判っているんだ
そういう事を気にするような性格じゃないって

















Happening early morning


















ジリリリリ、と高い音が響いて、意識がまどろみに浮かび、覚醒へと促されて行く。
促されたのは布団に蹲る二人の少年少女だ。


先に動き始めたのは少女の方で、眠気眼を擦りながら、ゆっくりと緩慢な動きで起き上がる。
煩い音を繰り返す目覚まし時計に腕を伸ばし、バシンと壊れるのではないかと言う勢いでスイッチを切る。
音が途切れたのを確認して、少女は大きな欠伸を漏らした。

その傍らでは、ぴくりとも動かない少年。
目覚まし時計の音はそれなりに大きかったと言うのに、少年は身動ぎ一つしなかった。



少女――――京子はそんな少年・龍麻を見下ろし、溜息一つ。




「オイ起きろ、ねぼすけ」




ぺしっと頭を叩いてやる。
それでようやく、龍麻はもぞもぞと身動ぎを始めた。




「ったく、日曜だってのになんで目覚ましセットしてんだよ……」
「んー……」




そう、今日は日曜日。
だから京子はゆっくり寝ていられる算段で、昨晩は眠りに付いたと言うのに。
よりによって一番無粋な目覚めになった気分だ。


昨晩は、何度も何度も繋がりあって、熱を貪り合うことに否やを唱える事はなかった。
なぜなら明日が日曜日なら遅刻も何も心配しなくて良い(普段から気にしている訳でもないが)し、食事だって気侭に好きな時に食べれば良い。
平日ならば気になる事を気にしなくて良かったから、京子も龍麻に応えていたのだ。

そうして体力の限界を迎え、泥のように眠りについた。
明日の朝の事など、何も気に留めず。



だと言うのに、何故平日同然に目覚まし時計の煩い音で起こされなければならないのか。



龍麻はごろりと仰向けになって、先刻の京子と同じように眠気眼を擦る。
その手がぱたりと布団に落ちたのを見て、京子が龍麻を見遣れば、龍麻はまた目を閉じていた。

龍麻はよく寝る、寝不足じゃなくてもよく寝る。
その通例から今日も二度寝を始めそうだったので、京子はまた頭を叩いてやった。
煩い目覚まし時計で起こされた京子は、もう眠れそうになかったのだ――――今日は折角の日曜日なのに。




「オレが起きてんだぞ。テメェも起きろッ」




無茶苦茶な理屈である。
この二人の間ではいつもの事だ。

ぱちりと龍麻が目を開けたのを確認して、取り敢えず京子は満足した。


気分が満足した代わりに、肌が冷たさを覚えて細身の肩がふるりと震えた。

眠る間際まで繋がりあい、貪り合っていたのだから、龍麻も京子も裸身である。
身に着けているのは皺だらけになった布団のシーツを手繰り寄せたものだけで、早朝の冷えた空気には当然宜しくない。
その布地も覆っているのは下肢だけで、柔らかな乳房は惜しげもなく晒され、勿論背中も外気に当たっている。




「……京、寒い?」
「当たり前だろ」
「布団、入る?」
「いい。それより腹減った」




少し鳥肌の立った腕を摩りながら、京子は布団から出て立ち上がる。

畳みに散らばっていた下着を拾い上げて、渋い顔をする。
それには昨晩の情事の色がしっかりと染みになって残っており、気付いてしまうとなんだか着る気がなくなってしまった。
取り敢えず龍麻のアンダーシャツを拾って勝手に着込んで置く事にする。
龍麻はそれを止めなかった。


キッチンに行くと夕飯に食べた味噌汁が鍋の中に残っており、火をつけて温める。
冷凍庫を開けて凍った米を取り出し、オーブンに放り込んでスイッチを押した。

キッチンとリビングの敷居となっている戸は開けられたままで、朝食を探す京子の様子は、まだ布団から出る気のない龍麻からも窺えた。




京子は葵や小蒔、遠野と比べると背が高い。
龍麻より少し低い位だから、女性としては高身長の類に入るだろう。

それでも龍麻の服を着ると、男と女の厚みの差だろうか、少し裾が余っている。
シャツが少しよれている事を考慮しても、シャツの裾は足の付け根まで下がっていた。
……丁度、局部を隠すギリギリの高さで。


