I want to bully a favorite person U 後編





直ぐ其処─────と言うのは、何も京一を動かす為の嘘ではなかった。


既に何度か、いつの間にか馴染んでしまう程に、京一は拳武館の寮に足を運んでいた。
拳武館のメンバーと挨拶をし、人物によっては多少の雑談を交わす事もある。
稀にではあるが、拳武館館長であり、親友の古武術の師である鳴滝冬吾と顔を合わせる事さえあった。

だから寮の敷地の付近に何があるのか、どう言う風景があるのかも覚えている。
自然と、現在地から寮まであと何分、と言う予測が立てられるようにもなっていた。


埃臭い路地から、拳武館の寮までは、歩いて五分足らずの道程。
本当に“直ぐ其処”だったのだ。




振動するバイブをアナルに咥えたままでなければ。




この距離になってわざわざ路地で行為に及ぼうとした八剣を、京一はわざとであるとしか思えない。
完全に快楽に陥落させてから、もう一度耐えさせようとするなんて、そうとしか考えられなかった。

怨み言の一つでも言ってやりたい気分だったが、京一はもう何も言えなかった。
着物の袖の下で悪戯に強弱を切り替えられて、気を抜いたらその場で声を上げて喘ぎそうだったのだ。
残業帰りのサラリーマンの姿がちらほらとする住宅街の真ん中で、それは避けたかった。


信号に詰まって立ち止まる度、八剣は京一の躯に触れた。
首や項をくすぐるように手や指で撫でたり、内緒話をするように耳元に唇を寄せては息を吹きかけたり。
その都度、京一は歯を食いしばって音も呼吸も漏れないように努めた。


息を詰めて耐える京一を、八剣は実に楽しんでいた。

京一にもそれと判るほどに、うっそりとした笑みを浮かべ、それを京一が睨めばバイブの振動の強さを上げる。
時折、耐え切れなかった吐息が艶を篭らせ零れる様に、八剣は光悦としていた。





二人が寮に到着したのは、あれから十分以上も経ってからの事だった。
京一が学校の屋上から昇降口まで降りた時と同じく、倍以上の時間がかかったのである。


玄関から八剣の部屋に着くまでは、誰とも逢わなかった。
京一にとっては幸いだ。

長く焦らされた躯は、ようやく───と言う思いから半ば力が抜けそうになっていた。
表情は常ならば絶対に見せないであろう蕩けたものとなっており、誰が見ても異常である事は明らかだ。
今の京一にとって、現状を赤の他人に見られる事は自身の死や敗北よりも恥ずかしい事であった。



