ギシ、と簡素な寝台が2人分の重みを受けて悲鳴をあげるが、その抗議は口付けに夢中な2人には届かない。
離れていた時間を埋めあうように何度も口付けを繰り返す。
息が苦しくて酸素が欲しいのに、この唇を離したくない。
ヒュンケルが唇を離そうとすればポップが追いかけてその薄い唇を塞ぎ、
ポップが息を吸い込もうとすれば呼吸すらにも気を向けるなとヒュンケルが舌をねじ込む。
「……んんッ」
唇を合わせたまま、ポップがくぐもった声を上げる。
ヒュンケルの手がいつの間にかポップの上着を肌蹴させ、アンダーの下の肌に触れたせい。
火傷しそうに熱いその手の温度にポップはどれだけ欲しかったか改めて自覚した。
ヒュンケルの大きな手はその感触を楽しむように肌撫でまわし、そして胸の尖りへとたどり着いた。
親指で潰すように触れられ、ポップの細い身体がビクリと跳ね上がる。
それでも唇は離れない。離さない。
「んー・・・ッ、ぅんッ」
触れられて固くなった乳首を今度は摘むように愛撫される。
それだけでも久しぶりの身体にはキツイというのに、同時にヒュンケルの膝がポップの足を割り入り込んでくる。
膝頭で布越しに自身を優しく擦り上げられて、そのぬるつく感触に既に反応している淫らな自分を知った。
自分ばかりは嫌だ、とヒュンケルの首に回していた腕を解いて触れようとするけれど、何重にも施される愛撫にそれはままならない。
せめて、とその背中を撫で上げると、ようやく唇が離れた。
銀の糸でつながれる薄い唇は赤く腫れ、酷く色っぽいとポップは思った。
「んん・・・ッ、は、あ・・・ヒュ、」
「・・・キスだけで、イきそうだ・・・」
飲み込めずに流れ落ちた唾液を舐め上げられながら囁かれるその言葉で達してしまうかと思った。
寸でのところでヒュンケルにしがみ付いて我慢をしたというのに、しがみ付いたせいで差し出されるようになった耳に歯を立てられて身体が跳ねる。
「・・・んッ、あッ、・・・や、も・・・」
身体が動けば割り入れられた膝に自身を擦り付けるようになってしまう。
羞恥と快感の間で翻弄されて、ポップの瞳はとうとう決壊を迎えた。
ぐずりしゃくりあげるポップの涙をヒュンケルはそっと唇で吸い上げると、ポップの下肢に手を差し入れ下着の下、震えるそれを優しく包んだ。
「ア、や・・・ッ、それ、やだ・・・ッ、やー・・・ッ」
「ポップ・・・」
優しく包まれ堪らないのはポップだった。
確実な刺激を待ちわびて震えているというのに、優しく包まれて。
でももう決壊寸前だったのは瞳だけでなく。
「ぃや・・・だ・・・、も・・・ぉ、んんッ」
甘苦しい悲鳴を上げながら、愛撫と呼ぶには優しすぎるその感触で達してしまった。
ポップは余りの恥ずかしさにヒュンケルの視線から逃げようと身を捩る。
けれどヒュンケルの腕の中から逃げられるわけもなく、恥ずかしさに死んでしまいそうだと小さくなっていれば、優しい唇が降りてくる。
淫らな自分許すその唇を受けながら、達したせいで幾分か余裕が出てきたポップは震える手を伸ばしヒュンケル自身に触れた。
そこは酷く熱くて、愛しくて。
なんとか指を動かして少しでも、とヒュンケル自身を愛撫する。
「・・・ポップ、・・・やめて貰えるか・・・?」
「な・・・んで、だよ・・・」
だと言うのにヒュンケルの口から零れるのは制止の声。
ヒュンケルにも気持ちよくなって欲しいのに、と見上げれば少し照れた瞳と視線がぶつかる。
訝しげに思う間もなく耳元で囁かれる、秘密を打ち明けるように。
「・・・オレも・・・大分ヤバイんだ」
キスだけで達してしまいそうだと言ったのはあながち嘘ではなかったらしい。
自分だけではないのだと思えば嬉しくて。
愛撫の手が止められない。
もっともっと気持ちよくなって欲しい。
「コ、ラ・・・ッ」
「いいじゃん・・・、おれだって」
お前のイクとこ、みたい。
好奇心と悪戯心と愛しさと、それからちょっとの復讐心。
ずっと放って置かれたんだから、これくらい。
ヒュンケルの唇に触れるだけの口付けを繰り返しながら、ヒュンケル自身へ愛撫を続ける。
触れる唇からヒュンケルの耐えるような息が伝わって、酷く甘いと思う。
嬉しくなって目の前の鍛えられた首筋へと噛み付いて、その肌に赤い痕を残す。
前回は自分がつけられるばかりだった所有の印。
今回は先につけられた事が、なんだか嬉しい。
しかしそんな悪戯をヒュンケルがいつまでも許すはずも無く。
「んあ・・・ッ!」
ポップの身体がヒュンケルの腕の中、ビクリと跳ね上がった。
ヒュンケルがポップが放ったものでぬるつく指を奥へと侵入させる。
ゆっくりとポップを傷つけないように。
そして。
まるで入っていくその感触を味あわせるように。
「あ・・・あ・・・ッ、や・・・」
ゆっくりと指を全部侵入させ、そして入ってきたときと同じようにゆっくりと引き抜く。
そしてまた侵入させて、引き抜いて。
繰り返し。
「ん・・・ッ、んッ」
「・・・どうした・・・?」
オレのイク顔を見るんじゃなかったのか?
