声が消える先


 堰を切って溢れ出した涙は、長い間、止まらなかった。
ぐるぐると巡るように浮かんでは消える沢山の感情と、それも全て受け止めようとするレオンに、スコールは益々泣いた。

 スコールがようやく落ち着いた頃には、窓からオレンジ色の光が差し込んでいた。
夜はまだ遠い時間だが、それでも夕暮れの時間は短いものだ。
そろそろ城を出なければ、帰路の谷道が危なくなる。

 だが、レオンは家に帰ろうとは言わなかった。
ようやく涙が枯れて来たスコールを抱き上げると、レオンは図書館の二階へと上がる。
ギミックを元に戻さなければいけないので、それを済ませて帰るのだろうとスコールは思ったのだが、彼の足は二階のデスクへと向かった。

 黒壇色のデスクの上にスコールを下ろして、レオンは自分と同じ形をした傷にキスをする。
ぱちり、と不思議そうにスコールの目が瞬いた。


「レオン……?───んっ」


 帰らないのか、とスコールは問えなかった。
レオンの唇がスコールのそれを塞いで、熱の篭った舌が下唇の形をなぞる。
ぞくぞく、としたものがスコールの腰を痺れさせて、スコールの体がひくん、と震えた。


「ん…ふ……レオ、ン……?」
「……消毒、しないとな」


 唇を放し、呟いたレオンに、スコールの肩が微かに震える。
未だに彼には、自身が汚れてしまったと言う意識がある。
それを刺激するような言葉は避けたかったが、他に言い様もなく、レオンは敢えてそれを口にした。

 レオンの言葉の奥に秘められた心を、スコールも理解する。
汚れされてしまった躯を、レオンの手で清められたい。
彼の色で、温もりで、体に残された悍ましい感覚を、全て忘れてしまいたかった。

 柔らかなキスを繰り返しながら、レオンの手がスコールの肌を滑る。
細身の肩を撫で、浮き彫りの鎖骨のラインを辿り、胸を撫でて行く。
乳首に指を掠めて、ピクッ、とスコールが躯を震わせたのを見て、レオンは乳首を指先で摘んだ。
きゅ、と優しく摘まれただけで、スコールの唇からは甘い吐息が漏れる。


「あ…ん……っ」
「……怖いか?」
「…ん……」


 ふるふる、とスコールは首を横に振った。
レオンに触れられる事に、恐い事なんて何もない。
その気持ちは変わってはおらず、スコールは恥ずかしそうに顔を絡めながら、レオンの手から与えられる快感を甘受する。

 キスをしていたレオンの唇が離れ、下りて行く。
口端から顎へ、喉へ、パーツの一つ一つを確かめるように、キスが少しずつ落ちて行った。
胸まで辿り着くと、レオンは蕾を固くし始めた乳首を食んで、ちゅ、ちゅぅっ、と吸った。


「あっ、あ…っ!レオ、ン…そこ……っ!」


 其処は、あの男達が悍ましいものを擦り付けていた場所だ。
思わず、レオンが汚れてしまう、と頭を振ったスコールだったが、レオンは離れようとはしなかった。
それ所か、スコールの背を抱いて逃げ場を奪うと、鼻先が触れる程に顔を寄せ、乳首に甘く歯を立てて苛める。


「あふっ……!」
「ん、ちゅ……っ」
「はっ…!あぁ……っ!」


 レオンの舌が、敏感になったスコールの乳首を舐め回す。
じゅる、ちゅぷ、と唾液が音を鳴らすのを聞いて、スコールは身体の中から熱くなるのを感じていた。

 レオンはスコールの体を、抱きながらデスクの上に横たわらせた。
ひんやりとしたデスクが背中に当たって、ビクッ、とスコールの体が逃げを打つ。
が、覆い被さるレオンによって逃げる事は叶わない。


「ん、ん……っ、ふ……っ、」
「は、う…あぁ……っ!や、ん…っ」
「っは……」
「あぁ……っ!」


 レオンが乳首から口を放すと、濡れそぼった蕾がツンと自己主張していた。
今までレオンの熱い口の中に食まれていた所為で、外気の少し冷たい空気に晒されると、温度差だけでスコールは感じてしまう。
じんじんとした感覚を残す胸に、スコールは自分の手を当てて、あやすように胸を撫でた。


