epilogue

 

 

 昔、傷ついた旅人を癒し、名前も明かさずに去っていくという青年の話があった。
 ある者はそれを「銀髪の天使」と語り、また別の者は「黒髪の聖騎士」と言った。

 目撃証言は少ない。ただ、噂として語られている謎の人物。 
 それは話を聞く者たちの興味を煽り、時が経つにつれ、ある仮定が飛び交うようになった。

 銀髪の天使とは、世界を救ったという勇者のひとり―――今では行方が分からなくなっている「ホーリーマスター」(世界では4人の勇者を「ヒーロー」「ファイター」「ホーリーマスター」「マジックマスター」と仮称で呼んでいる)―――そのひとなのではないか。
 黒髪の聖騎士とは、世界に暗黒神が復活する直前に即位し消えていった幻の法王――― 一般的にその法王は暗黒神に我が身を乗っ取られ、それが元で命を落としたことになっている―――そのひとなのではないか。

 しかし、それらの仮定が多くの人間の耳に入ることはなかった。
 なぜならば、ぽつぽつとあった目撃証言そのものがなくなってしまったためである。
 いつしか人々は「銀髪の天使」と「黒髪の聖騎士」のことを忘れていく。


 天使でも、聖騎士でもない。勿論勇者のひとりでも、かつての法王でもなく……ただの「ふたりの兄弟」として、彼らがこの世で生きていることを知る者は少ない。


 

 

 

 

 

←戻る

 



2007/05/