彼女は今、龍麻のシャツ一枚しか着ていない。
下肢は何も身につけておらず、すらりと長く綺麗な足が惜し気もなく晒される。

それでしゃがんだり、立ったまま前屈みになったりすると、シャツの裾が持ち上がり、本来なら守られるべき場所がちらりちらりと覗き始める。
龍麻が見ているのは後姿なのだけれど、それだって健全な男子高校生には少々刺激が強い。
それも好きで好きで堪らない恋人で、おまけにほんの数時間前まで繋がり合っていた相手だなんて事になったら。




(………あ。)




……気付いた時には、もうそんな状態になっていた。
健全な男子高校生だから仕方がない。



普段、京子は自分の裸を見られる事に躊躇いを持たない。
誰も彼もにと言う訳ではないけれど、水着でも下着でも、見られて悲鳴を上げるような女らしさは見せない。
恥ずかしさで高い悲鳴を上げるよりも先に、怒りでそれを見た男を問答無用に殴り飛ばしているのが常だ。

龍麻相手にも京子はそんな調子で、よく裸でこの部屋の中を歩き回っている。
情事の後でも堂々と胡坐を掻いている事も多く、あまりにも大っぴらにしているものだから、龍麻ももう見慣れて来た。
注意した方が良いとは思うが、言って直す彼女ではないし。


今の彼女もそれと同じで、下着が汚れていたから履く気にならなかっただけの事。
ノーパンでズボンを履く気にはならず、だったらこのままで良いかと極端な思考に行き当たったのだろう。

いつもの事だ。



けれども、決定的にいつもと違うのは、隠し切っている訳でも隠さずにいる訳でもないと言う事。
京子本人の意思とは無関係に、龍麻のシャツが局部を見せたり隠したり―――――所謂チラリズムが働いているのだ。

見えそうで見えない、この魔力は相当な威力を持っているらしいと、龍麻は初めて知った。




(………どうしよう)




自然に収まるかと言われると、少々自信がない。
京子があの格好でいる限り、どうにも気になってしまう。

手っ取り早くトイレに行こうかとも思うものの、トイレに行くにはキッチンに行かなければならない。
……と言うか、正直、今の状態では立ち上がるのも辛いかも知れない。




龍麻が(顔に出ずとも)ぐるぐると悩んでいる間に、朝食の用意は出来ていた。
お盆に温めた白飯と味噌汁、これも夕飯の残りのサラダや煮物を乗せて、京子はリビングに戻って来た。

戻って来て、お盆を置ける丸テーブルが出ていない事に溜息を吐く。




「起きてんだったら、飯食う準備しとけよな」
「……ごめん」
「謝るんなら出て来やがれ。いつまでその中にいる気だ」




いや、出たいんだけど。
出れないんだ。

布団に蹲る龍麻の頭を、京子がお盆を持って立ったまま、ぐりぐりと足で蹴る。


………下世話な話、見事なアングルが出来上がっていた。
うっかり顔を上げてしまった龍麻の目に飛び込んできたのは、今は綺麗に閉じられた桃源郷だったのである。

だから龍麻は余計に布団から出る事が出来ず、もう顔を上げる事も出来ず、布団に埋まるしかない。



手伝えよと京子は言ったが、無理だ。
今は意地でも布団から出れない。

動かない龍麻に、元々短い京子の忍耐が続く訳もなく、結局自分でテーブルを出し始めた。
ブツブツと何某かを呟いているのが聞こえて、悪い事したなぁと思いつつ、こっそり布団から顔を出す。




…………出さなければ良かった。




「なんでェ。見てるぐれェなら出て来いっつーの」




そう言った京子は、テーブルの足を立たせて床に下ろし、場所を調整するように前屈みになっていて。
床畳に敷いた布団の上で寝転んでいる龍麻からは、シャツの裾から微かに見えてしまっていた。

またしても布団に顔を埋めた龍麻に、京子は顔を顰めて歩み寄り、傍らにしゃがみ込む。
その気配を感じて、今度こそ絶対に顔を上げたら駄目だと龍麻は気付いていた。




「オメーはさっきから何やってんだよ」
「……京……取り敢えず、服着てよ…」
「あ? ンなもん後で良いだろ」
「寒いんじゃないの?」
「寒ィけど面倒くせェ。…汚れてるしよ」





