こだわりの言霊  第8回 ハイヒールという靴は無い?
本日はハイヒールのお話でございます。

私はハイヒールが大好きですが、ハイヒールフェチではありません。
ハイヒールと言う靴単体よりも、ハイヒールを履いた女性、
という組み合わせでこそグッときます。

ツンと伸びたつま先と、ゆるやかな弧を描く足の甲は、
猫科の動物的しなやかさを感じさせ、非常に美しいものですが、
歩く上での機能性を考えれば、決して優れてはおらず、
歩く姿もどことなく不安定で、かろうじてバランスしているような
脆さを感じさせます。

見た目だけでなく、仕草に於いても女性を強く感じさせる靴である、
と言えるでしょう。

機能的に優れるからではなく、美しく装うために選ばれる靴。

ハイヒールを履くという事は、利便性よりも美しく華麗である事
を優先する事であり、それは「女のやせ我慢=心意気」なのだ、
と思います。

つまり、ハイヒールとは、気楽さ、手軽さ、だらしなさとは無縁の、
制服・スーツ等と同様の格調の高さ、気高さを感じさせるものであり、
それゆえ、ハイヒールを履いた女性というのは、非常に魅力的な
存在になるのだと思います。



ところで皆様は,ハイヒールと聞いてどんな靴を思い浮べるでしょうか?
殆どの方がこんな感じの靴を思い浮かべるのではありませんかな?



だがしかーしっ!ここでよーく考えていただきたいっ!
実は「ハイヒール」という靴は、無いのではありませんかな?皆様?

ハイヒールとは、つま先より踵を高く持ち上げた靴の形状の呼び名で、
踵が一定以上の高さならば何でもハイヒールなのですぞ。皆様。

つまり、「ハイヒールのブーツ」「ハイヒールのサンダル」等はあっても
単に「ハイヒール」という靴は存在しないはずなのです。

では、上の画像は何でしょうか?
これは「ハイヒールパンプス」です。皆様。「踵の高いパンプス」です。
女王様が履いているのも実は「パンプス」です。

「ああ。じょ、女王様・・・そのハイヒールで私を踏みつけてくださいませ」
「バカッ!ハイヒールなんて靴は無いのよっ!これはパンプスよっ!」
「ああああ、も、申し訳ありません女王さまああ」

ですが、私も含め、世間一般でハイヒールと言えば、通常はこの
ハイヒールパンプスの事を指すと思います。
本来、形状を現わす為の言葉が、特定の種類の靴の固有名詞に
なってしまっているのですな。

それほど、ハイヒールパンプスの姿形・佇まいが、他のハイヒールの
履物に比べ、より印象深く、美しいという事なのでしょう。

「では伯爵、これはハイヒールか?」

そうですな。ストラップパンプスのハイヒールですので、
いわゆるハイヒールでいいのではないでしょうかな。

「では伯爵、これはハイヒールか?」

一見サンダルっぽいですが、かろうじてかかと部分が残っているので、
上に同じですな。ただ、ここまで行くと、私の考えるハイヒールとは
だいぶ違いますな。

「ではこれは?」

これもハイヒールですな。バックストラップパンプスのハイヒール、
ということで。

「ならばこれはどうか?」

むむむ・・・これもハイヒールでしょうな。
かかとをホールドする構造である以上、サンダルではないので、
ハイヒールですな。あまり認めたくない感じですがね。

「では、これはどうか?」

上に同じ。ずいぶん履き心地が悪そうですが。

「はっはっはっ、引っかかったな伯爵!これはオブジェだ!」

引っ掛けてどうしようと言うのですかな?

「ではこれは?伯爵?」

おお、これぞまさに正統派のハイヒール・・・・
なわけあるかっ!なんじゃこりゃ!頭悪すぎ!

「ではこれはどうか?伯爵?」

いいかげんにしてください。

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