予定通り、お互い満足するまでバスケをした後、火神が作った豪華な飯を一緒に食って、俺が買ってきたケーキを食べて(プレートに描かれた、ハッピーバースデー タイガ の文字に火神は恥ずかしいやつ、と言ったが、どう見ても嫌がってるようには見えなかった)、俺がケーキのなくなった皿から掬った生クリームを火神が舐めて、今に至る。
「ん、ん、ふ」
「……」
「んぷ、ん、れ」
指に乗った生クリームを綺麗に舐めとってからは、もう何もついていない指を火神はちゅぷちゅぷと吸っていた。頬を赤らめて、恥ずかしいくせにこんな事をする火神は、可愛いと思うし、愛しいとも思う。
俺にとっちゃ嬉しい限りだが、火神はこんな事をして嬉しいんだろうか。俺へのこんなサービスで、楽しんでいるんだろうか。
……美味そうにしてるし、いいか。
指を引き抜くと、ぬぽん、と音を立てた。火神の唾液でぬらぬら光る指を、俺も咥える。
「ん。火神、もう終わり」
「あっ……!お、俺の誕生日なんだから、好きにさせろよ!」
俺の予定が崩される良い予感にこっそりほくそ笑みながら、火神のされるがままになった。イレギュラーは大歓迎だ。
のしっと俺の膝に尻を置いた火神は、少し自棄気味に俺のシャツを脱がせて放り投げ、じっと裸を眺めていた。
「ん?」
「……お前、いー身体」
お前とあんまかわんねえと思うけどな。俺の身体をうっとり見ながら、ぺたぺたと触る。筋肉の溝をなぞるようにしてから、盛りあがった部分をくっくっと押す。
「なんだよ、くすぐってえ」
「俺のだから……全部」
そういう火神は、なぜか泣きそうな顔をしていた。ぺたっと手を当てられたのは、胸の心臓がある部分。生きているのを確かめているようにも思える。
そんな事を思って、そんな顔してたのかよ火神。今の今まで俺はお前のものじゃなかったとでも言うのか、悪い冗談だ。少し、自嘲気味に笑いがこぼれた。
「火神、誕生日おめでとう」
本日何回目かわからないその言葉に、火神がぐっと目を細めた。
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特別な日だからって、感じすぎるのは俺だって火神だって同じだ。いつもより締まりの良い後孔に、うっと呻く。こんなに締められたら全部入らねえよ。
「おい、あんま締めんな」
「……ん、だよ」
「あ?」
「嬉しいんだよっ……!」
そうならそうと早く口で言え、お前の後孔はこんなに正直なのに。
指でぐっと尻を割り開いて、腰に力をいれて性器を沈めていく。きつきつなのは入り口だけだから、亀頭を入れ込んでしまえば後は柔らかく迎えてくれる名器だ。腰が尻につくくらい全部を、火神の中に仕舞う。
「っく……あー、いい……」
「うああっ、青峰、あおみね、の」
火神が彷徨わせていた手を自分の腹に持って来て、下腹あたりを撫でる。さすさすと、まるで大事なものでも入っているみたいに。
「青峰ぇ」
何かを欲しがる火神は、いつもこんな顔をする。キスが欲しい、抱きしめて欲しい、抱いてほしい。普段から何が欲しいとか何がしたいとかあまり言わない火神は、俺とする事となると目と表情でよく喋る。
物欲しげな火神。そんな欲丸出しの表情に、心揺さぶられないわけがない。それに上気した頬や汗ばんだ肌、性的な涙が揃ったらどうなるのか。
まして、そのお願いが卑猥なものだったら。
「俺、誕生日、だから……これ、俺に、くれ」
俺は一体どうなってしまうのかを、今理解した。
「ひぃあっ!!」
血がのぼりすぎて頭がおかしくなる事ってあるんだなって何か冷静に思った。
いくらでもやる。くれてやる。お前のものなんだから。
無我夢中になってピストンしながら、ベッドの上でがくがくする火神を抱きしめる。火神を固定する事でより良いところを狙いやすくなって、中がぎゅっと締まった。必死に背中に縋りついた足が、俺を閉じ込めるようにぐいぐいと引き寄せる。
「おら、お前んだ、火神っ」
「ああっ、あっん、ほんと、か?」
キラキラ光る赤い目からぽろっと零れた涙が、頬を伝う。ああ火神、かわいい。涙を舌ですくい上げて、口に含んで飲み込んだ。
「お前以外の誰にやるか、よっ!ばかやろ」
「んくぅ!んああぁっ、嬉し……」
今更俺が、他の誰かを抱くとでも思ってるのか。俺はもうとっくにお前のものなのに。お前がもう、俺のものであるように。
奥の奥までねじ込んで、腰をぴったりとくっつけて射精する。腹の中で精液を吐き出す音が聞こえる気がして、びくびくする火神の腹を触っている手に手を重ねた。あったかい手と、あったかい腹。今この中に俺の精液が注がれているのだと思うと、嬉しくて、憎らしい。
「んあ、あ……出て……」
うっとりと火神が俺の、と言ったのを聞き逃さなかった。中の俺の性器にだろうか、それとも出した精液にだろうか。それとも死んでしまう精子たちに?どれにしろ、俺のが急速に回復するのには時間はかからなかった。
「ふぅっ!お、おっき……!」
「今日は誕生日で、これはお前のもんだからな。倒れるまであんあん鳴かせてやるよ」
「あっ……おみねぇ」
期待に満ち溢れた顔しやがって。
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ガンガン突きまくって、三回目から中出しの回数を数えるのをやめた。いつもならもう意識を飛ばしているところだが、今日の火神はそんな事もなくずっと快楽に溺れ続けてもがいている。この時間を終わらせたくないと思っているのか、それとも無意識なのか後孔は締めつけを緩めず精液を搾り取った。
異様な熱気と疲れで俺の意識も朦朧としてきたところで、がくん、と突然火神が意識を飛ばした。
「ん、火神」
呼びかけて、頬を軽く叩いても反応しない。それでもまだ火神の後孔は食いしばって俺の性器をしゃぶっていた。その締め付けにぶるっと身体が震えてて、また射精する。
さすがの俺も疲れた。性器をどうにか引き抜き、火神の横に寝ころぶ。気絶した火神の頬に残る涙の跡。ここを流れたいくつが性的なもので、いくつが本当の喜びだったのか。
俺のものになれって言ったって事は、それまで俺が、お前のものだと思っていなかったのと同義だ。
俺の気持ちを疑っている、わけではないだろう。それでも、離れていくなと泣き付かれたようなセックスだった。俺の頭ん中をぐちゃぐちゃにした本人は、今俺の腕の中で泣き疲れて眠っている。
「……独占欲か?」
俺はお前のものなのに。
火神は答えなかった。
20130802
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