I want to bully a favorite person 後編





その日、京一はホームルームから三時間目まで、ずっと教室にいた。

勉強している訳でもなかったが、動くのが辛そうだというのは、見ている側にも感じられた。
何せ朝から赤い顔をしていて、時折熱の篭った息を漏らしているのだ。
常と全く違う様相なのは、誰が見ても明らかだった。


原因は勿論、親友によって秘部に埋め込まれた人工物────バイブ。
登校中だけは大人しくしていてくれたそれは、ホームルームの最中に突然スイッチが入った。
遠隔操作でスイッチを切り替えられるそれを、親友は気紛れに入れたり切ったりを繰り返す。
それから京一の官能を上げた後、絶頂を迎える間際にスイッチは切られ、若い体は中途半端に高められるばかりで、開放を許されなかった────これは拷問に等しい苦しさだ。

反撃したくても、すれば振動の強さを上げられて、結局京一には何も言えなくなる。
精々睨みつける事だけが、今の京一に出来るささやかな抵抗であった。




自分の席で机に突っ伏したまま動かない京一を、最初に気にしたのは葵だ。
それから小蒔が揶揄い半分、心配半分で声をかけてきて、醍醐も流石に気にするようになった。
最後に遠野がやって来て、動かない京一をちゃっかりデジカメに収めてから、「どうかした?」と聞いてきた。

京一が彼女らの質問に黙したままでいると、自然と矛先は龍麻へと向けられた。
京一と同じ質問を向けられた彼は、いけしゃあしゃあと、




「寝不足じゃないかな。昨日寝てないらしいから」




言って、いつもの笑みをクラスメイト達に見せるのだ。
あのふわふわと、ぼんやりとした、女子生徒に人気の笑顔を。

それを視界の端に捉えてしまった京一の思った事は唯一つ─────今すぐブン殴りたい。


寝ていないのは龍麻の所為だし、今こうして動けないのも龍麻の所為だ。
喋るのが億劫なのも、保健室に行く為の移動すらままならないのも、全部、そう全部! 龍麻の所為。
だのに自分をこんな目に合わせている張本人は、けろりとした顔でいつもの日常を送っている。

動けるのなら迷わず殴るのに、って言うか地平線までブッ飛ばすのに。
物騒な事を考えながら、京一は只管、今日一日をどうやって(表面上だけでも)平穏に過ごすかを考えていた。




取り敢えず、仲間達の相手は龍麻に任せよう。
普段はぼーっとしていて肝心な時に嘘が吐けないこの相棒は、こんな時にだけはいつもの顔で嘘を吐ける。
いや、厳密に言えば嘘ではなくて真実を言っているのだが、余計な部分は綺麗にオブラートに包まれているので、嘘は言っていないけれど、結局騙しているのは騙している訳で─────。


だから仲間達にバレる心配はないのだが、問題は教師陣だ。
殆どの教師は京一が教室にいようといまいと、いた所で堂々と寝ていようと、注意してくる事はないから問題ない。
だがクラス担任のマリアと、生物教師の犬神杜人だけはそうも行かない。

マリアにはホームルームの時にも声をかけられて、気分が悪いなら保健室に行っていいと言われた。
その言葉は気持ちとしては有難いのだが、動ける状態ではない京一にとっては、意味の無い気遣いとなってしまった。

ホームルームが終了してマリアへの危惧は一段落したが、片付かない問題は犬神である。
何せこの後、生物の授業が入っているのだ。
逃亡しようにも、動ける状態ではない所為で、犬神に見付かる前に教室を離れるのは無理そうだ。


生物じゃなくて科学とか、あと出来れば実験とかだったら良かったのに。
移動教室だったら、このまま教室でサボっていられるのに。





少しだけ顔を上げれば、のほほんとした顔で葵と話をしている、一連の元凶が目に付いた。
無性に腹が立ったので、後ろの席に座る男子の机上にあった消しゴムを勝手に拝借して、投げつける。
消しゴムの持ち主が何するんだ、と言ったが、聞こえない。

ぽこん、と見事にそれは命中した。


頭に当たった軽い衝撃に、龍麻はひりひりとした頭を摩りながら足元を見る。
其処には小さな消しゴムが転がっており、拾って振り返ってみれば、既に京一は机に顔を伏せていて。




「君のだよね。返すよ」
「あ、ああ。緋勇も大変だな……」




男子生徒には、京一の気紛れな悪ふざけに龍麻がつき合わされているように見えたのだろう。

龍麻と京一が並んだ場合、どちらに非があるかと問われたら、十中八九が京一と答える。
そんな親友がまたしても京一は憎らしく思えて来た。




(大変なのはこっちだ!)




