抗う猫、一匹 5


 頼りない基盤の上に立っている。
真っ直ぐに立っている筈なのに、足下は酷く覚束なくて、些細な事で頽れてしまう気がする。
それを悟られないように、頼りない基盤の上に砦を作って閉じ籠る。

 簡単に崩れてしまいそうな地面の上に建てた砦は、些細な事で簡単に壊れてしまうような気がして、砦の上にまた砦を作る。
足下の脆弱さから目を逸らすように、上から上から重ねて作り、内側の脆さを押し隠す。

 砦の中には大切なものだけを仕舞い込んで、何処にも外に出さない。
大好きなものだけを詰め込んだ砦の中で、いつまでもいつまでも、閉じ籠る。
そうする事で、狭くて小さな世界の平穏は保たれると信じていた。
一歩でも砦の外に出なければ、砦の外にある沢山のものに、大切なものを奪われる事もない。

 そう信じていた。

 けれど、虚勢はどんなに大きな見栄を繕った所で、結局、虚勢でしかない。
ほんの少しの綻びが生まれた途端、酷く呆気なく、あっさりと、足下から崩壊してしまうものなのだ。






 支配者の性欲処理は、毎晩のように行われる。
口の中に何度も饐えた体液を注がれて、口の中から同じ匂いが漂うような気がして、スコールは絶えず吐き気のような感覚に見舞われるようになった。
朝の食事で兄がろくに食べ物を口に入れなかったのは、きっとこの所為だったのだろう。

 しかし、スコールは朝食を抜く事はしなかった。
食べる量は微々たるものであったが、食べなければレオンと同じように倒れてしまう。
自分まで倒れてしまったら、クラウドは本当に兄弟の面倒を見る事を止めるかも知れない。
他に行く場所などない兄弟は、この小さな世界にしがみ付く以外、生きていく方法も、共に在る手段さえも持たなかった。
だから、兄と一緒にいる為にも、兄が帰って来る場所を失わない為にも、倒れる訳には行かない。

 家事一般と言うものも、繰り返すうちに慣れてきた。
触る事も躊躇った生ゴミも、自分が片付けざるを得ないと腹を括れば、案外と簡単に済ませる事が出来た。
レオンのように凝った料理が作れる訳ではないけれど、朝昼晩に違う献立を並べられる程度にはなった。
掃除は毎日少しずつ済ませて置けば、大きなゴミが溜まる事もない。
何より、レオンがいない今、クラウドが外出している日中はスコールしか家にいないので、散らかりようもなかった。

 レオンが入院してから、スコールは家事等と言った仕事をするようになったが、基本的な一日の過ごし方は対して変わっていない。
リビングのテレビを点け、ソファの上で丸くなって時間の経過を待つ。
時折、玄関のチャイムが鳴る音がしたが、スコールは対応しなかった。
レオンがいた時も対応していなかったし、出た所でどう対応すれば良いか判らない。
放って置けばチャイムの鳴る音は止み、後で玄関ポストに不在票だか何だかが入っていて、クラウドが帰った後に対処しているようだった。
クラウドもスコール達に対し、来訪客に対してどうしろと言った事もないので、恐らくこのままの対応で良いのだろう。

 レオンが倒れてから、クラウドは帰りが遅くなった───とスコールは感じている。
レオンが傍にいないから、時間の流れが遅く感じるようになっただけかも知れない。
家事も済ませ、夕飯の準備も済ませてしまえば、後は何もする事はないから、スコールはソファの上で丸まっているしかなかった。

 ガチャリ、と玄関のドアロックを外す音が、支配者が返ってきた合図だった。
その瞬間、何をしていても、眠っていても、スコールの意識は急速に現実への復帰を果たす。


「散々だ……全く」


 ぶつぶつと呟く声がして、リビングにクラウドが入って来る。
スコールはソファの背凭れの影から、伺うようにクラウドを見た。
金髪に黒衣の男は、スコールを見る事なくソファの裏を素通りし、壁際のラックから小さな箱を取り出す。
それは絆創膏や包帯が入った、所謂救急箱だった。

 くん、とスコールの鼻が鳴る。


(……血の匂いがする)


 施設にいた時、何度も嗅いだ匂いだ。
よくよく見れば、黒衣の肩口から赤黒い色も滲んでおり、出血している事は確からしい。

 クラウドは時折、今日のような傷であったり、頬に痣のような色を残して帰って来る事がある。
理由を聞いた事はない。
クラウドが何の仕事をしているのか、スコールは知らないし、レオンも恐らく聞いていないのではないだろうか。

 衣服を脱いだクラウドの肩には、穴のような傷が開いていた。
外の世界、増して人間社会の事などろくに知りもしないスコールには、何をすればそのような傷を負う事になるのか、全く判らない。
何の仕事をしているのかと疑問に思う事はあるものの、特に知りたいとは思わない。
自分達を支配している男のプロフィールなど、スコールにとって大して意味のない情報だった。

 救急箱から取り出した薬の匂いが、スコールの鼻をツンと刺激した。
血と同じく、施設にいた時に何度も嗅いだ事のあるものだ。
それは大抵、拷問紛いの実験を受けたレオンが、傷だらけになって帰って来た時、体中の傷を覆うように塗られた薬品が漂わせていた匂いだった。

