熱が混じり合う瞬間が、好き

















Bubble bath time
















京一とて、余裕のある生活をしている訳ではない。
日々の殆どを『女優』で過ごしている彼の懐は、決して潤沢な訳ではなかった。

アンジー達から服やら何やらと、プレゼントと言って貰う(押し付けられる)事はあるが、露骨な金銭を貰った事は少ない。
例外と言ったら、学校生活の中で必要なものを買う時や、朝昼晩の食事代位で、これも決して多くを貰う事はなかった。
あくまで自分は居候と言う立場であるから、必要以上に甘えるべきではないと自戒が働くのである。


だから、「節約したい」と言い出した龍麻の気持ちが判らない訳ではなかった。



龍麻は田舎に両親を残し、真神学園に転校する為に一人で上京して来た。
東京で彼は一人暮らしを始め、その日々の生活を賄うのは、遠く離れた両親からの仕送りによるものであった。

優しくて温かい両親は、大切な一人息子に不自由させまいと、生活費以外にも色々なものを送って来てくれる。
それは、母が丹精込めて育てた野菜や果物であったり、手作りの焼き菓子だったり、父が作った焼き物の皿であったりする。
龍麻はそれらを大切に扱い、一緒に送って貰ったお金も無駄遣いしないように計画的に使っていた。


とは言え、予定外の出費をしてしまう日はあるものだ。


最初は五人から始まった仲間の数は、日を追うごとに増えて行った。
いつの間にか両手で数えても足りない数になっていて、メンバーの中には度々連絡を寄越してくる者もいる。
特に雨紋や織部姉妹などは、出逢った時期が早かった事、元々の知り合いがいる事も相俟って、非常に距離が近い。
こうしたメンバーに誘われて、皆揃って行きつけのラーメン屋に向かう、と言う事も、比例して増えて行った。

仲間達と語らう時間が増える事は、好ましい事である。
重要な情報交換をする事もあれば、テストがどうの校則がどうのと、なんでもない話をする事もあった。
それがどれだけ、得難くて大切な時間であるのか、龍麻は知っている。

……そんなものだから、誘われると断る理由がない事もあって、此処数日、龍麻は外食三昧が続いていた。




「……自業自得じゃねェのか、そりゃあ」




“節約したい”の言葉の出所理由を聞いていた京一は、胡乱な目をしてそう言った。

それを言われてしまうと、ぐうの音も出ない。
あはは、と笑う龍麻に、京一は呆れたとばかりに溜息を吐いた。




「毎日毎日、節操なしにホイホイついて行ってりゃ、そうなるに決まってんだろ」
「だって、嬉しいんだ。誰かと───友達と一緒にご飯食べるのって、前は出来なかったから」




放課後の寄り道や、家に帰った後にかかってくる電話での誘いの言葉。
ほんの数か月前まで得難いと思っていたそれが、当たり前のように自分に向けられるのが、龍麻はとても嬉しかった。
だからついつい、懐事情がキツくなっていると判っていても、断る気になれないのだ。

ちなみに京一もよく誘われるのだが、彼は気紛れに断ったり、舎弟に集ったりとマイペースだ。
元々一匹狼気質のようだから、他者の誘いを断る事に、龍麻ほどの躊躇いを感じる事がなかった。
『女優』の人々の事は例外として。


弱ったように眉尻を下げて笑う龍麻を見て、京一は頬杖を突いて息を吐く。




「ま、お前が節操なしなのは今に始まった話じゃねェか」
「京一、酷い」
「事実だろうが」




きっぱりと言い捨てて、「で?」と京一は言った。




「節約したいなら、すりゃいいけどよ。なんでそれをオレに言うんだ?」
「京一にも協力して欲しいなって思って」




節約生活に協力。
なんじゃそりゃ、と思いつつ、京一はしばし考え、




「例えば、ラーメン誘うなとか、そう言うのか?」
「うん……それもあるかな。ちょっと寂しいけど」




放課後、京一と一緒にラーメンを食べに行くのは、龍麻の楽しみだった。
それがなくなってしまうのは寂しいが、生活の為には仕方がない。

食事に関するコストと言うのは、その気になれば一番限界まで削って行き易い分野である。
外食は内食に比べて遥かにコストがかかるものだから、それを断ち切ろうと言う考えも当然だ。
そもそも、度重なる外食の所為で節約生活を決意したのだから。


