声が消える先


(……帰るか)


 特に急ぐ理由がある訳でもなかったが、暇を潰さなければならない、と言う事もない。
読みたい本もなかったし、既読中の本は家に持ち帰っている。
暇潰しなら家で十分できる。

 スコールは二階に上がって、デスクの引き出しから短いリボンテープを拝借し、本をまとめて縛った。
余るリボンを腰のベルトにしっかりと結ぶ。
行きと同じく、帰りも物騒なのは変わらないので、ガンブレードは手に持てるようにしなければならないのだ。

 テープの結びがしっかりと固まったのを確認し、スコールは図書館を後にした。



 出掛けてから二時間とせずに帰った少年に、早かったな、とレオンは言った。
早いのは駄目だったのか、とスコールが音にせずに思っていると、レオンはくしゃくしゃとスコールの頭を撫でて、他意はないと言った。
暇を潰してから帰って来るとばかり思っていたので、先の言葉が出ただけだった。

 レオンはスコールが持ち帰った本を受け取って、また調べ物を始めた。
今までの調査内容をまとめた書類と、厚みのある本を見比べては、新しく書き抜いている。
この作業にスコールは加われないので、彼の邪魔をしないよう、本を読んで暇を潰していた。
そんな間に時間は刻々と過ぎて行き、夕飯の準備を始める頃合いになったが、レオンの調べ物は続いている。
何かに集中すると他の事が見えなくなる性格なんだよ、とユフィが言っていた。
真剣な表情で文章を睨んでいるレオンの姿に、中断させるのは気が引けたので、夕飯はスコールが作る事にした。

 冷蔵庫の中身を適当に探り、有り物で簡単に調理していると、匂いで夕食の支度が行われている事に気付いたのだろう、レオンがキッチンにやって来た。
やると言ったのにすまない、と言うレオンに、暇だったから良いんだ、とスコールは言った。
肉入り野菜炒めをおかずに、白米と味噌汁、漬物で揃えた夕食は、直ぐに終わった。

 その後、レオンはまた調べ物を再開させたが、午後から夜まで同じ作業を続けていれば、いい加減に集中力も切れると言うもの。
スコールが風呂を入れたので、気分のリフレッシュも兼ねて先に入った。
彼が出てからスコールが入り、ついでに、バスルームの掃除も済ませて風呂を後にした。

 スコールが寝室に入ると、レオンはまだ起きていた。
一つしかないベッドの端に座って、今日の調べ物をまとめた紙を睨んでいる。
何か難しい問題でも抱えているのか、とスコールが見詰めていると、視線に気付いたレオンが顔を上げる。


「風呂、随分のんびりしてたな」
「…掃除してた」
「そうだったのか。すまない、ありがとう」


 同居生活を初めて間もなく、スコールが家事全般を引き受けるようになってから、レオンは余り家の事を触る必要はなくなった。
風呂に限らず家の掃除は勿論、昼夕の食事は大体スコールが作っている。
偶にレオンが夕食を作る事もあるが、何かに集中していると、今日のように結局スコールが引き受けると言う事も少なくなかった。
朝だけはスコールが寝起きが弱い為、決まった時間に起きる癖がついているレオンが引き受けている。

 スコールはまだ水分を含んでいる髪をタオルで拭きながら、レオンとは反対のベッド端に座る。
わしわしと髪を拭いているスコールが着ているのは、レオンから借りた綿のシャツとズボンだ。
どちらもレオンのサイズである為、細身のスコールには大きく、肩から袖から幅があちこち余っており、ズボンの裾に至っては捲り上げなければ踏んでしまいそうになる。
決してスコールの身長が小さい訳ではないのだが、レオンは更に頭半分程の高身長だ。
ついでに言えば、筋肉も無駄なくついている為、幾ら鍛えても余り肉が乗らないスコールよりも恰幅がついて見える。
お陰で、スコールが着るとぶかぶかで“着せられている”感のある服も、レオンが着ると適度に生地が伸びてパチッと決まり、レオンの肩や腕、腰周りの筋肉のラインが薄らと浮いて見え、特に洒落た格好をせずとも様になっていた。
ユフィとエアリス曰く、スコールとレオンは顔が良く似ているそうだが、体格は全然違うね〜との事で、密かにスコールのコンプレックスを刺激する要因となっていた。


