Forbidden fruit 後編









────目を覚ました時。
両の手首を覆っていた包帯が、黒光りする無骨な手錠に変わっていた。

アニメや漫画でしか見た事がなかったそれが、オモチャなのか、そうでないのかは、京一には判らない。
ただ子供の手で外せない事だけは確かで、壊すことも出来なかった。


手錠は手首を繋げていたが、密着させている訳ではない。
だから木刀を持つ分には問題はなかったが、解放されている時のように自由にはいかなかった。

これだと、多分、誰にも勝てない。
その結論に行き着くまで、然程時間はかからなかった。
何とか外せないかと部屋の中を歩き回ったが、使えるものは何もなく。



なんとか出来ないかと部屋の中を歩き回っている内に、サラリーマンは帰ってくる。
いつもと同じ顔で、最初と同じ笑顔で。

その頃には“気持ち悪い”が“可笑しい奴”に変わっていたが、もうどうしようとは考えなかった。
考えればきっと、最悪の結末になるのが予想できたからだ。
どんな想像よりも、その想像が容易に浮かび上がっていた。


だからサラリーマンがいない間に、どうにか手錠を外して、外に出ようとしたのだけれど──────




「ただいま。今日も待っててくれたんだね」




仕事から帰ってきたサラリーマンは、至極嬉しそうにそう言った。


待っていた?
冗談じゃない。

吐き気のする思いで、京一はその言葉を飲み込んだ。


外に出れる訳ねェじゃんか。
こんな格好で。

手錠を嵌めて、男の草臥れたカッターシャツ一枚で、下半身は何も身につけないで。



だが────現実には、羞恥心やプライドなどかなぐり捨てて外に飛び出す事こそが、まだ幼い京一にとって、唯一の脱出手段だった。
子供がそんな格好で外を歩けば、何某かあったものとして、警察も動ける。
しかし、そんな事になれば真っ先に家に連れ戻されるのは勿論、自分が何をされたのかも説明しなければならない。

結局、京一は自分で自分の首を絞めていた。
一瞬でも同情の目を向けられるのが嫌で、ただそのプライドの為だけに、子供はずるい大人から逃げる術をなくしたのだ。



サラリーマンは帰ってくると、上着とネクタイを脱ぎ捨てて、夕飯を作る。

京一は、手錠をかけられた日から、朝食と昼食を採らなくなった。
食べるものは相変わらず冷蔵庫に作り置きされていたが、レンジにそれを入れるのも億劫だった。
目の前の男が作ったものを食べるのに嫌気が差していた。