 嫌な記憶を呼び起こさせる匂いを嫌って、スコールはソファを立った。
慣れた手付きで手当てをしているクラウドを見ないまま、寝室へ入る。

 ────一人きりになった寝室の中で、スコールは、この場にいない兄の事を思い出していた。
何度も何度も傷付いた体で、大丈夫だよ、と笑いかけていた兄。
彼にはもう二度と傷付いて欲しくない。


(……今のままなら)


 今なら。
今のままなら、レオンはもう、傷付かなくて良い。
倒れた所為で病院に預けられ、離れ離れになっている今、早く目覚めて欲しいと思う。
けれど、目覚めなければレオンはずっと病院にいて、現実の世界で傷付く事もない。

 一緒にいたい、傍にいたい。
帰って来て欲しいと思う。
けれど、傷付いて欲しくないと思ったら、今のままが彼にとって一番幸せなのかも知れない、とスコールは思った。




 夕飯を終え、寝室に入って来たクラウドの足音を聞いて、スコールは横にしていた体を起こした。
衣服を脱いで首を晒し、首輪に鎖が繋がれる。

 ちゅぷ、ちゅぷ、と淫音が鳴る中で、時折ちゃり、と首下で金属の音がする。
スコールが頭を前後に揺らす度に、繋がれた鎖がまるで飼い猫の鈴のように揺れるのだ。


「ん…ふ、ぅっ……っは……」


 猫の特徴である、ざらざらとした舌が、ペニスの竿を根本から上へとゆっくり撫でて行く。
尖った牙が当たらないように、出来るだけ口を大きく開けて、スコールは竿を横から食んだ。
口の中で舌を上下に波打つように動かして、竿の横腹を丹念に舐める。

 今日のクラウドは、行為を始める前から昂っていた。
ペニスは大きく膨らんで反り返り、今にも爆発しそうに見える。
下着から取り出した途端、ぶるん、と勢いよく生えるように現れた男根に、スコールは思わず引き攣ったが、大人しく奉仕を始めてから数分───亀頭の先端からはとろとろと蜜が溢れ出している。


「咥えろ。しゃぶれ」
「…ん、はぐぅっ…!」


 躊躇っていては何も進まない、それ所か支配者を苛立たせて乱暴に扱われるばかりだと言う事は、この数日間で覚えた。
レオンの代わりに相手をすると決めた日の翌日、三度目となる性交渉の際、強引に躯を開かされてから、スコールは可惜に噛み付く事を止めた。
クラウドを苛立たせれば、それだけ自分の立場が悪くなり、乱暴な扱いしかされなくなる事を知ったからだ。

 スコールはペニスを咥内に招き入れると、ちゅ、ちゅ、と膨らんだ先端を啜った。
ちう…と少し強く吸い上げる度、口の中でペニスがピクピクと反応する。


「ふっ、うっ…んっ…!ぢゅ、んむっ…!」


 男の股間に顔を埋めて、スコールは篭る呼吸と匂いに眉根を寄せながら、一心不乱にペニスをしゃぶる。
出来るだけ早く、クラウドを満足させて、この屈辱的な行為を一刻でも早く終わらせる為に。

 スコールの舌が、亀頭の形をなぞるように動き、ざらざらとした質感に撫でられたペニスがより一層大きく膨らむ。
口の中に全て含むには無理のある大きさに、一度口を離した。
は、は、と不足した酸素を取り込んだ後、もう一度、今度は亀頭部分だけを口に含む。


「あ、むぅっ…ん、ん、んっ…!」
「少しは上手くなって来たな」
「んんっ…ふ、うんっ……」


 くしゃり、と褒めるようにクラウドの手がスコールの髪を撫でる。
その手は遊ぶようにダークブラウンの髪を絡めた後、ピンと立っていた三角形の耳に触れた。
ぴくっ、とスコールの細い肩が震え、耳が逃げるように寝かせられるが、クラウドは構わずに耳の付け根の肉をくにくにと摘んで弄ぶ。


「んっ、んぅっ…!っふ、う…くぅんっ…!」


 敏感な器官である耳をくすぐられる度、ペニスを咥えたスコールの喉奥から、艶の篭った声が零れていた。

 ゆらゆらとスコールの黒い尻尾が揺れるのを見て、クラウドは笑みを深める。
耳の内側を親指がなぞれば、ビクン、と尻尾が跳ねて、スコールは嫌、と首を横に振った。
その弾みで、咥えたペニスを尖った牙の先端が掠め、


「くっ…!」
「んっぐ!?」


 不意の刺激に、クラウドが息を詰める。
口の中で、どくん、とペニスが大きく脈打つのを感じて、スコールは目を瞠った。
咄嗟にペニスを放したスコールの顔に、びゅるっ、びゅるるっ!と噴き出すように放出された精液が降り注ぐ。