だったらタオルでも巻いておいて欲しい。
いや、それも多分同じ結果になるだろう。

やっぱり服を着てもらうのが一番良い。



どうやって説得しようと考えている龍麻に対し、京子は布団から出ない龍麻のその態度が気に入らなかった。
食事の用意だって出来ている(それも、いつも全くやらない自分がやったのに!)と言うのに、龍麻は起き上がりもしない。
二度寝をする気はないようだが、だったら起きて飯を食えと思うのだ。


二度寝をする気がないのに、龍麻が布団から出て来ないのは珍しい。
トイレに行くなり顔を洗うなりするのが常なのに、今日に限ってちっとも出て来ないのだ。
顔を出したと思ったらまた蹲って、一体何がしたいのやら。

人間の三大欲求の一つである睡眠欲が特化して強いにしても、これは滅多にない光景だ。
鬼の事件等がない時は、割とちゃんと規則正しく生活しているのに。


起きれない理由でもあるのか―――――と考えてから、京子はふと思い出す。
男にはどうしても避けられない、朝のハプニングがある事を。




がしり。

京子が布団を掴んだのを察知して、龍麻は抵抗する為に同じように布団を掴む。
寝転がっていては勝てないから、上半身だけ起き上がらせて布団を抱え込んだ。




「あ、くそ! 放せ、テメェ!」
「京が放してよ」
「テメーは布団の中で飯食う気か!? オレが用意してやったってェのにどーいう了見だ、コラ!」
「用意って、お味噌汁も煮物も、昨日僕が作ったものでしょ」
「それをわざわざ温めて此処まで持ってきてやったんだろが!」




京子の言う理屈は滅茶苦茶だ。
いつもは龍麻がしている事を、自分が空腹に耐え兼ねたから率先したに過ぎない。

――――京子が口にする理由はなんだって良いのだ。
中身が殆ど伴っていないのは当たり前で、実質、力任せに布団を奪おうとしているだけ。
そして龍麻はとにかく布団を守ろうと、引っ張り合いをしているだけである。


今回のこの勝負は、龍麻の方が分が悪い。
何も気負いも躊躇いもない京子に対して、龍麻は今正にハプニングの真っ最中だ。




京子は頭に血が上りやすく、勝負事には意地でも負けたくない気質だ。
内容がどんなに下らないものでも、夢中になれば負けず嫌いが顔を出し、どんな手段を使ってでも勝とうとする。

特に龍麻と勝負をすると、吾妻橋達やチンピラと勝負をするよりも血が上るのが早い。
同等の相手だと認めているから、余計に負けたくないと思うのだろう。




げしっと京子の足が龍麻の頭を蹴飛ばした。
遠慮も容赦もない一撃に、龍麻は軽く脳を揺らされた気がした。

その隙に京子が目一杯布団を引っ張り、奪取に成功する。






「よっしゃ、取っ―――――――」







勝利に沸いた声を上げかけて、京子はぴたりと静止した。
布団を奪われた勢いで引っ繰り返った、龍麻を見て。




「………………」




京子の顔が赤くなる。
龍麻は肩を落として溜息を漏らした。

気まずい沈黙が然程広くない一室を支配していた。


最初から隠さずにいたら、京子も顔を紅くしたりはしなかっただろう。
妙な勝負でお互いに意地になった後だから、余計に恥ずかしさを感じてしまうのだ。

でも、だからと言って堂々としていられる程、龍麻は大人ではない。
情緒豊かな思春期真っ最中の男子高校生としては、男同士ではふざけられる話でも、女子に見せるには抵抗を感じるものだってある。
幾らそれが京子のような性格をしている女の子でも。




「………お前、……………」
「……………」




はくはくと口を開閉し、目を丸くして真っ赤になっている京子。
そんな彼女に、可愛いなぁ、なんて思っている自分は、間違いなく現実逃避を始めているのだろうと、還って冷静になりつつある思考の一部が冷静に分析する。