けれども目の前に出されれば、生命の性か、本能か、どうしても食べてしまう。
食べなければ餓死する、死ぬ訳にはいかない、その思考が京一に最低限の栄養素を取らせる。


食べ終わると、サラリーマンは食器を適当に洗った。
それも終われば、いそいそと服を脱ぎ始める。

皺を作るのも気にせずに脱いで行く男を、京一はベッドの隅で待った。




「さぁ、おいで」




全裸で両手を広げて言う男に、変態、と言ったのは何度目だろう。
男はそんな台詞は聞こえていないようで、動かない京一に焦れたか、彼の方から歩み寄ってくる。

抱き上げられて、バスルームまで連れて行かれた。


全身を丹念に、綺麗に、洗われる。
手錠をされて不自由でも、それくらいは出来ると言ったが、男は聞かなかった、無視された。

男は、スポンジやタオルの類を使わなかった。
いつもその手に直にボディソープをつけて泡立て、そのまま立ち尽くしている京一の体を洗う。




「ッ……」




男の指が京一の乳首を掠めた。

男は、執拗に其処を弄る。
弄られている内に、最初は痛いだけだったそれが、別のものを齎すようになっていた。


平らな胸を撫で回し、淡色をした蕾を指先で摘まれた。
クリクリと捻るように捏ねられて、京一は漏れそうになる息を喉奥で堪える。




「すっかり敏感になったね……」
「…ッ…ふッ……!」




痛かったのに。
痛いだけだったのに。

いつの間にか、痛みなんて、ちっともなくなっている。
それだけでなく、あのぞくぞくとした感覚が背中を駆け上って、思考を絡めて取って行って。




「…ん…く、……あッ…!」




きゅう、と摘んで引っ張られて、堪えていた声が出てしまった。


乳首を洗いながら────弄りながら、男の片手が腹を滑って下りて行く。
行き着いたのは幼い肉剣で、男は薄い笑みを浮かべながら、其処を扱き始めた。

ヒクン、ヒクンと京一の体が震えて、腰が逃げる。
男は横から京一の体を抱いて、片手で乳首を弄り続けながら、中心部を刺激した。




「や、あッ、あッ…んんッ…!!」




直ぐに頭を持ち上げるそれ。
小さな玉袋をやわやわと揉みしだかれるのも、京一にとって、堪らない刺激になる。

がくがくと膝が笑って、崩れ落ちそうになる。
乳首を弄る手の腕は、京一の背中に回っていて、それで辛うじて支えられていた。
殆ど抱えられている状態で、京一はバスルームの中で立っているのだ。


小さな欲望が完全に頭を上にした頃に、男は京一の其処を解放した。
吐き出す直前まで上り詰められた体には、拷問と同じ意味を持つ。


痛い程に張り詰めているのが苦しくて、京一は男に縋りついた。
他に頼れるものがないから。

男はにこにこと、相変わらずの笑みを浮かべて、京一に言う。




「泡を落とさなくちゃね。其処に座って、足を開くんだ」




言って、背中を支えていた男の手が離れる。
直ぐに京一の膝が折れて、ぺたんと其処に座りこんだ。


男が蛇口を捻ると、シャワーから湯が吐き出される。
水圧はそれ程強くはなかったが、湯の温度は高めに設定されていた。

それを横目に見ながら、京一はバスタブに縋りながら、ずりずりと後退する。
けれどもバスルームのドアはいつも男の向こうにあって、京一に逃げる術は与えられなかった。
何度も男を蹴って叩いて退かせようとしたけれど、一度だって効果は得られなかった。

だから、早くこの地獄から開放されるには、男の言うなりになるしかない。



バスタブに背中を預けて、京一はおずおずと足を開いた。
泡に塗れた体は、風呂場の熱気の所為だけではなく、桜色に蒸気している。

その体に、男はシャワーを当てた。




「っぷ…ん…ッ!」




頭の天辺からかけられたシャワーは、一通り泡を流した後、ある一点へと集中された。




「ひ、う、あ…! ん、や、熱……あッ、んん…ッ!」




張り詰めて一層敏感になった、幼い肉棒。
京一はビクッビクッと体を震わせながら、しかし足は閉じようとしなかった。


最初にこれをされた日、咄嗟に足を閉じたが、無理やりにまた開かれた。
その上に湯ではなく冷水を其処に当てられて、散々のた打ち回る羽目になった。
火照った躯に浴びせられた冷水は、まるで拷問でもされているかのように痛かったのだ。
そしてそのまま、イってしまった。

水よりも湯の方がマシだと学習してからは、反射的に閉じそうになる足をどうにか堪えている。




「あひッ、ひッ、あッ、んぁ…あああ…!」
「そろそろイクかい?」
「あッあッ、イクッ、イク、イクぅ……!」




鎖で繋がれた手を握り締めて、京一はぶるぶると全身を震わせる。
そして間も無く、背を仰け反らせ、絶頂を迎えた。




「あッはッ、あぁあ────ッッ!!」




吐き出した精液が京一の腹に降りかかる。
が、それは直ぐにシャワーの湯に流されて、排水溝へと消えた。


背を預けていたバスタブから滑って、京一は床に突っ伏した。
シャワーの湯が頬を流れていく感触が判ったが、気にする気にもなれない。

肌を色付かせて、肩で呼吸をする京一は、十歳と言う年齢に不釣合いな艶を醸し出していた。
冷えないようにとシャワーを当てられるが、それさえも性感に繋がるようで、水圧のかかる場所を変える度に弛緩した体が跳ねる。
男が悪戯に水圧に太腿に当ててやれば、逃げるように小さな体を丸まらせた。



