「今日は部活ありませんよ、青峰さん」
「は?」
良が、やっぱり、という顔をして俺を見る。
たりい授業が終わっていつものように体育館に行くと、聞きなれないボールの音が聞こえた。扉を開けてみれば、バレー部が全てのポールを上げ網を張り、サーブを打ち合っている。さっきから聞こえる違うボールの音はこれか、と思いつつ周りをみても、当然バレー部しかいない。状況を飲み込めない俺を良が見つけ、冒頭に戻る。
「昨日、今日バレー部がうちの体育館で試合するから部活なしだって言ってたの、聞いてました?」
「や、聞いてねえ」
「やっぱり……」
良ががくっと肩を落とした。多分良は俺がなんにも知らずに体育館に行くのを見たんだろう。ったく苦労人なやつだな。それにしても全く記憶にない。
多分アレだ、昨日火神と連絡取り合ってた時に明日部活終わりに泊まりに行く約束して、そんで浮かれてたからだ。誰の話も全く耳に入ってこなかった。バスケはあれだ、本能ってやつだ。
「走り込みとかもナシかよ」
「はい。帰って身体を休めるようにって……そういう事なので、僕も帰ります」
「おう。じゃーな」
そそくさと帰る良を目だけで見送ってから、くるっと体育館に向き直る。
さて、つまり部活がない以上俺がここにいてもしょうがないわけだ。とるべき行動はひとつ。
「俺も帰るか」
もちろん、火神の家に。
予定より早く火神の家に行けるのが、心から嬉しい。合い鍵を持ってるから、火神がいればそのまま入ればいいし、いなければ入って待っていればいい。
火神は、今日はオフだと言っていた。少しでも早く、火神と会える。
駅への道を急いだ。
電車や信号もスムーズにクリアして、いつも掛かる時間より早く火神の家に着いた。どんだけだ俺と自分であきれつつ、インターホンは押さず合い鍵を穴に通す。当然ドアが開いた。
「ただいま」
火神はいつも俺が合い鍵で家に入り、ただいま、というと、嬉しそうにお帰り、と迎えてくれる。けれど、返事はなかった。
まだ帰ってないのかと思ったが、電気は点いてる。って事は、寝室で寝てるか、何かに集中してるかだ。珍しい事じゃない。
フローリングの廊下を歩いて寝室のドアの前まで行き、いつものようにドアノブをひねろうとした、その時だった。わずかに開いたドアの隙間から聞こえた音が、俺を固まらせた。
「ん、んっ……ぁっ」
は!?
叫びそうになった口を、とっさに押さえる。今、妙にエロい声が聞こえたような……こんな寝言あるかよ。どう聞いたってあえぎ声だろ。
落ち着け落ち着け考えろ、俺は青峰だ、青峰大輝様だ。今までどんな障害物だって軽々と飛び越えてきただろ。どうするのが最良か、考えろ。
「あ、く、ぅ……っ」
火神の声のせいで、考えがまとまらねえ。体中から汗が吹き出した。火神のあえぎ声に反応しすぎだろ俺の身体。なんだこの手汗。
とにかくこの状況から察するに、火神は今、寝室で、一人でオナニーしてんだ。まさか浮気かと思ったが、火神以外の声も呼吸も聞こえない。オナニーが途切れないところを見ると、俺がここにいる事には、まだ気づいてない。
恋人同士なんだ、からかうみたいにして入っていけばいいんだ。なのに、俺の足が動かない。だって、始めてだ。火神のオナニー中の声が、聞けるなんて。
もっと聞きたいと思ってる。心臓がバクバクしてうるさい。
「あぁっ、んっ!ぁ……っ」
火神はオナニーん時、結構声出すんだな。本当は、その姿も見たい。
きつくなってきた前のファスナーをゆっくり下ろそうとした。
「あ、あ!あ、おみねぇ……」
待て。
今、青峰って言わなかったか。思わず手が止まる。まるで確かめるように、ぴたっと身体が動かなくなる。全神経を耳に集中させた。
「あ、おみね、青峰っ……ん、ぁっ」
火神、俺でオナニーしてやがんのか。
今ならかつてない速さで動ける。そんな直感
が俺を襲い、邪魔なドアを弾きとばした。メリとかグシャとか音がしたがあんまり覚えてない。
「ひっ……?!」
見慣れたベッドの上には、確かに火神がいた。
頬を紅潮させ、目を潤ませて、パンツとズボンをずらして。こっちを見て、ぼっと火がついたように身体の赤みが増す。ばっと手で股間を隠した。
「え、青峰?!え、部活、で、え、あっ!俺、ちが、違うこれは違くてっ」
何言ってんのか全くわかんねえ。悪いが今の俺にはおまえの言葉を解読してやる余裕がねえ。火神がベッドで、俺でオナニーをしていた。俺の理性を焼き切るには十分だ。
ベッドまでつかつか歩み寄り、ガバッと火神にベッドに乗り上げた。
「え、あっ!悪気があったんじゃなくて、その、今日、雑誌っ!」
必死でもがくようにする火神の手を掴み上げる。現れた火神のそれはもうしっかりと上を向いて先走りを垂らしていて、いくまであと一歩って感じだ。
いかせてえ。ってか、いくとこが見てえ。見せろ。