京一も相棒と一緒にコニーのラーメン屋に行くのは密かな楽しみだったのだが、龍麻がそう決意しているのなら仕方がない。
自分一人でラーメン屋に行く足が鈍る訳ではないし、昔のように一人で通う日々が再開するだけの事。
それに、何も「二度と誘うな」と言う話ではないから、週に一度位なら構わないだろうと思い、龍麻の節約に協力を約束した。




「あと……」
「まだあんのか?」
「うん。だって京一、最近よくうちに泊まるから」




『女優』に寝泊まりする事が多い京一だが、その実、彼は根無し草である。
舎弟と一緒に夜の街をふらふらと歩き回っていたり、知り合いの下で明かしたりと、その生活は非常に不規則だ。

其処に最近、相棒の家と言う新しい宿先を定着させるようになった。
これも毎日のように訪れる訳ではなかったが、週の半分を過ごす事もある。
原因としては、京一と龍麻の間柄が、ごく純粋な“親友”の域を脱したからだ。


龍麻の家に泊まると言う事は、龍麻の生活空間に京一が踏み込むと言う事。
やはり此処でも京一は居候か客と言う立場だから、当然、力関係で言えば龍麻の方が上になる。
相手が舎弟の場合は、こうした理屈は無視するが。

────とは言え、何も寺の精進修行のような節約生活をする訳でもあるまい。
京一はそう踏んで、いいぜ、とまた節約生活への協力を約束する。




「で、主にどうすりゃいいんだ?テレビなんざ最近面白いモンやってねェから、どうせつけねェし。漫画読む時に電気ぐらいは欲しいけどな」
「それは構わないよ。でも、誰もいない時とかはちゃんと電気を消して欲しいんだ。京一、洗面所とか付けっぱなしにする事多いから」




さりげなくチクリと攻撃された気がしたが、言っている事は事実なので、大人しく頷いて置く事にする。




「気ぃ付けますよっと」
「うん。あと、水もよく出しっぱなしだから、気を付けてね」
「へいへい。要は無駄遣いすんなって事だろ」




ちまちまと攻撃される前に、京一は先手を取った。
うん、と龍麻が頷く。




「それから、」
「……まだあんのか?」




面倒臭げに眉根を寄せた京一に、龍麻は────酷く楽しそうな顔をして、頷いた。























節約と言うものは、先ず徹底的に無駄を省く事で大きな前進となる。

例えば入った後の風呂の水は捨てないで、洗濯機に移して使うとか、食べ物を温めるのに電子レンジを長時間使うよりは、多少手間でもガスコンロで短時間の調理で済ませるとか。
電球も最も明るいものにするのではなくて、一段階レベルを下げて常灯にしておくとか。


やはり、一回で使い捨てられていた物を使い回ししたり、二回分を一回分にまとめたりと言うのは、些細なようでいて大きな影響力を持っている。




「────ってェのは、判るんだけどよ」




ちゃぷん、と。
水の跳ねる音がして、京一は湯船の中で居心地悪そうに体を丸めた。




「これはねェだろ。狭いっつーの」




じろりと睨み付ける前方には、向かい合って湯船に身を沈めている龍麻がいる。



節水と節電を同時に行う手段の一環として、別々に行っていた入浴を、二人同時に。
それは理屈で言えば判るのだが、現実にこうして行ってみると、やっぱ無理だって、と京一は思う。
理屈ではなく、感情の面で。


節水の為にはシャワーだけで済ませるのが一番だが、日々の勉強や鬼との闘争で疲れ切った体に、風呂と言う魅力はどうしても抗えない。
浴槽になみなみと張った熱い湯に身を沈め、全身の筋肉を解し、一日のアカを全て落とす。
こればかりは我慢する事は出来ない、と言うのは二人共通の主張だったので、浴槽に蓋が為される事はなかった。

しかし、だからと言って、これまで通り二人がそれぞれ別々に風呂を使っていては、節水にも節電にもならない。
ならばどうするかと言う話になった後、龍麻が提案したのだ────「二人で一緒に入ればいい」と。

一緒に入れば、後に入った者が冷えた湯を再熱させる為に注ぎ足す必要もないし、風呂場の電気を使う時間も半分で済む。


─────これで節水・節電が出来る。
出来るけれど。




「狭いんだよ、お前ん家の風呂って!どう見ても一人用だろ!」




これは龍麻が同時入浴を提案した時から、京一が言い続けている主張である。
案外大丈夫かも知れないよ、と言う龍麻に絆され、実験として一緒に入った京一だが、「やっぱりこれはない」と言う結論に行きついた。


