気遣っているのは確かだけれど

それより何より、この熱を感じていたいと思う















God breath you
















「ぶえっきし!!」




盛大に響いたくしゃみに、葵と小蒔、そして醍醐が目を丸くして、音の発生源を見る。
其処には見るからに鼻頭を赤くしている蓬莱寺京一がいて、彼はずぴ、と鼻を啜っていた。




「何、京一。まさか風邪ひいてるの?」




京一に限ってそんな事は有り得ない、とでも言いたげな口調で尋ねた小蒔に、京一は眉間の皺を深くした。




「……悪いかよ」
「え!マジで!?」




大袈裟な程に驚いて見せる小蒔に、京一の眉間は更に深くなって行く。




「ンだよ。てめーはオレが風邪なんかひかねェとか思ってたのか」
「……だってさあ。京一だし。ほら、なんとかは風邪ひかないって言うじゃん」
「誰が馬鹿だ、コラ」




米神を引き攣らせて、凶悪な顔で睨む京一だが、その面は何処か覇気に欠けている。
鼻頭が判り易く赤らんでいる所為か、それとも度々鼻を啜っている所為か、いずれにせよ、彼の体調が頗る宜しくないからなのは確かだろう。


もう一度盛大なくしゃみをして、京一は暖を求めるように剥き出しの腕を摩った。
羽織っている制服は夏物の生地が薄いもので、アンダーに着ているのは、いつもの赤いシャツ一枚。
そんな格好をしていれば、風邪など引いていなくとも、秋が深まり気温が下がる一途のこの時期、寒くない訳がない。
それを見た小蒔が、呆れたように溜息を吐いた。




「風邪ひいてるなら、そんな格好しないで、もっと着込んでくれば良いじゃん」
「それか大人しく学校を休むか、だな」
「それが出来りゃ苦労してねェんだよ」




小蒔と醍醐の言葉に、京一は苦々しい声で言った。
そんな京一の隣の席に座っていた龍麻が、眉尻を下げて言う。




「単位、落とせないんだって」
「……そんな事だろうと思った」




日々の遅刻欠席無断早退など、京一にとっては当たり前の話だ。
嫌いな科目の授業など、頭から出席している時の方が稀だし、出席していると思ったら授業終了を待たずに姿を消している。
京一のそんな不真面目な授業態度は、真神学園の教師なら誰でも知っている事で、注意しても無駄である事も重々知れ渡られている。

だからと言って、京一とて、自由気ままにサボり続けて良いとは思っていない。
留年してもう一度高校三年生を、気の知れた友人達に置いてけぼりを喰らう形で過ごしたくはないし、どうせならきちんと卒業したい。
以前、「いざとなったら止めりゃいい」と投槍に口にした事もあったが、級友達から「皆で一緒に卒業するの!」と詰め寄られ、半ば強制的に揃って卒業する事を約束させられた。
それが全ての理由と言う訳ではないが、とにかく、無事に卒業する為には、怪我だの風邪だのと言う程度で、これ以上単位を落とすような真似は出来ないのだ。


京一の単位がギリギリなのは、今に始まった事ではないので、小蒔も“学校を休む”と言う選択肢が彼に許されないのは、理解できた。
しかし、薄手の制服の下の、これまた薄手のシャツ一枚での登校及び生活につては、眉根を潜めるしかない。




「だったら、せめて服着て来なよ。見てて寒いんだって」
「じゃあ見んな。大体、オレだって好きでこんな格好してるんじゃねェや」




忌々しげに吐き捨てるように呟いた京一の脳裏には、食えない態度で飄々と笑う男の顔が浮かんでいた。
ちッ、とあからさまに舌打ちをして、京一は制服の袖で赤くなった鼻を拭う。
皺だらけになる制服を見兼ねて、葵がポケットティッシュを取り出すと、京一は無言でそれを掴むように受け取った。


ずび、と赤らんだ鼻にティッシュを押し付ける京一と、大変そうだね、とのんびりと眺める龍麻達の耳に、次の授業の開始を知らせるチャイムが鳴る。




「あー、だりィ……」
「保健室行く?」
「……いいや。サボったら単位足りなくなる」




教室のドアを開けて入って来たのは、京一が大嫌いだと言って憚らない、生物教師の犬神杜人。
京一は判り易く顔を顰めたが、仕方ねェ、と呟くと、机に突っ伏した。














「────寺。蓬莱寺」




低い声は、睡魔を追い払うには圧倒的に力不足だ。
それでも、己の名前が呼ばれているのだと気付けば、ゆっくりと意識は浮上に向かう。
……向かっている事を自覚した後で、ああ寝てたのか、と京一は遅蒔きに気付いた。

顔を上げれば、大嫌いな生物教師の生気のない顔がある。
なんとなく、その輪郭がぼやけて見えるような気がして、ん?と京一は頭を掻いた。
その上に、はぁ、と───仕様がないと言うよりも、面倒だなと思っている感がありありと感じられる───溜息が落ちて来た。