八剣が部屋の鍵を開けて、先に京一に中に入るように促す。
これはいつもの事だ。
京一はのろのろと、壁伝いに歩きながら、靴を脱いで部屋に上がった。

覚束無い足取りでリビングに入ると、鞄も木刀も放り投げて、ベッドに倒れ込む。
人気のなかった冷たいシーツは火照った肌に心地良かったが、熱を冷ますには至らない。




「ん、う…はぅ…はッ、は…あ……んん…ッ」




今は『弱』に設定されているバイブが、京一のアナルに緩やかな刺激を与えている。


ドアに鍵を閉めて、八剣がのんびりとした足取りでリビングに入る。
その時には京一は、ベッドの上で躯を丸め、快感に打ち震えていた。

八剣はベッドへと上がると、京一のスラックスのベルトを外し、ジッパーを下げ、下着ごと引き降ろす。




「随分と固くなってるねェ、京ちゃん」
「や……あ、うッ、ん……!」




激しい刺激ではないとは言え、京一の躯はもうとっくに快楽に堕ちている。
十数分前に果てたペニスは、その緩やかな刺激でも再び頭を持ち上げ、勃起していた。

支えがなくとも天を突くペニスの先端を、八剣は爪の先で擦る。




「ひッ、ひ、い、あッ!」
「そんなにビクビク跳ねて…敏感だね」
「あぅ、あッん、んんッ…!」




八剣は京一の赤いシャツをたくし上げると、乳首に唇を寄せ、舌を当てた。
舌を尖らせ、先端を突かれて刺激され、京一はベッドシーツを手繰り寄せて強く握る。




「あッあッ…や、乳首…ッ感じ、るから……ッ」
「そう……じゃあ、こっちにしようか」
「─────あ、うッ!」




八剣の指が、バイブの埋め込まれたアナルに潜り込む。
濡れそぼった其処に痛みはない。
寧ろ生まれるのは快感で、京一は身を捩って声を上げた。


バイブを人差し指と親指で摘み、八剣はそれをゆっくりと引き出して行く。
肉壁の擦れる感覚に、京一は仰け反って喘いだ。




「あ、あ、あ……! や、あぁ……!」
「こんなに締め付けて……」
「ふぁッ、あッ…あはッ…や、擦れて…感じ、るッ…やぁ……!」
「随分と気に入ってるんだね、このバイブ。緋勇が挿れたからかな?」




擦れる快感に躯に力が入ってしまい、京一の意思とは関係なく、肉壁がバイブを引き止めるように締め付ける。
それを構わず、締め付けられるままに八剣が引き抜こうとするから、京一はバイブの形をまざまざと確かめられる事になった。


時間にすれば数秒であったこの行為は、京一には酷く長く感じられた。

やがて、もう直にバイブが抜けきると言う時になって、京一は思い出す。




「まッ…待てッ…!」




京一の声に、八剣はバイブを引き抜く手を止める。




「そ、れ……抜く、なッ……」
「…………」




すぅ、と八剣の双眸が細められる。
京一の頭で警鐘が鳴った。




「た、龍麻が……」
「緋勇が?」
「……今日、一日……抜くな、って……」
「……約束って言っていた事かな」
「…………」




言ってから、京一はやっぱり言わない方が良かったか、と今更ながら後悔する。

八剣と龍麻は、京一を間に挟んでお互い一歩も譲らない。
だのにこんな所でこんな事を口走れば、火に油を注ぐのと同じものだ。


けれど、黙ったままで八剣に流される事も出来なかった。
この場に龍麻はいないから、抜かれた所で彼がそれを知る事はないけれど、何故だかそれは赦されない気がした。
万が一知られてしまった場合の事も、思えば恐ろしいものがあるような。



そんな考えが浮かんでしまう程に、京一は龍麻に染められているのだ。




「──────そう」




熱を持ちながら、何処か冷たい印象の瞳を見せる八剣に、京一は戦慄いた。
初めての邂逅の時に垣間見た、虫けらを斬り捨てる瞬間の色を思い出したから。

次の瞬間、バイブは再度京一のアナルを貫いた。





「ひぃッあぁぁああぁ……ッ!」





一時は逃れられる筈だった刺激に、京一は仰け反って鳴き叫ぶ。
その声に愉悦が篭っているのは気の所為ではなかった。

挿入したバイブを、八剣は自分の手で出し入れする。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が部屋の中で反響した。




「今日一日、か。いつから挿れてるの?」
「あッ、あッ、んッ、朝、から…ッあ、ひぃッ!」
「それで学校にいる間中、こんな状態だったのかな」
「はぅッ、う、んひッ……あ、んぁ、はあ、んッ…!」
「授業には出たの? 流石に無理かな?」
「ふぅ、ん、ふッふぁッ……! ひぁ、ああぁんッ…!」
「出たとしたら……緋勇も意地が悪いから、授業中にもこんな風にしていたんだろうね」
「んッひぁああああッ! あ、んや、やめッ止め…ッああぁあ!」




バイブの突き上げが激しくなり、京一は頭を振って悶える。

八剣の爪先が亀頭を擦り、先端からは先走りの蜜が零れ出す。
またアナルも、昨晩から今日にかけて龍麻に攻め立てられ、繰り返された行為の所為で、すっかり濡れそぼっていた。




「あひぃッ! ん、やッ先っぽ…! や、いじるなぁッ……!」
「どうして? 気持ち良いんだろう。ほら、こんなに濡れて…」
「あ、あッあッあッ…! やだ、あぁあぁ……」




