朝からずっと火神とバスケをしていた。こいつとのお互い一歩も譲らない勝負は体中を燃え上がらせるほど楽しくて、血液が湧き上がるみたいだ。体力の限界も考えずに何度も何度もボールを奪い合って、俺も火神も夢中だった。
一旦休憩な、と笑う、身体があったまって玉のような汗をかいた火神が、なんかすげえエロくて、唐突に抱きたくなった。本当に俺の性衝動は留まる所を知らなくて、特に火神相手だと見境なくて困る。シャツからのぞく首にむしゃぶりつきたくて、口の中がカラカラに乾いた。
そのまま火神の手をひっつかんで、とにかく走った。走って、階段駆け上がって、急く手で火神んちの鍵を開けて。力任せにドアを閉めてから、電気も付けずに、靴も履いたままで、火神の唇を奪う。
「んっ……!」
ふうふうと自分の吐息が荒くて煩い。火神から聞こえる音だけ聞いてたいんだよ俺は。はじめは強張ってこそいたものの、いつものように口の中を丹念に舐めてやれば、身体の力が抜け、縋りついてきた。柔らかい舌をにゅむにゅむと絡め、上唇をくすぐってから、口を離す。やらしい顔が、そこにあった。
「は……青峰?」
「ヤりてぇ、今すぐ」
「!」
火神の首元の匂いを嗅ぎながら、熱まじりに呟く。了承を得られなくてもやるつもり満々だったが、こいつもやる気ならお互い協力した方が効率的だ。俺もこいつもこんなに身体を熱くして、触れてしまえば、もう拒否なんでできない。玄関の床に、汗がぽたぽたと滴る。俺と火神以外、この空間には誰もいない。はあ、はあ、と熱の入った呼吸をしながら、火神がゆっくりシャツを自分で捲りあげた。
「し、て……」
火神のおねだりに、限界点まで達した興奮に任せて火神を廊下に引き倒そうとした、その時だった。ピンポーン、とインターホンが鳴り、思わず俺も火神も怯んだ。
「は、はい!」
「あ、バカ!声出さなきゃ居留守できんだろうが!」
「あっ……」
とにかく、どこのどいつだ俺と火神のあっつい時間を邪魔するやつは。俺もこいつもノリノリだっただけに邪魔された怒りのボルテージは一気に頂点まで上がる。とっとと追い返してやる。んで、水差された分やりまくってやる。
「おら、靴脱げ。上がってろ」
「え、客が」
「俺が追い返す」
『いないんスかねえ〜』
ドアの向こうから聞き覚えのある声が聞こえて、ぴくっとこめかみが動いた。
『でもさっき家の中から火神くんの声がしましたよ』
『んーじゃあいるんだよなあ、おーい火神っち、青峰っちー』
「お前らかおらぁ!!」
勢いでドアを開け放つと、見知った金と水色が並んでいた。
「すみません、火神くんに貸していたDVDを早めに返してもらおうと思いまして。」
「俺が見せてって頼んだんスけど火神っちに貸したって言うから、じゃあ直接返してもらいにいこうかってなって、そしたら二人がバスケしてるのが見えたから」
「突然走りだしたので、追いかけてみたら火神くんのうちに」
「言いたい事はよーく分かった。出てけ」
「え!!」
無理やり笑顔を作った頬がひきつる。悪いが今の俺にはわざわざ火神を訪ねてきたお前ら二人を労う余裕もない。勝手に来たのはお前らだ約束してたのは俺だ。暗黙の了解でバスケの後火神んち泊まっていちゃいちゃセックスする所まで約束済だ。つまり今日の火神は俺のだ邪魔すんな。
「スポドリしかねーけど」
「ありがとうございます」
「お前は何悠長に飲み物お出ししてんだ!」
火神を睨むと、仕方ないだろ、みたいな困った顔をして俺を見返した。ああ、頬がまだ赤い。ところどころ汗ばんでて、艶っぽくキラキラ光る。すげえ美味そうで、眩暈がしそうだ。黄瀬とテツは、こんな火神を見てなんとも思わないのか。
まあとりあえずとっととDVD返してお帰りねがわねーとな。今は我慢だ我慢。
「火神、とっととDVD返して帰らせろ」
「DVD、昨日見終わったからデッキの中に」
「あ!じゃあこのままここで見ちゃうってのはどうスか!そしたらすぐ黒子っちに返せるっスよ」