「熱でもあるのなら、保健室に行け」
「……いらねー世話だ」
「緋勇。連れて行け」
「は?なんで龍麻……?」




唐突に出てきた名前に、京一は体を起こして犬神を見上げる。
その直後、ぐっと体を引っ張られて、京一は慌てて椅子から腰を浮かせた。

なんだ、と思って振り返れば、龍麻が自分の腕を掴んでいる。
おい、と京一が声をかけても、龍麻は振り返らず、京一の腕を引きながら教室を出て行く。
ぐらぐらと揺れる視界の中で、京一はマイペースに歩いて行く龍麻について行く事を余儀なくされた。


ちょっと待て。
授業が、単位が。

いつもならまるで気にしていない事だが、流石に今回ばかりは無視できない。
保健室に行けと言う犬神の言葉は、(癪ではあるが)有難い物であったが、拒否したのは何も京一の反発心から来る意地だけではないのだ。
単位を落せないから、体調不良を堪えて大嫌いな生物の授業に出席していたと言うのに、これでは意味がない。




けれど、あのまま教室に残っていても、結局はいつかこうなってしまったような気もする。
階段を下りて行く龍麻に、ふらふらとついて行きながら、京一は思う。




(完全に寝ちまったからな……)




寝ていたと言うか、意識が飛んでいたと言うか。
視界だけでなく、頭ももやがかかったようにはっきりしないのも、きっと風邪の所為だろう。
いやに体の内側が熱いような気もするし、体温が平時を遥かに上回ってしまっている事は想像に難くない。

ツケに回ってくる補習を思うと、体調とは別の理由で頭痛がするような気もしたが、今はその事は考えまい。
折角、担当教諭が自ら保健室行きを打診してくれたのだ。
授業開始の時の点呼も取ったし、早退一回と欠席一回では比重が違う。
……積もり積もった末の早退一回なので、決して馬鹿に出来るものではないが。

第一、自分の手を引いて廊下を歩く少年は、掴んだ腕を放してくれそうにない。
「放せ」と言った所で、どうせ「いや」の一言が返ってくるだけだろうし、彼相手に力技など尚の事役に立たない。


結局、京一は、このまま保健室に行くしかないのだ。




(いいか。サボりの許可が出たようなもんだし)




留年はしたくないし、卒業もしたいが、かと言って、今更授業に真面目に従事していられる程、京一の意識改革が簡単な筈もない。
サボって良いならサボってしまえと、早々に思考を切り替えた。


龍麻が立ち止まって、その背に京一はぶつかった。
目の前の親友の足取りさえもまともに察知出来ていないのだ、いよいよ危ない状態らしい。

コンコン、と龍麻が保健室の扉をノックする。




「失礼します。……あれ?」




形式的に挨拶をしてからドアを開けた龍麻は、中を覗きこんで首を傾げた。
それを後ろで見ていた京一は、どうした、と彼の横から保健室を覗き込み、




「……んだァ?いねェのか?」
「みたいだね」




保健室の中に、常駐している筈の保険教諭の姿はなかった。
その癖、鍵は開けっ放しとは、なんとも不用心である。
それとも、直ぐに戻るつもりで、この場を離れたのだろうか。

────京一には、どちらでも良い話である。




「あ、京一」




教員の不在を特別気に留めることなく、京一は龍麻を押し退けて保健室に入った。
間仕切りのカーテンを開けて、綺麗なシーツがかけられたベッドの上にごろりと寝転ぶ。


寝転がってみると、案外と自分の体調が末期レベルで悪かった事が改めて判った。
身体を支える為の力を完全に抜いてしまえば、後は堪えたつもりでいた倦怠感がどっと押し寄せてくる。
がんがんずきずきとした痛みが頭の内部から頭蓋を打ち鳴らしているような気がするし、背中や腰の節々が痛むような気もするし、額や頬や首回りは熱を帯びているような。

ぐったりとベッドに仰向けになった京一を、龍麻が覗き込む。




「大丈夫?」
「に見えるか」
「うん」
「……これの何処が大丈夫に見えるんだよ」
「だって京一、丈夫だから」




確かに京一自身も、自分が丈夫な方であるとは思う。
しかし、超人でもあるまいし、全くの病気知らずと言う訳ではないのだ。




「オレだって風邪ぐれェひく事あるっつの」
「みたいだね」
「みたいじゃなくて、そうなんだよ」




いつものように中身のない、だらだらとした会話。
常ならば特別気に留めないようなその会話が、今の京一には面倒臭くて仕方がない。

ずきずきと痛む頭に手を当てて宥めつつ、京一は一つ長い息を吐く。
そうして、頭に宛がった手が酷く落ち着いていない事に気付いて、ああそうか、と理解する。




「龍麻、オレの木刀持って来い」
「持って来てないの?」
「お前が問答無用で引っ張って来たお陰でな」




通りで落ち着かないはずだ、いつも持ち歩いている愛用の獲物がないのだから。
教室で自分の席の傍の壁に立てかけてあるのは確かだし、可惜に他人が京一の私物に触れる事もないだろう。
しかし、あれはやはり自分の手元になければいけない。