が、先に行動を起こしたのは京子の方だった。

奪い取って抱えていた布団を放り投げると、ひょこりとしゃがんである一点を凝視する。
……その視線の先に気付いて、龍麻は慌てて其処を隠した。




「見ないでよ」
「いいじゃねーか、減るモンじゃねェし」
「そういう問題じゃないよ」




あっけらかんと言ってくれた京子は、まだ顔に赤みを残しているが、それよりも好奇心の方が押さえられないらしい。
隠す龍麻の腕を掴んで、隠したモノを見たがった。




「見せろって。お前だってオレの見てんだから、お前も見せろよ」
「見てるでしょ、何回も。今更じゃないか」
「だったら尚更見せろよ。何回見ても一緒なんだろ、じゃあ今見たっていいじゃねェか」




京子の表情はうきうきと楽しそうなものに変わっている。
龍麻が嫌がるから、好奇心と悪戯心が益々沸いて来たのだろう。


確かに、龍麻は京子の秘部を何度も見ているし、京子も龍麻のソレを何度か見た。
だが京子はじっくり直視した訳ではなく、情事の最中の出来事で、それも真っ赤になって直ぐに目を逸らす。
そうやって恥ずかしがって、嫌がる京子の表情を、龍麻は可愛いと思う。
だから何度もその顔が見たくて、繋がっている箇所を見えるように晒したりするのだけれど――――今それを激しく後悔した。

隠したソレを見たがる京子の悪戯心は、普段のそうした意趣返しも含まれているに違いない。
やられたらやり返すのが京子の信条だから、これは絶好の機会だと見たのだろう。




「ただの生理現象なんだろ。別に照れるモンでもねェじゃん」
「そうだけど……」
「朝勃ちしてんだろ? オレ、朝勃ち見たことねェんだよ」
「それはそうだと思うよ……って言うか、あの、これ朝勃ちじゃ……」




ないんだけど、と言い掛けて止める。
じゃあなんだと問われたら、龍麻は何も言えなかった。


朝勃ちであるにしろ、ないにしろ、生理現象である事に間違いはない。
だから恥ずかしがるような事ではないのだ、多分。

けれど、やっぱり見られたくない。

情事の最中、恥ずかしがって見るのを嫌がる京子の気持ちが少し判ったような気がする。
普段裸を見られる事を全く気にしていない彼女でも、行為となって濡れてしまうと羞恥心が沸いてくるのだ。
理屈では言えない恥ずかしさがある。




見せろ、見せないの押し問答が延々と続く。
結果、京子は案の定、力任せと言う手段に出た。




「いーから見せろっつーのッ」




勢い良く龍麻を布団に押し倒し、京子の龍麻の腹に逆向きで乗った。
下着を履いていない所為で、京子の陰部が直接腹に当たり、それが更に龍麻を煽ってしまう。

しかし京子はそんな事など気にも留めず―――気付きもせず―――龍麻の猛った雄に触れた。




「京ッ……」
「うわ、かてェ」




触れた塊の熱と硬さに、京子は感嘆の声を上げた。
いつもはまともに見る事もなければ、触る事などないそれを、指先で突付いてみる。

彼女の指が其処に触れていると思うだけで、龍麻は興奮する自分を自制し切れない。




「これ、完勃ちしてるよな……お前どんなヤラしい夢見たんだよ」
「…夢の所為じゃないんだけど…」




京子がこの事態に対して、嫌悪や侮蔑を感じていない事は有難い。
しかし、だからと言って無邪気に触らないで欲しい。
このまま爆発してしまいそうで、龍麻は恥ずかしさで顔から火が出そうだ。




「出すモン出したら収まるのか?」
「うん、一応……」
「へー………」




だから、早く其処から退いて欲しい。

龍麻は思ったが、京子は全く動くつもりがないらしい。
興味津々と言った声を漏らしながら、指でカリや竿をなぞっている。


京子に其処を刺激して貰った事がない訳ではなかったが、彼女が自主的に触れる事はなかった。
普通に頼んでも断固拒否されるから、いつも行為の最中、前戯でトロトロに頭の中を溶かしてから。
思考能力を根こそぎ奪った後で促して、ようやく触れてくれるのだ。