「うっえ……」
「おい」
「んぅっ!」


 どろりと纏わりつく粘液の匂いに顔を顰めたスコールに、不機嫌な声が落ちて来た。
同時に、ぐっ、と強い力で首輪の鎖が引かれ、力任せに首を持ち上げられる。


「歯を当てるな。それと、飲めって言っただろう。昨日は出来てたじゃないか」
「う、う……っ」


 ぐる、とスコールの喉が威嚇するように鳴ったが、見下ろす冷たい碧眼に、直ぐに音は引っ込んだ。
鎖を掴む手が離れ、じゃらん、と金属の音が鳴って鎖が撓む。

 圧迫された喉奥の苦しさに歯噛みしながら、スコールはもう一度クラウドの股間に顔を埋めた。
意図せず牙を当てた場所を探るように、亀頭の全体を舐めて、労るようにしゃぶる。
射精したばかりのペニスは、まだ幾らも膨らみを納めておらず、やはりスコールが口に含めるのは先端部分が精々であった。
どろどろの粘液と、唾液で濡れた竿を、両手で包んでやわやわと揉む。


「んっ、は…は、ちゅ……んぢゅっ…」


 こぷ、とぷ、と先端から溢れ出してくる精液を啜る。
口の中で、舌に絡まる精液の味が、苦くて気持ち悪くて仕方がない。
これを昨日、一昨日と、死ぬ思いをするように飲み下していた事が、自分でも信じられない。

 命令に従えなかった事を償うように、スコールは肉棒を丹念に掃除した。
しかし、唾液と精液が交じり合ってぬろぬろと光る肉棒は、どれだけ掃除しても綺麗にはなりそうにない。


「んっ、んぅっ…っは、はむっ…!んぢゅ、ぷぅっ…!」
「裏筋、舐めろ」
「っは……はふっ…れろ…んむ、はぅんっ…」


 買ってしまった不興を帳消しにして貰う為に、スコールは必死になって男に奉仕する。
クラウドの手が、頭の上の耳をくすぐっても、スコールはもう嫌がる事はしなかった。
ひく、ひく、と肩が拒否を示したがるように震えたが、抵抗らしいものと言えばそれだけだ。

 ざらざらとした猫の舌が、ペニスの裏筋を上に下にと何度も往復する。
ぴく、ぴく、とペニスが反応を示すの影から、スコールは様子を伺うようにクラウドの顔を見上げた。
猫の眼に見える男の表情は、支配者然とした薄い笑みを透いていて、見るもの───スコールに絶対的な支配力を突き付ける。

 眉根を寄せて、睨むようにじっと自分を見詰める猫に、クラウドの唇からは微かに熱の篭った吐息が漏れる。
れろ……とスコールの赤い舌が己の男根を這う度に、吐き出したばかりの欲望が、むくむくと再び膨れ上がって行くのが判った。


「そろそろ良いな」
「んぅ……んぷぁっ!」


 ぐっと鎖が後ろに引かれて、スコールの口からペニスが抜け出る。

 げほげほと咽るスコールの肩が押され、床に倒れた。
呼吸が元に戻った後、スコールは起き上がる事をせず、じっと見下ろす男が動き出すのを待つ。

 ────しかし、クラウドは何もして来なかった。
微かに乱れた自分の呼吸以外、しんと静まり返ってしまった室内に、違和感と不気味さを感じて、スコールは眉根を寄せる。
伺うように、ベッドに座っている男を見ると、意地の悪い光を灯した碧眼とぶつかった。
その眼が数日前、「変わった事をしよう」と兄に言っていた時のものと重なって、スコールはぞくん、と悪寒に似たものが背中を奔ったのを感じ取る。


「そう怯えるな。俺からは何もしない」
「……」


 何もしない───だからと言って、今夜の性欲処理が終わりではない事は、スコールにも判った。
眦を尖らせてクラウドを睨むスコールの目は、明らかな警戒の意思を滲ませている。

 床の上でじっと動かないスコールに、クラウドは言った。


「ケツ穴オナニーしろ。自分で解すんだ」
「な……!?」


 初めて聞いた言葉に、スコールは目を丸くした。

 クラウドに抱かれるようになってから、オナニーは強要される度に行った。
自分で自分のペニスを刺激し、絶頂するまでその行為は止める事が許されず、声も殺すなと教え込まれた。
最初は嫌悪感を堪えながら行わされる自慰行為でも、獣か動物としての本能か、次第に湧き上がってくる言いようのない熱には、逆らう事が出来ない。
冷え切っていた筈の心は、体内で徐々に湧き上がる熱と比例して揺れ始め、絶頂を迎える頃にはドロドロに溶かされてしまう。
レオンもこうだったのか、と思い出しながら繰り返す自慰行為は、スコールにとって忌むべきものとなっていた。

 そのオナニーをしろと言う上に、尻穴で、とはどう言う事だろう。
自慰行為とはペニスでするものではなかったのか。
スコールが知っている性知識は、クラウドに拾われてからレオンが目の前でされていた事と、この数日で自分がされていた事しかない。
クラウドの初めての命令に戸惑うのは、当然の事だった。

