学ラン








お昼休み、いい天気なので屋上で弁当を食べようとダイが誘ってきた。
本当は立ち入り禁止だけれど、基本的に守っている生徒はいない。
ちらほらと先客がいた。

ダイは持ってきた弁当で、おれは買ってきたパン。
購買は恐ろしいほど混んでいるから朝来る時に買ってきた。
自販で買ったコーヒー牛乳を啜りながら食べていると、背後に気配を感じる。
振り向こうとした途端、その気配はダイとの間にずずいと割り込んできた。

「はいはい。ちょっとお邪魔するわよ〜。」

「姫さん・・・。」

飲んでいたコーヒー牛乳のストローから口を離し呟くが、相手はカケラも気にしていない。
まあ姫さんにはダイしか見えてないからな。

「私も一緒にご飯食べてもいい?」

可愛らしい仕草で聞くのはダイにだけ。
いつもの事なのでツッコむ気にもなれない。

「いいけど・・・、レオナはなんでいっつもおれとポップの間に入ってくるの?」

こっち側開いてるのに、とダイが呟く。
・・・今更な。

「だってダイ君とポップ君仲良しすぎるんだもの!仲を裂きたいに決まってるじゃない!」

やたらときっぱり宣言してきた。
あんまりにもきっぱりしていたせいか、ダイもそれ以上何も言えないらしい。
3人での昼飯になった。
姫さんは女子らしく可愛らしい弁当を持参していた。

「はい、ダイ君あ〜んvvv」

「いいよ、自分でたべれるからッ!」

ああ、いい天気だ。


食事も終わって、おれは持参した雑誌なんかをめくっているとダイが立ち上がった。

「ダイ?」

「おれ購買行ってくる。ポップ何か買ってくるものある?」

「まだ食うのかよ、お前。朝もパン食ってなかったか?」

「ダイ君は育ち盛りなのよ!何よヒョロ吉!」

「うっせ!食ってもつかないんだよ!」

「何よそれ!自慢!?自慢なの!?」

「レオナもなにかある?ヨーグルトとか買ってこようか?」

「ダイ君ってば優しいv」

・・・・。今更だから何も言わないけど。
言わないけど。
ムカつく。

購買へ行ったダイにおれはウーロン茶、姫さんはイチゴミルクを頼んで見送る。
すると姫さんが今までの緩んだ顔を一転させると声をかけてきた。

「ポップ君、それまずいわよ。」

「んあー?いきなり何よ。」

「気がついてないの?学ランに煙草の臭い、ついてるわよ。」

「うっそ。」

袖口に鼻を近づけて臭いを嗅ぐがわからない。
でも心当たりが無いわけじゃないし、何より。

「・・・そういや、生活指導が変な顔してたな・・・。」

「結構キツイわよ。制汗スプレー持ってないの?」

姫さんの言葉にロッカーの中身を思い出す。
確か持っていたけど・・・。

「あ、こないだ無くなってから買ってねえ。」

「私の貸してあげようか?」

ポーチの中から小さなスプレーの缶を取り出してみせる。
でも女子の制汗スプレーは変な臭いがするから嫌いなんだ、と顔を顰めると

「これ、無香料だから大丈夫よ。私も嫌いなのよ、あの臭い。」

折角シャンプーやコロンに気をつけてても台無しになっちゃうんだもん。
そういうとおれの手に缶を押し付けてきた。

「それそんなに中身入ってないからあげるわ。」

「そりゃどーも。」

生活指導に絡まれるのはごめんだし、ありがたく頂戴することにする。
すぐに使おうとしたら姫さんに女子の前で!とえらい怒られたので、後でトイレで使おうと思っていると。
姫さんがどう見てもスケベ親父としか形容が出来ない顔で近づいてきた。

「な、なんだよ?」

「それだけ臭いがしてるってことは、昨日はお泊り?そんで今日は愛人宅からご出勤?」

「!?なななな何言って!」

「そのパンもあれよねー。愛人宅の側で売ってるのかしら〜?」

「!!!!」

そうだった、姫さんの家はあいつの家と近いんだよ。
やばい。
やばすぎる。
別に何があるわけじゃないし、姫さんが言うように愛人ではないけれど。
この女に知られたらやばい、と本能が訴える。

「・・・買ってきたよ。」

「ダイ!」

ダイが購買から帰ってきた。
天の助け、とばかりにそちらを見れば不機嫌そうな顔。
購買で目当てのものが買えなかったのかと思いきや。

「・・・なんだよ、ポップとレオナ、仲いいんじゃん。」

・・・そういうことですか。
その台詞に姫さんは飛び上がらんばかりに喜んで、なんとかおれは解放されて。
暢気なはずの昼休みは、こうして幕を閉じた。





放課後。
おれはダイやら他のやつらに声をかけて学校を出た。
電車に乗って自分のいつも利用している駅で降りずに、もう一つ行った駅で降りる。
そこから少し歩いたところにあるマンションへとたどり着く。
ここは、姫さん言うところの愛人宅。
おれの、コイビトの部屋。

