「かーが」

 みっと同時にぎゅっと抱きしめられた。ムラサキバラさんの肩口に顔を押しつけられ、おふっと声が出る。
 初めて指名された時は誰だこいつって感じの不信な目で俺を見ていたり、ホモじゃないんだけどなんて言われてじろじろ見られたりしたけど、二回目の今は急に距離が縮まってべたべたと甘えられている。一回目も最後にまた来てね、と言われたし、よっぽど気に入ってくれたらしい。そういえばこの人、なんだか大きな子供みたいだ、と思う。

「会いたかった。いい子にしてた〜?」
「いい子?俺もまた呼んでもらって」
「浮気しなかった?」
「え?」

 浮気もなにも自分たちは付き合ってもいない。そもそもこの仕事をしている自分をお金で指名しておいて浮気もなにもないと思うけれど、自分を見つめる紫色の目は至って真剣で困ってしまう。二度目にして思うが、この人の言葉や行動はよく分からない。

「え、えーと」
「その顔はしたんだ。わるーい」
「ごめん、なさい……?」

 むすっとされたのでとりあえず謝ってみる。そんな俺を見て満足したのか、またぎゅっと抱きしめられた。ムラサキバラさんはほんとに大きくて、俺くらいでかくても関係なく包み込んでしまう。

「いいや、その分遊ぼ〜」
「?はい」

 遊ぶ?今日は遊びたい気分なんだろうか。前回が前回だったしまたセックスになるかと思ったけれど、そうじゃないらしい。恋人同士みたいな時間を楽しみたいだけなのか?
 いまいち状況が分からない俺の腕を掴んで、一度見た広いリビングまでつれて行かれた。フローリングの床に、肩をぐっと押されて座らされる。

「待ってて」

 なにも分からずぺたっと座った俺を置いて、ムラサキバラさんは何かをキッチンに取りにいったようだった。よく分からないけれど、とりあえず荷物をソファの脇に置く。前に来た時はすぐにキッチンに入ったから気づかなかったけれど、ソファもすごくいいものみたいだ。やっぱりこの家、いいものがたくさん揃ってる。それがムラサキバラさんの拘りなのかどうかは分からないけれど。

「じゃーん」

 そう言ってキッチンから戻ってきたムラサキバラさんが手に持っていたのは練乳だった。かなり大きめで、一般的なスーパーでは見たことのないラベルが貼られている。

「練乳、ですか」
「いいやつだよ〜良くないものとか絶対入ってないやつにしてもらった。嬉しい?」
「はい……」

 いい練乳でなんで俺が嬉しいんだろう。適当に返事をしてはいけないと分かっていても、他になんて言っていいのか分からなかった。とりあえずムラサキバラさんはすごく嬉しそうだ。
 練乳で、遊ぶ?お菓子づくりか、そのまま食べるのか、それとも。
 前はご飯作ってとだけ言われたのに、そのままその気になってしまったムラサキバラさんにキッチンでエプロンだけ残して裸に剥かれ、セックスまでされた。今度は何をする気なんだろう。
 ちょっと、背中を冷や汗が伝った。

「ん」
 ムラサキバラさんが俺の後ろに座って、身体に手を回されると、自然とムラサキバラさんに寄りかかる形になった。すんすんと首もとを匂われて、少しくすぐったい。

「ん、俺汗くさい、です」
「そんな事ない。いい匂い」

 香水も何もつけていないし、電車に揺られたし結構歩いたから汗もかいてるはずだ。そんな自分から嗅ぎたくなるようないい匂いなんて、するわけないのに。

「じゃあ、これ開けようね」
「?はい」

 ムラサキバラさんが俺を抱きしめていた手を離して、俺の目の前でくるくると練乳の蓋を外した。むにゅっと押せば出てくる練乳が、長くて太い指に垂れる。たくましいけれど綺麗な指に白いものが絡むのがなんだかいやらしくて、思わず凝視してしまう。
 指が口に近づいてきたので、まるでそうしろって言われたみたいに口が開いた。練乳まみれの指を導き、舌を絡ませる。甘い。甘くて甘くて、喉が少しひりついた。俺の唾液のせいで、そのうちれるれると音が鳴り始める。

「カガミ、えっち」
「ぷはぁ……」

 ムラサキバラさんがくすくす笑いながら指を抜いた。ちょっといやらしい気分に浸った俺のシャツを、大きな手がめくる。

「持ってて」

 言われるままに、首までまくられたシャツを両手で持つ。胸から腹まで、明るい照明の下で丸見えだ。
 もしかして、触ってくれるんだろうか。抱かれると思っていなかったせいで、余計に心が踊る。どんな風に抱かれるか、どんなセックスをしてくれるのか、期待に胸が高鳴る。

「トロトロ〜」
「あっ……!」

 ムラサキバラさんは練乳を絞り、俺の身体に垂らした。練乳は、トロリと俺の乳首に落ちる。冷たくて、少し身震いする。
 もう片方の乳首にも垂らすと、塗り込むようにしてぬるぬると擦り、摘まれ、揉まれる。

「あ、あっ、んんっ」
「うわ、やらしー。カガミ、おっぱい出してるみたい」
「んあぁっ」

 きゅっと乳首を絞るように摘まれて、身体が跳ねた。ぬめぬめとした感触に、練乳のせいで感度が増したような錯覚がある。とにかく、やりきれないほど気持ちいい。

「おいしそう」
「あンっ!」

 じゅうっと乳首に吸いつかれて、ぴりっと快感が身体を走る。ねるねると練乳を舐め取るようになぶられた後、もうなにもついていない胸をしつこくちゅうちゅう吸われ、舐め倒された。