 戸惑いと混乱で硬直したまま動かないスコールを見て、クラウドは数秒の沈黙の後、「ああ」と思い至る。


「レオンにやらせた事もなかったし、判らないのも当然か」


 そう言ってクラウドは、徐に伸ばした手で、スコールの右手を掴んだ。
びくっと強張った腕が逃げようとするが、クラウドは手首を掴む力を強めて離さない。

 クラウドに導かれるようにして、スコールの右手が下肢へと下ろされ、


「簡単な話だ。此処を自分で弄ればいい」


 此処、と言ってクラウドがスコールの手を宛がったのは、閉じた菊座。
クラウドに指を添えられた中指が、くに、と秘孔に押し当てられて、スコールは引き攣った声を上げる。


「ひっ……!」
「俺が此処を解してやろうとすると、お前は決まって暴れるからな。躾でもないのに痛い思いをするのは、俺だって御免だ。だから、これからはお前が自分で出来るようになれ」
「や……」
「嫌だ、なんて言わないよな?」


 言える立場ではないだろう。
冷たい瞳が、そう言っているのを見て、スコールは唇を噛んだ。

 蒼灰色の瞳が瞼の裏側に伏せられる。
強張った手の抵抗力が失せると、「良い子だ」とクラウドの囁きがあったが、スコールはそれを嫌うように顔を背けた。


「指を入れろ。人差し指か中指が簡単かな」
「……っ」


 言われるままに、スコールは人差し指を自身のアナルへと挿入させた。
つぷ…と埋められた指に、ひくひくと伸縮する肉壁がまとわりつくのが判る。


「ん、うぅ……っ!」


 自分で自分の排泄器官に触れている、剰え指を挿入して中を弄ろうとしている。
それを考えるだけで、スコールは胃液が喉元まで逆流して来そうだった。

 喉奥の違和感を強引に飲み込んで、スコールはゆっくりと指を沈めて行く。
奥へと侵入を深める度に、アナルの肉壁が拒むように強張るのを感じて、スコールは知らず呼吸を詰めていた。


「呼吸はした方が良いぞ」
「……う、は……ぁっ…!」


 意識して息を吐くと、指に纏わりついていた締め付けが微かに緩んだ。
その隙に、意を決して指を深くまで埋めようとするが、


「あぐぅっ…!」


 ぎゅう、と再び肉壁が指を締め付ける。
痛い程のその締め付けに、スコールの眉間には深い皺が刻まれ、苦悶の強さを物語っていた。

 初めての行為への戸惑いと嫌悪感で、どうしてもスコールの躯は緊張に強張ってしまう。
噛んだ唇に牙が当たって、ぷつ、と柔らかな皮膚を破いた。
指の第一関節をようやっと埋めた所で、スコールは下肢の痛みと違和感に耐えるように、体を小さく丸めて蹲る。


「んっ、うっ…うぅっ…!」
「口を開けろ、スコール」
「ふ、あ…あっ、あ……ぅ…っ」


 支配者の命令に従い、スコールは口を開けた。

 は、は、と舌を伸ばして短く呼吸を繰り返すスコール。
その舌先に冷たく固い物が当たって、スコールは何、と目を開けた。

 ちゃり、と銀色の鎖がスコールの目の前に垂れている。
この世界に飼われているもう一匹の猫、レオンの鎖だった。


「舐めろ」
「な……そん、な…事……」


 クラウドの言葉に、スコールの戸惑いは更に深くなる。

 レオンの鎖を舐めるなんて、そんな事────そう思う理由が何なのかは、スコールにも判らない。
鎖がレオンを象徴している訳ではないし、この鎖の所為で自分と彼がクラウドに縛られていると実感する事を思えば、忌むべきものであるとも言える。
しかし、この鎖がある限り、レオンは退院すれば此処に帰って来るのだと言う保証のようにも思えた。
何れにしろ、鎖は単に支配者を視覚的に満足させる為だけに存在するもので、スコールにとってもレオンにとっても、特に意味のないものであった筈だ。
だと言うのに、鎖を舐めろと言われた事が、スコールには何かの禁忌に踏み込む事のように思えてならなかった。

 数日前、この鎖を轡の代わりに噛まされた。
その時、何度も舌や歯が鎖に当たって、鉄錆の味を感じた。
その時もスコールは息苦しさと咥内の苦味に顔を顰めていたが、あれはクラウドに無理やりされた事だ。
今のように「自分からしろ」と自分からそうしろと言われた訳ではない。

 ちゃり、とスコールの口元で鎖が揺れる。
冷たい金属の先端が、スコールの色の薄い唇に触れた。
見下ろす碧眼が面白がっているのが判って、スコールは噛み付きたい衝動に駆られたが、結局は支配者にし難う道しか残されていない。

 開いた唇の隙間から、おずおずと赤い舌が覗いて、銀色の鎖をゆっくりとなぞる。


「は、ん……っ」


 冷たい鉄錆の味と、金属が繋ぎ合う凹凸感に、スコールは眉根を寄せた。


「そのまま続けろ。オナニーも忘れるなよ」
「あ、ふぅっ…!」


 ぴちゃ、ぴちゃ、と垂れた鎖に舌を這わせながら、アナルに埋めた指を奥へと押し込もうと試みる。
ずにゅ、と深くなった挿入に、スコールの躯がひくひくと震えた。


「んっ、んぁ……っは、あ…え、ふ…っ」
「尻穴、ちゃんと解れてるか確認しないとな。左手で足抱えろ、片方で良い」


 鎖を舐めながら、スコールは床を掻いていた左手で、自分の左脚を持ち上げた。
抱えろと言われ、命令のままに太腿から足を抱えれば、隠すもののない淫部が男の前に曝け出された。

