×ロクス

 闇雲に信頼を寄せられても正直迷惑だってこと。ロクスは何度そう言ったか、もう思い出せない。
「……………。」
 なのにあどけない天使様は性格の悪い男だと承知の上で彼を信頼しすぎているきらいがある。遊び好きな男が出かけている間に、都合も訊かず訪ねてきて待ちくたびれていつしか眠る、そんなことを何度も繰り返された後にロクスはとうとう露骨に釘を刺すことになった。
『…あのな、お前期待してるのか?
 確かに僕はお前のことは天使だって思って最低限やっちゃいけないことは踏まえてるよ。
 でもな、お前がやいやい言うからおとなしくしてるが僕は余計なこと知りすぎてるってのはわかってるだろ?
 …今度人のベッドで寝ててみろ、遠慮せず抱いてやるからな。』
 さすがにそこまで言われて、いやあべこべに人間から雷落とされて、他人のベッドで眠り込んで部屋を取った当人が怒っている様子に少しはしょげた様子を見せた幼い天使様だけど、「抱いてやる」の意味がわかったとはロクスだって思ってない。もちろん彼は男として女性の彼女にその台詞を吐いたけど、彼女がそれをどう理解していたかは今のこの状況で嫌と言うほど思い知らされた。
 小さな金の髪の天使様が、体を丸めるみたいにして少々遠慮がちにロクスの取った宿の部屋、彼が横になるベッドに眠っている。
彼女はただ幼いのかそれとも男をなめているのか、どっちもあり得るからロクスは何度もため息だけで片づけてきた。けれど自分という男の本性を知ってなお遠ざからず、警戒せず。彼だって頼られることが嬉しくなり始めている。
天使という万能の存在が、矮小なる人である自分という個を頼ってくるこの状況に、舞い上がらぬ者などいるはずがない。しかし、それにしてもこの状況…人間とは明らかに次元が違う美しすぎる少女の姿で男のベッドに横になり熟睡するなど、人間の娘ならどうなるかなどわかりきったことだろうに。
天使というその言葉だけで守られていると勘違いしているのだったら、その考えをなんとかしてもらいたい。いやもっと単純に、ものにしてしまいたい。
ただでさえ意識しつつある、彼女がただの女性ならロクスだって惚れた以上己のすべてをもって口説く手に出るが、相手が天使と言うことでとぼけられ、受け流され、眉を釣り上げ語調を荒くし露骨な言葉を吐いてやっとの思いで気づかせると今度は怒られる。
いったいどうしろと言うのだろう? こと女性に関しては我慢のがの字も知らない男なのに我慢に我慢を重ねて破裂しそう。
美貌と現しても過言ではない己の容姿にものを言わせて浮き名を流した破戒僧が想いを寄せたのは、あろうことか美しい少女の姿を持つ神の御使いだった。
「……………。」
 さて、嫌な顔を見せながらでも起こしてやるのが今までの流れだったけど、さすがにかなり思うところがある。正直手をつけてしまいたい。しかし天使に手をつけて無事でいられるか? それ以前に天使を女性として抱けるか?
