サラダを小分けにしていると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。耳元でふっと笑った後、頬にキスをされる。
「何やってんの」
「アオミネさんがご飯食べない日もあるって聞いたからサラダ作った。これなら冷凍しといて食べたいときに容器ひとつレンジであっためればすぐ食えるし」
「あーー……」
アオミネさんが、俺の肩に顔をぐりぐりと押しつけるのを止めもせずに菜箸でちょっと見た目を整えてから、容器の蓋をしていく。
この家に初めて来た時、キッチンの綺麗さにびっくりした。ムラサキバラさんといいアオミネさんといい、俺を指名する客は料理しない人ばっかりだ。だから、相手が許してくれるようなら料理させてもらってる。料理する事自体は好きだしな。
「カガミ、結婚しようぜ」
「そういう冗談好きじゃねえ」
「なんでだよ、絶対幸せにすっからさぁ」
リアリティのない冗談だ。アオミネさんはよく俺に結婚しようとか嫁に来いとか言うけど、所詮はセックスまでの気分を盛り上げるためなんだって分かってるからまともに返事をする気にもならない。というか客のほとんどが俺に似たような事言ってくんだけどなんなんだよ。
さっきから俺にすり付けてくるアオミネさんの下半身が、硬くなってきてる。そっちに気を取られないように洗い物をしようとしても、期待に口の中が乾いてきた。
「じゃ、今はカガミの事かわいがって我慢すっかな」
「んあぁっ」
ズボンの上からぐいっと尻の割れ目を開かれる。布越しに穴を擦られて、膝が震えた。
「あ、アオミネさん……」
「カガミ……」
アオミネさんが俺のズボンを下ろそうとした、その時だった。
ピンポーン、と部屋に響く、インターホンの音。誰か来た事を告げるそれに、俺もアオミネさんも動きが止まる。俺がどうするのか伺うようにアオミネさんを見ると、アオミネさんは玄関に続く廊下の方をじっと睨んでいた。その間も、チャイムの音は鳴り止まない。というかうるさい。かなりしつこい。
「どこのどいつだ、殺す」
「ひゃっ」
やりかねない顔をしたアオミネさんは、俺に不意打ちのキスをしてから玄関へ向かった。気持ちいい事を待ちわびていた俺は、思わずキッチンの縁に掴まってがくんと膝を折ってしまう。
身体にこもった熱を逃がした後。しつこい勧誘だったら俺も協力しようかと思って、玄関の声が聞こえる程度の場所まで、廊下に近づく。どんなに慣れていようが俺はデリヘルだ、お客様の迷惑にはなっちゃいけない。姿を見られないように、気をつけて。
「……で、……帰れ。……」
「そんなっ…………っスよ!……っち!」
ふと。
アオミネさんが話している声と口調に、聞き覚えがある気がした。もうちょっと、近づいてみる。
「お前の相手してる暇ねーんだよ。今恋人きてっから忙しい。突然くんな」
「恋人?!アオミネっちいつのまにそんな人できたんスか!見たいっスー!」
「キセさん?!」
しまった。びっくりして思わず廊下に飛び出してしまった。そこにはやっぱり、俺のよく知ったお客様であるキセさんが立っていた。
「か、か、カガミっちーーー!!!」
ぱあああああっと輝かんばかりの笑顔のキセさんが、アオミネさんを押し退けて走ってきた。呆けた俺とアオミネさんを置いて、ぎゅうっと抱きしめられる。
「カガミっち!こんな所で会えるなんて夢みたいっス!俺次の指名まで会えないって寂しくて死にそうだったんスよー!」
「え、えーっと、キセさ」
ハイになってしまっているせいか俺の言葉なんて全く耳に入ってない様子で、キセさんは俺に顔を近づけてきた。綺麗な顔がアップになって、思わず怯む。
「ああ、キスさせて、カガミっちぐえっ」
「すんなタコ」
