火神と付き合って、初めてのクリスマスが来た。
はあ、と吐くと白くなる息を見ながら、火神の家への道を急ぐ。すれ違う人に変な目で見られないようにしようと思っても、自然と足が弾んで、マフラーに隠している顔がにやけてしまう。
今日は火神と二人でクリスマス。これが喜ばずにいられるだろうか。また緩んでしまう口をむにゃむにゃと誤魔化す。今日はまた、一段と寒い。早く火神の家に着いて、あったまりたい。身も心も。
きっと火神は、満面の笑顔と、温かい料理で俺を迎えてくれるだろう。あいつの事だから、皿に山盛りごちそうを作ってくれてるに違いない。それを二人で食って、それから。
手に持った袋をちらっと見て、またワクワクと気持ちが沸き上がってくる。
火神の家はもうすぐだ。
「青峰!早く上がれよっ」
「おう」
やっぱり火神は、星でも飛びそうなほどの笑顔で迎えてくれた。想像よりもずっと、なんつーか、かわいい。空調の温度だけじゃない暖かさに、冷えた指や耳がじわっとする。
いつものように、火神が俺の頬に手を添えてちゅっと軽いキスをした。最近するようになった、火神の家限定挨拶だ。
「いー匂いすんな」
「当たり前だろ、お前が来る時間にあわせて作ったんだから」
エプロン着けたまんまの後ろ姿を見て、もし火神を嫁さんにもらったらこんな感じなんだろうかと思う。思わず後ろから飛びつきたくなった。だめだ、落ち着け。
テーブルの上は、案の定山盛りの料理たちが並べられていた。それぞれがいい匂いをさせて、早く食べてくれと言っているみたいだ。堪えていた腹が、ぐうと音を立てる。
「腹減った」
「はは、すぐ食べようぜ」
「その前にこれ、土産」
袋を差し出すと、火神がガサガサと音を立てて袋の中身を取り出す。家から持ってきた、子供用のシャンパンだ。
「お!シャンパンだ」
「クリスマスだしな、食後に飲もうぜ」
「ん、ありがとな」
実は、シャンパンに、ちょっとしたサプライズ。秘密は開けてからの、いや飲んでからのお楽しみだ。
いつもは俺専用の箸が出してあるテーブルには、今日はナイフとフォークが置いてある。
「この鳥、すげー美味いぜ。いい焼き加減でできたし」
火神が鳥を切るのを見ながら、器用な指先を見た後、甲斐甲斐しく皿にとり分ける火神を見つめる。
「なんだよ」
「クリスマス、火神と過ごせて幸せだなって」
「!」
ぽんっと赤くなる火神。いつまでも純な所も、かわいいと思ってしまう。ずっとそのままでいてほしい。
「……ぉ」
「ん?」
「ぉ、俺も……青峰と過ごせて、嬉しい……あーもう、食うぞ!いただきます!」
笑いながら俺も、いただきます、と言った。
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「ごちそうさまー、あー食った」
「ごちそうさま」
手を合わせた後、すぐに食器をシンクに持って行く火神に続く。洗い物を始めた火神に、食器を渡す。
「ん、さんきゅ。座ってろよ」
「おう」
火神にテーブルの上の食器を全て渡し終えてから、俺はソファに移って、テレビをつけた。クリスマスだからか特番ばっかで、俺がいつも見てるテレビもやってなくてつまんねー。つか、あんまりテレビの内容が頭に入ってこない。
早く、早くシャンパンを火神と飲みたい。やっぱり片づけだけじゃなくて、洗い物も手伝えばよかっただろうか。
俺が、こんなにそわそわしてしまうのには、ちゃんと理由がある。俺が火神に用意したサプライズとは、なんなのか。
「青峰、お待たせ」
「か、火神!」
「ん?」
「シャンパン、飲もうぜ」
「そうだな、忘れるとこだった」
ワイングラスはねーから、と言って出してくれた、綺麗な細工のグラスに、しゅわしゅわとシャンパンが注がれていく。
「お、子供用のシャンパンでも綺麗な泡が出るもんだな」
「おー……そうだなー……」
悪い火神。どうしても、酔ったお前が見てみたいんだ。
俺が持ってきた、サンタのイラストが書かれた子供用シャンパンの瓶の中身は、わざわざ家で入れ替えてきたアルコール入りの大人用シャンパンだ。今頃家族が甘いシャンパンを飲んで文句を言っているかもしれないが、そんな事はどうでもよかった。
「はい、いただきます」
「いただきまーす……」
匂いで気づかれるかと思ったが、そんな事もなく、火神はゴクゴクとシャンパンを飲んだ。あんなに飲んで大丈夫なのか?様子を伺ってしまう俺に気づかず飲んでる。
火神に続いて俺も、シャンパンに口を付けた。
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「……火神?」
「……」
……えーと。さっきから頭を下げたまま、反応しない。コップの半分位のシャンパンを飲んでから、ずっとこの調子だ。
もしかして、体調でも悪くなったんだろうか。ひやっとしたものが背中を走る。何してんだ俺、火神が倒れたら意味ないだろ!
