※これは航空機講座風にアンジェリカ製造を描いたイフストーリーです。管理人は昔、機械工学の学生でしたが、これは架空のテクノロジーです。ツッコミは堪忍してください

    十九試 一号看板娘 「アンジェリカ」


          

     十九試 一号看板娘 「アンジェリカ」

  2007年8月、ブラスハート特別設計局(ウソ)でロボット看板娘製造計画が提唱されました。

 「休息を必要とせず、あらゆる局面で先行投入された看板娘のサポートに回れること」

 設計主務にフィーネが選出され、彼女によって基礎プランが書き上げられました。計画案は製造技師長おんぽうによって承諾され、開発ナンバーはBHX-001と定められました。
 ただしトップページに登場している生身の看板娘と同等に行動できるべく自律行動が取れることと自我を持っていることが絶対条件であり、性能要求は以下のように求められました。

 ・全高は1700mm程度、乾燥重量は52kgを超えてはならない。
 ・機関は出力700kW程度の小型ハイブリッド式生体原子炉を搭載すること
 ・メインコンピュータは思考と各種内部機器の制御をそれぞれ独立したものを搭載すること
 ・ハードウェアは生体細胞でコーティングし、アンドロイドとしての存在を秘匿すること
 ・人間との生殖行為が可能であること(裏ページ)

 特別設計局のスタッフはこの性能要求に腰を抜かしました。
 サイズと重量を厳守すれば、工事現場でバーを振る程度の人形しかできないことは明白でした、また、700kWクラスの原子炉は開発されておらず最強の原子炉も400kwをわずかに超えるばかりのものでした。
 
 設計局の人間に突きつけられた難題は重量、機関出力、機械と生体の融和方法でした。

 最初の難題であった重量問題は構造材の材質でした。予定されていたESD(超々ジュラルミン)やマグネシウムは不採用となり、代わりにAl-Ti基特殊複合材を使用することになりました。フレームは全て中空加工が施され、そのスペースに光ファイバー神経や動力系ラインを通すことで省スペースと重量軽減に役立ちました。

 二つ目の難題は機関出力でした。生体原子炉とは有機物を分解して得られる熱を利用したエンジン・高性能発電機・次世代水素電池の一連のシステムを指し、二酸化炭素などを排出しないクリーンな機関として開発が進められていたものでした。

 搭載エンジンには開発中の小型高出力生体原子炉「水星」エンジンが候補に挙がりました。出力は1000Kwと高性能なものでしたが、出力が不安定であることや強い衝撃を受けると内部流体に引火、大爆発を起こす爆弾のようなエンジンであったため採用は見送られました。
 その代わりに旧型ながら安全性の高い原子炉「木星」エンジンを複数基搭載することで要求出力の達成を図りました。

 
 最後の試練となったのは機械の体に生体細胞を融合させるという技術でした。無機物の究極である精密機械と有機物の究極である人間の細胞の融和は不可能であるとの空気が漂い始めた頃、設計主務フィーネは奇想天外なアイデアを口にしました。

「人間の完全な外皮をクローン培養して、内部に機械ユニットを収めましょう」

 しかし、これは一歩間違えればクローン人間の製造となってしまう倫理上の問題も秘めていました。またそれ相応の細胞も必要とされる上に、採取される人間の生命力の強さも計画成功の鍵を握っていました。その計画に選ばれたのはブラスハート第2の看板娘「彩花」でした。大きな病歴もなく、心身ともに健康であった彼女に協力を依頼したところ快く承諾しました。彼女の毛髪、口内粘膜の細胞、そして卵子が採取されました。

 生体細胞の培養と融合作業は順調に進み、2007年12月中旬、ついに彩花の血を継いだ生体融合ロボットが完成しました。自我を持たせるOSのインストールが済み、第1次動作試験(基礎動作チェック)を終えた頃は既に年末を迎えていました。研究員は年末年始すら返上し、あらゆる状況を想定した第2次動作試験(実用前段階の生活動作チェック)にかかりました。

 彼らは自分たちが製作しているロボットを単なる機械ではなく、一つの個性を持った少女と見ていたのかも知れません。

 そして2008年1月11日、製造技師長おんぽう以下設計局一同立会いの下で命名式が挙行されました。

         命名  アンジェリカ

 これは設計主務であったフィーネの口癖を参考にした結果でした。

「ヒトに作られた存在でありながら、機械という範疇にない特別な存在。神でも悪魔でもないロボットは天使ではないでしょうか。」

 「エンジェル」を元に考えた名前でした。全ての実用試験を優秀な成績でクリアしたアンジェリカは翌日、ブラスハート第6の看板娘として一般公開されました。


性能諸元

 全高 1750mm
 乾燥重量 49kg

 搭載エンジン ハイブリッド式生体原子炉 BR4 「木星」43型 2基
          (通常運転時 580Kw   加速運転時 820Kw)

 搭載コンピュータ  シュルツテック製量子コンピュータ 「バハムート」
             (仕様 CPU 25GHz  HD 450GB)


 搭載OS       並列高速演算プログラム 「なでしこ」


 その他機能     USBケーブルコネクター    6箇所
              外部高速通信端子      1箇所
             緊急用外部電源コネクター  1箇所
             緊急強制停止スイッチ     1箇所
             サーバー通信用大型ブレードアンテナ 1組