胎児のように丸くなった京一に、男はくすりと笑う。
それは子供を慈しむような笑みである筈なのに、京一にはそうは見えなかった。

動かない体を逃がそうとしても、直ぐに壁にぶつかる。
頭ではそれを判っていたが、体が何よりも拒否していた。
これから先の行為を。


だが、男には京一の怯えなど関係ないのだ。




「さあ、後ろを向いて。こっちも綺麗に洗わないとね」




いつもこの繰り返しだ。
執拗に手の平で体中を満遍なく撫でられて、中心部を刺激されて射精する。
その後、必ず、男は秘孔を洗うのだ。




「汚いところなんだから、きちんとしなくちゃ」
「……うッんん…!!」




この言葉も、いつも繰り返される。

まるで脅し文句のようだった。
京一が此処を綺麗に出来ないから、こうしてしなければいけないのだと、言われているようで。



言われたままに、京一は後ろを向いて四つ這いになる。
つぷ、と指が秘孔に埋められた。




「う、あ、あ、ん!」




ぬぷぬぷと侵入してくる異物に、声が上がる。
そうすると、男は決まって、京一の口を手の平で覆って塞いだ。


毎日こうして弄られた所為で、体はその行為を受け入れる事に慣れてしまった。
痛かった筈の挿入も、もう痛みより別の感覚の方が勝る。

まともな呼吸を妨げられたまま、ぐちゅ、ぐちゅ、と秘孔を広げられる。




「ッん、んッ…ふ、んふッ…んむぅ…んんッ!」




生理的に浮かんだ涙がぼろぼろと溢れ出す。
最初の内はこれも堪えていたのに、いつからか忘れてしまった。


ずちゅッぐちゅッと粘着な音が響いて、京一はヒクヒクと腰を震わせた。
上半身を支えていた腕に力が入らなくなって、突っ伏す。
腰だけを高く掲げた格好になっていると、その時の京一に自覚はなかった。

幼い京一には、自分がどんな格好をしているのか、どういう事をされているのか、この行為の意味はなんなのか。
考えられるだけの余裕も知識もなく、ただ早く、このぞわぞわとした正体不明の感覚が終わる事を切に願った。




「う、ん、んぐッ…ふ、んむ……うぅん…」
「どう? 綺麗になったかな?」
「んッ、んッ、ふぁッ…んぐ、うぅッ」




問われても、京一に返事をする権利はない。
与えられるのは、正体不明の感覚と、ただ啼き喘ぐことだけ。




「確認しなくてはね」
「ん……は、んッ!」




ぐにぃ、と穴の口が強引に押し広げられるのが判る。
床に爪を立てて、京一はその感覚をやり過ごそうとした。


広げられた秘孔から、泡が溢れ出して来る。
男はくすりと微笑んで、出しっぱなしのまま転がしていたシャワーヘッドを手に取った。




「泡を流すから、自分で穴を広げて」
「……ッ…ぅ……ん……ッ」




逆らえない。
逆らってはいけない。

刷り込まれたその命令に従って、京一はうつ伏せのまま、繋がれた手を股下へと潜らせた。
秘孔の辺りの皮膚を引っ張るように力を入れて、呼吸を詰める。


自分自身で広げた其処に、シャワーヘッドが宛がわれる。




「ん、ぐ、んんん────ッ!! んぅ、ふ、ふ、ふぅうん…ッ!!」




肉棒にされるのとはまた違う、体内へと直接注ぎ込まれる熱。
ぼろぼろと大粒の涙が京一の目から溢れ出したが、男はシャワーヘッドを当てるのを止めなかった。

京一は身悶えしながら、それでも言われた通り、秘孔を広げていた。
止めれば次に何をされるか判らない。
叩かれるならまだ良いけれど、この“可笑しな奴”が何を考え付くのか、京一にはもう予想がつかなかった。
予想が出来なければ覚悟も出来なくて、怖くて怖くて堪らない。




「んッんッ! んんッ、んくッ! ふぅ、ふぅううッ!!」




せめて叫べたら楽なのに。


男はいつも、秘孔を攻める時、京一の口を塞ぐ。
肉棒を弄る時は幾らでも声を出させるのに、此方は絶対に声を出させようとしなかった。
何を思ってそうしているのかは、京一には判らない。