「は…あう……あぁ……っ」


 自慰をしている訳ではなかったが、傍目にはそれに近い仕種だった。
体を捩って悶えているスコールの姿は、酷く扇情的で、目の前の雄を無自覚に煽る。


「…こっちも、触られたか?」
「あ……っ!」


 レオンの手がスコールの腹を滑り下りて、頭を持ち上げているペニスを握る。
スコールは薄く開けた目で、レオンの手に自分自身が包み込まれているのを見て、ドクドクと血が昂るのを感じた。


「は…んん……レ、オ……っ」


 レオンの手が上下に動き、スコールのペニスを扱く。
指先が肉竿の筋を擦る度に、鈴口からぷく、ぷく、と泡になった蜜液が溢れ出していた。
汗とともにじわじわと量を増やして行く蜜が、亀頭を伝い流れて、レオンの手に絡まる。
そのままレオンは手を動かし続け、スコールのペニスに彼自身の蜜を塗りたくって行く。


「あ、あっ…!レオン…あっ、あぁん…っ!」
「気持ち良いか…?」
「んっ、んん……っ


 耳元で聞こえたレオンの声に、スコールはこくこくと頷いた。
常であれば、羞恥からの意地で絶対に応えまいとするスコールの、いつにない素直な答えに、レオンの唇が緩む。

 悩ましげに眉根を寄せながら、スコールはうっとりとした表情を浮かべつつあった。
まだ理性の光が僅かに眼に灯ってはいるものの、情欲の網に囚われて身動き出来なくなっているのは間違いない。
レオンはまだ、あやすような、触れ合うだけの愛撫しか与えていないのにも関わらず、だ。


「レ、オ…ンぅ……っ」


 甘える声で名を呼ぶスコールに、レオンも昂って行く。
窮屈な下肢が、早く、と言いたげに急かしているのが判る。
だが今は、スコールの体から、あのふざけた男達の気配を全て拭い取ってやるのが先だ。

 レオンはスコールの雄を愛でながら、膝を曲げてデスクの前にしゃがんだ。
デスクの高さすれすれの目線には、スコールの秘部がすっかり曝け出されている。
渇き始めた白濁色に汚れた其処に、ヒクヒクと切なげに口を窄ませている秘孔があった。
秘孔が僅かに口を開くと、其処からどろぉ……っとしたものが溢れ出して、スコールの太腿を濡らす。
レオンは、其処に顔を近付けた。


「……ん……」
「ふあっ…!?」


 ぬる、としたものにあらぬ場所を舐められて、スコールは思わず引っ繰り返った声を上げた。
急に我に返ったスコールが上半身を起こしてみれば、レオンが自分の股間に顔を埋めているのが見える。


「あ、あ…!や…レオ……っ!」


 赤くなり、蒼くなるスコールの顔。
レオンは、反り返った一物の向こうにそれを見遣ったのみで、またアナルに舌を這わせた。
皺の集まった窄まりをちろちろと舌先でくすぐると、スコールの腰がビクッ、ビクッ、と跳ね上がる。


「やっ、レオ、レオン…っ!きた、ない……っ!」


 スコールはぶんぶんと頭を振って、レオンに離れるように訴えた。
なけなしの抵抗にバタバタと脚を暴れさせるが、レオンはペニスから手を離して、スコールの太腿を抱えるように腕を回して、細い腰を掴んだ。

 しっかりと腰を捕まえられて、スコールは涙を浮かべる。
汚い、嫌だ、と繰り返すスコールだったが、レオンは聞かなかった。
ひくひくと戦慄いているアナルに舌を捻じ込み、押し出されてくる苦いものを啜る。


「ん、ぢゅっ、んぢゅっ…!」
「ああっ、あぁあっ!んぁああ…っ!」


 舌で押し広げられた肉口から、じゅるじゅると音を立てて啜られる感覚に、スコールの体が快感に震えた。
スコールはデスクに爪を立て、ビクビクと四肢を痙攣させながら、抱えられたままの足を振って逃げを請う。

 レオンの舌先が、スコールの媚肉の縁を擽る度、肉壁がうねうねと蠢く。
その運動に押し流されて、奥に溜め込まれていたものが、直腸を落ちて来る。
レオンは苦々しい精液を舌で掬い取りながら、壁に沿って穴口の隙間から溢れ出してくるそれを、強く吸い込んだ。
じゅるぅううっ、と強い吸引に、スコールの肉穴が引っ張られるような感覚に襲われる。


