居眠りぐーぐー





どの学校、どの学年、どのクラスにも、一人はいるものではないだろうか。
授業中によく寝る生徒と言うものは。

真神学園3−Bでは、緋勇龍麻がその筆頭であった。



今日も今日とて、緋勇龍麻はよく寝ている。
マリアの指示で、居眠り防止の為に教卓の目の前の席に移動させられたのに、全く意味を成していない。
ついでにノートの落書きも相変わらずであると、京一は予想した。


すぅすぅと肩を揺らして寝ている龍麻。
黒板に向かっていたマリアも、その気配にはとうに気付いていたのだろう。
今まで何も言わなかったのは、自分で起きてくれる事を願ってのものか。

しかしついに見過ごせなくなったのか、くるりとマリアが振り返る。
いつものように教科書片手に、マリアが龍麻の前に立つ。




「緋勇君」




呼びかけても、龍麻は動かない。
その程度で彼が起きない事は皆承知している。





「緋勇龍麻君」





まだまだ起きない。
呼びかけ程度で起きる訳がないのだ。

しかし、目を覚まさなければ、丸めた教科書が落ちてくるのは必至。


マリアの限界ギリギリで龍麻が起きる確立は、凡そ三割。
さて本日はどうなるか。





「………緋勇龍麻君」





マリアの語尾が強くなって来た。



京一の隣に座っていた小蒔が、京一の肩をつついた。
視線だけを向けてみると、折り畳んだ小さな手紙。
開けば、龍麻が起きるか起きないかと言う賭けが始まっていた。

今日は起きる方に賭けた生徒の方が多く、ずらりと名前が書いてある。
京一は昨日の龍麻の様子を思い出しつつ、名前を書いて、小蒔とは反対隣の生徒にそれを回す。


欠伸をかみ殺しつつ前を見れば、マリアがそろそろ腕を上げて来た頃だった。
その手には、丸められた教科書。




「授業中よ、緋勇龍麻君」





最後通告の声だ。

教室内が静まり返り、各自動向を見守る。
京一は既に結果が予想できていた。




ぱこん!



「………いたい」




よし、勝った。



───────穏やかな午後の授業中の話である。








このお題はやっぱり龍麻でしょう。よく寝る子。
アニメ一話で居眠り龍麻とマリアのやり取りを皆楽しんでた節があったので、書いてみました。