此処にいるのが自分一人か、若しくは龍麻以外の誰かならば、京一が自分で教室に戻っただろう。
だが、龍麻ならば問題はない。
何が問題と言う訳ではないが、言うなれば、信用性と言った所だろうか。
龍麻なら京一の木刀をぞんざいに扱う事もないだろうし、回収して戻った時に京一が眠っていても、適当な場所に転がす事はあるまい。
京一がどんな時でも木刀を自分の手の届く位置に置いている事を、彼は知っている。


大事な愛刀を置いて来たのは、龍麻の所為だ。
そう決めて、京一は龍麻に愛刀の回収を言い付けると、目を閉じた。














元気な筈の龍麻が再び教室を出て行こうとした時、犬神は呼び止めようとすらしていない。
ちらりと眼鏡のレンズ向こうの黒目が龍麻を見たが、龍麻はそれを気にしなかったし、彼もそれ以上の反応はなかった。
そのまま通常通りに授業を進める犬神に、戸惑ったのは葵くらいのもので、他は誰も龍麻の退室を気に留めない。
京一に比べれば真面目な性格の龍麻だが、彼が相棒と一緒に授業をサボるのは毎度の事だし、今更呼び止めて大人しく席に戻るような人物でもない。
相棒がいつも肌身離さず持っている木刀を回収しているのを見て、ああそれでか、と彼がわざわざ教室に戻って来た理由を察した生徒も多い。


龍麻が一端教室に戻り、言い付けられた通りに京一の木刀を回収して戻って来た時、彼は既に夢の中だった。
掛け布団を被ることはせず、ベッドの上で仰向けで目を閉じている。

持ってきた木刀をベッドの縁に立て掛けておく。
場所は京一の右側、目が覚めて手を伸ばせば直ぐに届く位置。
これで良し、と、立て掛けた木刀が倒れないのを確認して、龍麻はベッドの縁に腰を下ろした。




「きょーいち」




返事がないと判っていながら、呼んでみる。
案の定、京一からの反応はなく、彼は静かに眠っている。




龍麻のアパートにいる時は、布団を蹴飛ばして大の字になって、鼾を立てている事もあるのだが、今は酷く静かだった。
恐らく、此処が学校だから────自分が気を抜いて良いパーソナルスペースとは違うと認識しているからだろう。

基本的に京一は周囲からの視線を気にする事はないが、何処にいても警戒心は強い。
お気に入りの場所にいる時でもそれは変わらず、昼寝をしていても、他人の気配が近付くと直ぐに目を覚ますのだ。


……その理屈で考えると、無防備に眠る姿を晒している場所では、彼はその場所を信頼していると言う事になる。




「だよね、京一」




頭の中で導き出された結論に、一人で納得して、確かめるように京一の名を呼んだ。
しかし、当然、彼からの返事はない。
それ所から、聞こえる音を嫌うように、彼はごろりと寝返りを打って、龍麻に背中を向けた。




開けたままの窓から風が滑り込み、薄いカーテンが翻る。
案外と冷たい風が龍麻の頬を打った。

グラウンドでは燦々と陽が照っており、体育の授業をしている何処かのクラスの男子生徒達が、元気にサッカーに興じている。
陽光に照らされている所為か、広いグラウンドはとても暖かそうに見える。
しかし、吹き抜ける風は大分冷たさを孕んでおり、見た目と体感温度にかなり差がある。

そして冷たい風が滑り込むこの保健室には、陽の光は届いていない。
午前中ならば後者の東側は陽光が当たって温かいのだが、そろそろ昼を迎えようとしている今、太陽は空の真上に来ている。
お陰で差し込む光はかなり範囲が狭くなっており、窓辺に微かに光が届いている程度。


龍麻はベッドを下りて、窓を閉め、カーテンも閉めてしまう。
保健室の電灯は点けられていなかったが、それでも室内は明るかった。

ベッドに戻って、何をするでもなく天井を仰ぐ。
生物の授業はこのまま休む(サボる)として、午後はどうするか。
単位を思えば出席した方が良いのは龍麻も京一も同じだが、龍麻は京一ほどに単位の取得に必死になってはいなかった。
よく京一とサボってはいるが、彼ほど授業や勉強が嫌いな訳ではないし、最低限、必要であろう単位の確保はきっちり保っている。
────と言う事を京一が知ったら、きっと抜け駆けするなと怒るのだろう。




午後は確か、日本史と英語だった。
龍麻は日本史の授業は好きだし、マリアの英語の授業も楽しいので好きだ。
出ようかな、と重いつつ、背中を向けて丸くなっている親友を見遣る。




(京一も出るかな?)