7階までエレベーターで上がり、部屋の前で合鍵を取り出す。
ドアを開けて玄関を見れば、やっぱり思ったとおり靴は無い。
今日は非番って言ってたけど、呼び出されたんだろう。

朝、一緒に晩飯でも食べに行こうって言っていたけど、こりゃ今日は無理だな。

そう思ってかなり残念がっている自分がいた。



朝、自分が起きる時にはまだ寝ていて出かける直前で起きてきた。
普段からじゃ想像も出来ないような、寝ぼけ面で。
柔らかい髪の毛は寝癖でくしゃくしゃだし、ちょっと髭が伸びてるし。

「・・・もう行くのか。」

「おはよ。起こしたか?」

そういうと、いつも起こせといっているだろうと抱き寄せられて。
見送りくらいさせろと頬に口付けられた。
触れた頬の髭がくすぐったかった。

「だってここのとこ忙しかったんだろ?寝てたいかなって。」

「・・・昨夜はスマン。」

明日が非番だからとメールを貰って家に行ったのだけれど、恋人の帰宅は酷く遅かった。
食事も作って待っていたのだけれどあまりに遅いので先に済ましてしまったから。
一緒にいたのはほんのわずかな時間。
あとは一緒に眠ることしかできなかった。
それでも自分は嬉しかったから。

「気にすんなよ。」

そう言って、自分からその薄い唇に口付けた。



ため息をついていても仕方が無いから晩飯の支度を始める。
冷蔵庫を開ければロクなもんが入っていない。
そういえば昨夜ほとんど使ってしまったことを思い出す。
今の時間ならスーパーもまだやってるから、買い物に出た。

適当に見繕ってマンションに戻ると鍵が開いていた。
そして黒い革靴がキチンと並んでいる。
ヒュンケルが帰ってきたらしい。

「ただいまー。そんでおかえりー。」

運動靴を脱いで部屋に入るとヒュンケルがソファに座っていた。
ワイシャツの首には少し緩ませたネクタイ。
やっぱり呼び出されたみたいだ。

「お帰り。」

「やっぱ呼び出されたん?」

「ああ。だが行き損だった。」

すぐに帰ってきたよ、と笑う。
それは良かった、と自分も笑い返して買い物してきたものを片付けだす。
するとヒュンケルもシステムキッチンのほうへ歩いてきた。

「買い物行ってきちゃったけど、どする?どっか行くなら・・・わッ!」

後ろから抱き締められて、首筋に顔を埋められた。
学ランの詰襟をはだけられて、口付けられる。
久しぶりのそれに、身体がビクリと反応した。

「・・・香水かなにかつけているか?」

「へ?」

ヒュンケルは首筋に埋めた顔を上げると鼻をヒクつかせながら言った。
犬か、お前は。

「なにって・・・何もつけてねえよ。」

「しかしいつものお前の匂いじゃない臭いがするぞ。」

犬だ、コイツは。
心当たりがない、と思って口を開こうとして昼間借りた制汗剤を思い出す。
確か無香料と言っていたと思うけど、無香料って『無香料な臭い』がかすかにしたりする。
でも昼間付けたそれが残っているとは思えないけど。
コイツ、犬だし。

「あー、制汗剤借りたんだよ。それだと思う。」

「・・・借りた、か。」

そう呟くと身を乗り出してきたヒュンケルに唇を奪われる。
少し荒々しいそれを疑問に思いながらも受け入れる。
久しぶりの深い口付けに足は使い物にならなくなり、ヒュンケルに身体を預ける格好になった。

「ふあ・・・ッ」

「あまりそういうことをしないでくれ。」

みっともないが嫉妬で狂いそうだと夜の閨の中での声で、耳元で囁かれる。
誰のせいだと反論しようとしても、甘い電流が背中を駆け上り言葉がでない。
するとヒュンケルの手は更に学ランの前を肌蹴させて。
シャツ越しに胸を触りだした。

「あ・・・ッ、こら、んッ!」

耳朶を甘く噛まれながら、じれったい愛撫を送られる。
久しぶりの体温と感触に身体は素直に溶け出して。
あとはされるがまま。




抱き上げられて寝室へ連れて行かれ、ぽすんとベットに下ろされる。
大きなベットに座る格好のおれの学ランは既に全開、シャツの釦を一つづつ外され、ひやりとした空気が肌を撫でた。
もう既に胸の先は固く反応していて、それがたまらなく恥ずかしい。
なのにヒュンケルはそこに唇を近づけてきて、舌で弾くように突つかれた。