「ああぁ────っ


 一際甲高い声が上がって、スコールの体がビクンッ、ビクンッ、とバネのように跳ねる。
肉穴のうねりによって押し出された精液が、ごぷっ、と一気に溢れて、レオンの口元を汚した。
更に、スコールの反り返っていたペニスから、びゅるるるっ、と精子が噴水のように噴き出す。

 強烈な快感に、腰を浮かせた格好で強張って痙攣しているスコール。
そんなスコールの秘孔から、レオンが舌を抜き去ると、唾液混じりの白濁が舌とアナルを繋ぐ。
ヒクッヒクッと蠢いているアナルにレオンが指を入れ、くぱぁ、と拡げてやると、露わになった肉壺の奥から、どくどくと大量の精液が流れ出して行った。


「あ、あ…あぁあ……っ!」


 戦慄いていたスコールの膝から力が抜けると、彼の全身からも強張りは解けていた。
代わりに、逆にすっかり力が入らなくなってしまったらしく、スコールは手足を投げ出してデスクに沈んでいる。

 レオンは顎を伝う液体を指で拭いながら、スコールの秘孔にもう一度顔を近付ける。
誰の物かも判然としない精子で汚れたスコールの股間に、万遍なく舌を這わして、彼を汚しているものを拭い取って行く。
虚ろな意識でも、そうして触れられると感じてしまうのだろう、スコールの足先がきゅうぅっと縮こまった。


「ふ、ぇあ……あ、はぁ…っ
「ん、ぷ…んちゅ、れろ……っ」
「やぁ…ら、めぇ……レオン……っ」


 汚濁に汚れた自分の下肢を、何度も何度も這う肉厚な舌。
足の付け根の皺の隙間まで、レオンは余す所なく舐めている。
かと思ったら、アナルに二本の指が挿入されて、ぐぐっと奥まで入り込んだそれに中を掻き回された。


「あっ、あぅっ!んっ、あぁ…っ!やぁ、んっ
「一杯、汚されて……怖かっただろうな、スコール」
「ふ、ふあ……ああっ、あぁ……っ、ひぃんっ


 ぐちゅっ、と中で指が大きく円を描く。
長い指で奥壁の手前を抉られて、スコールは堪らず声を上げた。
そのまま指が前後に激しく動き始め、スコールの肉の奥にある前立腺を何度も何度も突き上げた。


「あうっ、あふっ、あぁんっはっ、あっ、あぁっ…!」


 レオンの指が半分まで抜かれると、穴の隙間からどろっと白濁液が溢れ出す。
前立腺を刺激されて、ビクッビクッとうねるように動く肉の働きも受けて、奥に捻じ込まれていた精液も押し出されてくる。
レオンの指にまとわりついた液が、指を伝ってレオンの手まで濡らしていた。
レオンは秘孔に入れたままの指の根本に顔を近付けて、自分の指と肉壺の口の隙間を舌でくすぐった。


「あぁああっ
「ん、ぷ…っんぢゅっ、んっ」
「はひっ、やぁ…っ!レオ、ン…だめ、あっ、そんなに、んんぅっ…!」


 消毒されているのだと、レオンが綺麗にしてくれようとしているのだと、判っていても、やはりスコールには堪らなく恥ずかしい。
汚れきった其処を覗き込まれて、舌で舐められ、啜られているのだと思うと、耐えられない程だ。
しかし、スコールが何度いやいやと頭を振っても、レオンはスコールを汚したものが全て拭い取れるまで、止めようとはしなかった。

 はあ、はあ、と虚ろな蒼灰色の瞳が天井を彷徨う。
噤む事を忘れた口からは、引っ切り無しに甘い声が出て、静かで厳かな筈の図書館の壁に反響していた。
スコールの太腿を辿り落ちる精液が、デスクにまとわりついて沁みを作る。
其処に、レオンの顎を伝い流れた唾液と汗も落ちて溶けて行った。


「あっ、レオ、あぁあ……っ!うあ、ひんんっそ、そこ引っ掻いたら…あぁっや、だめ、も…っ、あぁあああっ…!」


 快感から身を守ろうとするように、スコールは身体を縮こまらせる。
だが、局部に顔を埋めて愛撫を続ける男から逃げる事は出来ず、ただただ丸くなって快感に悶え喘ぐしかない。