八剣は掌全体で京一のペニスを握ると、上下に激しく扱き出す。
京一はいやいやと頭を振るが、躯は快楽に従順で、手の動きに合わせて腰を揺らしている。
そしてやはり本気で嫌がっている訳でもなく、瞳の奥には行為への悦楽さえ浮かんでいた。


我を忘れて腰を揺らす京一に、八剣はうっそりと笑みを浮かべる。
このまま行けば、程なく果てるだろう。
そしてこの悩ましい少年の躯は、更に美しく妖しく男を誘うのだ。

それも良い、と思うのだけれど。




「あッ、イクッ…い、イくぅぅう……!!」
「──────おっと」
「ふあッ……!」




限界を訴える言葉に、八剣は少年のアナルを攻めるバイブから手を離し、自らも京一から身を離す。


最高潮のエクスタシーの直前で留められ、京一は一瞬、何が起こったのか判らなかった。
融解した思考がゆっくりと再生を始めるには、かなりの時間がかかった。

その間、八剣はベッドに座して、ぐったりと躯を投げ出して艶の篭った呼吸を繰り返す京一を、じっと見下ろす。
バイブのリモコンも手元から離し、何をするでもない、本当にただ眺めていただけだ。
だから京一が現状を把握するまでの時間は、十二分に与えられた。



数分間、それまで絶えず嬌声の上がっていた室内は、静かだった。




「……や、つる、ぎ……?」




一番苦しい状態で留められたと知って、京一は、熱を与えてくれる筈の男を呼んだ。
それを合図に、八剣はベッドを降りる。

相手が褥を離れた事に気付いた京一は、のろのろと起き上がって、八剣の動向を見詰めていた。




「おい……」
「ああ。大丈夫、ちゃんとするから」
「………」




呼んで、返って来た言葉に、自身が相当物欲しそうにしているように見えるのだと思い、京一は真っ赤になった。
そういうつもりで呼んだのではないのに────そう思いながら、そんな思いが一片もなかったと言えば嘘になる。


恥ずかしさを誤魔化すように身動ぎして、アナルからの刺激にまたベッドに伏した。
一番の絶頂の直前だったのだ、躯の感度は研ぎ澄まされている。

皮肉を押し広げる玩具は、シンとして動かない。
それで良い筈なのに、今は、弱くても良いから刺激が欲しくて堪らなかった。




(オレ、こんなに淫乱だったか)




昨日の夜から、ずっとセックスばかりしている。
これは気の所為ではない。

躯は間違いなく疲労困憊しており、静かな場所で眠れと言われたら三秒で夢に旅立てる。
今の状態ならばきっと、喧嘩を売られたら勝てないだろう。
喧嘩で眠気覚ましだなんて言ってはいられない、絶対に体がいつものように動いてくれない。
相手が吾妻橋でも負けるかも知れない。


なのに、未だに躯は熱を欲して止まない。
寧ろもっと激しく、もっと熱く、もっともっとと底知れない欲が、刺激を与えられる度に身を焦がすのだ。
昨日の晩から数えて、一体何度の絶頂に達したか知れないと言うのに、躯の熱は一向に途絶えない。

そして、今これからも、目の前の男がどんな悦楽を与えてくれるのか。
頭では否定しても、躯が興奮を隠してくれない。



そんな風になってしまのも、全部─────




(こいつらの所為だ)

(こいつらが、オレにこんな事しやがるから)




目の前にいる男と。
今は此処にいない親友と。


彼らに出逢う事がなければ、彼らに気を赦す事がなければ、こんな事にはならなかった。
こんなにも恥ずかしい思いをする事はなかったし、こんなにも相手に振り回される事もなかった。