もうすぐ唇が付くってところで、キセさんが遠ざかった。キセさんの首根っこをひっつかんだアオミネさんが青筋を浮かせて怒ってて、ちょっと怖い。てか、相当怒ってる。
キセさんをぽいっと投げた後、アオミネさんが俺を抱き寄せた。今度はアオミネさんの顔のアップだ。
「どういう事だ、説明しろカガミ」
「あ、キセさんもアオミネさんと同じで、俺の客で、指名してもらってて……二人が知り合いだって、知らなかった」
「俺もだぜ。まさか、キセと穴兄弟だったとはな」
アオミネさんがぺっと吐き捨てるように言って、キセさんを睨んだ。キセさんが、今度は俺の後ろに回ってぐっと引き寄せられる。上半身はキセさんに、腰から下はアオミネさんにくっついていて、ちょっと身体が痛い。
「俺だって知らなかったっスよ!つーかカガミっちの事恋人だなんて、厚かましいっス」
「あ?カガミは俺のだ。邪魔してねーでとっとと帰れよオラ」
「いーや!今日ここにカガミっちがいるなら、帰るわけにはいかねーっス!」
なにやら二人が俺を挟んで俺の事でモメはじめた。なんだこれ、よくテレビで聞くしゅらばってやつか?止めないとまずいんじゃね?てか、変な体勢で苦しい。
「ちょ、ま、待てって!ください!」
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「カガミがどうしてもって言うからだからな」
「まあ、カガミっちがそう言うならしょうがないっス」
「……」
で、俺とアオミネさんとキセさんは、三人そろってアオミネさんの部屋のベッドの上にいた。大きなベッドなので、男三人乗ってもびくともしない、けれど。
「な、なんで……?」
聞きたくもなる。
俺はシャツ一枚にされて、後ろからアオミネさんに抱きしめられ、寝転がったキセさんの顔の上に跨っていた。下を見ると、キセさんの身体が俺の股から伸びている。なんだ、この体勢。
「お前があの体勢イヤだって言ったんだろーが。これならいいだろ?」
「全部丸見えで、マジでいい眺めっス〜」
「っ!」
キセさんが笑うと、その吐息が俺の性器に触れてくすぐったい。キセさんの目の前には、むき出しの性器と、期待に口を開きそうになってる後孔が見えてるんだ。そう思って震えると、アオミネさんがにやっと笑った。
「これならまあ、キセも参加させてやってもいいしな。二人で気持ちよくしてやる」
「んぁっ」
アオミネさんが俺の首筋に吸い付いた。ぐいっとシャツの下から腕が入り込んで、乳首をきゅっと捻られる。
「ああっん!」
「おーら、お前好きだろ?乳首いじられんの」
「ん、んぅ!?」
乳首に集中していた意識が、一気に下股へ移動する。キセさんが、睾丸をべろっと舐めた。ぴちゃぴちゃと音がするほど、舐められる。
「ひ、ああ、あああっ」
「……おい、キセに気散らしてんじゃねえよ」
「あくっ!あっ」
ぎゅうっと乳首を抓られて、痛いのに気持ちいい。その間も、キセさんの舌は俺の睾丸を舐め回す。どっちに集中していいかなんてもう分からなかった。
「ああ、そんな、あんっ!」
「おいおい、もう出そうじゃね?同時にされんの、そんなイイのかよ」
「カガミっちの穴、ひくひくしてて……えっろ」
自分でも分かってる。性器は完全に勃起して、吐き出したいと震えてる。後孔がひくついて、埋めてもらえるのを待ってる。
突然アオミネさんの手が、俺の亀頭をぐりっと掴んだ。ぐりぐりと刺激されるのと同じタイミングで、キセさんに後孔に舌を突っ込まれ、にゅるにゅると舐められる。
一気に受ける快感が大きすぎて、思わず首を振った。おかしくなりそうだから止めてほしいのに、止めてほしくない。
「ああっ、あ、いく、ううーっ!」
刺激が欲しかった所を同時に攻められて、俺はあっけなくイってしまった。後孔に入ったキセさんの舌を、締め付けながら。
