『創造者の特権及び義務…逆襲のロア』TNG、Dr.Soong&Lore お下品コメディ、男性同士の性描写ちょっと有2003.02.02 Fuyuhiko Mazawa(epiQ) |
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新しいプログラム組みに夢中になっていた僕のことを、ローアは結構長い間つまらなそうに眺めていた。だから 「俺にもやらせろ」 などという、聞きようによっては不届きな台詞をいきなり投げつけられて、僕は当惑した。コンソールパネルを叩きながら不自然にならないように無難な答えを返す。 「…ああ、これは君とは関係ないよ。学習プログラムの別バージョンを…」 「誤魔化すな。わかってるだろ、今度は俺が上だ」 ローアの言葉は「聞きようによっては」どころではなかった。ストレートに先週の「実験」を踏まえた、僕にとっては恐るべき復讐宣言だった。 「実験」そのものは、僕にとってとてつもなく後ろめたいものだった。だからあの後、僕は彼に触れてもいない。ここしばらくジュリアナの顔もまともに見られなかった僕だけど、やっと心の整理が付いて家に帰れそうなんだ。承諾するわけにはいかない! 「そういうのは良くないよ、止そうな、ローア。おまえ自分の体重知ってるだろ?下になる人の身にも…」 「騎乗位でもいいよ。正常位だって平気さ、体重くらい自分で支えてる。いままでの女はみんなぴんぴんしてるよ。大丈夫。絶対キモチイイから」 彼を刺激するまいと穏便に切り出したつもりだったのに。どうしよう、彼はやる気満々だ。前回は夥しいケーブルと設定変更で、彼の動きを抑えることはたやすかったが、今回彼の機能はスピードもパワーも完全な状態だ。逃げ出す暇もなかった。後ろから椅子ごと僕を拘束した彼は凶悪なまでの満面の笑みとともに囁いた。 「心配するなよ、痛い思いはさせない。俺は間違いなく上手くやる。アンタはホントに天才なんだ、自信持てよ。……もっとも『マルチテクニック』はあんたのじゃなくて外注だけど。あはは」 「そういう問題じゃない!上手かろうが上手くなかろうがとにかく駄目!僕には無理!」 「俺が止めろって言っても止めなかったくせに。自分だけ我が侭言うな」 ローアは僕を椅子から引き剥がし、背後の検査台まで引きずってゆく。必死の抵抗もむなしく、腰から「く」の字にされた僕は検査台に上半身を押さえつけられた。既に彼の手は僕のベルトを外して、不埒な場所まで滑り込んでいる。 「前から気になってたんだけどさ。アンタをモデルに作られたはずなのに、なんで俺にはヒゲとかココとか生えてないの?」 「バカっ止しなさい!」 茂みをくいくいと引っ張りながら、ローアは喉の奥で鳥のように笑っている。耳の付け根やうなじをついばむローアの唇の感覚は官能的だが、恐怖感の方が数倍勝る。僕の股間は、見事な動きを見せるローアの指にも無反応だ。 「おやおやぁ?元気ないなー、どうしたのかなボウヤ?」 ローアは僕の肩越しに「彼」に語りかけはじめた。ああ。 「この前は悪かったよ、謝る、だから頼むローア、止めてくれ」 「あれだけ好き放題しておいて、悪かったで済むと思ってるのか?」 脂汗をにじませながら懇願する僕の台詞は、彼の凄味のあるやや低めのテノールで遮られた。やっぱり相当根に持ってる。さすが僕の息子。しかもローアの言い分はもっともで、僕には弁解のしようがないのだ。言葉にならずもぞもぞと口ごもる僕のことをしばらく睨み付けた彼は、次の瞬間能面のような笑顔を浮かべて言った。 「なんてな。ちゃんと手加減の仕方くらいわかってるんだ、無茶はしないよ。それにあんただって知って損する体験じゃない。受け身も結構オツなもんだぜ?」 「…気持ちよかった?」 続けられた彼の台詞は「一瞬」研究モードに戻った僕の精神をパニックモードにするには充分だった。 「じきわかる」 無駄な努力とは知りつつ、僕は必死にもがいた。 