「僕はいいですが、火神くん、いいですか?」
「えっと、別にいい、けど」
いい?!いいって言ったか?!なんでそこでいいって言うんだーーー!!お前正真正銘のバ火神だな!ソファでがくっと肩を落とした俺を、どうしたんスか?と気遣ってくる黄瀬。お前ら今度会ったら絶対ぶっつぶす。
正直、拷問だ。俺の臨戦態勢に入っていた息子は、涙をのむ羽目になっちまった。
フローリングに黄瀬とテツが座り込んで、俺と火神がソファーに座って、そろってDVDを見る。内容なんてちっとも頭に入ってきやしなかった。
本当なら今日は俺と火神二人で……考えるとまた怒りがふつふつ込み上げてきた。こいつら邪魔しやがって絶対に許さねえ。そもそも火神もなんで家に上げちまうんだよ、なんでもかんでもOKしやがって。あのエッチして下さいって顔は嘘だったのか?今日を楽しみに若くて元気な俺が数日オナニーを我慢したのも無駄だったのかよ。と言ってもそのオカズも最近は全部火神だけど。
お前は今日、楽しみにしてなかったのかよ。不機嫌なまま横に座る火神の顔を、盗み見る。と、火神もこっちを見ていた。熱の籠もった顔で、潤んだ目で俺を見つめてる。目が合うと、驚いたような顔はするものの、一切目線を逸らさない。俺の事がすげえ欲しい、みたいな顔。俺には分かる。火神の事だからだ。火神、と口だけ動かすと、ぴくっと反応した。めちゃくちゃためらいがちにこっちに手を伸ばしたかと思うと、俺のシャツの裾をつまんで、あおみね、と口を動かした。
こいつ、俺を殺す気だ。頭の血管が切れるかと思った。心臓が煩くて、脳までドクドクと響いてくる。お前、すぐそこにテツと黄瀬がいるんだぞ。
テツと黄瀬の方をちらっと見ると、案の定二人はテレビに釘付けだ。少々の事じゃ目を離しはしないだろう。意を決して、火神の腕を掴んで立ち上がった。
「火神便所の場所教えろ」
「えぇっ?」
唖然とした火神をトイレの個室まで引きずって、ドアを閉めて首筋に噛みつく。シャワーを浴びる暇もなかったせいで汗っからくて、夢中で舌を這わせる。
「だ、だめだっ、青峰っ……!」
「るっせ、もう無理だ……俺がどんだけ今日楽しみにしてたと思ってんだよ!」
ボリュームを考えなかった声がトイレに響いて、火神がぐっと怯む。お前と過ごそうと思っていた時間を邪魔されて、俺がどんだけ怒ってると思ってんだよ。こんな狭い場所で、コソコソ隠れなきゃいけないなんてまっぴらだ。あいつらがいたってお前はやらしくて、抱いてってサイン送ってきやがるから、俺はもう抱きたくておかしくなりそうだ。
「わ、わかった、ここから出たら二人に帰れって言う」
「本当だろうな」
「ぜってー言うから!だ、から……」
今は我慢、かよ。まあ男二人で長い事トイレにいちゃ何やってんだってなるだろうしな。俺の連れてき方も結構無理があったか……。ここはいい子ちゃんの火神に合わせてやるか。
「き、キスだけ……な?」
こいつ実は全部計算なんじゃねーの。
火神の唇が真っ赤になるまで舐めまくってから、二人してトイレを出た。あいつらにつっこまれた場合なんて言おうか。適当に紙の場所がわからなかったとでも言っておくか?ああもうどうでもいい、早く火神に二人を帰らせねえと。
リビングに戻ると、ふたつ仲良くよっかかって寝ている男がいた。
「……」
「わ、青峰!蹴るな!」
蹴り起こそうとしていた俺を、火神が引き留める。止めるな火神、なんとしてもこの二人には今帰ってもらわないといけないんだよ。ちょっと力の加減がわからなくなる可能性はあるが、こいつらだってバスケ部なんだ、大丈夫だろう多分。もう一度言うが今の俺に二人の事を考えてやる余裕はない。
「お前!帰すんじゃなかったのかよ!」
「寝てるの無理やり起こして言う訳にはいかねーだろ」
いそいそと俺の横を通り過ぎていく火神。ばたばたと音が聞こえるから、おおかた二人にかけてやる布団でも探してるんだろう。お前は優しくて世話焼きだからな。そんな恋人を持って俺は幸せだなあ。泣いていいか?