東京都で苦学生が一人暮らしに使えるアパートがどんな物かなんて、たかが知れている。
基本的に物が少ないリビングでさえ、成長した体躯の少年二人が使うと定員ギリギリなのだ。
風呂場なんて尚の事、人間一人が入って足を伸ばす事も出来ない。

龍麻も京一も、お互い男の割に細見であるとは言え、身長は平均男性並みにある。
これで小さな浴槽に入れば、お互い狭苦しいのは当たり前で、浴槽に浸かった時の開放感なんて皆無も同然だった。




「やっぱオレ出てるわ。体洗うから、終わったら交代な」
「えー……」
「えーってなんだ、えーって。このまま二人で丸まってるよか、よっぽど楽になるだろ」




幸いにも、この風呂はトイレとは別の作りになっている。
体を洗う為のスペースがあるのだから、こんな時こそ有効活用するべきだろうと、京一は湯から体を上げた。

────が、ぐいっと引っ張られて、湯船の中に逆戻りされる。
ざぶんと湯が揺れて溢れ、京一は龍麻の胸に飛び込む形で沈んだ。




「んの……何すんだ、この苺バカ!!」
「痛い」




ごすっと顎をアッパーで打ち上げてやる。
そのはずみで京一はもう一度バランスを崩し、龍麻に凭れかかる形で再び沈む。

ああもう、と苛立ち混じりに胸中で吐き捨てて、湯の中で目を開けて────後悔する。




「何おっ勃ててんだ、この阿呆!」
「京一、えっち」
「そりゃお前だ!!」




もう一発、今度は顔面に拳をお見舞いしようとするが、鼻先で手首を掴まれて阻止される。
直ぐに腕を引こうとした京一に、龍麻はぐっと掴む手に力を込める。
それだけでは飽き足らず、龍麻は京一の腕を自分の後ろへと引っ張った。

黒色瑪瑙が間近に迫ったと思ったら、呼吸が出来なくなっていた。
それが重ね合わせられた唇の所為だと気付いた時には、既に遅く。




「ん…ふ、んぐ……ッ」
「む……」





ばしゃばしゃと水飛沫を散らせて抵抗する京一だが、龍麻は意に介さない。
逃げようとする京一の後頭部を押さえつけて、口付けを尚深いものへと変えて行く。

ちゅ、と舌を吸われて、京一の肩が小さく跳ねる。
次第に京一の体から抵抗する気力は失われて行き、キスの隙間に艶の含んだ吐息が零れ始めた。




「ん、ん……っは…んん…!」




京一の引き締まった細い腰を抱かれて、引き寄せられる。

胡坐を掻いた龍麻の膝上に乗せられた。
そうすると、自身の下肢の下に、固くなった熱の塊が当たって、




「馬、鹿ッ!」




あらん限りの力で、京一は龍麻の肩を押し退けた。
既に背を湯船の壁に当てていた龍麻が動く事はなく、代わりに京一がバランスを崩して後ろに倒れ込む。

背中から湯に沈もうかとしていた京一を、龍麻が抱き締める形で支えた。
そのまま龍麻は京一を反対側の湯船の壁に押しつけて、足を広げさせ、自分の身体を滑り込ませる。
湯船と龍麻の壁に挟まれる形で、京一は逃げ道を失った。




「おい……」
「うん」
「うんじゃねッ…!」




ちゅ、と龍麻の唇が京一の首元に吸い付いた。
ぴりっとした微かな痛みに、京一の身体が跳ねる。




「馬鹿、やめろッ」
「いや」
「盛るな!」
「無理」




どうにか龍麻を押し退けようとする京一だが、何もかもが自分の不利な状態。

喧嘩慣れしている京一ではあるが、無手となると、どうしても龍麻には敵わない。
遮二無二暴れようとしても、両の手首を掴まれて壁に押しつけられれば、容易く封じ込まれてしまう。
開かれた足を引っ込めて、伸し掛かる龍麻を蹴り上げようともしたが、既に限界まで躯は折り畳まれてしまっている。


