| あなたが知っていてくれるなら |
| 昔、女の子たちのちょっと過激な恋の話を立ち聞きしてしまったことがある。 うら若い女の子が5人、酒が入っている上にみんな恋人持ちとくればちょっと夜のいけない話―――まあ直接的な表現で言えば猥談であるのだが―――になるのはいたし方ないのだろう。 その時のククールの感想といえば、『女の子ってすげえな』であった。 男だってそういう話の流れになることはある。 騎士団に居た頃も、酒の入った若い連中が自分の恋愛経験について語っていたりした。(聖堂騎士団に所属する者としては些か不謹慎であろうが) しかし、当時のククールは……終始だんまりだったような気がする。 女性経験はまあまあある方だと思っていたが、どうしてもその輪に加わることが出来なかったのだ。 ”女はこうすると喜ぶ。ああしてやったら喜んだ。この前は酷い乱れようで……” 正直なところ、アホかと思った。 女は男が思っているほど単純じゃない。彼女たちはしたたかで狡猾だ。 男に”喜ばせてやっている”と勘違いさせることだって可能なのだ。 時に従順に、時に淫らに……男を煽って喘ぎ、果てる。 しかし、その心の中では『ばかな男ね』と、舌を出しているかもしれない。 まあ、自分自身が”男”を相手にするときにそうだったから、そんな捻くれた考えになるのかもしれないが。 だからククールは女性を相手にするときに”満足させてやろう”とは一度も考えなかった。 楽しい時間をありがとう。オレを満足させてくれてありがとう。 自分が感じた幸福感と満足感を、相手が半分でも感じて居てくれるなら重畳重畳、と。 ―――それでも、あれから数年の月日が経って。 いま、あの女の子たちのように語りたくて仕方ない。 自分が今どれほど幸せなのかを。 ”あいつ”が”オレ”をどんな風に愛してくれるのかを。 だけど、野郎同士……それも兄弟の愛の営みについてなんて、一体どこのどいつが聞いてくれるっていうんだい? |
すげえんだよ、あいつ。 この前の夜さ、オレを全然離してくれねえの! きっかけはオレの長い銀髪ね。 当然アノトキは髪を解くじゃないか。 そしたらさ、どこをどう間違ったかオレの銀髪があいつの服のボタンに絡まって取れなくなっちまったわけ。 当然焦りまくったよ。 そん時オレはもう素っ裸だったし、恥ずかしいやらなんやらで焦って解こうとしたんだけど……指がもつれて上手くいかなくてさ。 兄貴はそんなオレの姿をじっと見てるし。居たたまれなくなったオレは、とうとう兄貴が寝台の奥に隠している短剣に手を伸ばしちゃったわけ。 そう、切っちゃえってね。 そしたらさ、兄貴どうしたと思う? 静かに短剣をオレから奪って首を横に振ったわけ。 オレとしては、なんだよ解けるまでお預けかよ!って気分だったんだけど。 兄貴はボタンを外さないまま器用にシャツを脱いで、それでオレの首を緩く縛ったんだ。 「これなら髪が傷むことはないだろう?」って! そんときのオレがどんな気分だったか分かるか!? あいつのシャツからは、あいつの匂いがしてさ! あいつに囚われているというか、独占されているというか、拘束されているというか……とにかくよく分からないけど凄く変な気分になっちゃったわけ。 兄貴ってば普段よりもエロい顔してるし。身体中嬲りまくって焦らしてさ。 もうオレってば”されるがまま”よ。 首に巻かれたあいつのシャツ掴んで口に当てて。必死に声を殺して。それでもあいつはそんなこと許さないからすぐに手を解かれて。無様に喘いでれば、あいつはこれまた更にエロい顔になって”下”をぐちゅぐちゅ音を立てて嬲るわけ。 オレ自身が出した透明な液体を指ですくうようにして舐めてみせるわ、仰向けの状態のままのオレにあいつの……その、立派なアレを見せ付けて無理やりねじ込んで見せるわで。 焦らされまくって辛抱できなくなったオレが自分で自分のを扱き始めると、いきなりアレを口から引き抜いてさ。その恥ずかしい姿をいやーな笑みを浮かべながら見てるわけ。 当然オレは直ぐに手の動きをやめた。が、今度はオレのベタベタになった手と指を丁寧にあいつが舐め始めやがった! 両手ともあいつに取られる形になったわけだけど、そうするとあいつの両手も空いてないってことなんだよ。 