ポップの愛撫の手が止まったことで主導権を取り戻したヒュンケルが意地悪く囁く。
口惜しいと思いながらもポップはもうヒュンケルの愛撫から逃れられない。
もうその奥で得る愉悦を知ってしまっているから。
誰よりも大事な相手と一番深いところで分け合う、目もくらむようなその愉悦を。
増やされた指がゆっくりと引き抜かれ、それを追いかけて閉じていく内壁にどれだけ自分の身体は変えられてしまったのかとぼんやりと思う。
バサリと音がして見上げれば、ヒュンケルが上着を脱いだ音。
鍛え上げられたたくましい身体があらわになる。
その首筋についた赤い痕。
先ほど自分がつけたくせに、それを確認して急激に体温が上がる。
「ポップ・・・?」
「え、あ・・・、あっ、自分で・・・」
ヒュンケルの声で我に返れば、まだ残る服に手をかけられているところだった。
自分で、と手を服にかければその腕を取られて唇を寄せられる。
「オレにさせてくれないか・・・?」
「で、も・・・」
まだ、わだかまりは解けずにポップの胸に、ある。
変な手間をかけさせたくない、と思えば、それが伝わったのか苦笑と共に唇が降って来た。
少し苦い、口付け。
「オレの楽しみを取らないでくれるか?」
「楽しみって・・・お前ね」
その言葉に睨み付けながらも、やはりこういうところはヒュンケルは大人なのだと思う。
茶化す言葉で不安を取り除いて。
優しい口付けで甘やかして。
ならばそれに甘えようと、そう思う。
了承のかわりに、腕をヒュンケルの背中へと回せば、気持ちが伝わったのか嬉しそうに笑うヒュンケルに胸が跳ね上がる。
ヒュンケルが愛しくて自分の服を脱がしてくれる間に何度も口付ける。
頬に額に髪に瞼に、そして唇に。
それを甘んじて受けていたヒュンケルだったが、ポップの服を脱がし終わると反撃のようにポップの唇へ自分の唇を重ねた。
深い口付けを交わし、唇はそのまま頤を辿り首筋へ這うように進む。
鎖骨を甘く噛まれ、ポップの身体が跳ねた。
少しずつ進んでいく唇の感触にポップの肌が粟立つ。
既に固く尖った胸の先を舌先で弾かれて、喉から自分の声とは思えない甘い声が零れ落ちる。
まるでそれが合図だったかのように、ヒュンケルの大きな手が再度ポップ自身を包み込んだ。
「ア・・・ッ、あ、ん・・・ッ」
自身の先端を親指で割るように愛撫されながら、身体中を嘗め回される。
前回のものとは比べ物にならない程の執拗さで。
しかも唇が落ちるその場所が。
総て自分の肌に刻みついた痛々しい傷のある場所なのだと気がつけば。
愛しくて、欲しくて仕方が無くて。
素直に、そう思った。
「あ、ア、あぅ・・・んッ、ああ・・・ッ!」
「ポップ・・・ッ」
欲しい気持ちを見つめる瞳で伝えれば、それはヒュンケルも同じだったようで身を起こすと口付けと共にポップへと侵入してきた。
指で蕩かされたものの、やはり慣れないそこは痛みを訴えたけれどポップにはどうでも良かった。
早く繋がりたくて、快楽が欲しくて、与えたくて。
自分で一杯になって欲しくて。
大分ヒュンケルも無理をしていたのか、耐え切れないように抽挿を始めた。
それでもポップの身を案じてか、窺うような視線で覗き込んでくる。
それが口惜しくて、そんな事に気を取られているなと、首にかじりつく。
もう声も抑えない。
全部晒して。
どんな風にお前がおれを変えたか知ればいい。
「あ・・・あッ、そ、こ・・・や、!」
膝裏に手を差し入れられ身体を2つに折るように抱き締められると、抽挿の角度が変わりまた新たな快感の波へと攫われる。
ヒュンケルが動く度、そのたくましい腹筋に張り詰めたポップ自身が擦られて蜜を零す。
「・・・当たっ、てる・・・ぞ、・・・?」
「・・・ッ言う・・・な、ばかぁ・・・、んッ」