龍麻が腕を支えに、体を捻った状態で、京一の顔を覗き込もうと試みる。
不精に伸ばされた前髪の所為で、彼の目元は伺えなかったが、京一の耳が赤らんでいるのは見えた。




(熱、あるのかな)




しばらく赤らんだ耳を見詰めた後、龍麻は徐に腕を伸ばして、その耳朶に触れた。
指で撫でるように触れた後、そのまま滑らせ、首を辿る。

────すると、ごろり、と京一の体が寝返りを打って、




「うぜェ」
「ごめん」




ぎろりと凶悪な眼光で睨む親友に、龍麻は表情を変えずに言った。




「起こした?」
「そうでもねェ」
「じゃあ、寝てなかった?」
「いや、寝るこたぁ寝てた」




深い眠りにつけなかったのだと、京一は言う。
しかし、体調不良の倦怠感は相変わらず続いているようで、京一は顔を顰めて頭を押さえた。




「だりィ……おい、あれから何分経ってる?」
「そんなに経ってないよ。四時間目も終わってないし。保険の先生も帰って来てないし」
「何処行ったんだ、あのばーさん。しかし、なんかやけに時間が経つのが遅ェ気がするな……」




溜息を交えて呟く京一は、いよいよ体がだるくて仕方がないようだ。
「うぁー……」と意味のない声が漏れて、視線が彷徨うように、虚ろな眼が揺れる。

龍麻は、そんな京一の顔を覗き込んで尋ねた。




「京一、午後はどうするの?サボるの?」
「……サボれるもんならサボりてェがな」




ずず、と鼻を啜って、京一は苦々しく呟いた。




「出席だけでも取っとかねェと」
「取ったら、また保健室で寝る?」
「どーかね……寝るなら教室で寝てても同じだしな」




教室で机に突っ伏して寝るのと、保健室で横になって寝るのとでは大きく違う。
しかし、今の京一には、保健室での休息と言う誘惑よりも、単位不足と言う危機の方が見過ごせないようだ。

普段からそうやって、意欲的に授業に参加して入れば、今日のような不慮の事態に焦らないで済むのだが────とは言うまい。
既に醍醐や小蒔、遠野から散々言われている事なのだから。


唸りながら、京一がまたごろりと寝返りを打つ。
俯せになってシーツに顔を埋める京一は、誰が見ても明らかな程、疲弊し切っている。




「京一、辛い?」
「……見て判んだろ」




龍麻の問いに、京一は半ば苛立ち気味に答えた。
もう黙れよ、静かにしてろと、無言の圧力がかかっているのが判る。

しかし、常人ならば怯むであろうその圧力も、緋勇龍麻が相手では何の労も成さない。




「ねえ、京一。風邪って手っ取り早く治す方法、あるんだってね」
「あぁ……?」
「試してみても良い?」
「……は?」




一体何を言い出すのか。
ぽかんとした表情で見上げて来た親友に、龍麻はくすりと笑みを浮かべて、彼の唇を塞いだ。


突然の事態に理解が追い付かないのだろう、ゼロ距離の近さにある京一の目が驚愕に見開かれる。
それに構わず、龍麻は無防備に開いていた唇の隙間に、己の舌を滑り込ませた。
流石に其処までくれば現状把握には十分だったようで、京一がじたばたと暴れ出す。
肩を額を押し返そうと試みる腕を捕まえて、白いシーツの波に縫い付けると、より一層深い口付けを施してやった。




「ん、ぐっ……!」




聞こえてくるのは、なんとも色気のない声────なのだろうけれど、龍麻にはそれが京一の声であると言うだけで、十分だった。


ちゅ、ちゅ、と音を鳴らせば、それを嫌がるように京一が緩く頭を振ろうとする。
けれども、準備も覚悟もなしに口付けられ、容易く酸欠気味に陥ってしまった京一が、抵抗らしい抵抗をいつまでも続けていられる訳もなく、次第に彼の体から力は萎んで行った。

苦しげに眉根が寄せられるのを、ゼロ距離のままで見詰めながら、龍麻は相手の柔らかな舌をねっとりと絡め取る。
重ねられた唇が微かに離れる隙間に、はふ、と熱を孕んだ吐息が零れた。




「んん……」
「ん……」




ちぅ、と軽く舌を啜ってやると、びくっと案外と細い肩が跳ねたのが判った。


唇を離して、相手の顔の全景を見れば、京一は体調不良の熱とは別の意味で顔を赤くしている。
色の薄い唇に、どちらのものかも判らない唾液が残って、てらてらと光って龍麻を誘う。


もう一回、と唇を寄せた龍麻だったが、




「おい」
「何?」




声をかけられたので、素直に返事をしてみると、じろりと黒い眼が龍麻を睨んだ。




「鍵、かけて来い」




此処は保健室で、公共の場で、この部屋の主である保険教諭は今は不在だが、いつ戻って来るのかも判らない。
と言うか、まだ戻って来ていないのが既に可笑しい。
思いの外、用事に時間を取られているのか、それとも本当に鍵を閉め忘れて外出しているのか、京一にとってはどちらでも良かったが、とにかく、今後、此処を誰も訪れないとは限らないのだ。
グラウンドで体育に勤しむ生徒達の中で、派手に転ぶ者でも出れば、彼らは間違いなく保健室を利用しに来るだろう。