(…でも、似ているなら、俺もいつかはああなるよな。きっと)


 顔が似ているからと言って、体の造りまで似ている訳ではないだろうが、一抹の希望位は見ても良いだろう。
そんな気持ちで、スコールはちらりと同居人を見遣る。
レオンは足を組み、少し背中を丸めて書類を見下ろしており、背中の筋肉が僅かにシャツを浮かせていた。
猫背になっているのに不健康に見えないのは、やはり体幹がしっかりと完成されているからだろう。

 ずるい───と、嫉みも同然の事を考えていると、レオンが書類を投げてベッドに背中から倒れ込んだ。
ぼすっ、と彼の背中を受け止めたベッドが僅かに揺れる。
眼精疲労か、眉間を摘まんで眉根を寄せているレオンに、スコールはベッドを這って近付き、


「終わったのか」
「なんとかな。スコールのお陰だ」
「別に、本を持って来ただけだろ」
「そのお陰で早く終わったんだ」


 眉間から手を離し、ありがとう、と微笑むレオンに、スコールの頬に朱が差す。
その頬に、皮の厚いレオンの手が触れる。


「今日は、あまり話をしなかったな」


 日々の忙しさの所為か、乾燥気味のレオンの手が、スコールの頬をそっと撫でて行く。
指先が滑る感覚がくすぐったくて、スコールは目を閉じた。
すると、頬を撫でていた指がスコールの唇へと移動して、下唇の膨らみをゆっくりとなぞる。
触れるか触れないかと言う柔らかい感触に、スコールは首の後ろがむずむずするのを感じていた。

 スコールが触れる感触を嫌うように顔を逃がすと、レオンの手が追って来る。
そのままレオンは体を起こし、スコールの肩を捕まえて、ベッドへと優しく押し倒した。
二人分の体重を乗せたベッドが軋んだ音を立てるが、構わずにレオンはスコールの体にその身を寄せ合わせた。

 レオンの手がスコールの濃茶色の髪を撫でる。
スコールの薄く開いた桜色の唇に、レオンのそれが重なり合って、ゆっくりと深い繋がりへと変わって行く。


「ん…ふ……っ、」


 甘やかな息苦しさの中で、スコールの喉が微かに音を漏らす。
鼻から零れた息がレオンの貌をくすぐった。

 スコールの頭を撫でていたレオンの手が、髪の流れに沿って、毛先が遊ぶ項を辿る。
ふるっ、とスコースの体が僅かに震えると、レオンの目元が笑みに緩められた。
キスの時、相手の瞳が間近にある事に慣れていないスコールは、この時いつも目を閉じている為、レオンの表情の変化には気付かない。

 唇が離れると、スコールは不足していた酸素を大きく吸い込んだ。
こう言う行為をするようになって、それなりに回数を数えた筈なのに、慣れる様子のない少年に、レオンの庇護欲が募る。
同時に初心な反応に興奮する雄の気性もあり、レオンは自身が昂って行くのを感じていた。


「スコール」
「……!」


 耳元で名を呼ばれて、その低く心地の良い声音に、スコールが小さく息を飲んだ。
思わず漏れそうになる声を、唇を噛んで堪えているが、レオンがその唇を舌先でくすぐれば、簡単に綻んでしまう。


「ふ……んぁ…っ」
「ん……」


 スコールが怖々と唇を開けば、するりとレオンの舌が咥内に侵入する。
直ぐにスコールの舌が絡め取られ、唾液を混ぜあうように舌肉を舐められて、スコールはぞくぞくと背中を奔る感覚に体を強張らせた。


