Fear of cicatrix 後編




「………ッ…ッ……!!」




声にならない声をあげて、京一は射精した。
はくはくと唇を開閉させてはいるものの、呼吸すら忘れている。

そんな京一が我に返るのを待たず、龍麻は伸縮を繰り返すアナルに、己の一物を押し付ける。




「あッ、あはッ、あぁあああん……!!」
「んッ…きつ……ッ」




ぬぷぬぷと挿入って行く肉塊に、慣らされ達したばかりの京一の躯が覚えるのは、快感以外の何者でもなく。
光悦とした表情を浮かべる京一を見下ろしながら、龍麻も息を詰めて腰を進めて行く。

直ぐに律動が始まり、京一はあられもない声を上げてしまう。
ぐちゅッじゅぷッと淫音が響いて、コンクリートの壁に反響する。




「あッ、あッ、あんッ! あはッ、ひゃう、ひぃいッ!」
「んッ、ふ、うッ…!」
「あひッあひッ! はぅん! ああん…!」




熱く滾った肉棒が、京一の穴の口と最奥を何度もスラストする。
プログラム通りに動く機械とは違い、不規則に場所と角度を変えて穿たれて、京一はその都度腰を揺らして応えて見せた。
無論、それは京一の意志などではないのだけれど、だからこそ、彼の躯の篭絡が容易い事が知れる。


肌がぶつかり合う音がするほどの強さで、龍麻は腰を振って京一を犯す。
拘束された京一が逃げられる訳もなく、押し付けられる快感を甘受する以外に道はない。

揺れる細腰を両手で捕まえて、龍麻は自分の腰を進めると同時に、掴んだ腰を自分の方へと引き寄せる。
繋がりが一層深くなり、身を捩って逃げる事も出来ず、京一は瞠目して喘ぎ声を上げる。




「ひゃ、め、らめッ、やめえええッ! あひ、は、かはッ…! あぁあ…!」
「はッ、ふッ…きょーいちッ…気持ちいい…ッ」
「あんッあッあんッあふッ! んぁ、くあ、はぁんッ!」




やめろ、と繰り返そうとしても、最早まともな言葉さえ紡げない。
貫かれる度、情けない程に甘い声を上げ、京一は身悶えすら許されない。




「あ、あん、あひッあはッあッあッ、はぁあ…!」




数分前に龍麻を問い詰めていた時の、睨む眼差し。
今はその面影も欠片もなく、ただ快感を与えられ享受する、肉の塊となる。

ぬちゅ、ぬぽッと卑猥な音を立てて、アナルは龍麻のペニスに吸い付いて離さない。
頭を振って啼き喘ぐ京一の表情が、次第に苦悶から別のものへと変化して行く。
抽出の度に擦られる肉壁の快感は、既に京一にとって抗い難いものとなっていた。




「ひゃめ、ひゃぅ、イく、イくぅう! ケツ穴ッ…イっちまうぅうう!!」




ビクッビクッと全身を痙攣させて、京一が叫ぶ。
その声が残響となって閉ざされた空間に反射する間に、彼の躯は限界を超えていた。

びゅるるッ、と粘ついた蜜液が京一の肉棒から吐き出される。
同時に全身が強張り、秘孔が強く閉じようとする。
挿入されていたペニスは締め付けられ、龍麻は息を呑み、彼もまた絶頂を迎える。




「あッあひッ…ああッ…! 入って…せーえき入って来るぅう……」
「んッ…う、く……!」
「んぁあああ……ッ! あひ、らめ、も…溢れるぅ……!」




ドクドクと流し込まれる熱い蜜液に、京一の顔が愉悦に染まる。
それを見下ろして、龍麻は薄い笑みを梳いた。

全ての射精を終えて尚、龍麻は京一のアヌスから肉棒を引き抜こうとはしなかった。
ドロドロに解けたその内部を堪能するかのように、ゆっくりと腰を回すように動かす。
ぐちゅ、ぬちゅ、と音がして、京一の脚が魚のようにヒクヒクと跳ねる。