そもそもこんな所で発情しなければ良い話なのだが、京一は、それに関して龍麻に言及するのは止めた。
見下ろす相棒の、いつも茫洋と笑みを湛えている眼が、何処か猛獣か猛禽類を思わせる変化を見せている。
この状態でストップをかけても、どうせ五分後にはまた同じ事をして来るに決まっている。


龍麻は大人しくベッドを下りると、言い付けの通り、ドアを施錠しに向かう。
外側からは鍵が必要になるドアだが、内側からはピンシリンダーを回転させるだけで良い。
かちゃん、と音を鳴らしたドアが開かなくなった事を確認し、龍麻は足早にベッドへと戻った。




「もういい?」
「……そんなにヤりてえのか、お前」




いそいそとベッドに上ってくる龍麻に、呆れたように京一が言った。




「違うよ。京一の風邪、治したいなって。汗掻いたら治るって言うでしょ、それで」
「ンな民間療法アテになるか。単に発情しただけだろうが」
「違うよ」




あくまで京一の為だと言い切る龍麻に、京一は溜息を吐いて、ベッドに大の字になった。
好きにしろと言わんばかりの態度に、龍麻は笑みを浮かべて、京一の上に跨る。


所々に埃汚れの目立つシャツをたくし上げて、鍛えているのに薄い腹筋に舌を這わす。
無駄な肉のついていない体のラインをゆっくりと撫でながら、龍麻は少しずつ、舌を上へ上へと滑らせていく。

柔らかく、艶めかしい舌が這う感触に、京一は唇を噛んだ。
皮膚の上にかかる吐息がくすぐったくて、むず痒くて、どうにも奇妙な気分に陥りそうになる。




「っ……!」




すす、と龍麻の手が京一の脇腹を撫でる。
触れるか触れないか、そんな緩やかさの愛撫に、京一は唇を噛んで、シーツを握り締めた。

シャツを更に上へとたくし上げて、龍麻は顔を出した京一の胸の蕾に唇を寄せた。
微かに尖っているそれに舌を伸ばし、蕾の周囲をゆっくりと撫でた後、先端で舌先を遊ばせれば、ピクッ、と京一が小さく息を詰めたのが判る。




「いつもより感じてる?」
「ば…か、言え……ッ!」




吐き捨てるように言った京一だが、体の内部で持て余す熱が、官能のものと入り交じって来ているのは確かだ。
殺しながら、それでも零れる吐息に、甘さが孕まれている事を、龍麻は聞き逃さない。


舌先で弄んでいる内に、その頂きはぷっくりと膨らんで自己主張するようになった。
膨らんだそれを指で摘まめば、殺した吐息と声が溢れそうになって、京一は下唇を強く噛む。

京一が行為の際に声を殺すのはいつもの事だ。
それ龍麻が不満に思うのも、いつもの事。




「きょーいち」
「んぐッ…!」




名前を呼ばれ、京一が顔を上げた時には、其処には龍麻の顔があった。
唇を重ねて、舌で強張った彼の唇の形をなぞってやれば、京一のそれは微かに戦慄いた後、答えるように隙間を開いて龍麻を誘う。


舌と舌を絡め合わせながら、龍麻は京一の胸に手を滑らせた。
探るように胸周りを撫でて、指先に触れた尖りをきゅっと摘まんでやる。




「んんっ…!」




ビクン、と京一の肩が揺れて、咥内の舌が逃げるように下がる。
それを追い駆けて口付けを深めて、龍麻は絡めた舌を己の咥内へと招いてやった。

京一の舌が伸びて来た所で、龍麻はキスを止める。
呼吸を解放して、コリコリと胸の尖りを刺激していると、京一は蕩けたような表情で殺し忘れた声を漏らす。




「う、あっ…あ、……っふ……」




いつもよりも息が上がるのが早いのは、体調不良の所為だろう。
じわりと汗の滲む鎖骨に舌を這わしながら、龍麻は尚も執拗に、京一の胸を責める。
片方だけだったその攻めを、左右両方に施してやれば、京一は真っ白なベッドシーツに波を寄せて、背を仰け反らせて喘ぎ出す。