「んぁ……っ!」


 反射的に逃げを打つスコールだったが、背中を捕えられて抱き寄せられる。
厚みのある体が密着して、熱を持っている事に気付いて、伝染するようにスコールも体が熱くなるのを感じた。

 レオンの手がスコールの背筋を滑って、細い腰を撫でる。
サイズが合わない所為で、ゆったりと広がっているシャツの裾から、レオンの手が侵入した。
肌を直に触られるのはどうにも苦手で、スコールはレオンの躯にしがみ付いていやいやと頭を振るが、どう訴えた所で、レオンが放してくれる事はない。
耳元にキスが落ちる音がして、良い子にしていろよ、と囁かれた。


「ん…、ぅ……っ」
「背中、汗ばんでるな」
「風呂…入った、ばっかりだから…」
「それもあるだろうが───」
「あ……っ!」


 レオンの膝がスコールの足の間に割り込んで、ぐっ、と股間を押す。
膨らみかけていたものが窮屈になるのを感じて、スコールは思わず声を上げる。

 自分の物とは思えない高い声に、スコールが真っ赤になっている間に、レオンは少年の素直な反応に気を良くした。
腰を抱く腕はそのままに、逆の手でスコールの中心部を撫でてやれば、スコールはレオンの肩に顔を埋めて、小さく体を震わせていた。


「そう言えば、最近はあまり構ってやれていなかったな」
「べ、つに…それは……んっ…!」


 時折、太腿に悪戯をしながら、中心部を撫でて成長を促しながら言うレオンに、スコールは息を詰まらせながら返す。
が、その言葉が嘘だとでもいうように、レオンはスコールの雄をきゅっと握った。


「んんぅ……っ!」
「昨日はハートレス退治で疲れていたから、直ぐに寝てしまったし…」
「は…う……や……っ」
「放ったらかしにして悪かった」
「……んぅ……」


 詫びながら、手先の悪戯は止めないレオンに、スコールは彼にしがみつきながら、ゆるゆると首を横に振った。


「あ、んた…忙しい、から……」


 仕方ない、と言おうとして、スコールは息を詰めた。
通し紐でずり落ちないように調整していたズボンの中に、レオンの手が滑り込む。
手探りで捉えた紐は蝶結びにされていて、先端を摘まんで引っ張れば、容易く解けてしまう。
緩んだウェストからレオンの手が奥へと這い進んで、下着の中に潜り込み、スコールの中心部に直に触れた。


「ふぁっ……!」
「湿ってるぞ」
「んっ、んん……っ!」


 レオンの長い指が、スコールのペニスに絡み付く。
竿の裏筋を指の腹で擦るように苛められて、スコールの体から一気に汗が噴き出した。
膨らんだ一物を納めて窮屈になっている下着の中は、それ以前から蒸れたように湿っている。

 スコールの腰を抱いていた腕が動いて、シャツをたくし上げて行く。
汗ばんだ肌に、夜の僅かにひんやりとした空気が触れて、スコールはそれから逃げるようにレオンに身を寄せた。
甘えたがる少年の米神にキスをして、レオンはスコールの肩を押して仰向けにさせると、シャツを胸の上まで捲る。
煌々とした照明の光の中、少年の白い肌がほんのりと桜色に染まっているのを見て、レオンの熱が集まって行く。

 火照った肌にレオンが顔を寄せ、口付けて、舌を押し当てる。
薄い平らな胸の上を、レオンの舌がゆっくりと昇って行った。


「…ん、ぅ……ふ…っ…」


 ベッドシーツを手繰り握って、天井を仰ぎながら、スコールは唇を引き結んで、零れそうになる声を押し殺している。
つられて全身を強張らせているスコールに、その初々しい反応が愛らしくて、レオンの表情が緩んだ。

 レオンがスコールのズボンを下着ごと引き下ろすと、露わになった雄が頭を持ち上げた。
支えがなくとも天井を向いているそれを、レオンは掌全体で隠すように包み込んで、上下に扱いてやる。