「すげ、あま〜……」
「ムラサキ、バラ、さんっ!もう、ミルク、ないからぁっ」

 ばっと顔を上げたムラサキバラさんは、俺の顔を凝視していた。何かまずい事でも言っただろうかと思っていると、見る見る目の前の顔が赤くなっていく。

「……」
「あ、ああっ!やうっぅん……」

 ムラサキバラさんは突然黙り込んで、俺の腹にも練乳を垂らし、おもて全体に塗り付けるようにして擦り始めた。日焼け止めを塗っているような手つきで、ぬるぬると撫でられる。体中が、甘くされていく。

「は、あ、あーっ……ひ、んっ」
「あーー……マジ、えっろ」

 耳のそばで低く唸るような声が聞こえて、思わず強ばったけれど、怒っている訳ではないようだった。ハアハアと聞こえる息づかいは、さっきとちがって獣みたいだ。
 乱暴な手つきで、シャツを引き抜かれ、ズボンと下着も脱がされる。裸の身体のところどころに、練乳がこぼれて、ぬるぬると広げられていく。手足の指先まで、ぬるん、と練乳でコーティングされた。強烈な甘い匂いに目眩がしそうだ。

「ひや、や、あああっ、んぁっ!」

 既に硬くなっていた性器にも練乳を垂らされ、尿道口に埋めるようにしてぬちゃぬちゃと擦られる。ここは特に入念にされた気がした。
 練乳でにゅるにゅるになった俺をフローリングの上でくるっと回転させたムラサキバラさんは、俺の足の間に割り入って、ぱくっと性器をくわえた。途端、すごい勢いでしゃぶられる。

「ひっあああっ!や、だめえっ!あ、そんなっ!」

 まるで何日も食べていないところに、ごちそうを与えられたかのようなむさぼり方だ。貪られているのは間違いなく自分だと思うと、身体は簡単に上り詰めていく。結果、ムラサキバラさんの口の中で二回もいかされてしまった。
 ごくん、と俺の精液を飲んだムラサキバラさんが、にやりと笑って舌なめずりをする。

「ん、おいしい……カガミ、もっと」
「はあ、はあ、も、もっとって……?」

 さっきまでの、大きな子供みたいな面影は少しもない。獰猛な獣みたいで、俺は快感と恐怖が隣り合わせた変な気分になった。逃げ出したいけれど、食べられてしまいたい。
 グル、と喉でも鳴らしそうな勢いのムラサキバラさんは、練乳をまた手に取った。俺の膝裏を片手でひとまとめにして、ぐっと押さえつける。見えないところで何をされようとしているのかわからなかったけれど、とんでもない感覚で一瞬にしてそれを理解した。

「あ、んあああっ!」

 ぶにゅるるるるっと、後孔に勢いよく何かが注入される。身体の外側だけでなく、中にまで練乳が満たされていく。ただこれは気持ちよさというより異物感の方が大きくて、腰を捩ろうとして押さえつけられた。

「い、いや、いやだ、ぁっ」

 ムラサキバラさんは練乳の容器を放り投げると、俺の身体を折り曲げた。自分が腹の所在なさに腹をひくつかせる度、こぷ、こぷ、と後孔から練乳が溢れるのが見える。とろぉ、と粘着質に垂れる様子が、すごく異様だ。

「ああ、溢れて、ミルクぅっ……」
「っ……!」

 ムラサキバラさんが、俺の上に乗り上げてとんでもなく太く脈打つ性器をずっぷりと突き刺してきた。大きなそれが侵入していくのを、止められるわけがない。

「ぅあああっ……!おっき、い……!」

 体中がガクガク震える。ムラサキバラさんの性器は、今まで相手をした誰のものよりも大きくて、太くて、まさに凶器だ。ぎっちり満たして、奥の奥まで擦り上げる。練乳のせいでこれ以上ないほどとろけた後孔をごりごりと容赦なく犯されるのは、意識が飛びそうなほど気持ちよかった。

「はひ、ひぃんっ!やめ、やめえっ、おかしくなぁっ……!」
「なって、なってカガミ。そんで、俺だけのものになって」

 ムラサキバラさんが何か言ってる。聞かないとと思うのに、快感に浮かされてぐちゃぐちゃと自分が犯される音しか聞こえない。

「どこもかしこも、甘くて、トロトロで、ぐちゃぐちゃで、ほんと、俺専用のお菓子みたい」
「くぅんっ!や、あ、あああああ!」
「カガミ、気持ちいい、かわいい、美味しい。俺のものになってよ、ね、ね」
「あ、あ、あーーーっ!」

 びゅくびゅくと中に精液が注がれる。ずっぷり埋められた性器がびくびく震えながら吐精するせいで、意識が飛びかけた。大きいせいか、量もすごく多い。繋がっているところから溢れているのは、精液なのか、練乳なのか、わからない。

「ね、ミルクまみれのまま、いっぱい気持ちよくなろ、俺、とっ」
「ひうううんっ!」

 繋がったままだっこされて、より深く繋がる。ぐぶんっと沈んで、またどちらかわからない白い液が溢れた。気持ち、いい。さっきとは違った場所をゴリっと性器でひっかかれて、また訳がわからなくなる。
 意識がぐらぐらした俺をガンガン突きながら、深いキスをされる。ムラサキバラさんの舌を舐ると、すごく甘い味がした。





20140113

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