 足の付け根でぴく、ぴく、と震えている中心部を見て、クラウドがくく、と笑う。


「初めてのアナルオナニーだし、萎えてるかと思ったら、意外と気持ち良いみたいだな?」
「はちゅっ…ん、ちが、ぁ……」
「なら、こっちか?」


 ちゃり、ちゃり、とスコールの舌の上で、鎖が揺れて遊ぶ。
左右へゆらゆらと揺れる鎖を追い駆けて、スコールの濡れた舌が彷徨った。
まるで求めるように鎖を追うスコールの姿に、クラウドの笑みがまた深まる。


「レオンの鎖だ。美味いだろう?」
「あ、ふ…っ!」


 クラウドの言葉を聞いた瞬間、スコールの背にぞくん、としたものが走る。
鎖を追う舌が戸惑うように震え、動きもぎこちないものになる。
しかし、舌を伸ばして喘ぐスコールの瞳には、愉悦にも似た熱が灯り始めていた。

 指を埋めたアナルが、ひくん、ひくん、と伸縮している。


「尻の指、もっと奥まで入るだろ?」
「…んぅ、うっ…!ふぅんっ…!」


 つぷ、つぷぷ……と少しずつ挿入が深くなって行く。
息が詰まりそうになる度に、目の前でちらちらと鎖が揺れて、スコールは口を開いて舌を伸ばす。


「あ、う…んちゅ、ふ…んぷっ……!」
「指が奥まで入ったら、そのまま曲げてみろ」
「───あふぅっ…!」


 根本まで埋めた指を怖々と曲げると、ぐにぃ、と脾肉が押し広げられて、スコールは抱えた足にしがみ付く様にして身を丸くする。


「う、ん、ぅうっ……!」
「痛みはないみたいだな。そのままもう一本、今度は中指を入れてみろ」
「んくっ…!ふぁうぅっ」


 人差し指をそのままに、命令に従って中指をアナル口に宛がう。
それだけでぴりぴりと柔らかい電流のようなものが背中を奔って、ビクッビクッとスコールの躯が跳ねた。

 押し当てた中指を、ゆっくりと埋めて行く。
人差し指を咥えるだけでも狭かった穴が更に広げられ、きゅうきゅうと淫肉が閉じようとして二本の指を締め付ける。


「あっ、うっ…う、ぅっ…!」
「こっちもちゃんと舐めろ」
「は、んちゅ…あむっ、ん、はぅっ…!」


 ゆらゆらと揺れる鎖に舌を伸ばしたスコールは、その先端を自らの口の中へと招き入れた。
ちゃり、ちゃり、と口の中で金属の音が鳴る。
クラウドが鎖を持ち上げると、口の中のそれが離れて、てらてらと光る唾液が銀色を伝ってスコールの口に糸を垂らす。


「舐めろとは言ったが、こっちばっかり夢中になっても駄目だろう。ちゃんとオナニーしながら、だ」
「はっ、あっ……!」
「中指も奥まで入ったら、二本とも動かせ。そうだな、先ず指で中をぐるっと掻き回してみろ」
「ん…う、ぅうんっ!」


 淫部の中で円を描くように指を動かす。
狭い肉壁を押し上げられ、爪先が引っ掻くように擦るのを感じて、スコールの喉から僅かに高い声が上がる。


「そのまま続けろ」
「んぁ、あっ、はむ…っ、んふぅっ!は、は、う、うぅんっ」


 指を動かして淫部を押し、爪を当てて擦る度、ビクッビクッとスコールの躯が跳ねる。
縮めた腹がヒクヒクと痙攣して、白い肌は赤らんで汗が滲んでいた。
指を咥えたアナル口が卑猥な形に歪み、その直ぐ上では、ぴくぴくと小刻みに震えるペニスが頭を持ち上げている。

 明らかに苦悶とは違う吐息を漏らしながら、スコールはアナルに埋めた指を動かす。
にゅぷ、くにゅ、と内壁が指をなぞって形を変えるのを感じながら、スコールは眼前で揺れる鎖を舐める。


「はっ、あっ…!あふっ、ふぅうん…っ!」


 逃げようとする鎖を追い駆けながら、くちゅくちゅと淫部を掻き回すスコールの姿に、クラウドはちゃりちゃりと鎖を揺らして遊び、


「お前、やっぱり兄貴で興奮してるだろう」
「んんっ…!」
「違うって言うなら、これは要らないんだな?」


 そう言って、クラウドは鎖を持ち上げようとする。
銀光のそれが遠退くのを見て、スコールは切ない声を漏らした。


「んぁ、あっ、あう…や、あ……!」


 兄を、レオンをこの世界に繋いでくれる証が離れて行く、失われてしまう───そんな恐怖に襲われて、スコールの顔色が蒼くなって行く。

 くつくつとクラウドが笑い、鎖をスコールの口元へ近付ける。
泣き出しそうに歪んでいた青灰色の瞳に微かに安堵が灯り、赤い舌が鎖を撫でる。
まるで毛繕いをしているかのように、鎖を丹念に舐めるスコールに、クラウドの表情が愉悦に歪む。