…反面、彼らに出逢わなかったら、この一年どう過ごしていたのかと聞かれると、返答に困る。

でも、少なくともこんな風に淫らに染まる事はなかった筈だ。
男に組み敷かれ、アナルを貫かれ、揺さぶられ、女のような甘い声を上げる事もなく。



立てた肩膝に額を擦り付けて俯いていた。
脈絡のない事をつらつらと考えながら。


それを現実へと引き戻したのは、ベッドの軋む音。




「待たせたかな?」
「……待ってねェ」
「素直じゃないね」




一分強の空白の時間は、熱に流された京一の思考を急速に冷ましてくれた。
しかし、躯の熱は未だに収まらない。

肩を押してベッドに倒されて、足を開かされた。




「此処は欲しがってるのに」
「ッるせェ、この変態ッ…!」
「ふぅん……?」
「んぁッ……!」




くすりと笑んだ八剣の指が、京一の濡れたアナルをなぞる。
バイブの形に広がった皮肉が、ヒクヒクと収縮した。




「あッ…あ、…っは……はぁッ……」




八剣の言葉通り、頭では拒否しても、躯は更なる熱を欲している。
ぞくぞくと脳髄まで競り上がってくる熱と悦楽に、既に呼吸が上がっていた。


八剣は京一の耳元に唇を寄せ、ねっとりと耳朶を嬲る。
嫌がって離そうと京一が首を捻ると、額を抑えられて逃げ場を失った。




「俺もね……京ちゃんに一日付けておいて欲しい物があるんだけど」
「ん…んく……や、だ……」
「緋勇のは良いのに?」
「……これ、も…ヤ……」
「でも抜くのは駄目なんだろう?」




矛盾を指摘されて、京一は口を噤む。
でも、どれも本当のことだ。

龍麻がしたから赦した訳ではなくて、赦さなければ龍麻が離してくれなかった。
昨晩からの激しい情交の後で、頭は完全に蕩けきって、まともな思考は殆ど残っていなかった。
出来ればバイブは抜いて置きたいし、約束だなんて言われたけれど、守らなければいけない訳でもない。
だから本当は嫌で─────なのに、調教された躯は、自分の意思とは反対に、この仕打ちを悦んでしまう。


嫌だと呟く京一だったが、やはりこの男も龍麻同様───それとも、龍麻がそうであるからか───京一の拒否の意見など聞きはしない。




「緋勇ばっかりって言うのは、ずるいねェ」




囁いて、八剣は京一の耳朶を甘噛みする。
あ、と悩ましげな声が京一の喉から漏れた。



八剣の手が京一の下肢へと伸び、勃起した雄に触れる。
それだけで、張り詰めたペニスはピクリと震え、京一は零れそうになる声を口を噤んで飲み込んだ。

閉じた京一の唇にキスを落としながら、八剣はシーツの中から何かを取り出す。
先ほど、京一から離れた後に部屋の何処かから取り出したものだろう。
京一はその時俯いていたから、何が其処にあるのか判らない。


強張りを溶くように唇を舌でなぞられ、半開きになった隙間から舌が咥内へと侵入してきた。
ちゅく、と音を立てて舌を吸い上げられて、京一は息苦しさと快楽にシーツを強く握り締めた。

そのまま、京一は暫くの間キスの虜となっていた。




が、ペニスからの突然の強い痛みに、悲鳴を上げて我に返る。




「いッあぁッ!!」
「ああ、痛かったか。ごめんね」
「なッ、あ、い……!」




一体何が、と、痛みを訴える己の中心部を見下ろして─────京一は目を瞠る。




「な…てめッ……ンだ、コレッ…!」




完全に勃起している其処には、シリコン製のコックリング。
痛い締め付けは、京一のペニスが勃起して膨らんでいる事もあるだろうが、それ以上にコックリング自体の輪が小さめに作られているからだ。
根元を閉じるように締め付けられ、このままでは明らかに射精を阻害してしまう。

更に京一の怒りを買ったのは、そのコックリングに冗談のように取り付けられている、小さな鈴であった。
京一が身動ぎする度、それはチリンチリンと場に不似合いな音を立てる。