後ろに座る男子生徒をぶっ飛ばしたい。
ただの八つ当たりだとは判っているけれど。



龍麻が京一の隣を横切って、後ろの席の生徒に消しゴムを返す。

と、同時に、





「……………ッッ………!」





下腹部に埋め込まれた人工物が振動を始め、京一は息を呑む。
上がりかけた声を飲み込んで、京一は湧き上がるものを誤魔化すように組んだ腕に両の爪を立てた。




「京一君?」
「ん? どしたの、京一?」




葵と遠野が変調に気付き、駆け寄ってくる。




「京一君、やっぱり保健室に行った方が良いわ」
「此処まで具合悪そうなのも珍しいわよね。本当にヤバいんじゃない?」
「……あー…まァ、その内な……」




マリアの時同様、心配とか気遣ってくれるのは、むず痒くも嬉しいのだけれど。
だからと言って彼女達の言うように、今すぐ保健室に行けというのは、今の京一には無理だ。

振動はまだ続いていて、必死で息と声を漏らすまいと歯を噛む。
そうしてじんわりと汗が滲み出るから、余計に彼女達の心配を買ってしまう。




(マジで……やべ、え…っく……ぅ……ッ)




保健室には行けない。
行った所で治るようなものではないし。

だが、このまま此処にいるのも辛い。
バレやしないか、龍麻がいつ何の気紛れを起こすか、そんな事を考えながら過ごすのは無理だ。
何より、下部を攻め立てる人工物の存在が京一を苛む。


なるべく平静を装って、京一は椅子を立った。




「あァ、ま…そう、だな。犬神にゃ言っといてくれや」
「ええ。ゆっくり休んでね」
「京一、ホントに寝不足なだけなの? なんか吐きそうに見えるけど」
「……気分悪ィのは確かだからな…その所為だろ」




クラスメイト達の顔を見ないように、クラスメイト達から表情が見えないように。
京一は視線を逸らして、強引に、足早に歩を進めた。

一歩踏み出す度に、穿たれたものが内部を抉る。
それでも意地とプライドで、京一は漏れそうな声と吐息を噛み殺し、眉間に皺を寄せることで不機嫌を繕った。
機嫌の悪い京一に近付く度胸のある者など、ほんの数人しかいないから、これで殆どの生徒は道を開けてくれた。




教室を出る間際。
視界の端に映った親友を睨み付ければ、いつもの笑顔が返ってきて、余計に腸が煮えくり返った気分になった。



















トイレは男子生徒が連れション屯をしているし。
三階からグラウンドや中庭は遠過ぎる。

そうなると─────辛くはあったが階段を登り、屋上ぐらいしか行ける場所は思いつかなかった。


授業開始まで間がなかった事が幸いし、廊下に残っている生徒は殆どいなかった。
屋上へと続く階段など利用する生徒も勿論皆無、京一にとっては都合が良い。
途中途中を立ち止まりながら、振動に耐えつつ、一段一段、上へと登る。

いつもは全く使わない階段の手摺りを、今日ほど有難いと思うことは、恐らくないだろう。
それがなければ立ち上がれない程、京一の躯は甘美な毒に支配されていた。




どうにか階段を上り切って、重い扉を押し開ける。




「………ッう、あ……!」




少し力を入れるだけで、秘部のバイブが京一を苛む。
屑折れそうな膝を叱咤して一歩踏み出すのが、京一の限界だった。




「っは……ん…くそ……ッ」




誰に向けて悪態を吐けば良いのか。
先ず浮かんでくるのは事の元凶だが、今はそれに文句をつける事も叶わない。

今朝の蕩け切った頭でこの事態を許してしまった自分を殴りたい。
でも嘘でも応と言わなければ、龍麻は絶対にあの状況から京一を逃がそうとしなかっただろう。
………そう考えていると結局の所、彼に隙を見せた自分が悪い────と言う事に行き着いてしまう。