京一は、己の体内を全て、龍麻の精液のみで満たされたような錯覚に陥っていた。




「あッ、あひッ、あぁッ…! んぁ、たつ、まァ…あ、ん、あ…!」




嫌だ、やめろと叫んでいた時の表情は既に伺えない。
それ所か、自ら腰を揺らして龍麻の律動に応えている。




「腕、解くよ」
「ふぁッ…あッ、あッ…!」




耳元で囁かれて、京一の躯がふるりと震えた。



向かい合っていた京一の躯を、龍麻は挿入したままで裏返す。
また甲高い声が上がった。

京一の腕を、後ろ手に拘束していた手錠。
龍麻はポケットから小さな鍵を取り出して、その枷を外した。


解放すれば逃げ出そうとするのは明白だ。
龍麻と京一の力は互角と言って良い、本気になればどちらが勝つのか判らない。
お互いにそれはよく判っている。


――――――しかし、拘束を解かれた京一は、逃げ出すことなど既に頭の中にはなくて。




「あッ、あッあッ、んぁ…龍麻、もっと、もっとぉ……!」




獣のように四つ這いになり、腰を振って快感を貪る。


龍麻は律動を止めた。
途端に、京一は切ない声を漏らして、肩越しに背後の支配者を伺う。

京一の顔は上気し、火照り、熱を持て余しているのがよく判る。
肩を小さく震わせて、突然失われた激しい快楽に戸惑っているようだった。




「ん、う…龍、麻ァ……はふッ…ふ、ん、あう、ん、ん、ふ…ッ!」




ぬち、にゅぷ、ぬぷッ。
ずぷ、ぬぷ、ぐちゅッ。




「あう、は、はひッ! あッ、ん、あ、ん、くふ、ふぅん…!」




じゅぷッ、ぬぷッ、ぐちゅッ、ぐぽッ!
ずりゅ、ずりゅッ、ぐぷッ、じゅぽッ、ぬぼッ!




「あ、あ、ん、あ、はッ、あんッあんッ、あんッ!」




段々と京一の腰の動きが大胆になり、卑猥な音が大きく響くようになって行く。
無心で快感を貪る京一の眼には、最早理性と呼べるものは見られない。

快楽奴隷と化した京一は、理性と同じく、恥も外聞も、プライドもない。
堕とされた躯が望むまま、もっともっとと欲求を膨らませる。




「たつま、たひゅまぁ…! たつまぁああ…!」
「何? きょーいち」
「動いてッ…! 奥、突いてぇ…! 尻マンコ犯してぇええ…!」




自分から動くだけでは足りず、懇願する京一。
猫が伸びをするような、腰だけを高く掲げた格好で、京一は尻を振って肉棒を強請る。
あれだけ嫌がっていた快感を、もう一度くれと。


それでも動く様子のない龍麻に、京一は涙を滲ませてまた腰を振る。
前後に、左右に、円を描くように、淫靡に踊りながら。

龍麻の手が京一の背中をなぞると、京一は弓形に背を逸らして喘いだ。
また腰の動きが激しくなる。
じゅぷ、ぬちゅ、ぬりゅ、と淫水音がまた響く。




「あはッ、あん、ああッ…!!」
「ね、京一。聞いていい?」
「んあッ…! はぁああん……!」




来た――――――と、京一は思った。



龍麻は四つ這いの京一の背に覆い被さり、耳元に顔を寄せる。
細い黒髪が京一の耳をくすぐり、吐息がかかる。
ぞくぞくとした仄かな快楽に、京一は身を震わせ、ビクビクと痙攣する。