「ケツ穴、もっと弄ってみろ。ちんこも触れ。足は閉じるなよ?」
「んぁっ、あっ…!は、ひぃっ…!」


 スコールは抱えていた足を放し、自由になった左手を自身のペニスへと添える。
ゆるゆるとペニスを上下に扱けば、色付きの薄い肉棒は容易く上を向いて、ひくひくと物欲しげに震えていた。


「あっ、あっ、はっ…!んひっ、ひぃんっ!ああっ、あぁあっ…!」


 ペニスを擦る度、ぞくぞくとしたものが下肢全体に行き渡り、脳まで響いて思考回路を奪って行く。
閉じるな、と命令された足が、ビクッビクッと跳ねて暴れ、何度も床を蹴った。


「オナニー、気持ち良いだろう?」
「んあっ、あっ、はひっ!ひ、ぃ、いぃん…っ!んっ、あむっ、んぅんっ」


 手淫に耽るスコールの貌は、完全に蕩け切っていた。
その貌に濡れた鎖が垂れて、ちゃりちゃりと頬を掠め、纏わりついた唾液を擦りつける。
スコールは首を巡らせ、舌を伸ばして、鎖を欲しがった。

 ペニスを握る左手に、とろりとしたものが流れ落ちて来る。
泣き出したペニスの後ろで、指を咥えたアナルがひくひくと伸縮している。
ペニスが泣く度に内壁はスコールの指を強く締め付け、それを振り解いて肉を引っ掻けば、びりびりと甘い痺れが躯を襲う。


「あうっあひっ!ひぃっ、ひふぅっ!はぐ、あ、んぁっあっ」
「大分ノってきたようだな。だが、こっちはもう少しって所か」


 ぎし、とフローリングの床が微かに軋む音を鳴らす。
それだけでいつものスコールならば過敏な反応を示すのだが、彼は自らを苛む激しい熱に翻弄され、無我夢中で手淫を続けている。


「ひっ、あっ、イふっ!んっ、イク、の、来るぅううっ!」


 しゅ、しゅ、とペニスを扱く手が激しさを増して行く。
ピンと伸びた爪先がビクビクと跳ねる。

 クラウドの手がスコールの手ごとペニスを掴み、ぎゅうっ!と絞るように強く握る。


「んぁあぁあんっ!」


 仰け反ったスコールの躯がビクッ、ビクン!と大きく跳ね、びゅるるっ、と白濁液が腹を汚す。

 一気に熱から解放されたスコールの躯がくたりと弛緩し、快感の名残のようにぴくっ、ぴくっ、と膝が震える。
虚ろな視線を彷徨わせるスコールの口元に、クラウドが鎖を寄せてやれば、赤い舌が微かに唇の隙間から覗く。


「気持ち良かったか?」
「…ふ…あ……ぁっ、あっ…!」


 クラウドの手に掴まれたスコールの手が、自身のペニスをゆるゆると扱く。
絶頂直後の敏感な躯は素直に震え、甘い声が溢れ出す。

 クラウドはスコールの足首を掴むと、高く持ち上げて淫部を露わにさせた。
スコールのアナルには彼の指が埋められたまま、ひくひくと伸縮して指をきゅうきゅうと締め付けている。
クラウドが指と穴の隙間を摘まむと、秘奥の壁が閉じてスコールの喉から甲高い声が零れた。


「あひっいっ!」
「こっちはもう少し解した方が良いな」
「んひっ、ひっ、ひぃんっ!やっ、あっ!ひっ、かきまわっ、や、あぁっ!」


 ぐぷっぐちゅっぐちゅっ!と卑猥な音が響く。
自分の手が自分の意思とは関係なくアナルを攻め立てている。
スコールは淫部に埋めた指を抜こうともがくが、クラウドの手がそれを阻むようにスコールの手を握り、そのままクラウドはスコールの手を動かし、ずぷっぬぷっぐぷっ!と淫音が聞こえる程に激しくスコールの指を抜き差しする。


「やっ、ああっあああっ!ゆ、びっ、指ぃっ!やだ、嫌、ああぁ!」
「ちゃんと覚えろ。よく慣らさないと、痛い思いをするのはお前なんだからな。痛いのは嫌いだろ?」
「や、あっ、やぁあっ!ひっ、ひうっ、んぁっあぅんっ!」


 頭を振ってクラウドを振り払おうとするスコールだが、男の手はスコールの力ではびくともしない。
増して、快楽に流され抵抗の意思を失った躯では、クラウドに逆らえる筈もなかった。


「はひっ、あひっ、ひぃっ!もう、も、やだ、やぁあっ!レオン、レオンんっ!たすけて、やめ、や、ぁああ…!」
「これはレオンにはまだ教えてない事だからな。お前がちゃんと覚えれば、レオンに教える必要はなくなるぞ。代わりになるんだろ?」
「んぁ、あっあっ、レオ、レオンっ……ひぃいんっ!」


