていないのかと固く冷えて縮こまったような心が溶けていく。
低く優しく響く、その声に。

「…ダメなのは、いつだってオレのほうだ」

「そんな事…ッ」

「逃げたんだ、オレは」

お前から。

ヒュンケルの口から零れた苦しさの混じった懺悔はポップを思ったほどに傷つけなかった。
自分を抱き締める腕がまるで小さな子供がはぐれた親を見つけた時に縋る腕のようで。

「…怖かった。お前を大事にしたいのに、大事にできない自分が」

そんな事はない、と喉まで出掛かった言葉をポップは無理矢理飲み込む。
ヒュンケルはそんな言葉は必要とはしていないのだ。
だから黙って静かに紡がれる言葉に耳を傾け、その柔らかい心に触れようと思う。
怯え戸惑う、その心に。

「お前を抱いた日、オレは…気を失ったお前に気がつけなかった」

ヒュンケルの腕に力が籠もった。
痛みすら感じるそれを黙って享受する。

「お前がオレの名を呼ぶ声が消えたことにも、背中に回った腕が力を無くして落ちていたことにも!」

語尾が荒くなる。
怒りがこもる。
そして。

「お前の顔が血の気を無くして真っ白になっていた事にも…」

気づかずにいたんだ

ヒュンケルが力を抜いた。
けれどポップを抱き締める腕はそのままに、肩に顔を埋めてくる。
苦しい体勢になってしまったけれど、ポップはヒュンケルの背中に回した手を離さないように力を込めた。
するとどこか安心したような吐息と共にヒュンケルはポップ、とその名を呟いた。
祈りに、懺悔に、似た色をのせて。

「お前が大事なんだ。その気持ちに嘘は無いのに」

「ヒュンケル」

今までじっとヒュンケルの言葉を聞いていたポップが、それを遮った。
そして。

バチン

ヒュンケルの背中に回していた手を解き、その頬を力いっぱい挟んだ。
見開かれる紫水晶の瞳を、濡れたような夜の瞳がまっすぐに見つめる。

「考えすぎなんだよ、お前は!」

「ポップ…」

「だいたいなあ、ヒュンケルのクセに頭使うから、お前がらしくない事するから、おれが訳わかんない事で考えたり悩んだりしなきゃなんなくなんの!」

あんまりといえばあんまりな言い分だけれども。
もう、悩んで欲しくなかった。
悩むくらいなら触れて欲しいと、そう思う。
大事にしてくれているなんてそんな事、とっくの昔に知ってる。
どれだけ、触れてくるその手が優しいか知ってる。

「もう何も考えるなよ」

「ポップ」

「お前は何も考えずに」

おれを欲しがってりゃいいんだよ

ポップの言葉にヒュンケルは見開いた瞳を和ませ苦笑を浮かべると、頬にそのまま残るポップの手を握りこんだ。
火傷だらけのその手を頬から離して、唇を寄せる。
その仕草に、自分の気持ちが伝わったことをポップは知った。

「いいのか」

唇を手に触れさせたままヒュンケルが喋る。
くすぐったくて仕方ないけれど、それを許して問いかけに答える。

「何が」

「もう離してなんてやれないぞ」

ヒュンケルの瞳にどこか危険な光が宿る。
ポップはそれに怯えることなく真正面から見つめ返して言う。

「離すもなにも、お前になんか捕まってないけど?」


だから


腕を伸ばす。
薄い唇に口付ける。
もう一度驚きの形を取る瞳を覗き込む。

「余計な事、考えてる暇ないぜ?」

お前の全部で、おれの事追っかけてなきゃ。


おれは捕まらないよ?














NEXT









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長すぎ・・・。
エロじゃないし。





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