「ひゃ・・・ッ」

「相変わらずアンダーを着てないのか?」

「んあ・・・ッ、や、やめ・・・、ッ!」

胸の先を口に含まれながら喋られると、不規則に当たる歯にどうしようもなく感じてしまう。
わかっていてやるのだ、この男は。

「Tシャツでもなんでもいいから着ろと言っているだろう・・・?」

誰かが不埒なことを考えたらどうすると言うと、胸の先を甘く噛まれた。
もう片方の乳首は爪で引っかくような愛撫をされる。

「やッん・・・、ん・・・な変・・態ッ、お前、だけ・・・っ!」

「変態は酷い。」

胸から顔を上げてそういうと、胸だけでの愛撫で熱を持ってしまった下半身を制服のズボンの上から撫でてきた。
優しく、ゆるく。
そのじれったさに、腰が揺れる。

「ふあ・・・ん・・・、も・・・、ヒュン・・・」

「いい、眺めだな・・・」

囁かれて、今の自分の格好を思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
学ランの前もワイシャツの釦も全部外されて、露出した胸はヒュンケルの唾液に濡れて。
自分ひとりだけがこんなに乱されてる。
俯く頬に口付けられ、カチャリとベルトを外す金属音がする。
そして釦を外しジッパーを下げ、大きな手を下着の中に入れて直に触ってきた。

「ああ・・・ッ!あ、や・・・あッ!」

その手が動くたびに粘着質な音が部屋に広がる。
胸と下半身へのゆるい愛撫だけで、それだけ感じてしまっているなんて。

「・・・制服が汚れてしまうな。」

何度も顔中に口付けながらヒュンケルはそういうと下着の中から手を抜いた。
ゆるい愛撫をやめられて、火のついた身体だけ取り残される。
どうして、と顔を上げれば唇に口付けられた。
だんだんと深くされ、こっちは意識が朦朧としてくるのに、ヒュンケルときたら器用に制服を脱がしてゆく。

「ん・・・は、あ・・・」

唇を離したときにはすっかり制服は脱がされて。
ヒュンケルは頬に小さく唇を落とすと、身を離して制服をハンガーにかけ始めた。

・・・気持ちは嬉しいけど。
でも、面白くない。
こっちはもう息も絶え絶えなのに。
ずいぶんと余裕じゃねえか。

そう思えば、まだネクタイを緩めただけの格好も許せなくて。
戻ってきたヒュンケルに手を伸ばして、その緩んだネクタイを引っ張る。

「ポップ・・・?・・・ん・・・」

自分からその薄い唇に口付ける。
誘うように下唇を甘く噛めば、思った通りに進入してくる舌。
それを身を引いてかわし、追ってくる唇も無視。
腕を首に回して、耳朶を噛んで吐息を流し込めば、腕の中の身体がわずかだけれど硬直する。
してやったりと口角を上げた途端、首に回した腕を引き剥がされてベットに沈められる。
そして驚く暇も無く口付けられる。
息も付けないくらいに深く。
唾液の絡まる音すら響くほど。

「んっ、んんっ、ふ、あ・・・はッ」

「・・・・どこで、覚えた・・・?」

そんな誘い方。

甘く低い夜の声で囁かれてゾクゾクと悪寒のようなものが走って、肌が粟立つ。
それでもなんとか気丈な声を出す。

「おま、えが・・・ッ、悪い・・・!」

そういってもう一度ネクタイを引っ張れば、こちらの気持ちがわかったらしく。

「・・・そうだな」

ヒュンケルはおれの唇に軽く口付けると、ネクタイに自ら手をかけて服を脱ぎだす。
その肌を滑り落ちるワイシャツから目が離せなくなった。






「んんッ!や、あッ・・・、あ・・・ッ!」

もたつくゼリーみたいなものを塗りこめられて、指でそこを広げられる。
弱い場所を節ばった指で優しく、でも何よりも卑猥な動きで攻め立てられる。
その指を肉壁はきゅうきゅうと物欲しそうに締め付けて。
もっとと強請る腰が止まらない。

「や、や・・・ッ、あ、も・・で、る・・・、やッ!?」

駆け上がろうとした身体を無理やり止められる。
はちきれんばかりのそれの根元をきゅっと握られて。
熱の開放は許されない。

「なん・・・っ、や、だ・・・ッ」

せき止められた熱が体中を駆け巡って、神経が焼き切れてしまいそうなのに。
ヒュンケルは許してくれない。
あまりの酷い仕打ちに涙があふれてくる。
するとその涙に優しい唇が降りてきて、そっと吸い上げられた。

「ヒュ・・・」

「ちょっと我慢してくれ」

一緒にと囁かれ、達してしまいそうな身体を押しとどめる。
指をそこから引き抜くとヒュンケルが身を起こして身体を離す。
サイドボードから取り出したビニールのパッケージを口にくわえて中身を取り出した。