「あっ、うっんんっ…!」


 僅かに漏れた艶の声を、レオンは聞き逃さない。
汗を浮かせた亀頭の先端に指を当て、爪先で優しく擦ってやれば、スコールの細い腰がビクン、ビクン、と跳ねた。


「気持ち良いか?」
「……っ」


 囁くレオンの声に、スコールは真っ赤になって、首を横に振った。
言いたくないと訴えるスコールだったが、体は全く正直なもので、レオンの指に弄ばれているだけで、鈴口から涙が溢れ出している。

 レオンはスコールのペニスを扱きながら、ぷくっと膨らんだ乳首に吸い付いた。
ちゅう、と強く擦ってやれば、スコールの体が逃げを打って弓形に撓り、爪先がシーツの波を蹴る。


「や……レオ、ン……っ」
「ん……、」
「んんっ……!」


 カリッ、と乳首に甘く歯を立てられて、スコールの体が強張った。
かと思うと、ねっとりと舌全体で乳輪も含めて舐られて、敏感になった先端をあやされながら愛される。


「んっ…あ、ん…!」


 堪らず零れ出る高い声に、スコールの頬が赤くなる。
手の甲を噛んで声を抑えようとすると、それよりも早く、レオンの手がスコールの腕を掴んだ。
そのまま、と言うように柔らかな力で掴む手に、不思議と逆らう事は出来ず、スコールの腕は促されるままにシーツへと戻る。

 それでも自分のはしたない声を聞かれたくなくて、スコールは唇を噛んでいた。
それを見たレオンが、胸を弄ぶのを止めて、スコールの頬に唇を押し当てる。


「大丈夫だ、スコール。恥ずかしがらなくて良い」
「や…うぅ……んんっ」


 そんな事言われたって、と頭を振るスコールだったが、ペニスの先端を指でくすぐられて、ぞくぞくとした感覚に背中が反る。


「あ…あ…っ!レオ、ン……っ」
「……スコール。脱がせてくれ」
「う、ん……」


 耳元で囁くレオンに、スコールは素直に従った。
ベッドシーツを握り締めていた手を解き、手探りでレオンの躯を辿る。
シャツ越しに感じられる筋肉の固さに、羨望と熱を抱きながら、スコールの手はレオンの腰のベルトに行き着いた。
不慣れな手付きでベルトを滑り、微かに震える手が留め具を見付けた。
それを外そうとするスコールの手の端に、膨らんだ硬い感触が当たった。


「レ、オン……んっ、う……」
「…ゆっくりでいい」


 指先の感触と、耳元にかかる吐息に熱が篭って行くのを感じて名を呼ぶスコールを、レオンは優しく宥めた。
しかし、その言葉に反して、彼の雄が強く滾っているのは確かである。
それを感じてしまうと、スコールのそれまで抱いていた羞恥心は溶けて消え、早くこの熱が欲しい、と思う。

 ベルトを外し、フロントを緩めて、スコールはレオンのズボンを脱がした。
下半身が寛げられて、其処に収められていた一物が姿を見せると、スコールが想像していた通り、大きく膨らんだペニスが其処にあった。
目にした途端、どくん、とスコールの胸の鼓動が大きく跳ね、


「…今、大きくなったぞ」
「あ…う……っ」


 レオンの手の中で、自分が膨らんだ事を、スコールも自覚していた。
鈴口から先走りの蜜をとろとろと零しながら、竿には薄らと血管が浮き、尿道の奥が詰まったように窮屈になっている。
レオンがその手で後少し刺激を与えれば、直ぐに達してしまうに違いない。

 そのスコールのペニスに、レオンは自分の雄を押し付けた。
ぐりっ、と固い亀頭がスコールの幹を押し、そのまま竿同士を重ね合せると、レオンは二本まとめて包んで扱き始めた。