「火神、大丈夫か?体調悪いのか?トイレに」
言葉の途中で、がばっと顔を上げた。ほっと安心しかけた所で、突然火神の顔が近づいてくる。
ちゅっと、鼻の横辺りに柔らかいものが触れた。
「ん〜……おまえが、よけるから、くちびるにキス、できねぇじゃん〜」
俺はよけてない。いや、そんな事はどうでもいい。今度は顔をしっかり持たれて、ちゅうっと唇を啄まれた。おお、おお、おう。なんだこの状況は。俺の目の前で、火神の睫が揺れる。
赤い顔の中、頬が特に赤い。目尻がとろんととろけて、うっとりと俺を見ていた。
容赦なく顔中にキスをされ、唇をねっとりと舐められて、顔が離れる。おまけだとでもいうように、至近距離の火神が、ぺろっと自分の唇を舐めた。
「んふふふ、あおみね」
大成功ー!
心の中で、いくつものクラッカーが鳴り響いた。火神はお酒が入ると、エロくなる。心に深く刻み込んでおこう。
「なぁに、考えてんだぁ?」
「な、なんも考えてねーよ」
「ほんとか?まーぁいいやぁ」
俺の胡座に乗りあがる火神。あー、張りのある腿の感触が。普段エッチの最中でも、なかなか膝に座らないくせに。とりあえずズボン越しに足を触りまくっておく。
「ん、さ、触んのか?」
「は?」
「なら、脱ぐぅ」
なんてこった。足を触る俺の為に、火神が俺の膝の上でズボンを脱いでくれた。マジこれ夢じゃね?夢でもいい、なら存分に楽しまねーと損だろ。
裸の足で俺の上に座りなおした火神の、足を伝って、今度は尻を思う存分揉む。
「ふ、あああ〜っ、もぉ」
尻を揉まれて、火神は怒るどころか嬉しそうだ。ふわふわした顔で、俺の首に腕を回して、手を拒みさえしない。ぎゅっと弾力のある尻たぶを掴んでから、割れ目を下着の上からするすると刺激する。
「ん〜あ、あっ、だめ、あおみえぇっ」
「ふふふ……」
いけね、変態みたいな笑い方してたぞ今。いやいや首を振る火神が、すんげえかわいくてついイタズラをしているような気持ちになってしまった。
これは違う。だって今の火神は、完全に合意だ。俺の火神は、口ではいやだだめだと言っても、本気で拒んだりしない。
「ん?」
気づいたら、火神の尻を俺の勃起した性器にズボン越しに擦りつけてしまっていた。
「火神、コレ欲しいか」
「うん」
こくん、と素直に頷く。目の前がぐらつくほど、エロい。
「なら、お前が慣らしてくれ」
またこくん、と頷いた。
足をさすっていた手を離して好きにさせてみる。こっからは、じっくり観察だ。酔っぱらってリミッターの外れた火神が何をするか、楽しみで仕方がない。
火神は、おぼつかない手つきでまずズボンのファスナーを下げる。もう勃起してしまっているから、ちょっと苦戦していた。やっとの事でファスナーを下げると、盛り上がった下着をじっと見つめる。
「火神?」
「んぁ……」
「っ!?」
火神は、布越しに俺の性器をやわく噛みはじめた。なんだそれ、なんだその技は。とりあえず俺のをイかせて濡らすにしても、このままでは下着の中で出してしまう。
ぱにくった俺の不安をよそに、火神はうっとりした顔で俺の性器をなおもはむはむと歯で挟む。力を入れないから、逆に焦れったくて、どんどん気持ちよくなっていく。
酔った火神は、エロいうえにテクまで身に付くのか。そんなの聞いていない。
「か、がみ、出ちまうっ……!」
「らひてぇ」
布越しにれろーっと性器を舐められて、もうダメだった。びゅるっと精液を吐き出しながら、息を詰める。我慢を伴った射精は、とんでもなく気持ちよかった。
「は、は、はぁー……オイ火神、どうしてくれんだ」
「ん」
火神は、突然ずるんっと俺のぬるぬるになった下着をズボンごと一気にずらした。ん、じゃねえよ!