ばしゃばしゃと飛沫が飛んで、浴槽の湯が溢れ出す。

もう節水とかなんとか、そんな事は二人の頭にはなかった。
片や目の前にある獲物に、片や捕食者から逃れようと、その事だけに必死だ。



ぐ、と京一の下肢に龍麻の腰が押し付けられる。
固く反り返った肉の塊の感触に、京一が引き攣った悲鳴を零す。




「待て、待て龍麻。マジで待て」
「無理」
「出てからだ。風呂ン中は止めようぜ。風呂出てからならッ…!」




引き攣った表情で言い募る京一から、龍麻は再度呼吸と言葉を奪う。
無防備にも開かれていた咥内に舌が入り込み、逃げようとする京一のそれに絡みつく。

ちゅる、ちゅ、ちゅぷ、と言う音が狭い風呂の中で反響する。
その度に京一の肩が小さく震えて、息苦しさから顔が赤らんでいく。
同じタイミングでぐいぐいと膝で股間を圧迫され、京一の背中をぞくぞくとしたものが走って行った。




「ん、ぁ…んッ……は、ふ……」




荒々しく暴れていた波飛沫が静まって、舌が絡み合う小さな水音だけが空間を支配する。
逃れようと抵抗を続けていた京一の身体から、力が抜けて行く。

龍麻が京一の掴んでいた手首を解放すると、その手はぱしゃりと小さな音を立てて湯船に落ちた。
名残惜し気に銀糸を残して唇を離して行けば、ぼんやりとした瞳が龍麻へと向けられる。




「京一、興奮した?」
「……死ね」




物騒な言葉を吐いて。
そんな親友の下肢に触れれば、彼の其処も固くなりつつあった。

龍麻は水滴の光る鎖骨に唇を寄せ、ゆったりと舌を這わした。
ヒクッと京一の喉が反って、喉仏の凹凸が震えているのが見える。
それを視界の隅に捉えながら、龍麻は京一の雄を掌で包み込み、上下に強く扱く。




「んあッ…あ、は、やめ……あッ、んん…!」




龍麻の躯の横で、京一の足が逃げを打つように身動ぎした。
けれども湯船の壁に覆われている所為で、どうしたってそれ以上広げる事も出来ず、龍麻がいる為に閉じる事も出来ず。
底についた足先が強張って、太腿がピクピクと震える。




「京一、喉、」
「ッん……!」
「かわいい」




意味が判らない。
喉仏をなぞられる感覚に身を震わせながら、京一は胸中で思った。


首を下から上へと舐め上げられて、京一は湯船の中で掌を握って、漏れかける声を殺す。
龍麻はそんな京一の努力を砕こうとするように、顎に舌を伝わせ、体を寄せて、京一の頬にキスを落とす。
微かに京一が顔を下ろした来たのを見逃さず、頬に手を添えて、唇を舌でなぞる。

赤い舌が京一の濡れた唇の隙間から覗いて、龍麻は口付けてそれを引き出す。
同時に手の中の京一の雄の先端を指先でぐりぐりと強く擦った。




「あ、あ、んぁあッ……!」




ビクン、ビクン、と京一の腰が震えて、直後に彼の身体が弛緩する。




「…きょーいち」




間延びした呼び方に、京一は返事すら返せない。
そのまま湯の中に沈みそうになる彼を、龍麻は抱え上げて救い出し、膝上に乗せる。

龍麻の首に腕を回し、寄り掛かった京一は、自身の秘部に宛がわれている熱の塊に気付いて、眉根を寄せる。




「……龍麻……」
「何?」
「…明日、一発殴らせろ」
「うん」




それでチャラにするには、色々と物足りなさ過ぎる、けれど。
今の京一が思いつく報復はそれしかなくて、これだけはと確約させておく。

─────それで、後はもうどうでも良いと、そう思う事にした。



龍麻の躯に縋り付いたまま、足を持ち上げられる。
秘部に宛がわれた雄が、ぐ、と穴を押し広げようとしていた。

あらぬ場所が開かれていく感覚は、何度体感しても、慣れそうにない。
明らかな痛みに眉根を寄せて、京一はせめてもの仕返しに、龍麻の後頭部を目一杯鷲掴んでやった。
痛いよ、と宥めるような声が聞こえたが、無視して引っ張り続ける。