「はっ、ひっレ、レオン…っ!ああ……っ!」
「っは…スコール…、んんっ…!」
「あっ、あっ…!熱…ん、くぅ…っ


 スコールの精液を指先に絡み付かせながら、二人のペニスを扱くレオン。
スコールは、レオンに触れられている事、彼の熱の塊を直接感じている事に、激しい羞恥と興奮を感じていた。

 スコールがレオンの熱を久しぶりに感じているのだから、レオンもそれは同じ事だ。
数日振りに重ね合せる肌の体温が心地良くて、触れていると言うだけで、滾る劣情に押し流されてしまいそうになる。
───況して、年若く、まだ触れ合う事に不慣れなスコールが、その衝動に耐えられる筈もなく、


「ふ…あ……や、レオ…レ、オンん……っ!」


 尿道の奥で詰まっているものが、細く狭い道を上って来るのを感じて、スコールは四肢を強張らせた。
ベッドから浮いた足先の指が、閉じたり開いたりを繰り返し、開かれた太腿は小刻みに震えている。
細い腰が快楽の波によって捩られるが、レオンの手に囚われた中心部が逃げられる事はなく、寧ろ、むくむくと膨らんで行くペニスを愛おしそうに、レオンの手が万遍なく愛撫する。


「レオン、んんっ!も、もう…俺……っ」
「ああ……イっていいぞ、スコール」
「う、あ……っ、んぅ、うう────……っ!」


 合図のように、ぴゅくっ、と精子が噴き出した瞬間、レオンはスコールの唇にキスをした。
音を塞がれたまま、スコールの体がビクビクと跳ねて、絶頂を迎える。

 濃い蜜液が、スコールの腹と、レオンの手とペニスに降り注ぐ。
生暖かく粘っこいものが手に雄に絡み付くのを感じて、レオンの腹の奥が熱くなった。
同時に、レオンの雄も果てを求めて震えたが、レオンは息を詰めてそれを堪える。


「んっ、んんっ…!んふぅう…っ


 頭の天辺から足の爪先まで撓り強張らせながら、スコールは快感の余韻に浸っていた。
その間、レオンはゆっくりとスコールの唇を舐めしゃぶる。
隙間から忍び込ませた舌で、スコールの歯列をなぞってやれば、余韻に浸る躯に新たな快感を与える事になり、果てたばかりのスコールの中心部はまた直ぐに頭を持ち上げた。

 スコールは、うっとりとした表情で、レオンの口付けを受けていた。
絶頂とその余韻から強張っていた体も、あやされて力を抜くと、今度は甘えるように、目の前の男に縋って行く。


「ふあ…レオ、ん、むぅ……
「…ん……スコール……」


 濃厚な口付けを交わしながら、レオンは蜜で濡れた手をスコールの尻へと滑らせた。
肉の薄い小振りな尻を愛でた後、その指はスコールの秘部へと触れる。


「んぅ……っ」


 縁に触れられて、スコールの体が微かに跳ねたが、拒絶の反応はない。
寧ろ、レオンが指を這わしてやれば、其処は嬉しそうにヒクヒクと伸縮して見せた。

 つぷり、と指先が秘孔に埋められる。
ビクッ、とスコールは一瞬身を固くしたものの、絡め取られた舌をくすぐって慰められると、直ぐに躯は受け入れる方へと準備を始めた。
口付けながら、ふう、ふう、と鼻で息をし、呼吸を止めないように努めるスコール。
レオンは、そんなスコールの頭を優しく撫でながら、ゆっくりと奥へと指を進めて行く。


「んっ、んっ…、っは……んぁ……
「痛いか?」
「……く、な…あ……っ」


 痛くない、と答えるスコールの耳元に、レオンは優しくキスをする。
悪戯に耳朶を甘く噛んでやれば、指を咥えた秘孔が、きゅうっとレオンを締め付けた。


「あっ……!」
「…素直で可愛いな、スコールは」
「う、んぅ……あ…ふ……」


 アナルに埋めた指をゆっくりと動かし、狭い中を解しながら囁くレオン。
スコールはその言葉に、ふるふると首を横に振るが、レオンは「可愛いよ」と重ねて言った。

 耳元で囁かれるだけで、スコールの躯は快感を得てしまう。
証拠のように、スコールのアナルはきゅんきゅんと切なさを増して、レオンの指を強く締め付けていた。
その理由を、スコール以上にスコールの事を知ったレオンが見逃してくれる筈もなく、