それが今は、彼女に全くその気がないにしても、自分から欲望に触れられている。
自ずと龍麻の息が上がって来るのも無理はなかった。



……おまけに、彼女は秘部を隠しもしないで、直接龍麻の腹の上に乗っている。
興奮しない訳がない。




「京、ちょっと退いて…」
「やだね」
「京〜……」




まるで珍しい生き物を見つけたかのように、京子の声は弾んでいる。
実際、京子にとってはそれと同様のものであった。

龍麻が力任せに退かせようとしないから、京子もこの行為を止めようとしない。
本気で嫌ながら、どうやってでも退かせる筈だと京子は思っている。
そしてそれは確かな事で、龍麻も決して、京子に其処を触れられる事を厭うてはいないのだ。
ただ状況が状況だから、甘受する訳にも行かない訳で。




「出したら収まるんだよな………」




ぽつりと京子が小さな声でそう呟いたのが、龍麻の耳に届いた。
途端、それまで指先だけで触れていた雄を、京子は掌で包み込んだ。

まさかと龍麻が目を丸くしている間に、京子は雄を包んだ手を上下に動かして一物を扱き始める。




「ちょッ、京!」
「すげェ、でっかくなる……」
「ん、ぅ……京、ストップ……ッ」




龍麻の静止の声など聞こえていない様子で、京子は龍麻の雄を扱いた。
若い体は刺激を与えられれば素直に反応してしまい、雄はどんどん熱を蓄えて膨張する。




「京、ダメだってば」
「なんだよ、嫌なのか?」
「そうじゃない、けど……」
「じゃあいいじゃねェか。処理すんだろ、どっちみち」




処理はする。
するが、それは自分の手で行いたい。

愛する彼女に触れられていると思ったら、一度射精した所で収まるとは思えない。
絶対にもっと欲しくなるし、京子にだって触れたいし、何より繋がり合って蕩ける程に貪りたい。
膨れ上がる欲望は限界を知らないから、枷が外れたら絶対に止められなくなってしまう。
彼女がもう無理だと泣いても、ブレーキをかけられる自信がない。


しかし、身の危険には聡い彼女は、こういった事にはてんで鈍い。
龍麻の内心の葛藤など知る筈もなく、亀頭に指の腹を押し付け、グリグリと強く刺激した。
ビクンと龍麻の体が自分の下で跳ねて、気を良くする。




「なんか面白ェ」
「玩具じゃないよ、僕」
「あ、いいな。オレ専用の玩具」
「怒るよ」
「出来るモンならやってみろ。ホレ」
「………!!」




完全に主導権を握っていると言う優越感と安心感からか、京子は後方を振り返り、龍麻の顔を見て笑いながら雄に爪を立てる。
思わず、龍麻は息を呑んだ。


ズリズリと京子が乗っている位置をずらす。
龍麻の肌の上で、剥き出しの陰部が微かに擦れていた。
其処はじわりと濡れ始めていたが、京子はまだ自身の変化に気付いていないらしく、龍麻の雄を弄るのに夢中だ。

腹の上から胸板へと場所を変えた京子は、龍麻の足の付け根に手を置いて上体を倒した。
京子の顔の位置に丁度天を突いた肉剣があり、京子はじっとそれを見ながら、竿と一緒に玉も弄り始めた。




「京ッ」
「こっちは柔らけェんだな」




つんつんと何度か突付いてから、京子はまた竿を扱く。




どんどん膨張して行く龍麻の欲望に、京子は心臓が高鳴っていくのを感じていた。
子供のような好奇心からこんな事態に発展した訳だが、もうそれ以上の興奮が身の内を支配している。


こんな大きなモノがいつも自分のナカに侵入して、天国のような地獄のような快楽を与えて来るのだ。
何度もそれを覚え込まされた躯は、彼女自身の意識のない内に、それを思い出していた。

知らず知らずの内に瞳には熱が宿り、漏れる吐息は艶を含み、秘部は少しずつ蜜を零し始めている。
大きく育った胸の頂はピンと硬くなり、一枚だけ着込んだ龍麻のシャツを押し上げていた。



行為の最中で此処に触れた時、どんな風に触れていたのだったか。
手順のようなものは頭に残っていなかったが、これも躯が覚えていたのだろう。
熱に攫われた思考回路は、京子の意志を無視して、手足にそれらを伝達して行った。