火神が軽めのタオルケットを持ってきたのでやっぱりか、と思っていると、黒子がむくっと目を覚ました。そのせいで黄瀬がずり落ちて、うーんと目を覚ます。
「ん……すいません火神くん。うたた寝してしまっていたようです」
「ああ、起きたのか」
「掛けるものまで……ありがとうございます。この通り起きたので、帰りますね」
「むにゃー、よく寝たっス……」
「ほら黄瀬くん、帰りますよ。自分で歩いて下さい」
テツがぱっぱっと荷物をまとめて、黄瀬を立たせて、玄関まで連れて行く。ふらつく黄瀬に重いです、と文句を言いながら、靴を履いて玄関を開けた。
「では、お邪魔しました。青峰くんも」
「お、おう」
「お邪魔したっス―……」
文句の一つと拳の一つでもくれてやろうと思っていたのに、テツがてきぱきと出て行ってしまったせいで何もできなかった。追いかけてくれてやるのは簡単だが、今はそれより大事な事がある。やっと、やっとやっとやっとやっと二人きりだ。
「かが」
み、と飛びつこうとしたら、逆に飛びつかれた。滅多にない火神のデレに、頭の中は感嘆符だらけだ。とにかくしっかりと受け止めて、ぎゅうっと抱きしめてくる身体を抱きしめ返す。
「俺だって、今日ずっと楽しみにしてたんだからな!」
「お、おう」
「バスケだって、話すのだって」
セックスだって、と小さく言ってから、形のいい耳が更に赤くなる。俺の中のさっきまでどうにか繋がれていた理性の糸が切れた。今日三度目のキスで、貪るように火神の口の中を味わう。ベッドに連れていく余裕もなく床に押し倒して、火神の口から唾液が溢れるまで嬲った。こく、こく、と俺の涎を飲み込む仕草がいとしくて、喉仏にキスをする。シャツが破れんじゃねえかって位焦って捲りあげて、エロい色をした乳首に噛みついた。
「んあっ、あっ……!」
舐めればそこはもう硬くなっていて、こいつがずっと期待にここを硬くさせていたのかと思うと、また興奮する。押しつぶすようにクリクリと舐めて、じゅうっと吸いつく。
「あ、ふぁ、ん……あ、おみね」
「かは、エッロ……」
期待に身体火照らせて、キスと乳首でこんなに感じて、感度上げて。どんだけ抱いてほしかったんだよ。
俺だってお前を抱きたかった。だから、抱いて抱いてって強請るやらしい身体に応えてやるだけだ。遠慮なんかもちろんしてやらねえ。わき腹や割れた腹筋、背筋や肩まで触って、擦って、火照らせる。どこ触っても感じるみたいで、その度に可愛い声を上げた。汗に濡れた身体は、いやらしく俺の手に吸い付く。
ズボンとパンツを脱がすと、火神の性器はもう先走りと精液でぐっしょり濡れていた。
「はぁん、あ」
「おいおい、直接触ってねーのにイっちまったのか?パンツドロドロだぜ」
はぁ、と火神が熱い息を吐く。かなりねちっこくしたから、もう恥ずかしいとか通り越してるのか。偉そうな事言ってるが、俺ももうイきそうだ。とっととこいつの中にぶちこんで、あの柔い肉を楽しみたい。
腹の上に散ったこいつの精液を指に絡めてから、性器の下でひくつく後孔にずぶりと差し入れる。力の抜けた身体はぬくぬくと俺の指を飲み込んで、柔らかく締め付けた。相変わらずいい具合だ。
「ん、あっ……あ」
「よしよし気持ちいいか?もっと良くしてやるからな」