赤くなった耳朶を甘噛みすれば、甲高い声を上げて京一の躯が強張る。
正直なその反応に、龍麻は満足げに笑みを浮かべた。


そして、いつもの問答の時間。






「京一、僕のこと好き?」






囁くように問われた言葉。
それに返す言葉は、一つしかない。




「ひゅ、き、…す、き、好き、好き」
「本当?」




録音されたテープのように答えた京一に、龍麻は尚も問いかける。
それは真実かと。




「好き、好き、龍麻、好き」
「本当に?」




二度目の是非にも、京一は同じように繰り返す。
龍麻が好き、と。

告げながら、アヌスは期待に震えて閉まり、彼の表情もまた悦楽に染まる。






「たつま、が、すき」






一言一句を確かめるように、京一は言った。
その先にあるものだけを求めて。



龍麻の口元が歪む。
目尻が和らいで、しかし瞳の奥は酷く昏く。




「あッあぁはあああんッ!!!」




甘い悲鳴が響き渡り、また淫水音が聞こえ始める。
龍麻が再び京一の最奥を穿ち始めたのだ。




「あんッ、あひッあはッあッあッ!」




穴の口ギリギリまで引き抜いては、一気に最奥まで貫く。
掴んだ細腰をリズムに合わせて前後に揺すれば、繋がりは尚一層深くなる。


激しい快感に京一の脚がガクガクと震えていたが、龍麻はそれには目もくれない。
京一はとうに自分の力だけで躯を支える事は出来なくなっていた。
龍麻に腰を掴まれているから、四つ這いの姿勢のままでいられるに過ぎない。

下敷きにしていた毛布もいつの間にか横に跳ねられ、京一はコンクリートの上を這っていた。
硬い床に擦られた膝の痛みなど、脳を襲う快楽信号に比べれば、気にもならない。




「んぁ、ふ、龍麻、すき、すき、」
「きょーいち」
「うぁ…ッあん!」




その言葉以外を忘れたかのように、京一は何度も同じ言葉を繰り返す。
龍麻はその音に聞き惚れながら、京一の肩を掴んで引き寄せた。

膝立ちの格好になって、京一は龍麻に背中を預ける。
肩口から龍麻が顔を覗かせると、茫洋とした瞳が視界の端でそれを見付けた。

京一が首を巡らせて、唇を開けて舌を覗かせる。
それを掬うように自身の舌を絡めながら、龍麻は京一に口付けた。
ちゅぷ、と唾液の混じる音がする度、京一の秘部が龍麻の雄を締め付ける。




「ん、ふ…」
「ふあッ…んッ、んッ…んぁあ……」




悪戯に龍麻が腰を揺すれば、京一の喉奥から甘い音。


唇を解放しても、舌先は絡まりあったまま。
龍麻の眼前で、京一もまた、熱に浮かされた瞳で龍麻を見つめている。




「好き、すき、…あ、はッ…んはッ、ふぁ…ひゅき……」




好き、と言う言葉に合わせて、アナルを貫く。
ビクッ、ビクッ、と京一の下肢が震えて、快感に戦慄いた。




「ね、京一」
「ふあ、好き、あッ、ん、しゅき、すき、あぁッ!」
「京一、本当に僕のこと好き?」




硬くなった京一の乳首を指の腹で押し潰す。
問いかけが彼の耳に届いたかは、判らない。
判らないまま、龍麻は彼の躯を遊ぶ。


乳首を人差し指と親指で挟んで、コリコリと抓って転がす。
秘孔の肉穴はすっかり一物の形に作りかえられ、逃がすまいと締め付けて絡みつく。

数分前に体内に注ぎ込まれた龍麻のカウパー液が、秘孔の隙間から溢れ出していた。
繰り返し抽出される度、その潤滑を手伝いながら、奥から入り口へと逆流を始めている。
腹の奥を抉り、掻き混ぜられて、京一は目を剥いて快感に打ち震える。




「ねえ、京一、僕のこと好き?」
「好き、ひッあひッ! す、き、んぁあッ! あはッ、あんッ、はくぅ!」




京一の肉棒が反り返り、また放出を待ち侘びている。
龍麻はそれを一瞥して、手を伸ばした。

触れたのは京一の雄ではなく、腹。
其処には胸から脇腹にかけて、大きな刀傷があった。
よくよく目を凝らさなければ見えない程に修復されたそれは、綺麗な実に綺麗な太刀筋であった事が伺える。
そうでなければ、例え斬撃に特化した日本刀と言えど、皮膚細胞を壊さずに傷を負わせる事は出来ない。