「はっ、レオンっ、レオン…っ!もうだめ、だめぇ……っ!中、熱いの…熱いのまたっ、来るぅうっ


 髪を振り乱して泣き叫ぶスコールに、レオンは駄目押しと言わんばかりに、指を強く捻じ込んで、奥の行き止まりをぐりゅぅっと抉ってやった。
スコールの体がビクン!と一瞬強張ったかと思うと、


「あぁあぁぁっイくっイくぅううっ


 悦びの声を上げて、スコールは絶頂した。
先の射精から殆ど間を置かずに与えられた絶頂に、スコールの体は感覚が狂ったように強烈な快感を得てしまう。
その快楽はスコールの最後の砦とも言えた羞恥心すら灼け溶かした。

 吐き出されたスコールの蜜液が、彼の腹をぐっしょりと濡らしている。
レオンは秘孔を舐めるのを止めて、スコールの腹に飛び散った精液を舐めた。
秘孔をまさぐり掻き出していたものと違い、苦いだけではない味に、レオンの理性も限界を迎えた。


「スコール……」
「ふあ、あ…あぁっひぃんっ


 アナルの中を掻き回しながら名を呼ぶレオンだったが、スコールからの返事はない。
容易く果ててしまう程、快感に敏感になった体が、弄られているのに他の事に感ける余裕などある訳がないのだ。

 レオンは、指先に伝わる柔らかな肉の絡み付きを確かめて、指を抜いた。
にゅぽっ、と音を立てて抜けた其処が、小さく穴を開けて、ヒクヒクと物欲しげに伸縮を繰り返している。
レオンが其処を指の腹でくすぐると、スコールの腰にびりびりと甘い痺れが奔った。


「ああぁ……っやぁ…っ、レオン…っ
「嫌か?スコール」


 穴口を指先でくすぐりながら、レオンは此処から先の事を匂わせた。
スコールは秘孔を弄られる快感に体を震わせながら、レオンの顔に手を伸ばす。
まだ微かに触れることを躊躇う様子を見せつつも、その手はレオンの頬にそっと触れ、


「レ、オン……早く…もう……早くぅ……っ!」
「……ああ。判ってる」


 泣き出しそうな顔でねだるスコールに、レオンの眦が緩む。
スコールの瞳には、涙は浮かんでいても、恐怖の色はない。
自分の汚れた躯をレオンが触れる事も、それによってレオンが汚れてしまうと言う不安もなく、ただレオンの存在を求めているのが判った。

 レオンはスコールの口端にキスをして、自身の前を緩めた。
取り出したペニスは血を集めて大きく膨らんでおり、薄らと血管を浮かせている。
それを見たスコールは、もう随分前にそれを貰ったきりである事を思い出し、腹の奥が切なく疼くのを感じた。


「あ…レオ、ン……早く…早く……」
「少し待て。一気に入れたら、傷になるからな」


 腰を摺り寄せてねだるスコールを、レオンはやんわりと諭した。
子供のように無垢な蒼の瞳が、待ち遠しそうにレオンを見上げた。

 ペニスの先端がアナルに宛がわれて、スコールの体がふるりと震える。
見ているだけで堪らなかったのだから、触れられたらもっと欲しくなる。
菊座が先端に吸い付いて、早く入れて、と急かしていた。
レオンはその吸い付きに耐えながら、ゆっくりと腰を進めて行く。


「あ、あ…あぁ、ん……っ」


 何日振りになるか───初めて強姦された日よりも前だと思うと、本当に長らく感じていなかった熱。
それをようやく与えられて、スコールはそれだけで胸が一杯になる。
レオンも、絡み付き柔らかく揉むように締め付ける媚肉の感触を久しぶりに堪能しながら、スコールの中に全てを収めた。


「は…あう……」
「…辛くないな?スコール」
「う…ん……っ」


 一つ一つを確かめてくれるレオンに、スコールの眦から涙が溢れる。
痛みや恐怖ではなく、純粋な喜びから溢れた涙だった。
男達に散々に好きにされ、乱暴に揺さぶられていた所為か、レオンがどれだけ自分を気遣ってくれるかが判る。

 レオンは膝をデスクに乗せて、スコールの上に覆い被さった。
心地良い重みスコールが目を細めていると、くしゃ、と頭を撫でられる。


「ん…レオ、ン……」
「…動くぞ。ちゃんと捕まっていられるな?」


 スコールはレオンの首に腕を絡ませて、小さく頷いた。
よし、と子供を褒めるように頭を撫でられる。

 レオンがゆっくりと腰を前後に動かし始め、埋められた肉棒がスコールの中を擦る。
隙間なく密着した肉壁は、レオンが少し動いただけで、高いカリ首に抉られて快感を拾った。