人間の女性と同じに情を重ねられるかどうか、かなりの博打だと彼自身思っている。
「…………………………。」
 ロクスは何も言わずに眠っている彼の天使・シルマリルを見下ろしている。
その寝顔は美しくもあどけなく、襲う襲うと言いながらも実行しなかったのはその幼さが不憫だったのと、おふざけが過ぎて嫌われたくなかったから。
けれど、もう限界。男として警告は何度も発してるし何度も踏みとどまった。
 ロクスはしばしの躊躇の後ベッドの上に静かに乗り、シルマリルに馬乗りになった。
やわらかな金の髪を細い手で梳きあどけない寝顔を露にし、その頬をそっと撫でて顔を寄せて――――薄紅色の花びらのような唇に不埒な男の唇を寄せ、そっと、しかし腹をくくって奪う。思っていた以上に生々しい感触が抑圧し続けていた彼の男を刺激して、手が勝手に彼女の髪をかき乱し眠っている女の唇を卑怯にも貪っている。
「………‥‥・・・!??」
 さすがにそんなことをされて暢気に眠っていられるはずがない。シルマリルが異質な感触と体中に感じる圧迫感に目覚めると、なんと言うことだろう、自分に協力している「勇者」のひとりであるロクスに唇を奪われていた。
彼は目を伏せてはいたが閉じてはいなくて、高貴さと妖艶さを持ち合わせる紫の目がシルマリルを捉え、彼女が目覚めたのを見るなりに激しい抵抗を予想していたのだろう己の体重で彼女の動きを封じ込めた。もちろん、唇は合わせたまま。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 シルマリルが手足をじたばたさせようにも急に起こされて体は言うこと聞かず、唇をふさがれて声もうまく出せない。眠るのに翼は邪魔だからとついうっかり仕舞っていたことでその小さな体は人間の少女と同じで、ロクスの手はじたばたと抵抗を始めたシルマリルの体を押さえ込みながら容赦なく腰から太ももにかけての線をじんわりと撫で始める。
奪われたままの唇を舌先で撫でられて、シルマリルの背筋に感じたことのない感覚が這い上がって駆け抜けた。
 ロクスの細いけど大きな手が、か細い少女の手を捉えて力ずくで腕を上げさせ、シルマリルの頭のすぐ上で両手首を簡単に押さえ込んだ。シルマリルは数々の奇跡を祈りだけで発露させる存在だけど、残念ながら自ら戦う術は持ち合わせていない。
彼女はミカエルやラツィエルとは違い、戦う術を持たない温厚な天使。だから未熟で非力な彼女の協力者として「勇者」たちの力を借りる必要があった。
それなのにどうして? 協力者たる、神の尖兵たる勇者に押し倒され組み敷かれて唇を奪われている。
 ロクスの舌は遠慮など捨ててしまったらしく、教皇たる己の仕えているはずの天使の唇をふさぎあまつさえ舌先で火照った唇を撫で、低く喘ぎながら貪りついにシルマリルの唇をこじ開けようとさらに深く唇を合わせた。
「―――――――ッ!」
 シルマリルのささやかな、しかし強烈な抵抗にロクスが思わず体を跳ねる勢いで唇を離す。彼の端正な表情、口の端につ…と紅い糸が浮かび上がり、ようやく解放されたシルマリルが上気した蒼い瞳で彼をにらみつけた。
「ろ、ロクス! あなた自分が何をしているかわかって」
「…わかってる。むしろお前に自分が何やってるかわかってるかって訊きたい気分だ。
 言ったろ? 今度寝てたら抱いてやるって。お望み通り抱いてやるよ…腰が立たなくなるまでな。」
「あ!?」
 ロクスは片手でシルマリルの両手を押さえ、空いている片手で彼女の衣服を力ずくでずり下げ、神聖なる乙女の肌を露にした。勢いよく飛び出した豊満な胸のふくらみは彼女の幼さとは正反対なほどの大きさを持ち、人間の女と同じに紅色の蕾は突然触れた外気ににわかに勃ち上がっている。
「ロクス、ロクス! やめてくださいっ!」
「大声出してなんとかなると思ったのか? お前本当にバカなんだな。
 若い男の部屋から女の声がしたからとだーれが横やり入れに来るか。俺が僧侶だろうが関係ないよ、そんなのは。
 それにしても、ガキのくせにずいぶん立派だな。一人前に感じて乳首立ててやがる。」