こんなものを持っている上、取り付けると言う八剣の所業に、京一は青筋を立てて八剣を睨む。
しかし八剣は猛禽類の瞳で笑みを浮かべているままで、現状の有利不利もあり、京一は気後れしてしまった。




「は、外せッこのバカ!」
「駄目だよ」
「あんッ…! あ、や、触るなって…!」




コックリングの取り付けられたペニスを、八剣の指が弾く。

小さな痛みは快楽に挿げ替えられる。
八剣はそのまま、何度も京一の雄を指先で弾いた。




「ひッ、あッ、ん、あッ…あッ、う…ッ」




下より、絶頂寸前まで高められていた躯である。
たったそれだけの刺激でも、京一の躯は快楽に付き従う。

八剣はピクピクと震えるペニスに唇を寄せ、キスをする。
かかる吐息にすら反応を返す躯が愛しい。



八剣は身を起こすと、京一の躯を反転させてベッドにうつ伏せにした。
自重で自身のペニスを圧迫する事を避けて、自然と京一の腰が浮いてしまう。
上半身をベッドに預け、下半身を膝を立たせている状態となった。

臀部を八剣に向けている所為で、まるで獣が性交を強請っているようにも見えてくる。
チリンと音を鳴らす鈴は、猫の首輪に取り付けた鈴のようで────実際、八剣はそのつもりだった。


真っ赤になって震えてシーツに縋る京一の姿は、怯える子猫によく似ている。
やっぱり鈴で正解だね、と八剣はひっそりと笑みを浮かべた。




「可愛いよ、京ちゃん」
「う、れしく…ねェッ……!」
「そう。じゃあ、こっちの方が嬉しいかな?」
「────あぁぁあんッ!」




カチリと音がして、激しい快感が京一を襲う。
それはアナルからではなく、ペニスから。

秘孔に埋められたままのバイブではなく、ペニスを戒めるコックリングが震えているのだ。





「や、だめ、やめろッあぁッ! ん、や、ひぅううぅッ!!」
「さっきも言っただろう? 緋勇のばっかりって言うのは、ずるいよ」
「は、やッやぁッ…! バカになっちま……あッあぁあッ!」




寸止めで我慢を強いられていたペニスに、再び射精感が押し寄せてくる。
しかし吐き出されるはずの其処は根元から戒められており、一定以上の高さから昇る事が出来ない。
高まるばかりで一向に解放の兆しはなく、京一の躯は益々快楽に染められ、敏感になって行く。

一度でも射精出来れば開放感が休息を与えてくれるのに、このままではそれもない。
イケそうでイケないと言う甘い地獄の中で、のた打ち回らなければならないのだ。




「やッ、イく、イッ……うぁッあッあッ、ひぃうッ…!」




がくがくと激しく痙攣する京一を、八剣は抱き締めるように背中から覆い被さった。
京一はそれに構う余裕もなく、開きっぱなしの口から唾液を垂らしながら喘ぎ鳴く。




「あん、ッふあ、はひッ、ひぃん! や、あ!」




全身を強張らせて悶える京一。
涙を浮かべて解放を言葉なく訴えるが、八剣は一向に赦そうとしなかった。

それ所か、固くなった熱を、刺激を求めてヒクつくアナルに擦り付けて来る。


アナルは振動しないバイブが収まったままだが、昼間はこのままで龍麻の雄を咥え込んだ。
八剣がそれを知っているとは思わないが、京一を間に挟むと何処か似通った思考を持つ二人である。
京一はまさか────と過ぎった予想に、躯の熱が更に昂ぶるのを抑えられなかった。


そして思った通り。




「ん、あッ、やめッ……い、今ッ今はッ…!」




やめてくれ、と言う京一の言葉は、最後まで音にならなかった。







「あ、い、ぁ、あッ! ンはあぁああぁああんッッッ!!」







先端から、最も太いカリを潜り抜け、一気に根元まで。
男によって覚え込まされた快楽は、抵抗なく雄の欲望を飲み込んだ。

そのまま、八剣は京一のアナルを激しく突き上げる。




「あ、あんッあんッ! はふ、ひぃんッ!」
「よく締まる、よ……ッ」
「はひッ、らめッ! やめッえ! そこッそこぉッ! あひッ、ふぁんッ!」
「トロトロになってる上に、よく解れてる……バイブの所為だけじゃないね?」
「あッあッあッ、ん、あんッ、あはッ、ふ、うぅッ!」