 レオンの代わりになれば、レオンが傷付く事もない───そんな事を考えていた事も、スコールは忘れていた。
秘奥を突き上げられる度、下腹部がビクビクと痙攣して、湧き上がる熱で脳髄が溶けて行くような気がする。
ぎゅうぎゅうと指先が締め付けられ、この躯を翻弄している熱が自分自身によるものだと突き付けられるような気がして、吐き気がする筈なのに、躯を支配しているのはもっと別のもの。

 ぐぽっぐぽっ、とスコールの淫部から空気を含んだような音が鳴り始め、クラウドの口元が笑みに歪む。
スコールの表情からは、反抗的な気配は消え失せ、唾液と涙を流しながら熱に溺れた瞳で虚空を仰いでいる。


「あっ、あっ、あっ!ゆ、び、ゆびっ、もうっ抜い、て、えぇんっ!」
「指はもう嫌か?」
「ひぐっ、んひっひぃっ!嫌、嫌だ、あぁああぁっ!」


 クラウドの言葉に必死で答えた直後、ずりゅんっ!と締め付ける肉壁を抉りながら指が引き抜かれる。

 淫部から引き抜いた指が、スコールの目の前に近付けられた。
体液で濡れそぼった指がスコールの口に擦りつけられるが、スコールは顔を背ける事もせず、ぼんやりとその行為を甘受していた。
ふに、と指を押し付けられた唇から、熱の篭った吐息が漏れている。


「ふ、ぁ…あ……」
「まあ、それなりには解れたか」
「っあ……!」


 ようやく腕を解放されたかと思うと、今度は足を掴んで持ち上げられる。
スコールの両足がクラウドの肩へと乗せられ、クラウドは細い腰を掴んで引き寄せると、くぱ、くぱ…と伸縮する入口に肉棒を宛がう。
どくん、どくん、と脈打つ厚い肉の塊に、スコールは微かに唇を震わせ、


「や…あ…」


 嫌だ、と涙を浮かべてうわ言のように繰り返すスコールだが、その弱々しい訴えを支配者が聞く筈もない。
ぐり、と亀頭の先端がスコールの淫部を押し広げ、


「あっ、あ…あぁあああっ!!」


 ぐりゅぅうううっ!と大きく膨れ上がったペニスが、スコールのアナルを一気に貫いた。
指とは比べ物にならない程の太さと固さ、そして熱────だと言うのに、以前はあれだけ感じていた痛みがない。
貫かれる瞬間に感じていたのは、いつも身を引き裂かれる様な激しい痛みだった筈なのに。

 肉棒を咥えたアヌスの中で、肉壁がみっちりとペニスに絡み付く。
クラウドはそれを振り切って、ぬぼっじゅぽっぐぽっ!と激しくスコールの淫部を攻め始める。


「んぁっ、あっあっ、あひっ、ひぃっ!や、あ、あぁっ!」
「オナニーとどっちが気持ち良いんだ?」
「いあっやっ、やぁあっ!んっ、あっ、やだ、嫌、んんっ、ひぅうんっ!」


 ぐりゅっ!と突き上げたペニスが前立腺を掠め、スコールはビクビクと躯を震わせた。


「ほら、どっちだ?」
「ひっひぐっ、んひぃっ!う、う、んぁっ、あんっ、あっ、」


 何度も同じ所を激しく突かれ、スコールはただ頭を振るしか出来ない。
まともな言葉など当然紡げる筈もなく、スコールは意味のない喘ぐ音だけを繰り返す。
そんなスコールの傍らで光る銀色を見付け、クラウドは「ああ」と思い出したように呟いて、それを拾う。


「お前はこれが好きなんだったな」
「あっあひっ、は…あ…、」


 ちゃり、とスコールの目の前に鎖が翳され、青灰色の瞳が銀光を追う。
くく、と笑ったクラウドがスコールの口元に鎖の先端を宛がえば、


「レ、オ……レオ、ン、ぅ……」


 熱に浮かされた瞳で、スコールは兄の名を繰り返し呼ぶ。
ふらりと持ち上がった手が、鎖を掴んで握り締めた。
クラウドが鎖を手放すと、スコールの手がより強い力で鎖を握り、まるで失うまいとするかのように抱き締める。


「レオンと一緒にいたいなら、ちゃんと覚えろよ。良いな?」
「レオ、ン…んっ、あっ、あっ、ひぃんっ!はふ、レ、オ…んぁあっ!」
「そうすれば、お前もちゃんと気持ち良くしてやる。お前が痛がると、レオンも嫌がるだろうからな。お前が気持ち良くなるのが、レオンにとっては一番良い事なんだ。心配かける事もないだろ?」
「ひっ、ひんっ、あんっ!レオン、レオンぅ…っ!」


 ぐぷっ、ぐぽっぬぼぉっ!と肉棒がスコールのアナルを掻き回し、スコールの躯がビクビクと大きく痙攣する。
レオンの鎖を握り締め、持ち上げられた足がピンと爪先まで伸びて強張る。