何度か口を抑える手に歯を立てたが、男はそれすら笑ってみているだけだった。
面白がっているのかも知れない、としか京一には思えない。





「ん、ん、んーッ!」
「なんだい? 辛い?」




熱以外の何物でもない液体が流れ込んでくる感覚。
腹の奥がぐるぐるとして来そうで、京一はもう止めて欲しいと、声にならない声で訴える。

そんな京一に囁く男に、子供はこくこくと無我夢中で頷いた。


それなら止めよう。
言って、男はあっさりとシャワーを離す。

代わりに──────ぐちゅ、と再び男の指が京一の秘孔を抉る。




「んくッふぅ!」




ぐちッ、ぐちゅッぬぽッ…!

濡れた音がバスルームに反響する。
それが幾分も続いていけば、京一の呼吸は次第に零れるものになり、強張っていた躯も弛緩して行く。




「んッ、はッ、んッ…く、んふ…ふぅッ、くぅん……ッ」
「大分綺麗になったね。いい子だ……」
「んぅぅッ!!」




ぐちゅぅ、と指が根元まで侵入し、京一の前立腺を引っ掻く。
ビクン! と小さな体が跳ねて、京一は床に額を擦りつけた。

そのまま、男はいつものように、其処ばかりを攻め立てる。
その際の頭が真っ白になっていく感覚が、京一は嫌いだった。
嫌いなのに、拒めなくて、逃げられない。




「んぅッ、うッうッ! ふッ、ひッ、んッ、んんッ! んッんはッ、くッんあぅうう!」
「毎日綺麗にするんだよ。毎日だ。ここは一番汚い場所なんだから」




判った?

ずちゅッぬぢゅッ、と秘孔を犯しながら、男は繰り返し囁いて確かめる。
まともな声が出せない京一は、只管それに頷くしかない。


震える京一の体の下で、彼の幼い中心部は限界まで反り返っていた。
此処で吐き出したら、もう一回洗わないといけない。
それが嫌で耐えようとするのに、いつも出来なかった。

─────出来る訳がないのだと、まだ幼い京一には判らない。
我慢できない事が罪であるかのように囁く男を、京一は疑うと言う選択肢を知らなかった。




「んぅッ、うッ、いぅ、いぅッ、」
「うん? イクのかい? 駄目だよ、また汚れるだろう?」




そんな事を言われても、無理だ。
ふるふると頭を振って訴える京一に、仕方ない子だな、と男は背後で溜息を吐いた。

その時、男が笑っていた事など、京一が知る由もない。



男は、指を引き抜いては突き入れてを繰り返す。
ぐちゅッ! じゅぷッ! といやらしい音が一層激しくバスルームに木霊した。




「んぁッ、あッ、ふッ、んッ! くぁ、んふぅッ、んッ、んッ、んッんッんッ!」




口を抑えられていなければ、どれだけはしたなく、情けない声が漏れていた事だろう。
でもその代わりに、呼吸できない苦しさを味わう事はなかった筈だ。




「んッあッ、んッ! ふ、ふぅう─────ッッ…!!」




ビクッビクッと全身を戦慄かせて、京一は熱を吐き出した。
パタパタと蜜が床に落ちて、シャワーの流水で流されて行く。

膝の支える力も失って、京一は床に倒れ込んだ。
意識は辛うじて残っていたが、もう指一本とて動かす気力も残っていない。
男はそんな京一を抱き上げて、相変わらず狭い湯船へと身を沈めた。




