milk play --- after








「こンの変態野郎ッッ!!」






意識を飛ばし数十分。
目覚めた京子の、隣で寝顔を見ていた恋人を見付けた瞬間の一発目がこれだ。
一緒に飛んできた拳は、予想していたので龍麻はあっさりと避けてしまった。

が、続いた足は避けられなくて、思いっきり脇腹に食らって床に落ちる結果となる。




「酷いよ、京」
「そりゃテメェだ! こんなモンまで持って来やがって! 何処で買ったんだよ!?」




床に転がっている搾乳機を指差す京子に、龍麻は平然としたもので、




「クラスの人が持ってたよ」
「何処のどいつだッ、シメる!!」
「言ってもいいけど、言ったら京と僕がこういう事したってバレると思うよ」
「知るか! 取り敢えずぶっ飛ばす! つーかお前もだ、バカ龍麻!」




淡々とした言葉で冷静に言う龍麻に、京子は怒鳴る。
怒鳴ったところで、この恋人が慄く筈がないと判ってはいるのだが、それでも怒らずにはいられない。






「あんな事させやがって! どうしてくれんだ、オレの体ッ!」






性に対して淡白(一切の無興味)であった筈の躯は、目の前の少年によってすっかり作り変えられた。
それを知るのが龍麻だけとは言え、自身の変貌は京子にとって恥ずかしくて仕方がない。

近頃は龍麻の手が自分に触れるだけで、躯が熱くなってしまうこともある。
日常生活の中ではごく普通に過ごしていても、二人きりになった途端、前夜の情事を思い出して興奮してしまうこともあって、自慰も時折行うようになって。
挙句、幾ら胸が大きいからって、あんなプレイをさせられて、しかも本当に母親になった訳でもないのに搾乳なんてさせられてしまうなんて──────


乙女の純潔がどうの、モラルがどうのと言うつもりはない。
ただ、余りにも変わり過ぎてしまった自分の躯に、気持ちが追いついて行かない。




……だけれど、目の前の恋人は、やはりマイペースなもので。





「いいんじゃない? 可愛いから」





そういう事を聞いてるんじゃない。
京子のその言葉は音にならず、代わりに拳が龍麻の脳天を突いた。




「首輪なんてモンまでさせやがって」
「似合うかなぁと思って」
「何処まで変態思考なんだ、テメェの脳は」
「可愛かったよ」
「聞いてねェッ!」




鎖付きの首輪を差し出された時、京子は思い切り顔を顰めた。

しかしあれよあれよと言う間に服を脱がされて、一糸纏わぬ姿にされれば、逆らう事が出来ず。
そうするように仕込んだ男の手によって、まるで従属した奴隷のような格好にされて。
……後は完全に龍麻のペース。

脱がされた後は、大抵いつも龍麻の主導権に任される。
それが、今更ではあるが、京子は悔しくて仕方がない。



にこにこと笑う龍麻に、京子の青筋がくっきりと浮かぶ。
寝ている間に外されていた首輪を取ると、頭を抑えている龍麻を見下ろし、



「テメェもいっぺんやってみやがれッ!」
「え?」




龍麻が構える隙を与えず、京子は龍麻の首を掴む。
手早く首輪の皮製ベルトを巻きつけて、穴に通して閉じる。

繋がる鎖を手に持って、京子はシーツ一枚巻き付けた格好で、龍麻の前に立ち尽くす。




「どーでェ、首輪した気分ってのは?」
「………んー……」
「ンだよ、リアクション薄いな」




相手が龍麻であるから、別段、派手な反応を期待してはいなかった。
が、首元を突いて首を傾げる様は、あまりにも予想通りで返って興醒めしてしまいそうだ。

いやいや、と京子は一度頭を振って、気を取り直す。




「まぁ確かに、こっちとしちゃイイ気分するな」
「そう? 京、こういうの好き?」
「……そういう事じゃねーよ」




人を従えること。
支配する事。

首輪や鎖は、それを成功させた事を錯覚させてくれた。


情事の最中に散々好きにされてしまう京子にとって、これはちょっとした仕返しだった。
自分も支配される屈辱を味わってみろ、と。




「面白ェから、もうちょいこのままでいるか。龍麻、お前、今からオレの犬な」
「……やっぱり好きなの? こういうの」
「違うっつーの」




京子にとっては、子供のごっこ遊びのようなものだった。
でもなければ、ジャンケンで勝って王様になった、そんな感じ。




「取り敢えず、オレの服─────」




取って来い、と言おうとして、京子は言葉を飲んだ。
足元に擦り寄る感触に視線を落とすと、まるで犬のように擦り寄ってくる龍麻がいる。

何してんだ、と言い掛けて、ああ犬の真似か、と直ぐに合点が行く。
“オレの犬”と言ったから、龍麻はこんな事をしているのだ。
其処までしなくていいんだがな、とは思ったが、面白いので暫く放っておく事にした。



が、直ぐに後悔する。





「ひゃうッ!?」





ぴちゃり、と足の甲を撫でるものがあって、京子は思わず飛びのいた。




「何しやがんでェ!!」
「だって犬だし」
「そんでも、こんなトコ舐めるかッ!」
「んー……美味しそうな匂いした、から?」
「フザケんな!」





持っていた鎖も放り投げて、京子は逃げる。
これ以上調子に乗らせる前に、さっさと着替えてこの危険地帯から離れるべきだ。

床に落ちていた服を拾って(下着は探せないまま)、部屋の外に繋がるドアに手をかける。


────が。





「だーめ」





子供の駄々のような、逆にそれを宥める親のような。
そんな口調が耳元から聞こえた時には、シャラリと冷たい鎖が背中に当たって、腰を抱き締める腕があって。




「バカ、離せ! もうイヤだ、帰るッ! ────ひんッ」




ぴちゃりと、耳朶をぬるりとした生き物がなぞる。
熱の篭った呼吸が耳に吹きかかって、ぞくぞくとしたものが京子の背中を奔った。

片手で腰を抱いたまま、もう片方の手が京子の豊満な乳房を揉む。
ほんの少し休んだだけの躯は、簡単に熱を再発させて京子を蝕んだ。




「あ、ん、や……やだって…あ……」




ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ。

執拗なほどに、龍麻は京子の肌を舐める。
それこそ、まるで甘える犬のように。



ふるふると震える京子の躯を抱き上げると、龍麻はベッドに戻る。

ゆっくりと京子をベッドに降ろしながら、その間も、暇さえあれば耳朶、首、頬を舐めて。
それは次第に、下へ下へと下がって─────





「あッ、や、そんなトコっ! そこ舐め、舐めちゃ、あ、んぁ、だめぇええぇ────!」









………京子が万年発情期の飼い犬から解放されるのは、まだしばらく先の話である。












ラブラブしてますけど、特殊プレイなんでこっちに放り込みました。
あと、龍麻が黒いので。
京子もエッチ度増してます……と言うか、若干M……?

そしてうっかり事後処理を忘れています(滝汗)。
避妊薬飲んでるって事で……


ラブラブで玩具プレイで誰にしよーかなーと考えたら、八剣よりも龍麻になりました。
うちの八剣はエッチになるとS入りますが、道具は使わなさそうです(ねちっこく攻めそうだけど(爆))。