それを揶揄するように耳元で囁かれ、言うなと抗議の声を上げればそれは唇で封じられる。
舌をねじ込まれて、ポップの総てはヒュンケルに侵された。
もうそこに見えている、終焉。
唇を合わせたまま、2人共に駆け上る。
「・・・んんッ!!」
「・・・ッ」
奥で、弾けて。
注がれる熱。
その熱さ。
同時に放った自分の熱も同じように熱いのかと、ぼんやりと思う。
唇を合わせたまま。
その後、もう抜いてくれと頼んだと言うのにもう一度と強請られて。
甘えるような声色にうっかり許してしまって。
覚えているのは、そこまで。
「・・・どこが一回だ、この絶倫野郎・・・」
「・・・すまん・・・」
声は嗄れ、身体中の関節がギシギシと軋んだ音を立てる。
あの後、どれだけ鳴かされたのかなんて考えたくも無いくらいに責め立てられた。
赤くなりながらちらりとヒュンケルを見れば、寝台から降りてうなだれたまま。
逢瀬の後、初めて見るのが恋人のつむじってどうよ?と思いながらも、何をする気にもなれずぐったりと寝台につっぷしている。
回復呪文のために精神を集中することすら難しく、こりゃ今日は休みだと思えば、自分の雇用主の楽しそうな顔が浮かんで永遠に休みたい気分になる。
でも。
気分はすっきりと晴れやかで。
ちょっとこんな自分ってどうよ?と思うけれど、そんなもんだと妙に納得してしまう。
悩むから見えなくなるのだ。
何も考えずに手を伸ばせば、こんなにも簡単。
つむじはうなだれたまま、色々後悔しているみたいだけれど。
どうしようか?
このままでも面白そうだけど、また変な方向に行かれても困るし。
声が出ないから、と寝台から降りてしまった恋人を、まるで犬でも呼ぶように手招きで呼ぶ。
素直に近づいてくるから、更に犬のようだと心の中でコソリと笑う。
「まったく、変に悩んでおれの事避けたりすっから。溜まってたんだろ。」
ポップのあからさまな物言いに、ヒュンケルは視線を逸らすという返事で答えた。
まったくその通りと言わんばかりだ。
「あのさ」
声色を変える。
優しくしたつもりが、なんだか甘くて少し照れくさい。
「嫌な時はメドローアでもなんでもぶちかまして抵抗するし」
手を伸ばして髪に触れる。
そのまま後頭部へ動かして引き寄せようとしたけれど、力が入らない。
けれどそれを察したヒュンケルがポップのほうへと身を寄せた。
その唇にちゅ、と音を立てて触れて。
触れ合わせたまま、言葉を紡ぐ。
「だから、溜まる前におれんとこ来いよ?」
悪戯な瞳を装って覗き込むけれど、ヒュンケルが蕩けそうな顔で笑うからどうやらそれは失敗したらしい。
ちらりと外をみれば、まだ太陽は姿を見せていない。
今の季節を考えれば、もうひと寝入り出来そうだと踏む。
寝台の自分の横を叩き、きょとんとした顔をするヒュンケルに挑むように囁く。
「とりあえず、恋人に腕枕する甲斐性くらいは見せてくれませんかね?」
また嬉しそうにヒュンケルが笑った。
暖かい腕の中、まどろみながらぼんやりと思う。
遠征から帰ってきた後、1回は潰されるな・・・。
それを少し楽しみにしている自分には気がつかない振りをして、眠りに落ちた。
END
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グダグダになってしまいました・・・。
エロ頑張ったのですが、ちょっとなんていうか・・・正統派ヒュンポプ派の方には引かれそうな部分が(苦笑)
ポップだってオトコノコだし征服欲とかあってもいい、というかあるはずと思っているのですが。
ダメかなあ。
あとね、某さんにもメールで言った事あるんですけど、ワタクシの書く2人はなんかがっつきすぎよね(爆)
ラブラブというよりはがっつきすぎ。
ちょっと落ち着けおまいら!みたいな気になります。
ウインドウを閉じてください。