「いつになったら我慢できるようになるのかな」
「……っは……う……」




ともすれば、そのまま湯の中に沈んでいきそうで。
くらくらとする頭で、取り合えず溺死だけはするまいと、京一は男の首に縋る形になっていた。


ぽんぽんと背中を撫でる手は、優しい。

………そう、優しいのだ。
撫でる時も、抱き上げる時も、いつだって。




でも多分、これは、可笑しいんだと、京一は思う。




優しい顔で笑う男の名前を、京一は知らない。
表札にも名前はなかったし、手錠の鍵を探して部屋の中を虱潰しに探し回って時も、身分証明らしきものはなかった。

そして男も、京一の名前を知らない。
優しく撫でられても、抱き上げられても、何も知らない。
……こんな生活をする理由も、知らない。


早く手錠を外して、此処を出て行きたい。
きっと、絶対、それが一番正常な事なのだと思う。

でも鍵は何処にも見付からないし、男は京一を外に出そうとしない。




いつまで、この生活は続くのだろう。





















終わりは案外と、唐突だった。




男の携帯電話が鳴って、話をしていたら、一気に男の顔が青くなった。
冴えないサラリーマンの顔で、何故か京一と、通話の切れた電話を交互に見て、焦りだした。

男は慌てて、下駄箱の奥に入っていた、非常用袋の中に隠していた京一の服を引っ張り出した。
木刀は、傘立てにあった閉じた傘の中に紛れ込んでいた。
それらをひっくるめて京一に押し付けるように渡すと、はやく着替えてくれ、と言った。


着替えろと言われても、手錠があってはどうにも出来ない。
そう行ったら、男は仕事の際にいつも持って行っていたケース鞄から鍵を取り出した。

……そんな所にあったのか。
どうりで見付からない訳だと、妙に冷静な頭で合点した。



手錠を外されて、ようやく自由になった手首は、少し鬱血が出来ていた。
それでもまぁ気にする程の事ではないと、それまで着せられていた男の草臥れたシャツを脱いで、自分の服に着替える。

着替え終わったら、木刀を渡されて、部屋を追い出されれた。





なんでェ、一体。





京一のその疑問は、ごくごく自然なものだった。
手錠をかけて、監禁紛いな生活を送らせていた癖に、この急変は訳が判らない。

理由ぐらい知っておいてもいいだろうと、京一はマンションの階段の踊り場に座っていた。
子供が一人、木刀を携えてそんな場所に座り込んでいるのは聊か目立ったが、別に何を言われようと気にしないことにした。
誰かに声をかけられたら、友達を待ってる、とでも言えば良い。


何日振りかの外の空気は、新鮮なものに感じられた。
別に空気が綺麗な場所でもないのに、空気の篭った狭い空間に閉じ込められていたと思えば、この開放感たるや。



しばらくぼうっとしていると、階下から子供を連れた女性が上がってきた。
女性は京一を見るとにっこり笑って会釈して、子供も笑ってこんにちは、と言った。

挨拶だけはちゃんとしろと躾けられていた。
だから、小さな声で「こんちは」とだけ言った。

女性と子供は、そのまま階段を上がって行った。


何気なく二人の行き先を見ていると、──────あのサラリーマンの部屋に行き着いた。




妻と、子供。

その答えを想像するまで、時間は要らなかった。




(成る程。そりゃあ、オレがいちゃ都合が悪ィ)




ただいるだけなら、まだ良かっただろう。
迷子だか家出をしたかの子供を保護している、だけなら。

──────でも、あんな事をしていたから。




(後ろめたい訳だ)




手錠も。
下肢を隠させないのも。
風呂場でしていた、あの行為も。

きっと全部、後ろめたいのだろう。
ふわふわと笑う女性と、にこに笑う子供を見ていたら、京一とてそう思う。



男は単身赴任だった。

今日が何月何日なのか、京一はあまりはっきりとは判らなかったが、昨日のニュースでは連休に入ったとか言っていた気がする。
だから多分、それに合わせて、妻は子供を連れて、離れた地で一人頑張る夫を励ましに来たのだろう。


──────愛する夫が、得体の知れない子供を囲っている事など、知らずに。




(ま、丁度いいや。お陰で外に出れたし)




手錠もないし、服も戻ってきたし、木刀も無事。
京一にはそれで十分だった。









階段を下りて、何日ぶりか、本当の意味で外に出た。
行く宛は─────相変わらず、ない。


取り合えず腹が減った。
前に穴場だったゴミ捨て場は、まだ使えるだろうか。
寝床も探さないといけない。

何処に行けばいいかなと周りを見渡して─────猫が横切ったので、一先ずそっちに向かうことにした。










チビ京を調教するのが書きたかったんです。
一日で書き上げた私、どんだけこの話を楽しんでたんだ……

なんか結局中途半端な感じになりましたが、出来ればこの先の話も書きたいです。まだまだチビ調教したいです(死ね!)