閉じたドアが万一開いた際、直ぐには見付からないように。
重い躯を引き摺って、扉とは裏側に回る。




「…っは、ん……ぅ、……んんんッ!」




ずるずると座り込んだ、一瞬の力の緩み。
肉壁を押し広げられた快感に、京一は少量だが射精してしまった。

が、それでもバイブの振動は止まらない。




「っふ、は、はぁッ、んあぁ……!」




達した直後の躯は、官能を高められたままだから、酷く敏感で。
何より、朝から長い刺激と焦らされた所為か、勃起した雄は一向に収まる様子を見せない。


下着を押し上げる張り詰めた一物が痛い。

此処には誰もいない、意地やプライドを張る相手はいない。
唯一、親友の顔が浮かんだが、あれを相手に今更プライドも意地もないと、今ばかりは開き直った。
それより“こっち”を慰めないと、自分が壊れてしまいそうだ。



ジッパーを下ろして下着の中に手を入れる。
下着の中は先程の射精で汚れ、履いているのも気持ち悪い。
だがまともな状態でなかったのは朝からだから、それは今気にはならなかった。




「んッ、あッ……く……はぁッ……」




両手で張り詰めた一物を上下に扱く。
先端を指の腹で刺激し、爪を立て、とにかくイく事だけを考えた。




「う、ん、んんッ……ふぁッ…は……あ、あ……!」




手の中で、肉剣がビクン、ビクンと痙攣する。
溜まった熱を吐き出そうとして、益々張り詰めていくのが判る。

だから、直ぐに吐き出せる筈────なのに。




「ふぁ、は、っひ…な、んで……ぃうぅ……ッ」




どれだけ刺激を与えても、吐き出されない熱。
決定打が足りなくて、京一は唇を噛んだ。


その直後、バイブの振動が強さを増し、思わぬ刺激に京一の躯が大きく跳ねた。




「ひッあッ、あ、んぁあぁああッッ!!」




ドピュ、と白濁液が吐き出される。
先刻まで、幾ら刺激しても一向に昇華されなかったのに。



────疑問よりも開放感と、続く刺激の快楽に酔って、京一は放心状態になっていた。
小刻みに痙攣し、身を震わせながら、京一は熱の篭った呼吸を繰り返す。

官能に染められた瞳と、汗が滲み、朱を含んだ肌。
常の意志の強さや白刃の閃きは、今は見る影もない。
ただ無遠慮に与えられる快楽に身を任せ、喘ぐ。




「あ、あ……あひッ、ひぃッ! ん、く……ふはッ、はぁ……ッ」
「気持ちいい? きょーいち」




それでも、亡羊とした意識に振ってきた声に、視界は一気にクリアになり。
現実に戻った京一は、咄嗟に開きっ放しになっていた足を閉じて顔を上げた。




「龍、麻………」




壁の影から此方を覗き込み、笑みを浮かべている龍麻。
いつもの昼寝時、ひょっこり現れる時と何も変わらない表情を浮かべている。

だが彼が手に隠し持っているのは、京一にとって我が身を縛る見えない鎖と、拷問具同然。


カチリと乾いた音がして、京一は目を見開いた。
更に強い振動を始めた菊門の刺激に、飲み込まれて。




「あぎッ、ひ、いあッ! た、つまッやめぇええッ」
「見てたよ。前でイけなかったのに、後ろだと直ぐイっちゃったね」
「言うなッんぁ!」




龍麻は京一の前にしゃがむと、京一の閉じた膝を開かせる。
布を押し上げてテントを作る雄を見ると、くすりと、あの夜の笑みを見せる。

ぞくり、と恐怖ともう一つの感覚が、京一の背を走った。




「汚れちゃったね。脱いだ方がいいよ」
「バッ…や、め……離せ…ッ」




龍麻の手が強引に、京一の制服のスラックスとパンツをずり下ろす。
無論、京一は抵抗したが、まともに力が入らない状態で龍麻に敵う訳がない。

勃起したペニスと、バイブを咥え込んだ秘部が露にされる。




「大丈夫だよ。授業始まったから、誰も来ないし」
「そういう問題じゃ……あッ!」
「でもグラウンドには聞こえるかなぁ」




特に問題視していない口調で呟く龍麻と、咄嗟に手で口を押さえる京一。
さっき散々喘いでしまったのを思い出し、顔が真っ赤になる。

そうして羞恥に赤らむ京一の表情さえも、龍麻にとっては自身の欲望を煽るだけのもの。


足首までパンツごとスラックスを下ろされる。
中途半端に留まって塊を作っているのが、脱ぐよりも返って恥ずかしい気がした。


龍麻は京一の目尻に口付けると、反り返って天を突いている一物に指を這わせた。




「ひッん……!」
「もっとイかせてあげる」
「や、やめッ…んぁッ、あッあッ…!」




イかせてやると言いながら、龍麻の手は京一のペニスを扱くばかり。
アナルを攻め立てるのはバイブの一定の振動だけ。
それで京一が、本人には不本意でありながら、絶頂を迎えられない事は知っていながら、龍麻は攻め手を変えなかった。