オレのはもう完全に立ち上がりきって震えてるわけ。でも、あいつは触ってくれない。自分でも触れない。 もう、オレはがむしゃらになってあいつのこと押し倒した。もう欲しくて欲しくて仕方なくてさ。 夢中になってあいつのをオレの中に挿れようとしたよ。でもさ、今度は上手く入んないんだ。 そりゃそうだよな。どちらかの手を添えるなりなんなりしなくちゃ上手く入りっこない。 あいつの先端がオレの入り口を滑って逃げていく。 さっき自分の髪を解こうとしていたときと同じくらい、いや、それ以上に恥ずかしくて泣きたくなった。 たまらなくなって、 「逃げないでオレのこと掴まえてくれよ!」 って叫んだら、いきなり深く突っ込まれた。 それこそご近所があったらオレの凄い声が聞こえてたんじゃないかってくらいの声を上げちまって。触られてもいないのに達してしまった。 下から激しく腰を打たれて、その後あいつだってイったはずなのに……どういうわけか一度も抜いてくれなかったんだぜ! 何度も体勢を変えて、中に出されて、やっと抜いてくれたと思ったら 「全部お前のなかに閉じ込めておけ」って! 後始末もしてくれねえのかよ、次の日大変なのにって恨み言を言いそうになったけど……そんな考えは無駄なことだったね。次の日の心配どころじゃない、まだまだ終わってなかったんだから! 「風呂場に行くのにそのままでは……少し困るな。そのシャツは私のお気に入りでね」 兄貴はそう言うよりも早くオレの首からシャツを解いて、髪の毛の絡まったボタンを自分の口で食いちぎりやがった。 器用にもオレの髪の毛は一本も傷つけず。無事、オレを解放してくれた兄貴だったんだけどさ……。 ボタンをオレに見せ付け、 「ボタンは付け直せば済むこと。しかし切ってしまった髪は元には戻らん。 ククール。お前は”何でも”そうやって簡単に”切り捨てて”しまうのかね?」 静かな声で、そう言った。 その時オレは気付いたんだ。 兄貴が凄く怒ってるってことに。 直ぐに諦めてしまったオレに対して憤りを感じていること。 「誰が、お前を逃がすものか」 そして、兄貴がオレのことを凄く大事に想っていてくれてるということにさ。 もーそれからも兄貴ったら凄くて! 激しくしてみたり、言葉で虐めてみたりしたかと思ったら、今度は優しく身体を触ってくれたりキスしてくれたり。オレが恥ずかしがる顔が可愛いとかなんとか(言ったような気がするけど幻聴かもしれない)で、わざわざ鏡に情事を映してみたり。 どこの変態オヤジだよって感じだったけど、それで滅茶苦茶乱れまくっているオレもまた変態? ……ていうか、過去にそんなプレイが好きだった貴族とかいたけど、こんなに羞恥心を覚えることも、身体が熱くなってしまうこともなかったな。 オレの両脚を広げて背後から持ち上げ、繋がった箇所を見せ付けられて。そのまま鏡に向かって精を吐き出した。 風呂場でも何度も抱かれて、その後ベッドに戻ってまた抱かれてさ。 オレ、次の日熱出したもん。 さすがにあいつも申し訳なく感じたみたいでさ、次の日は嫌味のひとつも言わずに看病してくれたよ。 それどころか、小さな声で「悪かった」って。 兄貴が素直に謝罪するなんて、オレにとっては青天の霹靂だった。 だからオレは言ったわけよ。 兄貴の一方的な行動じゃなかったってことを、伝える意味でさ。 「心配することないって。この熱はオレのあんたに対する熱。それが溢れて出てきちまっただけなんだからさ」 こんな甘い台詞を、真剣に……誰かに向かって言う日が来るとは夢にも思わなかったけどね。 随分高い熱だなって兄貴は呆れてた。 それから、「2、3日も経てば冷めるわけか?」と軽口。 甘いね、オレの熱は底なしだぜ!って返したけどさ。 もう本当に幸せで幸せで泣きそうなんだ。 オレはこんなに兄貴に愛されてるって、世界中の人間に叫びたいくらいだ。 けれど、兄貴が知っていてくれてるならそれでいい。 それで、いいんだ。 |
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2008/02/03 |
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