「・・・そ、・・・なの・・・ッ」

いらない、というと明日も学校だろう?とあやすような唇が降りてくる。
その余裕に満ちた態度への不満が顔に出たのか、ヒュンケルは苦笑しながら囁いた。

「・・・オレも、限界なんだが・・・」

お前のその顔だけでイキそうだ。

そう囁かれて膝裏に手を差し入れられる。
つぷり、と先端が含まされた。

「んん・・・ッ!」

それだけで達してしまいそうな身体。
でもヒュンケルは手を離してくれない。
狂ってしまいそうなほどの熱が出口を求めて暴れまわる。
あまりに熱さに怖くなって自身を掴む手に爪を立てるが、力の入らない腕では効力も無い。

「や・・・、もっ、はな・・・て、く・・・、やあッ!」

掴んでいた手をそっと離し、爪を立てた手を握ってきたかと思うと、一気にヒュンケルは入り込んできた。
それに押し出されるように、おれ自身から白濁した体液が放たれ、おれとヒュンケルの腹を汚す。
けれどヒュンケルはお構いなしにおれを揺さぶり始めた。
達したばかりの身体にはキツイ快楽。

「んあッ、あッ!や、やめ・・・ッ、んぅッ!」

「・・・くッ、・・・ポップ・・・ッ」

耳元でする、苦しげなヒュンケルの声。
おれを欲しがる、声。


蕩けそうな口付けより。
目もくらむような甘い快楽より。
本当はその声に一番感じてるなんて知らないんだろうな。





キイン、と何か金属の音で意識が浮上した。
情事のあとの身体はだるくて、うとうととまどろんでいたらしい。
音をしたほうを見やれば、ヒュンケルが煙草に火をつけていたところだった。
あの音は彼の愛用のライターの開く音だったらしい。

「・・・ん?起こしたか・・・?」

くすぐったいくらい甘い声で囁きながら、髪を梳いてくる手。
汗ばんだ髪に気持ちがいい。

「・・・腹減った。」

今の正直な気分を伝えれば、苦笑で返された。

「色気が無いな。」

逢瀬のあとだぞ、といわれるけれど減ったもんは仕方が無い。

「仕方ねーだろ、晩飯食ってないんだから。誰かさんのせいで!」

ぷう、と膨れながら言えば、心当たりありありなヒュンケルは視線を泳がす。

「イキナリ襲ってきやがって。盛りのついたケモノか、お前は。」

「・・・仕方ないだろう。」

「何が。」

「・・・お前の制服姿を久しぶりに見たんだ。」

大体においてヒュンケルと会う時は休日の私服のとき。
でなければおれがマンションでヒュンケルの帰宅を待っているかだ。
後者の時はヒュンケルが戻った時点で、窮屈な制服は脱いでしまっているし。
だけど。

「それで欲情した。仕方ないだろう?」

今度は確信犯の笑みで言い放たれた。
こっちが恥ずかしい。

「・・・あからさまなこと言うな!恥ずかしいやつ!」

「お前も悪いだろう?他の人間の匂いなんてさせて」

お門違いの理由で責められながら、その長い腕に巻き込まれる。
もう片方の手にはまだ煙草。
その煙草を奪って言ってやる。

「お前のせいだろ!制服にコレの臭いがついちまったから制汗剤借りたの!」

そういって煙草に口をつける。
やり方なんて知らないから、思い切り肺に入ってむせる。
何をしてる、と抱き寄せられて口付けられた。
その最中に長い指に煙草は取られて、アシュトレイに押し付けられた。

「ん・・・こほッ、・・・なんだよ」

「いや、お前これからも煙草吸うなよ」

別に喫煙の習慣は無いけれど、理不尽といえばあまりに理不尽な台詞に反論する。

「何で。」

「・・・キスが苦くなる。」

「・・・自分はヘビースモーカーの癖に」

そういって反論すれば、今気がついたというような顔をする。
バツの悪そうな顔をして、嫌か?とたずねてくるから。

「今更だ、バーカ。」

そう言ってその薄い、煙草を銜えるのが似合いな唇に口付ける。

苦い、煙草の味のキス。
それが甘くなる瞬間が好きなことは。


おれだけの秘密。





















END
















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うっかり学ラン萌えをしまして。(日記参照)
学ランはだけてシャツもはだけて肌見えたりしたらやらしー!と思って書いてみた。
ダイ×レオナも書けて楽しかったです♪
長くなっちゃったけど。

あんまり兄の職業は気にしないでください。私もわかってません。

ポプの家はパパが単身赴任している設定。
そしてママはパパに会いにしょっちゅう出かけています。
ラブラブ夫婦です。





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