自分で刺激するよりも、他人に刺激された方がやはり感じ易い。
京一は壁に背中を押し付けながら、必死で声を噛み殺そうとしていた。




「んッ、うッ、ふぅうッ…! く、んひッ……う、ぅ…!」
「あれ? イかないの? イきそうなんでしょ?」
「………ッッ!!」




左手で龍麻の頭を力一杯殴ってやる。

加減など忘れた一撃を脳天に食らって、これは流石の龍麻も応えた。
じんじんと痛む後頭部を摩ると、拗ねるように唇を尖らせて、




「ひッ! う、あ、んんんッ! やめ、先っぽ触ンなァ……ッ!」
「痛かった」
「そんなのッひッ、ひんッ! オレの所為じゃ…あ、う、んあぁ…!」




グリグリと亀頭を攻められ、京一は空を仰いで空を震わせた。

其処までされているのに、ペニスは肥大化するばかりで、熱を解放しない。
体内で暴れ周る自分の熱にまで犯されているような気分だ。


開きっ放しの京一の口端から零れた唾液がいやらしく光る。
それを舐め取って、龍麻はゆっくりと、手の位置を下げていく。
秘部のラインをなぞる様な手付きと、微かな皮膚の摩擦が、京一の思考を官能一色に染めて行く。

流される事に今更抵抗する術などない。
既に京一には、抗う力も、そうする意義さえも、失われているのだから。




「たつ、ま…ん、あッ…あ、ひ……いぁ…!」
「バイブで奥突いてあげる」
「ん…あッ! やめッ! あひッ、ひぅッひんッ! いッいあッあッ!」





言葉通り、龍麻の手はバイブを捉まえると、振動を切らないままで激しく抜き差しを開始した。

機械的な振動は京一の肉壁を広げて。
龍麻の手による抜き差しで、堅い先端が内臓を押し上げるように、京一の最奥を突き上げる。




「ひッいあッ! や、らめ…た、つまァ…! イく、イくぅぅうッ!」
「ね、何処でイくの? 京一は」
「んひッ! け、ケツ穴ッ…ケツ穴で、イっちまうぅう……!!」




卑猥な言葉を口にすれば、羞恥よりも、背徳の快感が勝る。
自ら自分を貶めながら、京一は膝を開いて腰を浮かし、ビクビクと痙攣して絶頂した。




「はッ…あ…あぁあ……あッ…うぁ……」
「いやらしいの、一杯出たね」




そう言って見下ろす龍麻の後ろに、抜けるような青い空があって。
熱に飲まれてぼんやりとした意識に、体育の授業に騒ぐ生徒の声が聞こえて来て。

平日の学校の屋上で、卑猥な行為をしている自分達。
目の前の、見た目だけは温和で人畜無害な少年に、好きにされている自分。
そんな状況に下肢がまた疼いて、オレってSの方だと思ってたんだけどな……と、茫洋とした頭で考える。


でも、そんな事はどうでも良いとも思う自分がいて。
どちらに天秤が傾くかと行ったら─────動物の本能に比重が片寄る。




「もっとイきたい?」




耳元で囁く男に、雁字搦めにされる自分。
本当に、支配されているのだと、実感する瞬間。


頷かない代わりに、龍麻の顔を引き寄せて、唇を重ねた。
舌を絡め合わせている内に、主導権は龍麻に奪われる。

ちゅく、じゅる、と水音が鳴って、京一の喉の奥から吐息の欠片が零れ出る。




「ん、んッふッ、ふうッ…っは、はん、ん、んく、んふぅ…」




龍麻の手が悪戯に京一の下肢を刺激して、その愛撫に京一の躯は従順に反応する。


広げた足の間に龍麻の体躯が割り込んだ。
股間で振動する玩具の強烈な刺激は相変わらず京一を苛んで、思考回路から理性を浚う。

重ねた唇の隙間から唾液が零れ、赤いシャツに汚い滲みを作った。
それ以上にドロドロに溶けた下肢は、だらしなく卑猥な蜜を零し続けている。
性衝動にのみ染められた躯は、本能の赴くままに腰を揺らめかせた。