「ん……あ、あっ…っは……!」
「やっぱり、いつもより感じてる」
「ふぅ、んっ…!」




ちゅ、と尖った蕾に唇を寄せて吸い付いた。
撓る背中に腕を回して抱き締めて、龍麻はぴったりと京一に密着し、ちゅうちゅうと赤ん坊が授乳をねだるように強く吸い上げる。




「あ、く……ふ…っ、やめっ……」
「いや」
「………っ!」




ちゅぅう、と一際強く吸い付けば、ビクッビクッと京一の体が痙攣したように跳ねた。
くふ、と京一は押し殺した吐息を漏らして、じろりと己の腹上に跨る少年を睨み、




「おい……っ」
「何?」
「授業、出るんだからな」
「うん」
「だから……っあ…!」




食んだ蕾に歯を当てると、京一の言葉が其処で途切れた。

だから手加減しろ、調子に乗るな。
恐らく、言いたかったのはその辺りだろうと見当をつけて、出来るかなぁ、と龍麻はのんびりと考えて、直ぐにその思考を放棄した。


じっとりと汗の滲む肌を撫でながら、龍麻は右手を下げて行く。
スラックスのベルトを外してやると、京一が自ら腰を上げたので、助力に従って下着と一緒にスラックスを引き下ろした。
膝元に絡まった布を鬱陶しそうに身を捩るのを見て、寒くないかな、と頭の隅で思いつつ、片足を抜かせる。

半勃ちになっていた雄を片手で包み込んで、上下に扱いてやると、




「っ、んっ…!くっ……」




鼻にかかったような呼吸が漏れて、京一の顔が益々赤くなる。
その様子に、可愛いなぁ、等と音に出せば間違いなく鉄拳が落ちて来そうな事を考えながら、龍麻は雄の先端をぐりぐりと親指の腹で刺激した。




「うっ、あ、あっ……!」
「京一、色んな所熱くなってるね」
「ひ、んんっ!」




ぎゅっと太い部分を緩く握ると、京一は嫌がるように頭を振った。
シーツを蹴る爪先が丸まって、耐えるように震えている。

震える足を捕まえて、左右に大きく開かせると、京一は目を瞠った。
己の秘部を晒す事にいつまでも慣れない彼は、掴まれた足をじたばたと暴れさせようとするが、龍麻相手にその抵抗は、やはり無意味なものでしかなく。


龍麻は、京一の片足を自分の肩に乗せると、自身も下肢を寛げて、反り返った己の欲望を京一の秘部に押し当てた。
途端、ちょっと待て、と京一の顔から血の気が引く。




「い、いきなり突っ込む気か!?」
「だって解してる時間ないし」
「だってじゃねェ!ヤられる方の身にもなれ、この馬鹿!」




押し入ろうとする龍麻の体を、精一杯腕を突っ張って遠ざけようとする京一に、龍麻はむぅ、と眉尻を下げる。
お預けを食らった子犬のような表情に、京一は自分が無理を強いているような気がしたが、痛いのは御免だと睨み付けてやった。

数秒、無言で睨み合った後、龍麻は渋々と雄を下げた。




「じゃあ、ちゃんと解すから、足ちゃんと開いててね」
「………」




あからさまに指示するように言われると、それはそれで恥ずかしくて腹立たしかった京一だが、仕方なく口を噤んで、大人しくなる。


屈んだ龍麻の頭が、自分の恥部を見ていると思うと、京一は顔から火が出る気分だった。
取り敢えず見ないようにしよう、と手繰り寄せた枕に顔を埋めると、視覚を捨てた所為か、余計に視線の気配を感じてしまう。

どうしろってんだ、と苦々しく唇を噛む京一を上目で伺いつつ、龍麻は彼の太腿を押してやる。
露わになった秘孔は、ひくひくとこの後の刺激を期待しているかのように伸縮していて、龍麻は小さく喉を鳴らした。
早く感じたいな、と思いつつ、無体をすれば確実に相手の機嫌を損ねてしまうので、ぐっと堪えて舌を伸ばす。




「っ……!」




舌先が窄まりに触れた途端、ビクッと京一の腰が逃げるように浮いた。
ずり下がろうとする腰を捕まえて、龍麻はぐにゅ…と舌を秘孔内に押し入れて行く。




「う、あ…ぁっ……!」




生暖かく、ぐにゅぐにゅと弾力のあるものが侵入してくる際の違和感は、如何ばかりか。
京一の目には生理的な涙が浮かんでいた。

それでも、まだ痛みはないようで。




「ひぅ…う……っ」




違和感に顔を顰めている京一だが、彼の下部ははっきりと快感を拾っており、その象徴のように雄も支えなく天を向いている。
其処へもう少し、直接的な刺激を与えれば、直ぐに絶頂してしまうのは明らかだった。

