我侭を言う








少しだけ目を伏せて。
こっちの顔を見ないようにして。

静かな声で告げられる、“判ってる”と言う言葉。


甘えちゃいけないと思うけど、甘えてしまうのは、きっと赦してくれるだろうと思うから。
何を言っても何をしても、きっと彼なら受け入れてくれるだろうと思うから。

……そう願っていて、彼は本当にそうしてくれるから。




時折、無理に付き合わせているのじゃないかと思う事もある。

だけど、それを言おうとすると、彼はぶっきら棒に「なんの事だ?」と言って。
そうして自分は、結局また甘えている。






いつでも何処でも、一番最初に呼ぶ声があって。
誰より何より、一番先に隣にいる人。
向き合って、背中越しで、一番近くに感じる人。


無茶も無謀も、全部ひっくるめて受け入れて。
「仕方ねェな」と笑って、「オレもバカだからな」と言ってくれた。



一人で背負うなとは言わない。
でも、「オレも一緒だ」と言って、いつも傍らにいて。
向ける刃の切っ先は、同じ方向を向いている。

冷たくて寂しい偽りの言葉の中で、痛いくらいに熱い言葉をくれた。
迷えば答えが見付かるまで傍らで待ってくれていて、別に急かす訳じゃなく。
あるがまま、見付けた答えごと全部受け止めてくれる。


そうして、間違え掛けた時は、躊躇わずに殴ってくれる。





だから。
だからつい、ワガママを言って。

優しい彼を、渦の中に巻き込んで。



そうして何度、傷付いていくのを見ただろう。
彼はそれを僕に言った事はなかったし、きっとずっと言う事もないだろうけど。





一番最初に、言葉ではなく、全身で。
全てを持ってぶつかってくれたから、何も隠すものなどなくて。

一番最初のあの瞬間から、彼は何もかも受け止めてくれたから。



だからつい、きっと受け入れてくれるんだと思って、ワガママを言って。
ごめんねと言ったら、









「何謝ってんだ、お前」

「お前が勝手にしてることに、オレが勝手にやってるだけだろ」


「何がワガママなもんかよ──────」










そんな事言ってくれるから、

一生ワガママ言ってもいいのかなぁと思ってしまうんだ。














比良坂、外法編最終話、拳武編ラスト、渦王須事件、最終決戦。
龍麻がしようとする事を、そのまま受け入れて一緒に背負おうとする京一は男前。

寄りかかりあえる二人が好き。