「うッ、んぐッ…たつま、ぁッ!」
「京一の中、挿れたい。もういいよね?」




言うなり、龍麻は手早くジッパーを下げると、其処から膨れ上がった一物を取り出した。
京一の雄も刺激によって肥大しているが、京一の目にはそれ以上に凶暴なモノに見える。
それが自分の中に挿入ると言うから、余計にそう感じてしまうのだろうか。



京一のアナルは、昨晩からずっと銜え込まされている所為で、今更慣らす必要などある訳もなく。
太いバイブを銜え込んで尚、突きつけられた肉棒を欲して肉壁がヒクヒクと伸縮を始めていた。

龍麻はその秘孔に自身を宛がう─────振動するバイブを抜かないままで。




「ひッいッ……あ───────……!!」





声にならない声が上がって、京一は呼吸をするのを完全に忘れた。
酸素を求める魚のように口を開閉させながら、眼差しは虚空を彷徨って現実からかけ離れていく。
龍麻の背中に回した手が無意識に爪を立て、彼の背中を強く強く引っ掻いた。

菊座が今まで以上に押し広げられていく感覚は、酷く苦痛で、同時に酷く快感であった。
あらぬ場所があらぬ形に変えられて行っているのが、恥ずかしいのに気持ちいい。
それだけ、京一の躯はこの強過ぎる快楽の虜となっているのだ。




「あ、が、はあぁあ……! あッあッ、挿入って…!」
「ん、くッ」
「んぁ、あ、あ、あ、あ、広がるッ! ケツまんこッ広がっちまうぅッ!」




女のような受け入れられる器官ではないはずなのに。
其処は既に男としての意義を失い、侵入者達をあっさりと飲み込み、離すまいと締め付ける。


ズブリ、と龍麻は強い力を込めて、バイブを京一の中へと押し込んだ。
半分以上を銜え込んだそれは、京一の肉壁と龍麻の肉剣に圧迫され、それ以上奥へも進めず戻れもしない。
ずっぽりと其処にハマってしまい、相変わらず激しい振動で京一を攻め立てた。

バイブの振動に煽られているのは、何も京一だけではない。
其処に自身を挿入させた龍麻のペニスも、動揺に振動を受けて、男の敏感な部分が研ぎ澄まされていく。




「凄いッ…京一のナカと、バイブで…僕、イきそう……ッ」
「あッイくッ、来るッ! も、マジで、龍麻ぁ…ッ!」
「動くから、一緒にイこうね」




龍麻は京一の腰を両手で捕まえると、引き寄せると同時に下から上へと強く突き上げた。
ビクンと京一の躯が大きく跳ね上がり、天を突いた京一のペニスから白濁が溢れ、二人の腹を汚す。




「あッあッあッ、そこッそこいぃッ! 龍麻ッ、もっと…!」
「京一、凄くエッチな顔してるよ。可愛い……」
「んぐッ、ふぅ…ッ! ふひッひはッらめ、あッあ、激しッ…!!」




力を失った京一の腕は、打ちっぱなしのコンクリート床の上に投げ出されていた。
されるがままに躯を揺さぶられながら、京一はただあられもない嬌声を上げる。


何度か穿たれている内に、埋め込まれたバイブが少しずつ位置を変えていく。
ほんの数センチ、数ミリずつ、ほんの少しずつ。
それがある一点に当たると、京一は躯を海老のように仰け反らせて悶えた。




「ちょ、待ッ! バイブがッあッあッあッあッあッあッ!!」




電流でも流したかのように痙攣する京一に、龍麻はくすりと笑った。
黒々とした、底知れない深みを持った瞳で。



龍麻は京一の両足を肩にかけると、そのまま京一の下肢を持ち上げて腰を浮かせた。
押し開かせた足が顔の横に来るぐらい、彼の体を折り畳む。

京一の顔の間近に、彼自身の反り返ったペニスが近付いた。
正常な思考が僅かでもあれば、止めろと頭を振っただろうに、今の京一はそれさえも出来ない。
冷たい機械の止まらぬ振動と、支配する男の肉棒に貫かれ、ただ嬌声を上げて鳴くしかない。