正常な思考能力は少しずつ失われ、情欲に促されるまま、躯が動く。
雄を扱き、時折悪戯に玉を刺激して―――――天を突いたそれに、京子は恐々と、口を開けて。




「……ん……っはぁ……」
「………ッッ!」




舌を這わした、直後。
龍麻はシーツを握り締めて、耐え切れなくなった熱を打ち放った。




「…………………あ?」




放たれた欲望は京子の顔を汚し、ぱちりと京子は一度瞬きする。
思いも寄らない性急な射精に、一瞬何が起こったのか理解できていなかった。

頬を伝う粘り気のある液体に触れて、ああそうかと気付く。




「…なんか、すげェ早かったな」




ぴくり。
零れた京子の呟きに、龍麻は上がった呼吸が一瞬にして停止したのを感じた。




判っている。
京子の呟きに他意はない、単純にいつもと比べての感想だ。

けれども、早いと言われてしまうと、彼女に悪気はなくても男のプライドが黙ってはいられない。





胸の高さにあった京子の腰を掴んで、引き寄せる。
熱に浮かされかかっていた京子は、反応が遅れて背後からの力に素直に従う形になった。




「龍麻、何ッ―――――ひぁッ!」




ぴちゃり、龍麻の舌が京子の陰唇を這う。
ぬるりとした感触に甘い悲鳴を上げ、京子は龍麻の腹に縋りついた。


布地に守られていない秘部はしっとりと濡れそぼり、昨晩の情事の名残だろうか、とろりと蜜が零れ始めている。
それを掬い上げるように舌をなぞらせながら、龍麻は綺麗なラインをした臀部を撫でる。
ふるふると京子の躯が震え、龍麻の腹に乗せられた手が耐えるように拳を握った。

目覚めてからずっと無防備に外気に晒されていた其処は、朝の冷えた空気と反対に、熱く湿気を帯びている。




「あッ、ああ…ん、ふぁッ…!」
「一杯溢れてきてる……」
「はぅ、んくぅッ」




龍麻の腹に京子の熱の篭った吐息がかかる。
零れる吐息と甘い悲鳴に、龍麻は射精したばかりの自身が再び持ち上がるのを感じていた。




「京の所為だよ」
「っは……何、がぁ……あぁんッ!」




逃げを打つように身をくねらせる京子の腰をしっかりと掴み、龍麻は陰唇を強く吸い上げる。
ビクンッと京子の躯が跳ね、分泌される蜜液の量が増えて行く。


秘孔を舐めながら、龍麻は淫核へと手を伸ばした。
指先がそれに触れると京子は嬌声を上げる。

皮に包まれてひっそりと隠れていたそれを開かせ、摘んで擦ると痙攣したように躯を震わせる。




「んぁ、あッあッ! 龍麻ッ…あう、ふはッ…! ひィん…!!」




強烈な快感から逃げようと、京子は躯をくねらせる。
しかし下肢からの快楽は全身を痺れさせ、抵抗する力を皆無にしてしまう。

仮に抵抗できて、逃げ出すことが出来たとしても――――此処にいる間は本当の意味で解放される事はないだろう。
此処は龍麻の部屋で、彼のテリトリーの中にいるのだから。
支配者が彼である限り、この快楽を与える者も、縋る相手も、彼しかいないのだ。


淫核と陰唇を同時に攻められ、京子の腕から躯を支える力が失われる。
肘が力を失って、京子の上体が龍麻の腹の上に落ちた。




「や、ダメ……龍麻、あ……ぁ…?」




快感で硬く閉じていた目を、薄らと開ける。
すると其処には、



「は…? んッ、なんで……あぁッ!」




つい先程射精したばかりの龍麻の雄が、既に硬質を取り戻し、支えなく天を突いていた。
京子が最初にそれを見た時よりも、大きく膨らんだ上体で。




「な、なんでッあぅんんッ! イったんじゃ……ひぃあッ!」
「イったけど、朝勃ちじゃないし」
「ふぁ、あぁッ!? ん、でも、イった…ぁ!」




朝勃ちの生理現象とだとばかり思っていた京子には、不思議で仕方がないらしい。


龍麻にしてみれば、当たり前のことだ。
状態としては似たようなものだが、原因は男の体のバイオリズムなどではなく、目の前にいる恋人。
ショーツも履かないで、昨晩の情交の色を残してチラリズムなんてされたら、男は堪ったものじゃない。