秘孔が広げられて、熱いものが滑り込んでくる。




「あ、ちッ……!」
「大丈夫?」




問う言葉に、京一はぶんぶんと首を横に振った。

だから嫌だったんだ。
って言うか、中解してもいないのに、もう挿れるのか。
内部に入り込んでくる熱い湯に、内臓丸ごと溶かされる気がして、京一は身を震わせた。


無事か否かを確認して来た龍麻であるが、京一の反応によって彼の行動が変わる事はない。
京一がそう予想していた通り、龍麻は更に腰を進めて来た。




「や、あッ!た、つま…熱ィッ……!」
「ん…もうちょっと、」
「んぁああッ!」




龍麻の手が京一の腰を抱いて、下へと強く引き落とす。
ぐりゅッ、と太い部分が京一の内壁を抉って、思わず甲高い悲鳴が上がった。

思った以上の声量が漏れて、反響して耳に届く事に気付いて、京一は真っ赤になった。
龍麻にしがみ付いて肩口に顔を埋め、ふー、ふー、と声を押し殺す。
────けれど。




「京一、声」
「……嫌だッ」
「聞きたい」




それだけ言って、龍麻は京一の腰を掴んだまま律動を始める。
内部を抉られる言いようのない感覚に、苦痛の色を滲ませた声が零れる。




「いッ…あ、う…!龍、麻ッ…ちょ……」
「んッく…きつ……ッ」




受け入れる器官でない上に、慣らしてもいないのだから当たり前だ。
痛みと、入り込んでくる湯の熱さの所為で、京一の雄は萎えかけている。

正直言って今からでも龍麻を殴って強制終了させてやろうかと思うが、絶対に逃げられないのは想像に難くない。


京一は龍麻の首に縋り付いて、痛みの所為で詰まっていた息を吐く事に務める。
は、は、と短い呼吸が耳元で鳴るのを聞きながら、龍麻は京一の肉棒をもう一度包み込んだ。
下肢の突き上げを止めて京一の雄を扱いて行けば、次第に熟れた唇から艶を含んだ声が漏れ始める。




「あ、ん、はッ……う、あッ、はッ…ああッ…!」
「きょーいち、気持ち良い…?」
「ん、ん…熱、ィ……っは…中…すっげ……」




どくどくと脈打つ熱の塊と。
内臓まで沈めようとする熱の液体と。

どちらが何処まで自分を追い立てようとしているのか、京一にはもう判らなくなっていた。
龍麻もまた、常以上に強い締め付けを与えてくる恋人の秘孔内の熱さに、思考までもが溶け行くのを感じる。


浴槽一杯に張られていた筈の湯は、いつの間にかすっかり嵩を減らしていた。
龍麻の膝上に抱えられた京一などは、胸の下までしか湯に浸かっていない。

龍麻は、しがみ付いて来る京一の肩に舌を這わせた。
ふるりと震えた京一の胸板に手を置いて、其処の頂きをくすぐるように撫でてやる。
それだけで、彼の秘部がヒクヒクと震えて、龍麻の雄に絡み付いて来る。




「…っふ、ん、あ…く…は、あッ……!」




京一の足が、龍麻の腰に巻き付いた。
全身で求めてくるようなその行為が、龍麻は好きだ。

秘部の中で龍麻の熱が質量を増すのを感じて、京一の躯がビクンと跳ねて反り返る。
先端が奥の窄まった場所に当たり、其処から走る電流で、京一の思考回路は融解して行った。


いつの間にか、京一の躯からは力が抜け切ってしまっていた。
萎えかけていた雄も天を突き、京一と龍麻の躯の間で擦れ、迫る絶頂の感覚に期待するように震えている。
彼の内部のまた、覚えのある更なる刺激を欲するかのように、龍麻の雄を締め付けて高めて行く。



龍麻は律動を再開した。
もう京一から拒絶的な反応は見られない。




「んッ、んあッ、はッ、…あ!う、バカ、其処…んッ!」
「うん……此処、だよね」
「……ッ!!」




肉壁の中にあるしこりのような、僅かに膨らんだ壁を見付けて、龍麻は其処を突き上げた。

ヒクッと京一の喉が鳴り、いつも不機嫌な色を宿している瞳が見開かれる。
休まずに攻め立てて行けば、あられもない声が彼の口から溢れ出て、反響した。




「んぁッ、あッ、あッ、熱、熱いぃッ…!ひッ、は、んぁあッ!」




ばしゃばしゃと水音が鳴って、飛沫が京一の躯を濡らす。
少し血色の薄い肌を透明な液体が伝い落ちる様が、龍麻には酷く扇情的に見える。

縋り付く京一の腕から、次第に力が失われていく。
そんな彼の躯を抱き締めるように捕まえて、龍麻は更に強く腰を打ち付けてやった。
京一は天井を仰いで嬌声を上げ、激しい快感に頭を振って悶え狂う。