ジュプ、ヌプ、グプ、とピストン運動に合わせて卑猥な音がする。
八剣のペニスとバイブの僅かな隙間から、飛沫が飛んでシーツに染みを作っていた。

その上に、八剣は京一のペニスに触れると、戒めを解かないままで急性に扱き始める。
前後からの激しい攻めに、京一はあられもない声と表情で喘いだ。




「あッ、ひゃめッ、らめぇええ! ちんぽッ、ちんぽしごいたらあッ…! あひッ、んあぁッ!」
「今日一日で、緋勇は随分と満足したんだろうね」
「あッあッ、ばいぶッ、やめッ、当たるぅッ! んひッ、ひんッ、あッはぁんッ」
「そうそう、こんなものまで挿れて、俺を挑発してくれるなんて、ね」




律動のリズムを狂わさず、八剣は京一の耳元で囁き。
ベッドの上で転がっていた二つのリモコンの内、『OFF』に入っていた方のスイッチを『強』に入れた。




「ひぃッ! ひ、ん、ひ、ゃぁあんッ! ばいぶ、ばいぶッとめへぇえッ!!」




回らない呂律で髪を振り乱して叫ぶ京一だったが、八剣からの攻めは緩まない。
それ所か、京一の腰を抱くと、律動に合わせて強く引き寄せる。
最奥を抉るように突き上げられてしまっては、京一は形振り構わず鳴き喘ぐしかない。




「ひんッ、あッあうッ! んぐ、ふぅんッ!」
「……ッ……結構、辛いね……」
「とめ、て、やらぁあッ! イく、イっちま、あぁんッ!」




京一同様にバイブの振動に攻められていながら、八剣はスイッチを切ろうとはしなかった。

八剣の手に愛されている京一のペニスは、手淫とコックリングの振動により、反り返る程に固くなっている。
解放を切望している事は明らかだった。




「やッ、やつる、ぎッ、あッあッ、あうッ、あんッ!」
「…何、かな…ッ」
「も、これッ取ってッ…! 取ってぇッ! も、やだぁッ! イけな、いぃッ…!」




子供が駄々を捏ねるような口調は、京一の必死の懇願である表れだ。
本人はそれを意識してはいないが。


普段の日常ならば、京一がこんな風に言い出したら、八剣は大抵の事を了承するだろう。
然程長くはない二人の付き合いであるが、それ程には京一は八剣に対して心を開いているのだ。
どんなに拒否されても、最終的に八剣は自分の言う事を聞いてくれる筈だと。

だが、今は日常の中ではなく、場を支配しているのは京一ではなく八剣。
京一は快楽への隷属者であり、現状に置いて彼の権威は皆無なのだ。



涙を浮かべて背後の男に懇願する京一に、八剣は笑みを浮かべる。
常ならば絶対に、京一に対して見せる事はないだろう、支配者の笑みを。




「ひッあ、あぁッあぁあ! ふ、かぁッ…いぃッ……!!」




八剣は京一の躯を抱き起こすと、胡坐をかいて膝の上に乗せた。
京一の体重で、八剣のペニスとバイブは更に奥まで京一を犯し、蹂躙する。
悲鳴にも似た、しかし確かに甘い喘ぎが部屋に響く。

その衝撃で常ならば達せただろうに─────否、確かに京一は絶頂を迎えていた。
しかし戒めのコックリングの所為で、射精は適わず、吐き出される筈だった熱は逆流して京一を苛んだ。