それでも自分で処理出来ていればこんな事にはならなかった。
なのに興味を示してしまった京子が自分の格好も気にしないで龍麻を煽るから。



龍麻は京子の下から抜け出すと、彼女の腕を後ろに引っ張って上体を仰け反らせた。
一枚着ているだけのシャツの裾から手を滑り込ませ、張りのある乳房を揉みしだく。




「んッあッ、あんッ…! 龍麻…やッ…!」
「こんな格好してるから……」
「あ、あ、あ、んくぅッ…! ふぁ、っはぁん…あぁあ…!」




胸の頂を摘んで、親指と人差し指の腹でコリコリと擦ると、悩ましげな声が京子の喉奥から漏れた。



せめてショーツだけでも身に着けてくれていたら。
全く欲情しなかったとは言わないけれど、勃起するまでには至らなかったような気がする。
布団から出られない上に、京子に少し刺激されたぐらいで射精する程張り詰めはしなかっただろう。

薄手のシャツ一枚で後は何も身に付けないで、局部を隠す訳でも見せる訳でもなく。
自身にそう言った性癖があるとは思っていないけれど、そんな風にして過ごされればやっぱり目に付いてしまうし―――――つい、その奥底にある熱さを思い出してしまうのだ。


だからこれは、京子が招いた事態。

滅茶苦茶な言い分だけれど、龍麻はそう決めた。
自分は止めたのに、京子は止まろうとしなかった。
だったら、これは彼女の悪い。





「ちゃんと責任取ってね、京」
「んッ、ふぁッ! あぁああぁぁんッッ





反論を赦さず、龍麻は京子を一気に貫いた。
昨晩の情交と、散々刺激されて濡れた秘部は、京子に痛みと理性を取り戻させることはなかった。




「せ、責任ッて、なん、のぉッ! あッ、あんッ!」
「京の所為で僕はこうんったんだもん。だから、その責任」
「あう、はひッ龍麻ァッ…! んく、あ、やぁ! 乳首ッ、感じるぅッ…!!」




二人の呼吸が整うのを待たず、龍麻は京子を後ろから激しく突き上げる。
リズムに合わせて京子の躯は陸に上げられた魚のようにビクビクと跳ね、弓なりに反り返る。

乳首の先端に軽く爪を立てて擦ると、京子は身悶えて腰を振った。
それにより陰部から更なる快楽に襲われる。




「な、なんでッあんッ! オレ…の、…ひぁんッ! ひんッあッいやぁッッ
「見えそうで見えないって凄いね。こんなに興奮すると思わなかった」
「なんの話…あッ! ひう、さっきの…、あさだち、じゃ……あぁんッ!」
「だから、違うんだよ」




龍麻の言い分の意味が判らない京子。
そんな京子の下肢をちらりと見れば、やはりシャツの裾から繋がった部分が見え隠れしている。
はっきりと姿を確認する事は出来ないが、それが返って想像力を刺激し、酷く卑猥なものに思えて来た。

京子の体内を犯しながら、雄は更に膨張し、彼女の肉壁を押し広げる。
何度貫いても緩むことのない締め付けは、普段あれだけ豪胆でありながら初な一面を持つ京子とよく似ている。



龍麻の雄を咥え込んだ其処は、粘ついた蜜液でぐっしょりと塗れ、布団のシーツに大きな染みを作っている。
窓の外は朝露が晴れて綺麗な青空が広がっているのに、この部屋の中は昨晩と何も変わらない。
若い二人の甘やかで濃厚な情交の色で染められ、窓の外の風景とはまるで別世界だ。




「んく、ふぅんッ…あ、ひぃ…! や、あぁんッッ




深く貫く龍麻の雄が、京子の子宮口を突いた。
それまでよりも更に高い嬌声が喉奥を突いて出て、京子の視線は宙を彷徨う。

龍麻はクスリと笑って、入り口近くまで一端引き抜き、また最奥へと京子を貫く。




「あぁあああッ! だめ、やッやぁああんッ や、だめ、らめェ…!」
「ほら、凄くいやらしい音してる……」




じゅぷ、ぐちゅ、と卑猥な音が京子を更に辱める。
逃れたいのに胸を揉む手が刺激と共にそれを阻み、何より京子も本気で逃げる気はない。
この天国のような地獄のような快楽を、彼女は決して嫌いではないのだ。

