日本海軍 対潜攻撃機 「東海」

      日本海軍 対潜攻撃機「東海」

 
  戦争の歴史に登場して以来、各国軍関係者の頭を悩ませてきた兵器の一つに潜水艦があります。その原因の一つに一度潜行されて、スクリューを止められると所在が分からなくなることにあります。(水中の物体は浮かぶ力と沈む力が等しくなる「中性浮力」が生じると、水中で停止できる)そこで海中に潜んだ潜水艦捜索には

 ・海中の音を探る「聴音機」
 ・水中の目標物に音波を放つ、「Sound navigation and ranging(音波による航行と測距)」、通称「ソナー」
 
などが現在も採用されています。しかし、この二つは海水という条件の変わりやすい媒体を経るので、潜水艦で無いものを誤認したり、ひどい場合には何もいないのに、潜水艦と認識してしまうケースが存在します。

 例に漏れず、戦時中の日本も米潜水艦の通商破壊や奇襲に苦しめられ本格的な潜水艦対策を迫られることになりました。その一つに空からの監視である「哨戒」がありました。水深20メートル程度までは空からの目視もしやすく、沿岸基地から航空機を飛ばし、爆雷(水中専用の爆弾)攻撃を加えるなどの対策が採られました。

 しかし、これは視界のいい海域でしかも日中に限られており、夜間や悪天候では目視など到底不可能でした。そこで考えられたのが、磁気探査という方法です。潜水艦は鋼鉄で作られているため、地磁気の影響で艦体が徐々に磁気を帯びてきます。この磁気を感知する装置を搭載して上空から探査すれば、視界の利かない悪条件でも潜水艦探知が可能となります。

 前口上が長くなりましたが、そのコンセプトで開発されたのが今回ご紹介する「東海」です。

 
 昭和17年7月、日本海軍は潜水艦攻撃を専門にした哨戒機の開発を渡辺製作所(後の九州飛行機)に指示しました。当時の軍用機に必ず求められた「スピード」と「爆弾搭載量」は無視され

 ・長時間、低速で飛行可能であること(航続時間は10時間ほど)
 ・急降下爆撃が可能であること

 この二つが開発条件とされました。運用目的から渡辺製作所の開発スタッフは以下の点を設計に盛り込みました。

 ・広い視界を得るため機首を大きなガラス張りとする。
 ・潜水艦発見時の意思伝達を早くするため、パイロット席と偵察員席を複列にした。
 ・海軍で開発された三式一号潜水艦磁気探知機「KMX」に連動した海面着色マーカー自動投弾装置を装備
 ・低馬力のエンジンを搭載して、長時間低速で飛べるようにした。

 開発は順調に進み、昭和18年9月には試作機が初飛行を迎えました。海軍のテスト飛行の結果、採用を揺るがすような目だった欠点は見られず小規模な改修の後、昭和20年1月に制式採用が決定しました。

 写真を見る限り、前面が大きくいかにも鈍重そうですが、当時の日本海軍機の中ではエレクトロニクス技術の塊といっていいほど、電子装備が充実した機体でした。東海の目玉とも言える電子装備にKMXと呼ばれた潜水艦磁気探知装置でした。

 KMXの原理は磁性体(磁気を帯びた物体)である潜水艦が通過することで、その一帯の地磁気が変化することを感知するという簡単なものです。しかし、潜水艦が通過することで生じる磁気の乱れは地磁気の数千分の1という小さなもので、技術的には困難なものであると考えられました。開発は東海設計に遅れて昭和17年秋に着手され、翌昭和18年の11月には制式採用されるという異例の開発スピードでした。1式陸攻の前機種、96式陸攻の哨戒任務で実用テストが繰り返され、東海への標準装備という運びになりました。


 実戦配備された東海は豊後水道や太平洋側沿岸、東シナ海など潜水艦被害の多い海域の哨戒作戦に動員され、1週間に7隻もの潜水艦を葬り去った戦果を挙げています。また潜行して水中停止したとしても、潜水艦が巨大な磁性体である以上KMXに検知されるため、洋上降伏に追い詰められた潜水艦も存在したと伝えられています。東海は米潜水艦部隊にとっては死神同然の天敵でしたが、この東海にも戦闘機という天敵が存在しました。潜水艦捜索のため、低速で洋上をゆっくり飛ぶ仕様は戦闘機にしてみれば絶好のカモでした。

 大戦末期には艦載機や沖縄からの陸上機の脅威にさらされ、東海の哨戒行動は完全に封じ込められました。しかし、対潜哨戒専用機の開発や航空機用磁気探知機の開発は当時の水準からすれば進んだ思想としてアメリカの技術調査団から賞賛されたことでしょう。

性能諸元     

 全長; 12.09m
 全幅;  16.00m
 全高;  4.12m
 正規全備重量; 5320kg
 エンジン; 日立「天風」三一型(GK2C)空冷星形9気筒 公称410馬力×2基
 最大速度; 322km/h 
  武装;  
7.7ミリ機銃×1もしくは20ミリ機銃×1 250キロ爆弾(対潜爆雷)×2など   



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