傷の形を上から下へとなぞっていくと、京一が声にならない声をあげたのが判った。
アナルがそれまでの比ではない程に強く閉まり、龍麻を苦しめる。




「京一、」
「あッああ……! は、ひ…いあ…!」
「京一、」




眉根を寄せて喘ぐ京一は、恍惚としているように見える。

だが、それを見る龍麻の瞳の奥は、黒々として昏い光しか宿していない。
己の手によって京一が快感に悶えているというのに。



もう一度、傷をなぞる。
京一の喉がヒクンと音を鳴らした。




「京一、」
「ん…んぁ、あ、は…あ…たつ、ま…ぁ」




尚も京一はうわ言のように龍麻の名を呼ぶ。
呼ぶばかりで、その瞳は熱に浮かされ虚空を彷徨う。

間近にある筈の龍麻の瞳とは、決して交わろうとしない。





「京一」
「たつ、ん、」




何度目か知れず名を紡ごうとした京一の唇を、龍麻は己のそれで塞ぐ。
直ぐにキスは終わったが、京一の口から相棒の名が紡がれる事はなかった。

唇を解放すると同時に、龍麻は京一のアナルの最奥を突いた。
引き攣った悲鳴が一瞬上がりかけたが、直ぐに衝撃と痛みは快感に変わる。




「あぁッ! あぁッ! ああぁああんッ!!」
「京一、好きだよ」




喘ぐ京一の耳に、龍麻は囁く。
京一が繰り返し龍麻を好き、と繰り返していたように。

ただ違うのは、龍麻の言葉にははっきりとした執着の色が感じられるという事。




「好き、好き。京一、好き」
「あひッあッあはッ! あん、んぁ、そこッ、はぁうッ!」
「きょーいち、すき」
「あぁあああんッッ!」




龍麻の囁きは、京一自身の声で掻き消される。
それでも鼓膜の直ぐ傍で囁けば、その断片は脳に届く。




「好き。好き。好き」
「あッ、あッ、あッ、あッ、」
「好き。京一、好き。好きだよ」
「あんッ、ふぁ、らめ、そこ、けつまんこ壊れるぅ…!」
「好き、好き、好き。好き。すき」
「はひ、たひゅ、ま、ふぁ、あッこわれ、きもちい、もっと、あ、あ、あ、」




背中から抱き締められ、乳首を摘んで転がされて。
頭を持ち上げた京一のペニスの先端からは、先走りの精液が溢れ零れ出している。

躯の傷を上から下へとゆっくりとなぞる。
また京一の喉がヒクンと鳴って、弓形に背が仰け反る。
締め付けを振り切ってアナルを貫けば、甘い声が上がり、細い腰がもっとと強請って揺れた。




「京一」
「あはッ、あ、やめ、イく、イく…!」
「京一、僕のこと、」
「イあッ、あッ、あ、イかせて、イきた、んぁ、いい、きもちいい、イかせ、」




最早自分が何を口走っているのか、京一自身も理解していないだろう。
鼓膜が聞き届けて脳が認識している音は、卑猥な性交の音と、耳元で囁く龍麻の声だけ。
後は自分の声すら、意識の内に入らない。





あれだけ強く、気高く、猛獣のように閃いていた瞳の光は、もう何処にもない。
だが一端意識を失ってリセットされれば、また蘇るのだろう、今までがそうであるように。

その度、龍麻はこうして全てを犯して壊して、屈服させている。


快楽によって篭絡された躯。
一度敗北の味を覚えてしまえば、もう躯は逆らえず、逃げ出す事も忘れてしまう。

いや、覚えてはいるのだ、判ってはいるのだ、このままでいてはいけない事は。
だがそれ以上に与えられる快楽に本能は忠実に反応し、理性など放り出させてしまい、快楽奴隷と化す。
気付けば自ら足を開き、腰を振り、懇願し、強請り、従属してしまうのである。



この行為が背徳的であるとか、非生産的であるとか、そんな事はどうでも良い。
彼が自分の相棒だとか、ほんの少し前まで一緒に笑っていたとか、そんな事もどうでも良くなって。
自分が男である事や、相手も男だという事も、何もかもが、もう、どうでも。