だから、全てを浚われる。


只管激しく突き上げられて、京子は最早、背中の男のされるがままとなっていた。




「た、つまぁッ! だめ、もうッ、おま○こイくッ! イくぅううッッ
「うんッ、いいよ……僕も……ッ」
「はひッひぃあ…! 龍麻ぁッあああ……ッ




今が朝であると言う事など、とうの昔に頭の中から追い出して。
雄を強く締め付けながら、京子は絶頂へと上り詰める。

同じく龍麻も限界を迎え、最奥から一気に外へと引き抜くと、京子の秘部の口へと濃い白濁を吐き出した。

























風呂場からシャワーの音がする。

その音が止まない内に、龍麻は布団からシーツを取り、彼女が着ていたシャツと一緒に洗濯機に放り込んでスイッチを入れた。
それからすっかり存在を忘れていた朝食を温め直し、今度こそ食事の用意をする。



結局、二人が情交を終えたのは、午前10時。
昨晩の行為を終えて、ようやく回復した体力を再び使い果たし、京子が意識を飛ばしてからだった。

京子が意識を失っていたのは数分の事で、目覚めると彼女は先ず真っ赤になって龍麻を蹴り飛ばし、その後風呂へと向かった。
よくよく考えれば昨日も交わってそのまま眠ってしまったので、二人とも後始末をせず、汗を掻いたままだったのだ。
それなのに、龍麻に一発食らわせる事だけは忘れないのが彼女らしい。




いつになく京子は長風呂になっていたが、無理もないだろうから、龍麻は特に急かさなかった。
それより彼女は着替えを持たずに風呂場に向かっていた事を思い出し、今度こそは何か着せなければと思う。

「汚れていたから履きたくない」と言った彼女のショーツの代わりに、箪笥からパンダ柄の男物パンツを取り出す。
最近すっかり彼女の私物と化しているそれと、真神学園の運動着を用意する。


几帳面に綺麗に畳まれているそれらを持って、風呂場の方へ向かおうとして、



「龍麻ァー」




少々間延びした声で呼ばれた。




「なぁ、服」
「うん、持って行くから………」




待ってて、とまで龍麻の言葉は続かなかった。
その待っていて欲しい張本人が、既に風呂を出てリビングにひょっこり戻ってきたからだ。

バスタオル一枚を躯に巻き付けただけの格好で。



夏場はバスタオルすら巻かずに、貸したパンツ一枚で部屋を歩き回ることも珍しくなかった。
その際、羞恥心など何処へやらで、たわわに育った大きな胸は隠されていない。

あれも止めた方が良いだろうと常々思っていたのだが、あれは堂々と晒されている分、それ程気になる事はなかった。
付き合う以前から彼女がそんな振る舞いをするから、龍麻もあのスタイルに見慣れている事もあったのだろう。
第一、注意されて止めるような性格をしていなかったし。


それを思えば、寒さを嫌ったと言う理由でも、タオルをきちんと体に巻き付けているのはマシかも知れない。

……と、普段なら思った所なのだけれど。




「何突っ立ってんだよ?」




きょとんと首を傾げながら、京子はリビングに入って来る。


彼女は夏場と違い、所謂“女の子巻き”で体をバスタオルで包んでいる。
しかし普通の女性よりも身長がある所為か、タオルは彼女の秘部をギリギリで隠している状態。

………数時間前と同じ事態が再び起きていたのである。







「………京」
「あ?」
「……またスるよ?」








据わった瞳でそう言った龍麻に、京子はしばらくの間きょとんとして――――意味を理解すると、見事なスピードで服を引っ手繰って、龍麻をリビングから蹴り出したのだった。













……完全に男性向けになった気がする。大丈夫なんだろうか、コレ(滝汗)。


単純に龍麻の朝勃ちネタでも良かったんですが(下世話!)、それより京子の天然振り考えると楽しくて楽しくて!
気が付いたら自然生理現象じゃなく、完全に京子に欲情した龍麻の話になりました。

京子は龍麻よりちょっと背が低いぐらいなので、龍麻の服を着てもダボダボになる事はありません。
ちょっとだけ裾が余ったりするの程度なので、大事な部分はチラチラ見え隠れ。チラリズム万歳。
でもエッチする時以外は別に気にしない子です。