「わからなくて良いから!ね、止めよう、正直怖いんだ」 「ガタガタ言うな。俺も同じくらい怖かったんだ、思い知れ」 「ごめんってばごめん!もう急な設定変更はしない!ていうかそれ以前にあんなこともしない!おまえが泣いてたことも忘れる!だから」 「そういやそんなこともあったなぁ。泣いても良いぜ博士。俺も忘れてやるよ」 ローアの声が凶悪さを増した。プライドの高い彼にとって、今のは禁句だった!彼は僕の髪を引っ張り、無理矢理頭の方向を変えさせて口づけた。ねじられた首が痛い。しかし流石にテクニックは素晴らしく、滑り込んできた舌の動きに翻弄……いや、駄目だ!流されてとろけてる場合じゃない、とにかくこんなことしてちゃいけない、ああでもキモチイイ…… インターホンが僕を現実に引き戻し、次の瞬間全身から血の気が引いた。唯一、ドアをロックしていたことだけが救いだった。こんな所彼女に見られたらもうお終いだ。 いまのうちに一刻も早くこの状況を抜け出さなくては、と体を乗り出したが、ローアの両手は僕をとらえて検査台に押さえつけた。 「コンピュータ、ロック解除。どうぞー」 なんて奴だローア!僕が命令の取り消しを叫ぶ暇もなく、ドアは軽快な音と共に開いた。 「休憩中?一回目の呼び出しで開くなんて珍しいわね」 ドアが開くなり彼女の機嫌良く喋る声が聞こえてきた。ああ、神様。 この状況をどう説明しろと言うんだ?案の定、彼女はドアの所に立ち止まったまま、無言で僕たちを見つめている。3人の中で真っ先に口を開いたのはローアだった。 「絶対気持ち良いからって言ってるのに、博士ったら聞き分けなくてさ」 「あああおまえ何言ってるんだ黙って!」 おまえだって「母さん」に軽蔑されたくないんじゃなかったのか?!なに普通に喋ってるんだ、バカっ!! が、彼女は取り乱す様子もなく答えた。 「あらあら、ローアったら。心配しなくても大丈夫よヌニエン。この子ホントに上手だから。ヌニエンが済んだら私もあとでお願いするわね、ローア」 ジュリアナはそう言うとにっこり笑った。 「わかった。後でね」 ローアもにこやかに答えた。 済んだら? ひどいよジュリアナ、「夫の危機」をそんな言い方で、あっさり数でも数えるような…いや、上手?私もあとで? いつ彼女が出ていったのか気がつかなかった。つまり僕は茫然自失していたのだ。ローアは相変わらず僕を押さえつけたまま、耳や髪をからかっていた。 「やっと大人しくなったね。素直で嬉しいよ」 「……ってローア!」 久しぶりに本気の僕の叱責を、彼は簡単に笑い飛ばした。 「彼女がしてくれって言うからさ。何も悪いことはしてないよ」 「悪いことはしてない、だと?!もう絶対許さん!約束を破ったな!」 「『肩もみ禁止』なんて約束した覚えないけど?」 「………」 言われてみれば、たしかに後ろから両肩を押さえられたこの格好は「肩もみ」に見えないこともなかった。言葉が出ない僕にケラケラ笑いながらローアは続けた。 「やだな、なに考えてたんだよ。…ま、この体勢なら彼女が誤解してくれるとは思ったけどね。どう?びっくりした?大丈夫、彼女にはあんたがこーんな格好してるトコは見えてないよ」 引っぱり出された僕のシャツの裾をつまんでひらひら振りながら、ローアは大げさに微笑んだ。 こいつ、最初っから、僕が慌てる様子を楽しんでただけか! 「……なんて奴だ!親をからかうもんじゃない!」 「少しは慌てれば良いんだ。ざまーみろ」 「まったく…おい、もう気が済んだだろう?いいかげんに離せ」 「それとこれとは話が別だ。親愛なるパパに快楽のお裾分けしようって気持ちは変わってない」 冗談じゃない!! 「考え直せローア、これは簡単な問題じゃないんだ!」 「へえ。じゃあどれくらい複雑なのか説明してみろよ」 ローアは相変わらず僕を拘束していたが、話を聞く気になってくれたようで、正面に僕を抱え直し検査台の上に座らせると、まっすぐ見つめてきた。その視線に却ってたじろいだ僕は、もぞもぞと呟いた。 