しかし、龍麻は専ら秘孔口を解すのに夢中になっている。
ぐね、ぐにゅ、と内壁を押す柔らかな感触に、京一の腰がびくっ、びくっ、と度々跳ねて遊んだ。


龍麻は、ゆっくりと舌を引き抜くと、今度は人差し指を宛がった。
つぷ……と埋められていくそれを、内壁は喜ぶように絡み付いて歓迎し、もっと奥へと誘い込もうとする。




「なんか、いつもより積極的だね」
「あ、…知る、か……ひぅ、ん……っ!」




龍麻の言葉に、京一は頬に朱色を上らせて吐き捨てる。
しかし、体は与えられる快楽に正直で、後ろに下がろうとする指を引き留めようと締め付けた。

自身の体の無意識の反応に、京一の体がビクッビクッと痙攣する。
その姿を目で楽しみながら、龍麻は秘奥に埋めた指を曲げて、絡む肉壁を爪先で緩く引っ掻いた。




「んあっあっ!」




思わず溢れ出した声に、京一の微かな理性が羞恥に苛まれるが、一度決壊してしまったものを元に戻すのは難しい。
京一が再び口を噤んでしまう前に、龍麻は同じ場所に爪を立てた。




「んっひっ、いぃっ…!」
「きょーいち、気持ち良さそう…」
「あっ、あくっ…!ひ、あぁ……っ!」




京一がゆるゆると頭を振るが、それが否定であるのか、単に羞恥から来る行動なのかは、龍麻にも、京一自身にもよく判らなかった。

くちゅ、くちゅ、と卑猥な音が主不在の空間に響く。
指にかかる締め付けが、程よく緩んで来たのを見計らって、龍麻は指を引き抜いた。
ずるり、と肉壁を擦られる感覚に、京一の足が引き攣ったように強張り、吐息と共に声が漏れる。




「ふぅ、あ…あっ……」




ひくっ、ひくっ、と腰を戦慄かせて、視線を虚空へ彷徨わせる京一。
飲み込み忘れた唾液が口端から零れているのが、酷く扇情的な光景に見えて、龍麻は指にまとわりついた粘液を舐めながら、熱の篭った吐息を零す。


龍麻の家で交わっている時に比べれば、酷くおざなりで短い前戯だったが、これ以上は龍麻の方が待てない。
先程よりも膨らんだ雄を秘孔に宛がうと、京一の意識が此方に戻ってくるのを待たず、龍麻は彼の体内へと侵入した。




「いっ……んぐっ!」




圧迫感と痛みに思わず悲鳴を上げかけた京一だったが、龍麻の唇がそれを飲み込んだ。
声にならない声を上げて、じたばたと四肢を暴れさせる京一だが、ずっぷりと埋められた雄は頑として抜けない。




「ん、んふっ…!ふ、ぅ、うぅ…!」




息苦しさと圧迫感で涙を滲ませる京一だったが、龍麻は構わずに舌を滑り込ませた。
京一の舌を絡め取って、舌の表面全体を撫でるように舐めれば、直ぐに京一の瞳は熱に浮かされて行く。
拒絶を示すように痛い程締め付けていた秘部も、微かに緩んで龍麻を受け入れ始めていた。

龍麻がゆっくりと腰を動かし始めると、口付けの隙間から甘い声が漏れる。
ひくっ、ひくっ、と京一の細身の体が震えているのを感じながら、龍麻はぺろ、と薄い唇を舌でなぞって、京一の呼吸を解放した。


ぎし、ぎし、とベッドの軋む音がする。

窓から差し込む陽光は、とても燦々と気持ちが良いものである筈なのに、今この空間においては酷く場違いなものに思えて仕方がない。
────一番の場違いは、此処で躯を重ね合っている自分達の方なのだけれど。




「んっ、んあっ、あっ…!」
「ふ、んん……京一、熱い……」
「お前、がっ…あっ、言うな……っ!」




風邪を引いて発熱している京一の体が熱いのは、当然だろう。
しかし、京一の秘孔内で疼く龍麻の雄までもが、それに負けず劣らず熱いのは、一体どういう訳か。

京一は、自分の体内の熱と、秘孔に埋められた龍麻の熱と、どれがどれなのか判らなくなっていた。
思考と一緒に体の中まで溶かされているような気がして、理性はとっくに役目を停止している。
体の奥でうずうずと疼く感覚が止められない。




「んんっ…!」




雄の先端が秘奥の壁を突いた。
途端、ぞくん、としたものが京一の背中を奔る。


埋めた肉棒が強く締め付けられたのを感じて、一瞬、龍麻の眉根が苦しげに寄せられる。




「京一、きつい……」
「ひ、あっ…ああっ…!」




その締め付けを半ば強引に振り解きながら、龍麻は尚も腰を動かす。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と言う音が嫌に大きく響いているような気がして、京一は鼓膜まで犯されているような気がした。

汗の雫を滲ませた京一の頬を、龍麻の舌が這う。
艶めかしい感触に、京一の体がふるりと震えて、それを誤魔化すようにベッドシーツを強く握り締めた。




「汗、一杯だね」
「う、あっ…んあ、あ、……ふ…くぅっ…!」
「…ねえ。僕、伝染ったりするのかな」




上がった呼吸で途切れ途切れに、龍麻は呟いたが、それは殆ど独り言だった。
激しくなる律動に翻弄される京一に、他人の言葉の意味など把握している余裕はなく、ただただ秘奥を突き上げられる度に意味を成さない声を上げるしかない。