「は?!」
「これ、で……」
脱がした俺の精液まみれのパンツ。を、掴んで。火神は、すげー事をし始めた。
「んんっ……あぁっ、にゅるって、するぅ、あぅっ」
こしゅ、こしゅ、という布が肌に擦れる音と、ぬぷぬぷとぬるついた何かが出入りする音。俺のパンツを尻につっこんで、パンツに付いた精液で、慣らしている。自分で慣らせとは言ったが、そこまでしろとは言ってない。
ガッと血圧が上がった気がした。火神、酒が入ったからって、そんな事しちまうのか。そんなやべえ事、できんのか。
俺が呆然としている間も、異様な音は続く。
「あ、あ、あおみねの、ぱんつ、で……っ」
まさか火神。俺のパンツで気持ちよくなって、ケツオナニーまでしてんのかよ。
恍惚とした顔、早くなる手つき。間違いなかった。
俺の中で、何かがボキっと音を立てて折れた。俺の、ほんの少し残った理性だったかもしれない。
「っひ?!」
俺の方を向いていた火神の腕をこっちにひっぱり、飛び込んできた身体の尻を掴む。ビキビキに勃起した性器を、俺のパンツオナニーで柔らかくなったそこに突き刺してやった。
ずぷぅっと、すごい音がした。
「はぁああっ!」
突然の挿入に、火神は矯声をあげて髪を振り乱す。
「仕返しだっ……すげ、あちぃっ……!」
「んうあああ、あぁあんっ」
締め付けや柔らかさはいつものままで、中の肉が妙に熱を持っている気がする。知り尽くした火神の良いところを、わざと亀頭でごりごりと押しつぶしてやる。
火神が喉を反り返らせて、恥なんて忘れて喘ぐ。酒って、すっげえ。
「そこばっか、い、いあぁあんっ、ひうううっ!」
ぎゅうっと後孔が俺の性器を絞る。
「んだよ、よく、ねーの?」
「んんっ!い、いい、いいからぁ、だから、もっと、もっとしてくれよぉっ」
火神も、自分から俺の動きに合わせて腰を動かしはじめた。いい、いい、もっととうわ言のように喚きながら、俺の上で踊る。
体中の汗腺から汗が吹き出して、熱くて浮かれていて、俺までおかしくなってしまいそうだ。
「い、いい、あおみねぇ、かたくて、すごぉっ!んああああっ」
「俺も、いいぜっ……うっ」
「う、うあ、あ、あああっ」
火神が、全身汗みずくになりながら口から涎を垂らしている。完璧に理性なんて失ってしまっている乱れっぷりに、俺も限界だった。
今日の火神を、俺は一生忘れないだろう。いろんな意味でだ。
ごんっとぶつけるように突き上げてから、思い切り射精する。本当の意味で全身でぶつかったセックスのおかげで、精液が止まらないんじゃないかと思うほど出た。
「お、おうっ……」
「うくっ!あ、あ、あああーっ」
俺の精液を奥に受け止めて、獣のように鳴いた後、糸が切れたように俺に倒れ込んでくる。顔をみると、どうやら気を失ったらしい。そりゃそうだ、俺も死ぬかと思うくらい激しいセックスだったもんな。
俺もぐったりしたまま火神を抱きしめていると、そのうちすうすうと寝息が聞こえる。
「火神、寝たのか」
「……」
返事はなかった。
まだまだ終わらないクリスマスの夜。俺は火神を抱え上げて、鼻歌を歌いながら風呂場に向かった。
20130220
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