「や、あ、龍麻、龍麻ぁッ!も、無理、熱いッ…!」




龍麻の雄が京一の秘部を出入りする度に、熱い湯が彼の内部に侵入する。
それで掻き回すように腰を動かせば、耐え兼ねたように京一の躯ががくがくと痙攣し、




「も、ダメ、むり、イくッ……!」
「う、ん…僕も、中に……ね、ッ……」
「ひッ……!」




ぐりゅぅッ!と一際強く突き上げられて、最奥を穿たれる。




「んぁッ、あ、あぁ─────ッッ!!」




ビクッ、ビクッ、と京一の躯が跳ねて、湯の中に蜜液が吐き出されて澱む。
それと同じくして、龍麻の京一の秘孔へと己の熱を注ぎ込んだ。



























湯船の中で散々交じり合って、京一は意識を飛ばした。
体の外も中も許容量以上の熱に襲われて、逆上せてしまったのだろう。

ぐったりとしな垂れかかる京一から、龍麻はゆっくりと雄を抜いた。
それだけで官能に犯された京一の躯は反応を示し、鼻にかかった声が意識のないまま零れたのが聞こえた。
艶を含む声に思わず自身が反応しそうになったが、これ以上は流石に、目覚めた時に京一も黙っていないだろう。
既に一発殴らせると言う約束をしているし、後はまた今度、と諦める事にする。


目覚める様子のない京一を抱えて、湯船から上がる。




「よい、しょ」




湯船から跳んだ水飛沫の所為で濡れているタイルの上に、ゆっくりと京一を下ろしてやる。
温かい湯に浸かっていた体には、濡れて冷えたタイルが殊の外冷たく感じられた。

あまり長く座らせていたら、湯冷めさせてしまうかも知れない。
それは良くない、と思いながら、龍麻はシャワーを手に取って、熱めの湯を出した。
水圧に気を付けながら、壁に寄り掛からせた京一の躯にかけてやる。


シャワーを京一の躯に当たる角度で壁に固定し、彼の足を持ち上げる。
起きていれば絶対に蹴飛ばしてくるであろう長い足は、今ばかりは大人しく、されるがままだ。



とろり、彼の秘孔口から、龍麻が注ぎ込んだ蜜が溢れ出している。





「んッ……」




内部から溢れて行く感覚にすら快感を覚えてか、京一の躯が僅かに震えた。
けれども、やはり目を覚ます気配はなく。




「ちょっと御免ね」




返事がないと判っていながら、一応と断りを入れて、龍麻は京一の秘部に手を伸ばした。


蜜を零す秘部に指を押し当て、ゆっくりと挿入して行く。
先程まで十分に堪能した筈の彼の内部であるが、何度こうして暴いても、不思議と飽きる事はない。
寧ろどんどん惹きつけられているようで、夢中になって行く自分がいる。

最初は人差し指だけだったそれを、中指も挿入させて、二本の指で内部を広げる。




「ん…ぁッ……ふ……」
「……京一、やっぱりエッチだよ」




意識がないのに、快感信号を拾って反応を示す親友兼恋人。
其処まで快楽の虜囚に貶めたのは、他でもない龍麻自身ではあるけれど。


壁に寄り掛かる京一に躯を寄せて、密着したまま、龍麻は彼の内部を掻き弄った。
それは彼の中へと注ぎ込んだ蜜液を掻き出すと言う、純粋なアフターケアとして行っていた行動────だったのだけれど。

風呂場の壁に反響する淫水音と、意識のない彼から零れる明らかな官能の声に、若い龍麻の性は直ぐに反応して。




「んッ、…あッ、…ん、…ふッ…」




壁の一点を爪先で擦ってやれば、京一の雄もまた、少しずつ反応を示す。




「京一、」
「ふッ…んんッ…ん、ん……ッ」
「もう一回だけ、ね?」




言いながら、龍麻は指を抜き去った其処に、己の欲望を宛がった。










──────目覚めた京一に、これでもかと言わんばかりの恨み言を吐かれたのは、言うまでもない。












お風呂えっちが書きたかっただけです。ごめんよ、京ちゃん。
うちの龍麻って両思いになるといきなりゴリ押しして来ますよ。そして流されるしかない京一。

龍麻が住んでると思しきアパートの外観を見ると、人二人入れる風呂かどうかも怪しい気がする。横幅800mm×奥行700mmとかの一番小さい浴槽ついてそう。……でも二人が縮こまって向かい合って風呂入ってるのが書きたかったんだ!
これって龍麻はともかく、京一は絶対嫌がる気がする。うちの京ちゃん接触嫌悪の気があるし。