 柔和で優美ですらある容姿で、どこか微笑み絶えぬ唇で質のよくない毒を吐きながら、ロクスの細い指先が紅く立ち上がったシルマリルの胸の蕾を軽く弄ぶ。
中身が純粋すぎて男と女の生臭い側面など知るはずもない天使様が、同じ素肌なのにそこから広がる感覚に抗えず思わず身を固くした。
「ん………ぅ……」
「おとなしくしてろ、俺がじっくり味わって女にしてやるから。」
 どうしよう。ロクスは冷静さを失っている。
体裁があるのだろう、普段の自分称は「僕」を使う男だけれど、根は少々乱暴な男で頭に血が上ると自分を「俺」と呼び言葉遣いも荒くなる。穏和で端正な顔を生まれつきに与えられて誰も彼の本性を疑うことすらないんだけど、ロクスという男は思う以上に中身が荒んでいて神に仕える身でありながらもその神に毒を吐くこともある。今だって神の御使い・神聖なる天使を押し倒し組み敷いて「女にしてやる」など暴言をぶつけてきた。
「やめ…っ、ロクス……」
 女にすると言う言葉の意味が、シルマリルにはいつもピンとこない。彼女は生まれついて女性だし、天使の愛情表現に肉体関係は伴わない。精神体に近い彼女は感情的に満たされればそれで充分で、ロクスの放蕩はもちろん人間の男の所行に理解を示せるはずがない。
まさかその矛先が自分に向けられるなんて思ってもみなかった、ロクスの男性にしては細く繊細な指先がシルマリルの胸の蕾を絶妙な力加減で弄んでいる。
「やめてなんて言いながら声が甘ったるいぞ?
 いいんだったら正直になれよ、俺も鬼じゃないし、どうせならお互い楽しもうじゃないか。」
「でもっ…私たちは……」
「勇者様と天使ってか? じゃあお前の奴隷の勇者によがらせられた挙げ句女にされちゃいましたって話の種にしてみようか。
 お前さ、俺なめてるだろ? 将来教皇になる男なら自分の奴隷とかわんないとか。
 …男なめるのもいい加減にしろ。いちいち挑発しやがって。」
「!」
 ロクスの指先が、すっかり紅く勃ち上がった胸の蕾をピンと弾いた。そして男の舌が美しい紅色を持つそこに這い口に含みねっとりと吸い巧みに舌を使い始める。
わざと荒い吐息をきめ細やかな男を知らぬ肌に絡め、低い喘ぎを息づく肌に雨あられと降らせて抵抗を快楽で封じ、女に慣れすぎた不実な指先が次に行き着く先を求め彷徨う。
シルマリルがまさか人間の男に見初められるなど彼女を取り巻く天使たちが思い及ぶはずもなくて、美しすぎる少女は何も知らぬまま彼の元へと舞い降りた。
そして知る人間の肌の感触、「甘ったるい声」というロクスの言葉は、口から出任せでも言いくるめるための嘘でもなかった。
「あ…の、ロクス……もっと…ゆっくり……」
「ん? こうか?」
 頭の中にもやがかかったみたい、両の乳房を露にされてシルマリルがたわわなそれをほんのりと染めながら、恥ずかしそうにロクスに請う。抵抗しようにも理性も一緒に目を覚ます前に瓦解させられて、シルマリルはロクスが思った以上に素直にこの状況に流された。ようやくおとなしくなった彼女を手荒に扱うつもりはないらしく、ロクスの指先が少しだけ緩やかに、しかしさらに絡みつくようにシルマリルの大きな乳房に這いずり回る。その指先は紅い蕾から離れずに、時に指先で軽くつぶしながら弄んでいる。
「よーしいい子だ。暴れるなよ…暴れたりしたらいきなり入れてやるからな。」
 女慣れしている男なんだけどかなりがっついているらしく、すでに手はシルマリルの薄い下着の中で蠢いている。女性のなめらかな曲線を包む布が不自然に、男の手の形を浮かび上がらせ卑猥な動きとわずかな水音が漏れ始めていた。
ロクスはシルマリルを組み敷いたままで、しかし彼女の両手は解放し、耳に甘くも少々乱暴な囁きばかりを絡みつかせる。
「ちゃんとあるな…ん? 少し濡れてないかお前。」
「あっ!!」
 秘めた花びらの奥で蠢くロクスの指先の感触に、シルマリルが思わず仰け反った。解放された小さな手がシーツをつかみ身悶えている姿を見てロクスは満足げに血の赤が残る唇の端だけを上げて嗜虐的に笑い、今度は噛まれる心配もなくもう一度唇を重ねた。