「ふあっ、あっ、あっ!奥っ、おくぅっ!や、ああぁっ!」
「奥が良いのか?」
「違う、ちが、あっあぁあっ!」
「なら、明日からは此処を気持ち良くしてやる。お前の体は素直だから、直ぐに覚えるだろ」
「や、んっ、あっ!ひぅ、うぅん…あぁあっ!」


 くく、と笑うクラウドの言葉に、スコールは弱々しく首を横に振った。
しかし、淫部を突き上げられる度、あられもない声が喉を着いて出る。

 アナルの中に埋められたペニスが、むくむくと質量を増して行く。
ずりゅっ、ぐりゅっ、と肉壁を擦る塊の熱が昂って行き、律動を更に激しいものへと変えていく。


「んあっ、あっ、あっあっ、は、あぁっ!や、ひっ、中っ、中でえっ!大き、や、あぁっ!」
「っく…そろそろか……っ」
「ひんっひぃっ、んぁあっ!や、はっあっ、あっ、あぁんっ!」


 最早呼吸さえ許されない程の激しい攻めに、スコールは男に揺さぶられるばかり。
スコールのペニスがぴくっぴくっと震え、クラウドにはまるで秘奥への刺激を悦んでいるかのように見える。
やっぱり才能があるかもな、と呟くクラウドの声を、スコールは聞いていない。


「やっ、あっも、もう、む、り、ひっ、ひぃっ!」
「ああ───俺もっ…!」


 ぎり、とクラウドが唇を噛んで、ずちゅっ!と一際強く腰を打ち付けた。
甲高い悲鳴を上げたスコールの肉壁が、ビクン、ビクン、と脈打ちながらクラウドのペニスの形に歪む。
みぢ、にちゅ、とペニスに吸い付くように締め付ける肉厚に逆らわず、クラウドは躯を震わせ、スコールの中へと精液を注ぎ込む。


「ひっあっ!中っ、中あぁああっ!やあぁああっ!」


 びゅるるるるっ!と叩き付けるように注がれる熱に、スコールは頭を振って訴えるが、精液は最後の一滴まで注ぎ込もうとするかのように、体内の奥深くでドクドクと脈打って動かない。


「はひっ…ひっ、あ…あぁ、あ……」


 どろりとしたものが体内を汚して行く感覚に、スコールはビクッ、ビクッ、と躯を震わせる。

 とぷ、とぷ、と名残の液を溢れさせながら、ずるぅ…とペニスが下がって行く。
最奥に注がれていたものが、どろりと逆流して行くのを感じて、スコールの細い腰が戦慄いた。
これ以上の責め苦を厭うように肉壁が閉じようとするが、何度も突き上げられて広げられた淫肉はひくひくと痙攣し、ペニスを悪戯にくすぐっている。
それがまるで物足りなさそうで、もっと、と強請っているように思えるのは、支配者の一方的な欲望が思わせる願望だ。
だが、その支配者の欲望こそが、この世界では絶対的権力を持っている。

 閉じようとする菊座の穴に、クラウドはペニスのカリ首を引っ掛けて留める。
ぐに、と穴が内側から広げられようとする感覚に、スコールの躯がひくん、と跳ねた。


「やっ、あっ…あっ……」
「嫌か」
「ん、ぅ……嫌、だ……もう…っ……」


 もう放して───そう訴える蒼灰色を見下ろして、クラウドはにぃ、と嗤った。

 ぬぽっ、と亀頭の最も太い部分が、穴口を潜る。
びくん、とスコールの体が震え、やっと終わる、とスコールが微かに緩い吐息を吐き出した直後、────ずぷんっ!とペニスは再びスコールの最奥を突き上げた。


「あぁああぁんっ!」


 肉壁は拒む事なく、酷くあっさりと、男を受け入れた。
がくがくとスコールの躯が痙攣し、弛緩していた躯が再び強張る。

 逃げようと躯を起こそうとしたスコールを、クラウドはスコールの肩を掴んで床に縫い付けた。
逃げ場を失くしたスコールの秘奥を、ずぷっぐぷっずぷっ!と男根が激しく突き上げる。


「あひっ、ひぃっんぁあっ!んきゅっ、んっんぁっあぁあっ!」
「さっきよりよく滑るな」


 注ぎ込んだ自身の精液を潤滑油代わりに、クラウドはより激しくスコールの淫部を攻め立てる。

 嫌だ、と首を横に振るスコールの意思など、彼は最初から聞いていない。
ごりゅっごりゅっ、と抉るようにペニスを肉壁に押し当て、ビクビクと痙攣する肉を堪能しながら、今日三度目の昂ぶりを目指す。


「ひぐっ、ひぃっ!もう、もうやめ、んぁあっ!あひっ、はぁんっ!」
「今日は色々溜まってるんでな。そう簡単には終われない。どうせだから、お前にもしっかり快感を教えてやるよ。だから途中で気絶するなよ?」


 ────大好きなレオンの為にも。
薄く笑みを浮かべた貌で囁かれたその言葉に、スコールは手の中の金属を、縋るように握り締めた。




レオンがしていた事が出来るようになれば、レオンが自分の代わりにならなくても良いと思ったスコール。
ずっとずっと、代わりになって守っていてくれたけど、これからは─────