「んはッあッあッあッ! あぁぁあッ!」
「くッ……イっちゃった、かな?」




耳元で囁かれた言葉に、京一は涙を浮かべて何度も頷く。
最早意地もプライドもない。

コックリングに取り付けられた鈴が、律動に合わせてチリンチリンと音を立てた。
場違いな程に高く澄んだ音が、今だけは飼い主からの躾に悦ぶもののように聞こえる。
気紛れな猫を、この悦楽に縛り付けるように。


強過ぎる快楽と、従属に躾けられた躯は、更なる悦楽を求めて踊る。




「あんッあッ、そこッ! そこイィッ……! もっと、…突いてッえ!」
「一度、イったから…かな。よく締まる…ッ」
「ひぁ、ん、あぁんッ…! バイブがぁッ…奥ッ奥突いてるッ…気持ち、い…ッ!」
「俺のはどう、かなッ…!」
「はひぃッ…!!」




突き上げた八剣のペニスが、京一の内部のしこりを突いた。
ビクンと跳ね上がった躯に気を良くし、八剣は其処を集中して攻める。




「いいッ、気持ちイィッ…! 八剣、の、ちんぽッ…ちんぽ気持ちぃ、よぉ…ッ!」
「これも、付けてて良かっただろう?」




振動するコックリングを指して、八剣は低い声音で囁く。
耳から犯されて行くのを感じて、京一はぞくぞくとした感覚に身を捩った。

最早京一の躯は全身が性感帯となっている。
何処に触れても甘い悲鳴が上がり、あられもない声を上げて淫らに舞う。




「アナルでこんなに感じるなんて、ねェ…? エッチだね」
「んッんッ! あひッ、ひぃん…! ふはッ、あッ、ん、あぁあッ!」




ビクン、ビクン、と開かれた京一の足が大きく痙攣する。
八剣の雄とバイブを、咥え込んだアナルの肉壁が強く強く締め付ける。
今日何度目か知れないオーガズムであった。

痛い程の締め付けに八剣の眉根が苦悶に寄せられ、息も詰まる。
直後、京一の胎内に濃い蜜液が吐き出された。




「あッあッ…イって、るッ……オレの、ケツまんこ、中、出てるぅぅうう……ッ…!」
「っく……京ちゃん…少し締め過ぎ、かな…ッ」




全てを搾り取らんとばかりに強い締め付けに、八剣は数秒、息が出来なかった。


ドクドクと流れ込む熱い液体に、京一は腰を揺らて快感に応える。
その姿にまた、八剣は放出したばかりの熱が再び凝固されて行くのを感じた。

京一の膝下に腕を入れて脚を限界まで開かせると、躯ごと持ち上げ、落とすように京一を揺らして攻め立てる。




「ひぃッはんッあぁんッ! や、八剣ッ、あぁッ、オレもぉっ! オレも、イきた…!」
「それは駄目だよ」
「んぐッう、うッあはッ! あつ、熱いぃッ…! 出した、いぃ、からぁッ! おねがッ…!」




意地の悪い八剣に、京一は涙目でふるふると頭を振った。
お願いだから、と。

──────その表情が、更に八剣や龍麻の加虐心を煽るのだ。




「駄ぁ目、だね」




そうして。
笑みを浮かべて見下ろし、告げた八剣の表情に、京一もまた、確かに興奮を覚えてしまい。







「あは、あんッ! あひぃいッ! いあッ、あッあッ、あぁああぁあ─────ッッ!!!」












今夜もまた、眠れぬ夜を過ごす事になる。


















今まで書いた中で、一番ドMな京ちゃんになった……!

公認二股設定にしたのは、八剣にとことんSになって欲しかったからです(さいてぇ。)。
うちの八剣は京ちゃんに対して根っから甘い所があるので、基本的に京一が「やだ」と言ったら引き下がります。
でも其処に龍麻が絡むと………って、此処まで苛め抜くとは思わなかったんですけどねι
途中で楽しくなっちゃって調子に乗りました(滅)。
アレに鈴つけるとか……八剣じゃなくて、私が変態です。明らかに。

しかし公認二股にすると、(当たり前だが)京ちゃんがロクな目に遭わんねι