キセさんの顔に座ってしまいそうになるのを必死で耐えながら、びゅるびゅるとキセさんの服の上に精液を飛ばした。気持ち、いい。意識がぐんにゃりと溶けかけた気さえする。
「わ。服がカガミっちのでベタベタっスね」
「ふあ……」
「ね、お詫びに、入れさせて?」
俺の下から抜け出したキセさんに首を落とすようにして頷く。耐えていた力が抜けて、シーツに倒れるようにして尻餅をつくと、アオミネさんに後ろから受け止められた。
「……気に入らねえな。お前が先に入れんのかよ」
「カガミっちがいいって言ったんスよ。嫌ならどっか行っててよアオミネっち」
「いーや。カガミ見ててえし。な」
アオミネさんが、くいっと俺の顔を傾けてキスをしてきた。唇の柔らかさに安心できて、ふっと力を抜く。
「ちょっ!このっ……」
「うあ、あああああっ」
キセさんに足を抱えあげられ、ズンっと一気に奥まで入れられた。突然みっちりと穴を埋められて、目の前がチカチカする。
「はぁっ、カガミっちに即ハメ、さいっこーっ……」
「あ、うっ、ひっ!キセさんっ」
中で性器が脈打って、ぴくぴくしてるのが分かる。後孔は欲しいものをもらって喜び、ちゅうっと性器に吸い付いてしまう。
キセさんが、少しずつ、じょじょにリズムを付けて腰を振る。性器がぐちゅぐちゅと中の肉を擦ってくれて、口から声が止まらない。
「ああ、あっ!あ、ああっ、あーっ」
「は、カガミっちの中、きっつい……俺の、そんなに好き?美味しい?」
「ひゃあっ!そ、そこ、だめっえ」
キセさんが、雁首をわざと前立腺に引っかけて擦る。性感を直接ガリガリと引っかかれてるみたいで思わず逃げそうになる尻に、ぱんっと腹をぶつけられた。
自分の声がうるさいのに、アオミネさんがちっと舌打ちしたのが聞こえた。途端、キセさんのを咥えたままぐるんと身体を回される。うつぶせになって、びたんっと顔に当たったのは、ビキビキに血走ったアオミネさんの性器だった。
「こっちの口に入れてくれ、カガミ」
後孔をぐちゃぐちゃに犯されながら、口の中も犯して欲しくて無我夢中で咥えてしゃぶる。お尻にいるコレも好きだ。でも口の中にいるコレも、好き。どっちも俺を気持ちよくしてくれる。今は、同時に。胸がきゅんとするのと同時に、後孔も締まった。
「う、お、おっ!イくっ、あぶね!カガミっち、答えて、俺の好き?ねえ、カガミっち!そしたらいっぱい出してあげるから!」
「あー?!カガミは俺のが好きだろうが!な、俺のの方がでけえし、もらえて嬉しいだろ?な!」
「んぐ、んむう、んうううう!」
後ろも、前も、すごい速度で犯される。
どっちが好きだなんて、決められない。だって、俺は。
「ぷはぁっ!あ、アオミネさんのちんこも、キセさんの、ちんこもぉっ、好きっ!!」
顔と、後孔の奥の奥に、熱いものが注がれる。どくどくと腹の中に流れるそれと、顔を滴るそれが嬉しくて、顔が緩んだ。
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「……暴走しちまった」
「俺も〜。カガミっちに搾り取られちゃった」
「あっお前キスすんな。起きたら今度こそ俺が突っ込む」
「にしても、カガミっちに好きだって言ってもらえるなんて……嬉しいな」
「キセ、お前聞いてたのか。ちげえよ」
「ん?なにがっスか?」
「こいつが好きなのは俺達じゃなくて、俺たちのちんこだよ。そう言ってたろ」
「……俺、割とマジでカガミっちの事好きなんスよ」
「俺だってだよ、バーカ」
「あーあ、一体何人穴兄弟がいるんだか」
「考えたくもねえな」
20140113
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