屋上で竜一と別れを告げ、ノロノロと廊下を歩く早坂を窓から注ぎ込まれる赤い夕日が照らした。身体の横半分を夕日で染めながら歩くその姿は何処か足元がおぼつかなく、余り光が無い瞳も何処を見ているのか推測し難い。何も見えていないようにも感じられる虚ろな瞳の少年の身体が廊下の角からスッと飛び出してきた影と派手にぶつかり、少年は両手と尻を強かに打った。
「……痛たたたた…」
フラフラと歩いていた相手と同じように打ってしまったらしい尻を擦りながら起き上がり、一目睨もうと視線を動かすが、その鋭い眼光は相手が先輩であり、仲間である早坂良麻だと認識すると瞬く間に緩んだ。
「何だ、早坂さんじゃないですか。全く……キチンと前見て歩いて下さいよ」
「……………………」
再度尻を擦りながら苦笑を浮かべる後輩――音無京助の顔を見た瞬間、屋上での竜一の言葉が脳裏に蘇って来た。ヤりたくなったらヤる。そう言う関係だ。つまり、目の前で自分に対して苦笑している後輩は性交経験があると言う事になる。さっき、自分を抱いた服部竜一の立派なそれを幾度も咥え込んでいるに違いない。
「…………ぁ……」
とくん、とくん。胸の中の鼓動が奇妙なリズムを刻み始め、頭の中をボンヤリとした熱が回り始める。瞬きをしようと眼を閉じれば、瞼の裏に竜一と音無の性交のイメージが勝手に映って瞼を開けなくする。小さく開かれた口からは荒い呼吸が漏れ、自分を固く抱き締めて落ち着かせようとするが“発情”してしまった身体を抑える事なんて出来る訳が無い。駄目、落ち着け。落ち着くんだ。僅かに残された理性が必死に語りかけるが、耳に入った音無の声が理性の声を掻き消し、完全に全てを追放した。
「は、早坂さんっ!?どうしたんですか?熱でもあるんですか!?」
年下なのに自分よりも背が高い音無の手が早坂の両肩を掴んで自分の顔を覗き込んで来る。保健室まで行きますか?と言う声が聞こえて来た気がしたが、もはやそのような事などどうでも良かった。その証拠に、苦しげに歪んでいた早坂の表情が一転して微笑を浮かべる。
「…うぅん……大丈夫。熱があるわけじゃないから……。それより、さ」
自分を抱き締めていた手を解き、そのまま音無の両の頬を包み込んで笑みに色を加えると、包み込まれた頬は微かに赤くなり、心配そうな瞳は丸くなった。その反応に早坂は愛くるしさを覚えてクスッと笑う。
「音無君って…抱かれるのは慣れてるみたいだけど、抱く方は経験あるの?」
「……………っ!!?」
突然の質問と、その内容に衝撃に似た物を覚えて息を呑む。どうして、彼が自分の性経験の事を知っているのだろう?この事を知っているのは自分自身と相手である服部竜一だけだ。竜一が彼に言ってしまったのだろうか?だが、それは何の為に?言ったって何の得にもならない事は竜一だって分かっている筈なのに………
「な、何でそれを………」
頬から手に伝わる振動から音無が微かに震え始めた事が分かるが、早坂は特に表情を変えずに再度質問した。
「答えて。抱く方は経験あるの?」
「………な、無いですよ…。そんなの…何で…急に………」
…やっぱりね。予想通りの答えに早坂は肩を震わせて笑った後、欲望の熱を帯びてギラギラと輝く瞳で音無を見詰めながら彼の足元へと頭を動かした。
「じゃあね、僕が練習台になってあげる。経験しておいた方が、何時か誰かを抱く事になった時に相手をガッカリさせる事が無くなるだろう?」
「……えっ…早坂さん…さっきから何を言っ……ひっ…!!」
早坂の言動が全く理解出来ずに戸惑いの表情を浮かべていた音無の口から裏返った声が飛び出す。上ずる声の原因は両足の間に顔を埋め、慣れた手付きで音無の一物を引っ張り出して先端に舌を這わせる早坂だった。
「はっ、早坂さんっ!!だ、駄目ですよ……俺、そんなの…急にされても…そ、それに…此処………学校の廊下ですよ!?分かってるんですか!?」
「……その学校の廊下で、こんなに―――大きくしてるのは誰?」
「そ、それは……早坂さんが…そんな事…するから……っ…!」
妖しい笑みを消さずに熱り立ったそれを人差し指でつつっ…と撫でて刺激した後、普段の彼からは想像出来ないほどの強靭な力で音無を廊下に押し倒して馬乗りになる。
「だ…駄目です……駄目っ……もう…夕方だけど…まだ少し人が残ってるから…」
「…大丈夫だよ。人に見られたら、僕に無理矢理やらされたって言えば良いんだから。音無君に迷惑はかけない。責任は全部僕が取る」
「!!?」
呆気に取られる音無の身体の上で早坂は制服に手をかけ、スラックスを膝下まで落とす。自分の前に誰かと行為をしたのか、うっすらと白く濡れた蕾が音無の屹立に近付いた瞬間、音無は我に返って叫び、激しくもがいた。
「駄目…です…ってば………やめ…やめろぉおおーーーっ!!!」
「うん…駄目だよね。でも、もう遅いんだ……何もかも…手遅れで…」
「…ぃ………あぁぁああーーーっ!!!」
未体験の感触が己を包み込み、熱い締め付けがそのまま激しく扱き上げて来る。派手な叫びを聞きつけた校舎内の生徒達が叫び声が聞こえた場所へ向かい、その現場を見た途端に瞠目し、どよめき、悲鳴を上げる者も出て来た。
「…はぁっ…はぁ…ほ、ほら…君が叫んだりするから人が来ちゃったじゃないか……フフ…フッ……」
「やっ、嫌だ…締め付けないで……熱いし………い、痛い…っ!!あ、ああーーっ!!」
無理矢理性交を強制されて泣きじゃくる音無京助の初々しい喘ぎ声を心地良さそうに聞きながら、周りに人がいるにも関わらず身体を揺する早坂の顔には不気味な笑顔が張り付いており、現場から何故か離れられずに二人を見詰める人々の背筋を凍らせる。

 それは何時か見た悪夢が正夢へと変わる少し前の事だった。


無難と言えば無難かも知れないけど(?)いや、死者出ないし
あまり話を練ってなかったりする結末パターンB
…逆レイプも書いてみると結構楽しいね←!!
ちなみに「何時か見た悪夢」と言うのは……前編の「従」参照。

作品全体の言い訳後書きへ。