ああはならないからね!
小説トップへ/トップへ戻る
「だからさ!私がウリエルのを咥えればいいんだよ!」
癒しの天使ラファエルは、不穏な台詞を聞いて咄嗟に柱の陰に張りついた。
「口が塞がってれば、いくら気持ち良くてもラッパを吹けないでしょう?」
「ミカエル様、私の男性器などという下賎なものを口にされてはいけません。」
ラファエルは破壊天使のあまりと言えばあまりにも飾らない言葉に、ブフォッと噴き出し掛けて慌てて口を押さえた。
「何が下賎なんだよ!君を構成するものは何でも、私にとっては美味しいスイーツだよ!」
「男性器は菓子類とは味も材質も全く違います。」
心底この場を離れたかった。だけどこんな回廊で大声でこんな話をされて、天使かもっと悪いことに天部の誰かが通り掛かりでもしたらと思うと、心配で動くに動けない。
「だって…いっつも私ばっかり気持ちいいんだもん…。たまにはウリエルだって気持ち良くしてあげたいよ。」
「大丈夫です。ミカエル様との交尾においては、私も快感を得ております。」
「えー!?本当!?全然そういう風には見えないよ!」
ラファエルは顔を覆った。こんな二人がイエス様の筆頭護衛とは…。
「そうだ。ねえ、今まで頼みたくても頼めなかったんだけど…。今度口でしてくれない?」
「それは不可能です。」
「えっ?なんで!」
「ミカエル様の男性器を咥えて手で奉仕していては、クライマックスに達した時にラッパをお止めすることが出来ないではありませんか。」
ミカエルは輝かんばかりの微笑でそれに答えた。
「大丈夫。ウリエルが顔を上げて私を見ながらしてくれたら、ちゃんとラッパを吹く時が分かるからね。」
「そうですか。では次の機会に試みてみます。」
ミカエルは憂いに満ちた表情を見せた。
「次の機会だなんて…。今夜って言ってよ…。」
そして白い指をウリエルの顎に滑らせる。
「それとも、今でもいいよ…。」
もう知ったこっちゃない。ラファエルがふらふらとその場を離れようとすると、弾んだ声が聞こえた。
「ラファエル!こんなところに…」
ラファエルは間一髪のところでガブリエルの口を塞いだ。
「ラファエル、どーしたの…?あ、ミカエル様とウリエルだ!」
「しっ、見ちゃいけません。」
ラファエルはガブリエルの視界から二人を隠すようにしてその場を離れた。背後の声は甘ったるくなり、キスでも始めたような気配だ。
『…あんなんで本当に主は気づいていないのかなあ…。』
なるべく考えないようにしていることがまた頭をよぎり、ラファエルは頭を振った。今のところあの二人に雷は落ちていない。主にお任せしておけばいいことだ。
「主も大雑把だからなあ…。」
「ねー、何なの?何のこと!?」
ラファエルは傍迷惑な二人のことを頭から振り払いながら、精一杯の微笑を浮かべて見せた。
「天の階ほとりに、渡りの白鳥が来ていましたよ。一緒に見に行きましょう。」
「ええーっ!本当!?」
ぱあーっとガブリエルの顔に笑みが広がり、ラファエルも今度は自然に笑みが浮かぶのを感じた。
『やっぱりいいなあ、この子…。』
ガブリエルが弾むように歩きながら、腕に腕を絡めて来る。無邪気にはしゃぐ様子を見ながら、ラファエルは微笑した。
『今はまだこれでいいよ。』
いつかあの二人のような関係になるかもしれない。でも、今は一緒に歩いて、一緒に好きなものを見ているだけでいい。
『それに私達は…ああはならないからね!』
小説トップへ/トップへ戻る