目を覚ますと、あたりはまだ真っ暗だった。裸のままシーツに包まれた体がふわふわしていて、気だるくて、あたたかい。セックスの後はいつもこんな感じだ。
またセックスの途中で気絶してしまったんだろう。自分を包むようにして、頭の下に敷かれた片腕と肩を抱く片腕に、ふっと安心する。背中にくっついた胸と、後ろから感じる吐息は安らかだ。ぐっすり眠っているんだろう。
腕枕は血の巡りが悪くなるからやめろと言っているのに、やめようとしないこいつが愛しい。やっぱりどんな形でも自分を愛してくれるのは嬉しいと思う。眠たいけれどもう少し、この胸に甘えていてもいいだろう。あたたかさにくっついて、まどろんで、幸せに眠ってしまいたい。
身体の向きを変えようとして、違和感に気づく。先ほどまで使われて感覚が鈍った尻に、埋まっている何か。
それが何かはすぐに分かった。こいつ、入れたまま寝てやがる……!
「っじらんねぇ……」
青峰の行動はさっきまでの自分の気分を一気に塗り替えてくれた。
萎えてはいるようだが、栓をするようにずっぽりと埋められているのは青峰の性器だ。ほんの数時間前に自分を翻弄していたそれがまだ居座っている事実に、思わずあきれた笑みがこぼれる。こいつ何考えてんだ。
中に出されている感じはない。ゴムもしているようだが、使用済みのようなあたたかさでもない。どうやら青峰は、俺が気絶してから一度性器を抜き、使用済コンドームを外し、新しいコンドームをつけてからまた入れ直して眠ったようだ。いやほんとにこいつ何考えてんだ。
青峰は今回みたいに、時たま変態じみた事をしたがる。なんにでも興味がある年頃なのは俺もそうだし分からなくもないけれど、やられるのは俺なんだから勘弁してほしい。それを強く拒めない俺も俺か。なんだかへこんだ。
とりあえず、入れたままなのは気持ち悪いし、このままじゃ二度寝もできない。だからといってバカ正直に青峰を起こして抜いてと頼めば、第二ラウンドに進んでしまうのは確実だろう。自分でどうにかして抜くしかない。
仕方なくゆっくり尻を上にずらして、抜いていく。青峰が寝ているし腕を回されているから少しずつしか動けないけれど、この方法なら時間がかかっても抜けそうだ。
ず、ず、となるべく中に刺激を与えないようにしながら腰を上げる。青峰のやつ、起きたら殴る。絶対にだ。
けれどあと少し、というところで腰が止まってしまった。
「ひっぅ」
青峰の亀頭が、ちょうどよく前立腺を擦った。思わず声を上げそうになって、手で口を塞ぐ。というか、なんか青峰の、大きくなってねえか?
じわじわと抜いていたのがいけなかったのだろうか。青峰の性器は確かに反応し、先ほどよりも大きく、硬くなっている。
「う、ぅ……ん」
正直、たまらない。もどかしくて、少しでも気を抜いたら腰を揺らしてしまいそうだ。本当はもっと力強く、いつものように、青峰に前立腺を擦ってほしい。そんな気持ちがむくむくと湧き上がる。青峰に抱かれ続けた身体は、簡単に青峰を欲しがるから困る。
気付けば、すっかり反応してしまっている自分の性器に泣きたくなった。とっとと抜きたいのに、一気に引き抜きなんてしたらもっと感じて締め付けてしまう。どうしたらいいんだ。
とにかく我慢して、早く抜いてしまうしかない。ここからは俺の根性の見せどころだ。
「抜、かね、と……う、ぁっ」
前立腺にひっかかる張りを精一杯気にしないようにしながら、口を手でおさえてまた尻を上にゆっくりずらすのを再開する。早く、早く抜かないと。
ぬぽんっと性器が抜け、やった、と思ったところで、俺を包んでいた腕にぐっと引き寄せられる。
「なーにやってんだ、エロ火神」
「え、エロはテメーだろうが!入れたまんま寝やがって信じらんねえ!」
「あーそういう事か」
がばっと起きあがった青峰が俺の肩をぐっとベッドに押しつけ、腰を上げさせる。気づいた時にはもう遅かった。
「もう一回してほしいんだな」
「うあぁっ……!」
せっかく抜いた性器が、ずぶずぶと挿入された。さっきの奮闘で緩んでしまった俺の後孔は、簡単に青峰の性器を飲み込んでしまう。驚き跳ねた腰を撫でられ、耳の後ろをねっとりと舐められ、耳元で囁かれる。
「起こしてくれればいくらでも付き合ってやるのに、つれねーなぁ〜」
「あ、いぁっ!っかやろっ……ひ、」
遠慮なく敏感になった中を擦られて、身体に力が入らない。そんな俺の腰を掴んで、上から突き刺すようにぐちゃぐちゃと犯される。やめろと言いたいのに、こいつに何度も抱かれた身体は全然思い通りになってくれない。欲しがっていたものを与えられて、快楽に溺れたがっている。
気持ちいい。求めていたのはこれ、だ。
「あ、あうっ……!く、ぅっ」
「じゃあ俺も、今度寝てるお前犯して……いや、それじゃ声が聞けねえな」
「ひぁ、あ!い、くっ」
「やっぱ二人ですんのが一番だろっ」
「あ、あーーーっ……」
待ちわびた刺激に、限界は早かった。ずぶっと奥を突かれて、達してしまう。
こうなったのは一体誰のせいだと思いながら、どろどろとした意識を手放した。
20130616
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