「ロクス…ロクスっ…」
 恋も知らぬ純真な天使の口から甘ったるく男の名を呼ぶ声が切れ間なくこぼれ、それすべてをこぼさぬかのようにロクスは緩く時に深く口づけを繰り返す。
少しぼんやりしている穏やかな気性の女性、当たり前だがあまりにも純粋すぎて、ロクスは男として彼女を意識しながらもいろんな建前を用意して堪え続けた。
「いい子だ…濡れてきたぞ。ほら、感じるか?」
 しかし堪え続けた欲望を発散する先も失って、そしてとうとう爆発した。
卑猥な言葉をその聖句を口にする声で紡いで男を知らぬ女を抱こうとしている。
純粋なら自分という男だけを刻みつけよう。それで神に背こうと今さら何が恐ろしい?
己は神の下僕でありながらすでに清廉なる肉体を失って久しいのだから、せめて汚れた肉体ならばこれから女を渡らずにたったひとりに貞操を捧げようか。
そのかわり、己という男のすべてを受け入れさせる。何一つ拒ませない。
…ロクスの場合、そこまで思い詰めた女が天使だっただけの話。
「シルマリル、俺を奴隷どころか手足にでも思ってこき使ってかまわない。
 そのかわり他の男勇者のことを忘れろ。…俺を裏切るなよ。」
 思いあまって、どこにいるかすら知らぬ顔さえ見たこともない男たちに嫉妬していた。自分以外の男が彼女に関わっていることが許せなかった。
裏切りに次ぐ裏切りを重ねて重ねられて周囲を信じることを真っ先に捨ててしまった不遇な青年は、己を預けられる存在の降臨に疑いながらも引きずられて、そして感情が募って嫉妬に姿を変えてしまった。
天使と言えどそれは女で、ロクスの荒っぽくしかし絶妙な愛撫に体中を薄紅色に染め快楽に身をふるわせている。焦るあまりにようやく服を着たままだということに気がついたロクスがやっとシルマリルの下着から手を抜き取ると、その指先に紅い滴がまとわりついていた。
ロクスはシルマリルから紫の視線を離さず、その指先の滴に唇を寄せて笑いながらそれを舐めた。…わずかに、血のにおいがする。
「嬉しいよシルマリル…お前の処女を破るのは俺なんだな。
 俺の指からお前のにおいと味がするなんて……。」
 このまま勢いに任せてしまいたいが、さすがに他人から与えられた真白い法衣を女の純潔を散らした血で染め、己の情交の汗で皺を寄せるのもはばかられる。
ロクスは白い法衣を脱ぎその下に着ていた薄い服も、そしてその下のズボンと躊躇すべてを脱ぎ捨て、しかしシルマリルはあられもなく服をはだけさせたまま、彼女を生まれたままの姿にはしなかった。
あまりにも唐突な今の状況に、激しい快楽の嵐に翻弄され理性だけが壊れたまま戻らないシルマリルは放心状態で、薄紅色に火照る体のそこかしこに紅い印が刻まれている。ロクスは彼女の上に戻ると己が刻みつけた所有の印に指を這わせて身をかがめ跪くような姿勢で口づけ覆い被さった。
小さな体に重なった男の肌に、生々しい息づかいに、他人の体温とにおいにシルマリルが初めての女らしくまたきゅっと身をすくめる。ロクスは抵抗する女を意のままに踏みにじったことはない、今もシルマリルの反応を「応」と解釈しもう何度目かわからないキスを交わした。
「…お前はとびきりの女だ、俺が出逢った中でも一番だって言い切れるぐらいにな。
 これでも惚れた女のためなら体も張れるし命だって差し出しても構わないって思ってる。
 お前はそう言う男が欲しいんだろ? だったらお互い都合いいじゃないか。
 俺はお前をいいようにさせてもらう、その代償でお前は俺の命まで握る。…これは取引だ。
 さすがに不実な俺でもこの取引ぐらいフェアにいかせてもらうよ。」
「そんな…私……」
「取引じゃないって言いたいんだったら、お前のすべてをよこせ。身も心も俺に染まってしまえ。
 …それが出来ないうちは取引だ。ほら、脚開け。」
「……いや…ロクス、あなた……」
「今さら嫌も応もあるかバカ。お前は天使でありながら俺にキスされて指まで入れられて血が出たんだ、天界におわすお前の上司様にどう申し開くつもりだ?