「いや、だからその……」 「何だよ」 「彼女に悪いじゃないか!」 「こんなものスポーツだろ。罪悪感なんか感じてない癖に。偽善者」 「偽善なんかじゃない!僕はもう彼女を裏切りたくない。そもそもおまえとこういう関係を持っちゃいけなかったんだ」 「大げさだな。趣向の変わったただの自慰じゃないか」 「そう思ったときもあるけど違うよ、君が人格を持っている以上は違う。君は僕じゃないし、僕だって君じゃない。だから二人で彼女に秘密を作っているこの状況はいけないと思う。それにおまえだって、彼女に対して何らかの罪悪感を感じてるんじゃないのか?」 「……」 彼は少し驚いたような顔をした。が、それは数秒間しか持続せずに今度は彼は僕の上着に手を掛けて剥がしはじめた。 「いいや、今のは彼女のことを持ち出して、俺自身の感情を混乱させるのが目的だろう?そうまでしてどうして俺のことを拒否するんだ?いい加減イライラしてるんだ、力ずくでやるのは簡単だけどまだそうしてない俺の忍耐力に少しは感謝して欲しいな」 「わかった!わかったから!じゃ、君の感情を混乱させない方で説明する!」 「一応聞いてやる」 ローアは手を止めた。ひとつ深呼吸をして、僕は口を開いた。 「そのスポーツで消耗するわけにはいかない」 「…消耗?」 「皆まで言わせる気か?」 「だからなんだよ」 苛々とした様子で続きを促すローアに、僕は死んでも言いたくなかった台詞を言う羽目になった。 「…勃たないんだよ!月イチが限界なんだ!勘弁してくれ!」 唖然としたローアの顔は忘れられない。 彼が「別にそんなことは構わない、俺のは機能している」などとは言い出さなかったことで、彼のなけなしの良心の存在が感じられたことだけは救いだった。彼もどう反応して良いのか計りかねるように、爪を噛むような仕草をしてあちこちに視線を彷徨わせた。そして僕と目を合わせずに少し首を傾げて言った。 「ば…ばか言え、じゃ先週のアレはなんだよ」 「『月イチ』の『イチ』だよ…」 「彼女とは?」 「…ご無沙汰だ」 「あんたまだ50超えてないよな?」 「47」 年のせいなのか不規則な生活のせいなのかはわからないが、とにかく僕の男性機能がかなりヤバイところまで低下しているのは事実だった。 「マジかよ…」 ローアは心底気の毒そうな目をして僕を見下ろした。さっきからの会話も合わせて、僕のプライドはボロボロだよ。 「いつ頃から?」 「もうここ数年そんな感じ」 脱力しきった僕は、投げやりに彼の質問に答えることが精一杯だった。ローアは頭の後ろに手をやって瞑目したあと、ようやく僕の目を見て言った。 「そりゃ悪いコトしたな。あんたにもジュリアナにも」 「もうほっといてくれ…おまえにはこんな気持ち、一生わからないんだろうな。いや、わからなくていいんだ」 「そんな気分を味わわなくて済むように作ってくれて感謝するよ。…でもなんでそんな状態でほっといたんだよ!ソッチだけの問題じゃないかもしれないだろ?とにかく早く医者に行かなきゃな!ちょっと待ってな、今少しはマシな医者を検索してる…」 もう彼は『逆襲』の試みを放棄したらしく、生真面目な顔をしてコンソールパネルにアクセスしている。感謝すべきだろうな、今僕がどんなに最低な気分でも、おまえは結構いいやつだってわかったから。 ただ、僕が『治療』を済ませた後、彼が『逆襲』を仕掛けてこないとは限らないことが、唯一の僕の懸念だったりするのだった。 ・・・終・・・ |
| ホームドラマかつコメディ(しかもこんなネタで…) データ作成前のそれなりに幸せな日々を想像してみました。 なんだかんだいってローア、良い子ですな^_^;それにひきかえ 私の中のスン博士はますます駄目ッ振りを上げています(T▽T) あ、年齢とかはよくわからないので、だいたいの私の想像です。 あんな素敵なキャラクターをこんなにしてしまってホントご免なさい。 でも思いついちゃったからつい(だからって…) |