自分のチャックを下ろし、飛び出てきた性器を火神のに遠慮なく腰を振って擦りつける。
「あ、あっう!んっ、青峰、や、何ぃっ、え、んっ!」
ぐじゅ、ぐじゅ、と先端同士が擦れて、精液が混ざり、それをまた竿に塗り付けるように擦り合う。俺の目測通り、火神の限界は早かった。
「おま、あっ、もしかして、怒ってっ……あ、あーーーっ!!」
びゅるっと、火神の性器から精液が吹き出した。何度も見ているはずなのに、火神がイく時の顔の色気は壮絶で、俺もそれをオカズに数回性器を擦り、火神の腹の上に散った精液に混ぜるように射精した。ああ、すっげ、イイ。
「うく、う、うっ……」
ぱた、ぱた、と落ちる精液に火神がびくびくと身体を揺らす。なぜか火神は顔を隠して、呻いている。
「ごめっ……ごめん、あ、青峰ぇ」
火神が何を言っているのか分からないまま、逆上せたような頭を総動員させて、性器をずるっと下に移動させ、とっかかりをさがす。今の俺はもう、ただのけだものだ。次は火神の中につっこんで、ゴリゴリに擦って、出す事しか考えられない。
俺をこうしたのはお前自身だ、火神。
「……れ、俺、下も、ご、ごめんっ……ごめん」
先端が、窄まりの皺に触れた。ここだ。ここが俺の突っ込む場所。すげー気持ち良くて、火神も気持ちよくなる場所。
ふー、ふーと本気で獣みたいな自分の息づかいを、他人のもののように聞いていた。
「ごめ、んあっ、あ、ああああっ……!」
ぐっと腰に力を入れて押し進むと、火神の後孔は容易く口を開き、俺を受け入れた。うねうねとうねる中をかきわけ、しっかりと奥まで刺し込むと、突き出たカリをきゅうっと吸われる。
「んひぃっ!」
一気に限界まで引き抜く。引いた時の、ぎゅうっと収縮する感じがたまらなくいい。亀頭を含ませたまま、今度はぱんっと音がする勢いで突っ込む。そのまま、うちつけるようにして動く。
「はひっ、あ、あっ、ごめ、ん、あっ、ひっ」
汗が目に入ってきて、思わず目をつむる。だめだ、目を瞑ったら、火神の顔が見えなくなる。
まさに、快楽を貪るセックス。突っ込めれば誰でもいいわけじゃない。火神だからこそ、こんなに興奮するし、気持ちいい。
さっきからドクドクと聞こえるのは、俺の心臓か、それとも体中をすげー勢いで血が巡ってる音なのか。死ぬんじゃねえか、俺。
「あ、ああっ!あ、ん、あぁう!ごめ、ん、青峰ええっ、あーっ」
自分本位すぎるセックスの中で、とりあえず火神が喘いでる事だけを確認した。て事は、火神もイイって事だな。よし、続ける。
俺と火神が繋がった部分からぐぷっぐじゅっとエロい音がとどまらず鳴る。たんたんと俺の腰と火神の尻が汗だくで当たる音もする。どっちも火神の喘ぎと合わさって、俺の耳を満足させた。
「んあ、い、いく、いくぅっ!青峰っ」
イけ、イけよ火神。イきまくって、中をもっと締め付けて、俺をイかせろ。狙いを定めて、火神の前立腺をわざとぐりぐりと押しつぶしてやる。
「ひああ!あ、ああああーっ……!」
また火神が精液を吐き出すと同時に、中がぎゅううっと俺を食い締める。う、お、俺もいく。足の指先から頭のてっぺんまでブルブルっと震えた。すげえ感覚が襲い、それが俺の性器を伝って出ていく。火神の中へ。
「うあああーっ!あ、あっあー」
ビュービューと止まらない射精。ぬくぬくと、火神の奥の奥に吐き出す。頭がおかしくなりそうな程、いい。
全部吐き出し終えた後、ヒートアップしたせいで疲れた俺は、火神の上に倒れ込んだ。
「たまんねー……」
下にある身体を、そっと抱きしめた。
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暫く二人してはあはあ言っていたら、熱も冷めてきて、頭も元に戻ってくる。すると、火神の目に涙の跡がある事に気づいた。
「お前、泣いてたのか」
「っ……」
またじわ、と涙を溜める。ちょっとやりすぎたかと思ったが、そんなによかったんだろうか。火神の恋人冥利に尽きるぜ、と胸をキュンとさせる。
「青峰、怒ったんだろ」
「は?」
とぼけた声が出た。なんでだ、どうしたらそうなるんだよ。そう聞くと、
「だって、俺が今日黒子からもらってきた雑誌に写ってたお前でオナニーしてたから、それで怒って、あんな……」
「あ?だからってなんで怒んだよ。」
「……」
てか、雑誌の俺見てオナニーしてたのか。よく見まわせば、ベッドの隅に俺がインタビューを受けた雑誌が転がっている。
涙の溜まった赤い瞳が、じっと俺を見る。あ、さっきの顔思い出すな、その顔。
「お前、何も言わねーし、怖かったし……キス、してくんなかったから……」
「……」
「ん?!ん、んーっ」
火神に覆い被さって、むちゃくちゃにキスしてやる。
ご希望ならいくらでも、俺の可愛い火神。
20140414
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