お前の大好きな俺の性器も、待たされすぎてがっちがちなんだよ。責任もって下の口でしゃぶって、全部飲み込んでくれよ。最高に良くしてやっから。出し入れする指を増やしても、火神が苦しがってる様子はない。頃合いを見て、指を引き抜く。
「お預けされた分かなり溜まってっからなぁ……すげー出るかも」
亀頭で火神の性器を擦るようにしながら、ふやけた後孔に睾丸をぶつける。重くなったそれの中の精子が、火神ん中に開放されんのを待ってるのを教えてやる。待ちわびるように睫毛を震わせる火神が、あ、と口を開いた。
「ぜんぶ……くれ……」
トロ顔とやらしいおねだりにやられて、希望通りに奥まで性器を挿入した。ぐぼっとすげえ音が鳴って、火神の身体がのけ反る。そのまま脚を抱え上げて、尻に腰をぶち当てながら犯す。
「あ!あ、あっ!や、うああっひっ!」
「うお、出るっ……!うっ」
火神の中に溜まりに溜まった精液を吐き出しながら、それでも腰が止まらない。俺の下半身は壊れたみたいに腰を振って、火神の後孔をぐちゃぐちゃに貪った。突くたびににちゅっと溢れた精液が飛び出す。こぼれないように、俺が栓をしてやらないと。
むりやり火神の身体を抱き起こして、足を開かせて今度は下から突き上げる。違う肉に性器が擦れて、これもすげーイイ。対面座位で火神の唇を舐りながら腰を振っていると、火神が足を床に着いて、自分から腰を振り始めた。
「あ、ん、青峰!俺、止まんねっ」
「はっ、そんなに美味ぇかよ、俺のは」
「ん、う、うん、好きっ」
「……」
本当にこいつの可愛さはセックスでぶっとんでも止まらねえんだな。こんなんじゃ終わらねえぞ、言葉がわからなくなるまでやってやる。俺の精液からっぽになるまで注いでやるからな。俺を咥えてゆらゆら揺れる身体を伝う汗を、味わうように吸った。
--
「邪魔すんな」
「いてっ」
でけー手で丁寧に野菜の皮を剥く腕をつつーと撫でたら抓られた。邪魔すんなとは言うけど、くっついてるのは何も言わないんだな。お互い暑いのに。俺も暑いけど、なんだか離れたくない。
「重いっ、くっついてんなら動けよ!」
「へーへー」
火神が鍋の方に移動したので、俺もずるずると移動してくっつく。俺とたいして変わらない体型が、どうしてこんなに落ち着くのか。多分、こいつの事好きだからじゃねえかな。人の目なんか気にしなくていい今の時間が、俺にとってもこいつにとっても、すげー大事なんだろう。
「なー火神」
「あ?」
「腰痛いか?」
「……」
無言。肯定ととっていいだろう。確かに今日は、待たされて待たされて待たされた反動もあってか、がつがつやりすぎた。抜かずの四回は、さすがにこいつの柔軟な括約筋もきつかっただろう。
ごめんな、と耳元で言うと、ぽっと耳が赤くなった。こいつなんでこんな簡単に赤くなんの?
「……別に、がっついてるお前、嫌いじゃないし」
そんな事言われたら、所構わずがっつきたくなるじゃねえか。とは、言わないでおいてやる。くつくつと笑いながら鍋の中のトマトソースに指をつけると、火神にまた手を抓られた。こいつの作ったうまいメシ食って、一緒に風呂入って、予定通り過ごそう。
20130701
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