 俺を悪者に仕立てて逃れようなんて思うなよ、その時はお前がどうやってよがってたか洗いざらいぶちまけるからな。」
「そんなこと…するつもりは……」
「じゃあおとなしく言うとおりにしろ。…なあに、痛いのは最初だけだ。
 俺は何人もの女をベッドの中で泣かせてきたんだ、お前だってそのうち死にそうって甘ったるく泣くようになる。」
 それは果たして口説いているのだろうか? それにしては言葉が荒く露骨で即物的。
傲慢な女たらしは己は他の男の影を嫌うくせに、他の女のことは平気で口にする。
彼にとってはその比較行為が特別視している証拠足りうるのだけれど、シルマリルは他の女性と己が比較されていい気がするはずない。情交の熱で潤んだ蒼い瞳をついとそらしたその様子を見、ロクスは満足だったらしい。そっぽ向いた女のあごを指先で従わせてまた唇を合わせる。
そして再び罪な指先を、彼女の谷間に伸ばした。
「すねたのか? …可愛いことする。
 でもここは正直だな、すっかりできあがっちゃって。」
「んっ!」
「ほら指入った。小さいなー…俺のはきついかもな。
 でも心配しなくていい、いい子にしてたら優しくしてやる。」
 不実な台詞の通り、思い通りに事が運ぶ間ロクスは確かに優しい。シルマリルも初めて他人の体を自分の中へ受け入れたこともよくわからないほどで、ロクスが舐めた指に絡む血は彼女の谷間の奥のそれ。
男に裂かれる前に彼の指を受け入れさせられ、それだけでも耐えきれずにわずかに裂けてしまった証拠だった。
らしくなくも愛してしまった女のそれはやはり格別で、遊び慣れた女とは確かに違っていて、ロクスはそのきめ細やかな肌の感触に、ほのかに香る清かな花の香りに酔いしれながら知らないうちに溺れてゆく。
「…いいにおいだ。体中から花の香りがする。」
 いつか雑談の中で語られた彼女の日常のかけら、彼女の住まう小さな宮殿のまわりで咲き乱れる花の話を思い出しながら、ロクスが甘ったるくシルマリルに囁き丸い肩に口づける。そしてまたキス、…彼はキスが好きらしい。
左手を彼女の小さな手に合わせ指を絡み合わせて、彼にとっては至福の時間を余すところなく味わっている。しかしシルマリルは触れることもない場所を悪い指先でまさぐられてかき回されておかしくなりそう。
「愛してるって言って欲しいか? …女は最中にそれを欲しがるが、お前はどうなんだ?
