消しゴム投げる




こつん。



何かが頭に当たって、睡魔に落ちかけていた意識が浮上した。
浮上はしたが、丁度良いまどろみの中にあった頭はぼけていて、今のなんだろう、と頭を擦る。



こつん。



もう一度当たった。
また頭を触ってみるが、何もない。



ひゅん。



小さく小さく空気を切る音が聞こえて、飛んできた何かを頭の後ろでキャッチした。
なんだろうと確かめる為に眼前で手を開くと、其処には消しゴム。




振り返ってみると、クラスメイト二人を挟んで、後ろに座っていた親友がにやにやと笑っていた。
頬杖をついて楽しそうに此方を見る京一は、どうやらとっくの昔に授業に飽いていたらしい。

龍麻が此方を見ている事に気付いて、京一は窓の外を指差した。
何を言わんとしているのか、音にしなくても判る。



授業が終わるまで、まだ30分。
始まる前からこの授業に乗り気でなかった(乗り気の時の方が稀だ)京一には、拷問に似た時間だろう。


時計を見てから、教卓に立つ教師を見る。
黒板に英単語を書く担任教師は、此方に気付いた様子はない。

と、一番前に席を取っていた葵が振り返った。
目があって笑うと、葵も笑った。
それから、サボっちゃ駄目よ、と生徒会長らしく、口パク。





でも、無理。




5、4、3、

心の中でカウントする。
他の教師ならともかく、担任・マリア=アルカードは手強い。
予備動作に入るまでに気付かれたら、失敗。



2、1。








二人一緒にガタリと席を立つのと、マリアがチョーク片手に勢いよく振り返ったのは同時だった。










“&”でも良いけど、気持ちは“×”です。
脱出成功か失敗かは、ご自由に想像して下さい(投げっ放し!)。