「こんなに俺を欲しがって」
「んぁ……っ
「…俺も我慢が出来なくなる」


 レオンの言葉に、スコールが浮かされた意識で彼の顔を見れば、熱を孕んだ青灰色が間近にあった。
そんな目でずっと見られていたのだと思うと、スコールは自分の腹の奥が燃えるように熱くなるのを感じ、


「あ、あ…っレ、オン、ん…っ!」


 全身でレオンにしがみ付いて、濡れそぼった自身をレオンの腹に押し付ける。
指を咥えたアナルがいやらしく蠢いて、もっと大きくて熱いものを欲しがっているのが判った。

 きゅうう、と一層強く締め付ける秘孔から、レオンは指を引き抜いた。


「あぁっ……!」


 切なげな声を零すスコールに、レオンの唇が笑みを浮かべる。
秘部を苛めた指が、スコールの会陰を辿って、捕まえた陰嚢をやわやわと揉む。
それもスコールには快感を与える事は出来るが、欲しいものには程遠い緩やかな快感に、スコールはもどかしげに腰を揺らす。


「や…あ……レオン……」
「足を開け、スコール」
「……ん……」


 レオンの指示に、スコールは素直に従った。
足を左右に大きく開き、膝裏を両手でそれぞれ抱えて、M字に開脚する。
何もかもを曝け出す格好に、羞恥が疼かない訳ではなかったが、それよりも今は、ずっと待ち侘びていたものが欲しい。

 ペニスもアナルも、何もかも見せ付けながら、熱の灯った瞳で見上げて来る少年に、レオンは密かに喉を鳴らす。
年甲斐もなく───年齢を考えれば、レオンもまだそれが許される歳ではあるのだが、目の前の少年に対する矜持もあって───がっつきそうになる自分を堪えて、レオンは膨らんだ雄を彼の秘部に宛がうと、ゆっくりと腰を進めていく。


「ん…あ……っ」


 自分の中へ、熱く滾るものを受け入れている事に、スコールの体はまた熱くなった。
慣れない異物感と圧迫感の傍ら、例えようのない充足感に満ちて行くのが判る。

 レオンの雄は、指とは比べ物にならない太さになっていた。
スコールと違い、まだ射精もしていないので、ペニスの膨らみは相当なものになっている。
それを狭い道に捻じ込み、柔らかく解れた肉壁に締め付けられながら擦り進めていくので、レオンは今にも自分が暴発しそうなのが判った。
それを唇を噛んで堪えて、スコールの奥へと自分自身を納めてやる。


「っは…はぁ……っ、スコー、ル……」
「あ…う…レオ、ン……ん……」


 荒い呼吸を肩で押さえ付けているレオンに、スコールは手を伸ばした。
珠のような汗が落ちるレオンの頬を包み込んで、唇を重ねる。

 重ね合せた舌が、二人分の唾液で濡れて行く。
レオンが舌先でスコールの舌を舐めると、アナルがひくっと疼くのが伝わった。
それを感じ取る度に、レオンも熱が昂って、大きく膨らんで行く。
痛い程に張り詰めているのが判って、レオンが傷の奔る眉間に皺を寄せていると、スコールは同じ形の傷を十字に重ね合せ、


「レオン…動い、て…いい……」
「……うん」
「…欲しい……」
「……判った」


 我慢の限界なのは、二人とも同じだった。
止めないで良いから、と促すスコールに頷いて、レオンは律動を始める。

 出来るだけ負担を与えたくはないからと、初めこそゆっくりとした律動を心がけていたレオンではあったが、それも直ぐに忘れた。
内肉を擦る度、いつもの大人びた貌を忘れて啼き喘ぐ少年に、押し殺していた雄の衝動が再燃する。