「あっ、ひっ…!う、んん…っああ!」
「伝染ったら、京一、」
「はっ、はっ…あ、ん!あ、…バカ、激しっ…!」
「面倒、見てね。京一が」
「ひぅうっ……!!」




ぐりゅぅ、と根本まで侵入した太い熱の塊。
京一はがくがくと躯を震わせて、圧迫感と、それ以上の快楽で脳髄を熱で犯される。


二人の体の間で、京一の雄がヒクヒクと切なげに震えていた。
其処は弾けんばかりに大きく膨らんでいるけれど、決定打がない所為か、熱を溜め込んだまま吐き出そうとしない。
それがまた苦しいのだろう、京一は細腰をくねらせて身を捩る。

龍麻は、揺れる腰を捕まえると、ずるり、と埋めていた雄を引き抜いた。




「あっ、あああっ……!」




悩ましげな声が京一の唇から溢れ出て、龍麻も一気に上って来た臨界点を唇を噛んで耐える。
きゅうぅ、と引き留めるように締め付ける肉壁は、すっかり龍麻の形を覚え込んで、ぴったりと嵌るように蠢いていた。

雄の太い部分が入口に引っ掛かって止まる。
穴口の縁を押し広げられる感覚に、京一が悶えるように声にならない声を上げながら頭を振った。
仰け反った喉にくっきりと浮き上がった喉仏を舌先で突いてやると、怯えたようにヒクン、と京一の喉が震える。




「やっ、…あ……っ…」




物足りなさを訴える様な声を合図に、────ずちゅっ!と龍麻は再び秘奥を突き上げた。




「─────っ……!!」




ビクッ、ビクン、と京一の腰が跳ねて、二人の腹に白濁液が吐き出される。

同時に秘孔が強く窄まって、龍麻の雄を締め付けた。
閉じようとするように内壁が集まって来て、搾り取らんばかりの強い刺激に、龍麻の腰が震える。




「きょー、いち……っ!」
「あ、う、あぁっあああっ……!」




どくり、と吐き出される熱を受け止めて、京一が熱に呆けたような音を漏らした。


─────少しの間、互いの呼吸の音だけが、静かな空間を支配する。
茫洋とした意識の中で、京一は天井を見上げて思考を彷徨わせ、龍麻は余韻に浸るように、京一の体内の熱を感じていた。

京一の視界に壁掛け時計が入って、既に四時間目が終わっている時間になっていた事を知る。
チャイム鳴ったっけ、保険の教師はまだ帰って来ていないのか。
グラウンドから聞こえていた、体育の授業の声は既に消えていて、代わりに校舎のあちらこちらから人が移動する気配がある。


ああ、だるい。
体が重いのは、もう風邪の所為だけではないだろう。




「……龍、麻」




取り敢えず。
取り敢えず、このままでいる訳にはいくまい、と、未だに自分の体内に居座っている少年を睨む。




「もう、退け。疲れた……」
「汗、掻いた?」
「見りゃ判んだろ……」




脱がされなかったシャツに汗が沁み込んで、その所為で背中が冷たい。
前髪も額の汗で張り付いていて鬱陶しくなっていた。


これで風邪が治ったのかと言われると、京一としては甚だ疑問だ。
寧ろ疲労の方が濃いし、出ようと思っていた午後の授業も、このまま寝倒してサボってしまって良いだろうか、とも思えてくる。
直ぐに単位の事を思い出したので、やはり点呼だけは取らねばと思い直したが。

幸い、今は休憩時間。
昼飯抜きが後々響く事は予想に難くなかったが、それよりも体力の回復を優先として、もう少し休みたい。
情交のお陰で体も疲れているので、どうにも眠りが浅かった先刻とは違い、ゆっくり眠る事も出来るだろう。


────と、京一は思っているのだが、




「おい……」
「うん」




いつまでも動く様子のない龍麻に、京一は眦を吊り上げた。
じろりと睨んでみれば、それを宥めるように頬にキスが落ちてくる。




「早く抜けって────ひぅっ!」




ぐりゅっ、と秘奥を抉られて、京一の体がビクッと跳ねた。
何が、と目を白黒させる京一に、龍麻は眉尻を下げて笑む。




「ごめん、京一。また勃っちゃった」
「あ、な……ひっ、あっ、やめ、バカっ!」








謝罪と言うには簡素な一言と告白の後、再び始まった律動に、京一は思わず罵倒を口走ったが、それが相手に届く訳もなく。
止める声を聞かずに始まった二回目の情交に、午後の授業はサボるしかないのだろうと悟りつつ、予定をぶち壊しにしてくれた目の前の少年の髪をせめてもの報復に目一杯引っ張ってやった。










保健室えっち!
でもいつもの龍京エロと然程変わりがないような。平常運転と言う事か。

何故こういう時の保健室は都合良く人がいないんだとか、そういう事はツッコんじゃいけません。