龍麻はただ、京一を犯したくて堪らなくて、京一は犯された。
犯して、犯し続けて、犯されて、犯され続けて、日常の中に保たれていた均衡は壊れてなくなった。




「あん、あッ、あッ! たつま、たつまのチンポ、いっぱい…ああッ!」
「京一、ねえ、京一」
「せーえき、出て、けつまん、中、あ、ああッ! 熱、んぁ、イくぅうッ!」




びゅるッびゅくん、と勢い良く流し込まれる精液。
腹がはち切れるのではないかと思う程に大量に注がれる感覚に、京一は目を剥いて絶頂する。
受け皿のない蜜が床を汚し、精液の水溜りを作った。

全ての精液を注ぎ込もうと、龍麻は搾り出すように腰を揺する。
どぷッ、ごぷッ、と吐き出された精液が京一のアナルを満たした。


数十分振りにペニスを抜く。
ぬぼぉおお……と絡みつく肉壁を纏わりつかせながら引き抜いていけば、京一の腰が大袈裟に跳ねた。

完全にアナルを抜き出る瞬間、ちゅぽん、と言う音が聞こえた。
欲望の塊を受け容れていた秘孔を見れば、容量オーバーした蜜が栓を失って溢れ出している。
精液が逆流して行く感覚も快感になるのだろう、朧な意識の京一から、甘い声が漏れる。




「あッ…あッ…あッ……!」




抱き込んでいた腕を解放すると、京一は受身も取れないまま、床に倒れた。
腰を高く掲げたままで。




「あひ…はぅッ…んぁ……せーえき…出てるぅ……」
「凄い一杯飲んだんだね。一杯溢れて止まらないよ」
「んぁッ…あッ、あ…んはッ……」




龍麻の目に付く場所で、京一のアナルからは止め処なく精液が零れている。
白い蜜液は股間を伝い、太腿を濡らし、床にあった精液の水溜りの上に落ちた。


しばらくその格好のままで荒い呼吸していた京一だったが、次第にそれも落ち着いていく。
龍麻が京一の顔を覗き込んでみると、瞼が半分閉じかけている。
激しい快感に攻められた躯は、当然疲労も酷く、休息を欲するのも無理はない。

霞がかった京一の意識は、既に半分まどろんでいる様だった。
龍麻はそんな京一の耳元に、また口元を寄せる。




「ねえ、京一」
「あ…っは……あ……」




問い掛けると、吐息が耳朶に当たって、ふるふると身を震わせている。


力の抜けきった京一の躯を抱き起こす。
京一の躯は一切の踏ん張りが利かなくなっており、前に左にと引っ張られるまま揺さぶられる。
身動ぎしたのが災いしたか、ぴゅく、とアナルから精液の飛沫が飛んだ。

冷たい壁に背を預けさせて座らせ、足を開かせる。
其処に自分の体を割り込ませて、龍麻は京一の腹―――――あの刀傷に顔を寄せた。



傷の形をなぞって、舌を這わす。




「あッ……!」




ヒクン、と京一の喉を反らせて喘いだ。
何度も何度も丹念に舐めれば、何度も何度も甘い悲鳴が上がる。




「あッ…あッ…! や…あッ…!」




綺麗に傷が塞がっているとは言え、一度は裂かれた場所である。
他の皮膚に比べて、薄くなっている事は否めない。

だがそれを差し引いても、京一の反応は過剰な程の感じ方をしていた。



傷痕を舐めながら、龍麻は何度目か知れない問いかけをする。






「京一、僕のこと、好き?」





問い掛けて、舌をゆっくりと這わす。
萎えていた京一の肉棒がふるりと震えて反応を示した。



天井を仰いでいた京一の首が落ちる。
ようやく、龍麻と京一の瞳が交じり合った。

………けれど。








「す、き」









呟きは虚ろで、
瞳は交差している筈なのに龍麻を見ない。

声も、瞳も、紡がれた言葉も、全て龍麻に向けられてはいない。













だから何度も犯して、何度も壊して、

躯も、心も、脳も、全てこの手で与える快楽で溺れさせて、



この傷の意味も存在も塗り替えてしまわないと、怖くて怖くて堪らない。




傷が作った絆がいつか、君を浚っていかないように。

















監禁・調教ネタ大好きです。嫌がってたのに陥落して淫乱化も好きです。

うちの龍麻は結構ヤンデレのようだと実感しました。
好き過ぎて歯止めが利かなくなるとこうなる……