「はっ、スコール…、スコール…っ!」
「あっ、あっ、あぁ…っ!レ、オン…レオン……っ!」


 激しくなって行く律動に、スコールは成す術もなく揺さぶられていた。
奥を突き上げられる度、喉の奥から音が押し出されて、はしたない声が出てしまう。
けれど、もう声を抑えようとする余裕もなくて、スコールは引っ切り無しに喘ぎ声を上げていた。

 入口から奥まで、隙間のない孔道を擦り撫でて行くペニス。
その亀頭が、一端を引っ掻いた瞬間、スコールの体に甘い電流が奔った。


「あぁっ
「う……っ!く、んっ、ふっ…!」
「レオン、んっそこ…あふっ、うぅっ


 一際強い反応を示した其処を狙って、レオンが腰を打ち付ける。
耕すように何度も何度も同じ場所を突き上げられ、スコールはベッドシーツから腰を浮かせる程の快感を得ていた。


「あひっ、はっ、あぁ…っ!」
「スコール…熱い…ん…っ!」
「レ、レオン、も……あんん……っ!」


 レオンの腕がスコールを抱き締め、そのまま奥深くまで繋がれる。
体を捩って逃がす事すら出来ないスコールは、与えられるままにレオンを受け入れ、最奥へと咥え込んだ。
奥壁をぐりぃっと抉るように押し潰されて、苦しさと同時に、彼で満たされたのだと言う事実にスコールの体が歓喜に弾ける。

 全身で求めるように、ぎゅううっ、と強く締め付けられたのが、レオンの限界だった。
スコールの秘孔を拡げていた太いペニスから、びゅるるるっ、と精液が放たれる。
熱い迸りが自分の腹へと注がれているのを感じて、スコールは天井を仰いだ。


「あぁぁぁあああっ……!!」
「う…くあぁ……っ!」


 レオンの熱を受け止めながら、スコールは尚も彼を強く締め付ける。
搾り取らんばかりの締め付けに求められるまま、レオンはスコールの中にありったけの精を注ぎ込んだ。
数日振りに与えられる蜜の味に、スコールの体は熱く滾り、レオンの腹に向かって吐精する。

 自身の射精を終えても、スコールの体はまだ強張りながら跳ねていた。
注ぎ込まれた熱欲が、今度は直腸に向かって下りて行く。
射精した事で僅かに膨張率を下げたペニスと、肉壁の隙間を、ねっとりとしたものが滑って行くのが判って、スコールの唇から甘い吐息が零れている。


「ふあ…あ……あぁ……っ


 悩ましく切ないスコールの声。
それを耳元で聞かされているレオンの唇からも、未だ艶が篭った呼吸が零れている。


「っは……スコー、ル……」
「レ、オ……んんっ


 呼ぶ声に応えようとしたスコールだったが、その声は最後まで形にならなかった。
腰を掴まれ、また奥を突き上げられて、全身が快感で痺れる。

 スコールの意識が幾らも晴れない内に、レオンは律動を再開させた。
縋り抱き付くように、スコールの細い躯を抱き締めて、濡れそぼった肉壺を激しく突き上げる。


「あっあっレオっ、レオンっ…!やっ、激しい…あぁっ
「く、っは…、スコール…!もっと…んっ、奥まで…!」
「あふ、んっ、ふぁ…っああ、欲しい…奥…レオン、欲しいぃ……っ!」


 スコールもレオンの背中に腕を回し、腰に足を絡めた。
縋り求める少年に応え、レオンはスコールの奥へ奥へと自身を埋めて行く。
レオンの背中に爪が立てられ、赤い線が薄らと刻み残される。

 深く深く重なり行く繋がりに酔い痴れる二人を隠すように、夜は更けて行った。


END.1

何事もなく、いつも通りの平和な夜でした。