 嘘だろうと言える言葉だ、お前が言ってっていうんだったらまあ言えるだろ。」
 そんなことを問われても、今のシルマリルが答えられるわけがない。ロクスの指先は一番敏感な場所に畳みかけるような激しい愛撫を休む間もなく与えるし、昼間の軽口からは想像もつかぬしっとりと甘い囁きを柄の悪い言葉で降らせ続ける。
「…シルマリル…愛してる……愛してる………ああ気が狂いそうだ……!」
 男性としては線が細い、恵まれた容姿の男が、情交の熱に酔わされ抑えきれない本音が口をついて出た。包み隠さぬ裸の彼はその言葉がすべてを表していて、性格の破綻した男がただひとりすべてを許してもいいとさえ思いつめて組み敷きすべてを失う覚悟の上で繋がろうと指を絡めて、そして――――
「あ…――――くっ! いた、ロクス痛い!」
「最初だけだ。すぐにすませる。」
「あ――――っ!」
「シルマリル…」
 名を低く呼んだ後が言葉にならない。シルマリルは男を受け入れ引き裂かれる痛みが大きくて悲鳴を挙げるが、ロクスはそこでやめたりしないで強い肉の抵抗を力でねじ伏せ、神聖なる信仰の対象の翼を、教皇の座に昇る男の肉欲の象徴で引き裂き叩き折った。
今も彼女は純白の翼を広げることが出来るのだろうか? ロクスが腰を引き己を彼女の谷間からゆっくりと抜くと、それには破瓜の血が確かに伝っていた。
彼はそれを抜いてしまわずに再びシルマリルの中へ、ゆっくりとしかし容赦ない律動がシルマリルを襲う。ロクスは上半身を起こしシルマリルのひざ小僧に触れて脚を開かせさらに深く繋がって揺さぶり続ける。
あれほどに情交の直中だろうと饒舌だった男が言葉を失いやわらかく波打つシルクグレイの髪を揺らす勢いで女の中で暴れていて、その痛みが大きくてシルマリルはもがくばかり。
「あぁロクス…ロクスぅ……」
 痛みで優しげな眉を歪める小さな体をかき抱いて、ロクスは男を知らない女に対してもう配慮も出来ずにひたすらに揺れ続ける。先ほどの「気が狂いそう」は戯れ言でも演技でもなく本心で、決して触れることあたわぬとひたすらに堪え続けていた感情、美しすぎるシルマリルという女に根元からすべてを揺さぶられて高いプライドはすでに粉々。
なのにこの娘は慈愛の微笑みなんて質の悪い武器を普段使いにしてくれる。…その微笑みを他の男にも向けていると思うと、夜が来るたび頭がおかしくなりそうだった。
丸い尻に長い指を食い込ませてさらに深い場所を求めて躰を重ねても彼女は慣れてなくて痛がるばかり、すぐにすむと言ってみたけどぎこちないそこはなかなか男を喜ばせてはくれない。鬱屈した熱はこもり続けて逃げ道を探しているけどシルマリルがそれを示すにはまだまだ幼すぎる。
「……出すぞ。」
 それでも男の生理はいつか必ず終わりを迎える、ロクスは低くそれだけ口にすると身を起こしシルマリルのひざを抱えて腰を引いた。ロクスが男に抉られ真っ赤になったそこから己を抜いてしまった直後大きく身震いし、シルマリルは痛々しい谷間に浴びせかけられたものの感触に短く悲鳴を挙げた。
 寝床に大きく咲いた真紅の薔薇に白濁液が滴り、天使は翼を汚された。
汚した咎人はあろう事か聖職者、しかもいずれその頂点に立つ男。決して消えぬ罪を自ら背負った男は、自分がどうなったか未だにわかっていない幼い天使の放心した痴態を見て再び挑みかかる。
「あ…いや、ロクス…そんな、そんな……!」
 罪を背負ったのは彼だけじゃない、天使も背負わされたというのに何も知らぬ無垢な存在は男の欲望に流されるばかり。神以外にすべてを捧げることを許されていない存在の中に、神以外の存在を宿してしまう罪。
ロクスは信仰の対象を人間の欲望で汚した罪を背負い、シルマリルも神に背き人間の男をその肉体に受け入れた。
お互いに罪の烙印を刻み合い禁じられた関係に身を焦がし始める――――。