クリアが俺にした質問の中に、「なぜ生きるのか」という言葉があった。
眠りについたらそのまま、起きることなく死んでしまうのではないかと。
あの時俺は、クリアに言った。生きるというのは、多かれ少なかれ自己満足なんだと。とらえ方次第で、天国にも地獄にもなるって、そんな風な事を言った。
あれから暫く経ち、今、俺はお前の隣に居る。きっと物理的な距離だけじゃなくて、心も。あの時と今では、考え方や感じ方も変わった。
俺は今、死ぬのが怖い。すごく怖い。あの時だってきっと死ぬのは怖かったけれど、だって、守りたいものができてしまった。それはばあちゃんや蓮、旧住民区の人達に向ける愛情とは、似ているようで違う感情だった。お前が俺の中に作ったその感情は、すっかり俺を支配してしまっていた。それがなぜこんなに嬉しくて、心地良いんだろう。
お前の笑顔が、曇る事のないように。綺麗な身体が、汚れないように。辛い思いなんて、させないように。そのために、俺は何をするというのか。
ただのエゴだ。俺がそうしたいだけなのに、それを「守る」なんて言葉でしか言えない。お前を独占したいだけだ。胸が痛い。心が軋む。誰よりも綺麗なお前のそばにいる事を許された俺が、なんでこんなに欲張りなんだ。
それでも俺はお前を、守っていたい。例えこの想いがお前を、縛る事になっても。
「蒼葉さん……?」
眺めていた寝顔が、閉じていた瞼をゆっくりと上げた。
「クリア、俺は死ぬのが怖い」
「え?」
「だからそばにいてくれ」
せめて、俺が死ぬまで。
言葉にしようとしたら、涙になって落ちた。
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