上からプレスするように抉られて、京一は熱に浮かされた虚ろな目で喘ぐ。




「はひッたつ、ま、ぁああああッ! そこ、もっと…もっと突いて…ッもっとぉッ…んひぃぃ!」




恥も外聞も快楽に奪われて、もう京一は、此処が学び舎である事も忘れていた。

誰かがサボりでこの屋上に来るんじゃないかとか、床の下では普通に授業をしているクラスがあるとか、幾ら此処が屋上で も大声を出せばグラウンドまで声が響くんじゃないかとか─────もう考えられない、どうでも良い。
快楽に支配されて、男なのに女のように貫かれて喘いで、よがって、もっともっとと欲しがって─────プライドなんて結局は動物的本能の前では無意味なものだ。



親友で恋人で悪魔な支配者は、乱れ喘ぐ少年を見下ろして殊更愉しそうに微笑んでいる。


誰にも屈服する事を知らないかのように、あれだけ勝気で強情な親友は、今だけはまるでただの雌犬のよう。
朝から────いや昨日の夜から彼はずっと、自分の手の中で従順に乱れて舞い踊る。
この優越感と言ったら、他にない。

授業中に気紛れにバイブのスイッチを入れたり切ったりしていた時もそう。
クラスメイトや教師達に気付かれまいと、単なる体調不良を装いながら、時々睨んでくるのが堪らなく愉しかった。
だってその間、怒りから来るものであるとしても、彼は自分の事しか見ていないから。


そして教室を出た後、与え続けられた快楽に耐え切れず、陥落。
掴んでいた理性の蔓がぷつりと切れて、この手の中に堕ちて喘ぐ。

自分の手で欲望に高めた躯に絶頂を与える瞬間、浮かぶ笑みは誤魔化せそうにない。



ズン、と龍麻は京一の最奥を穿つと、そのままぐりぐりと先端を壁へと押し付けた。
京一の足が爪先までピンと伸びる。




「ほら、京一。イくでしょ? 京一、お尻こんなに苛められてイくんでしょ?」
「んぁッあひッはッ! イく、ケツまんこ、で、イくぅぅぅぅぅぅッッッ!!!」





ガクガクと躯を痙攣させ、口端からだらしなく唾液を零し。
蜜壷からも濡れた愛液を垂らしながら、京一は絶頂を迎える。

勢いよく吐き出された劣情が京一の顔を汚した。
その汚れた顔を見下ろしながら、龍麻も、京一の胎内へとカウパー液を吐き出す。




「あッあ、あぅ、ひッ……」
「……ッ……どう、京一…?」
「あ…つ………熱、くて…きもちィイぃ…………」




恍惚とした顔で零れた京一の言葉に、龍麻は満足する。

もう一度奥を突いて、龍麻は欲望を最後まで搾り出した。
吐き出され溜められて行く感覚に、京一は最後まで喘いで悶える。



萎えた雄をゆっくりと摘出する。
散々荒らされた肉壁は、それでも懲りず、龍麻のペニスを引き止めようと絡み付いてくる。
が、結局ペニスは引き止められず、広がった穴はぽっかりと淋しそうに空間が出来ていた。

其処へ龍麻は、自身と同時に抜けようとしていたバイブを掴み、また奥へと挿入させた。




「あッあ………!!」




朦朧とした意識で、それでも終わったのだろうと思っていた京一は、瞠目する。

バイブは電池が切れたのか、いつの間にか振動が終わっていた。
しかし止まっているだけの事で、張り型の形までもが縮んでしまった訳ではない。
太いそれは存在を自己主張するには十分だった。


目を白黒させる京一に、龍麻はそっと顔を近付け、





「今日一日って約束だから」





そう言って見せた微笑に、血の気が失せたと同時に─────期待感を持ってしまう辺り、ハマってしまった自分を諦めるしかないのだろう。











龍麻がドSで、京ちゃんがドMで、鬼畜なのが書きたかったんです。
ええ、後悔してません。すっげー楽しかったです(Sはお前だ!)。

この後、京一が教室に戻るかは謎です。
本人は絶対に戻りたくないでしょうが、龍麻が真っ黒ですからね……
戻ったらバイブで苛められそうだし、戻らなかったらまたスるんですよ、絶対。