「あ、あ…っ、ああっ、…んっ、」
「っは……スコール…、気持ち良い……っ」
「レ、オン…レオンん……っ!」


 散々に凌辱された後に、レオンの指でそれを癒すように愛撫されていた身体は、蕩けるのも早かった。
男達に突き上げられている時には、嫌悪と快感が交じり合っていた体には、今はただ心地良さと充足感が溢れている。
レオンの肉欲が自分の中にある、その熱を自分が包んでいるのを感じる度に、スコールの腹の奥で血が集まって行く。

 レオンはスコールの片膝を押し上げて、スコールの足を大きく開かせた。
剥き出しにされたアナルを、太いペニスが何度も何度も突き上げる。
皺の口が充血したように赤い色を帯びて膨らんでいるのを見て、レオンのペニスがむくっと大きくなった。


「あぁあっ


 レオンが成長したのを感じ取って、スコールが声を上げる。
きゅううっ、と狭い道がより強くレオンを締め付けて、中へ中へと誘おうと蠢いた。

 ガタ、とデスクが音を立てる。
木材とは言え上質な作りだし、動かそうと思えば最低でも大人二人は必要なデスクだ。
倒れる事はあるまいと、レオンはスコールを抱いてデスクに完全に体重を預け、律動を早めて行く。


「あっ、ふっ、あっあっ、あぁ……んっ、んんっ


 奥を二度、三度と突き上げて、引く時はゆっくりと。
強い刺激で過敏になった秘孔内を、ゆっくりとペニスで舐めるように擦られる度、スコールは悩ましい声を上げる。
其処からまた早い動きで、奥へ奥へと突き上げてやれば、リズムに合わせて、スコールの喉から短い喘ぎ声が押し出される。


「はっ、んっ…あふっ、ふぁ、あ……ああっ
「スコール……」
「あっ、レオ、んっ、んんっ


 呼ぶ声に応えようとして、スコールの唇は塞がれた。
スコールの瞳に、さらりと流れる濃茶色のカーテンが被さる。
鼻先にくすぐる嗅ぎ慣れた匂いに、スコールは安堵感を覚えながら、口付けに応えた。


「んぐっ、んっふ、うぅんっ…!」
「ん、ん……っ、っは、はぁっ…、はっ……!」
「ふはっんぁ、あ、あ…!あっ、あぁあんっ


 ぐりゅっ、とレオンの雄がある一点を突いた時、ビクンッ、ビクンッ、とスコールの体が大きく震えた。
レオンは自身の濡れた唇を舐めて、息を整え、同じ場所を何度も突き上げる。


「あっ、ひあんっ、あっ!レ、レオン、そこっ、そこぉ…っ!」


 さっきも指で刺激された前立腺を、太く硬い雄で攻められて、スコールは頭が灼ける程の快感に見舞われていた。
律動に合わせて揺れていた足が、レオンの腰に絡み付く。
ずんっ、とレオンが腰を進めれば、秘奥がきゅううっと食み付いて来て、スコールは蕩け切った貌で口端から唾液を零していた。


「は、ひ、…っレオン…っ、そこ、だ、め……あぅんっ
「駄目じゃないだろう。スコール」
「ふあ、あうっ、あぅうっあっ、あっ、」


 レオンはスコールの頬を撫でて言った。
その手の心地良さに、スコールは猫のように目を細めたが、直ぐに襲ってきた快感に、またしても攫われる。


「やぁっ、あふっ、そこぉっビリビリするっ、んふぅっ
「ああ……凄く締め付けて来る。気持ち良いって、離そうとしない」
「あっふ、あふっ、んひぃっはうっ、あぁあっ…!」


 弱い場所を何度も何度も、激しく突き上げられて、スコールは段々と何も考えられなくなっていた。
気持ちが良い、ただそれだけで頭の中が一杯になって行く。

 レオンはスコールの頬を両手で包み込んだ。
強過ぎる快感に飲まれ、眉根を寄せて目を閉じているスコールの眦に唇を寄せる。
浮かんだ粒雫をゆっくりと舐め取った後、瞼に舌を滑らせた。
くすぐったいのか、眼球が食われそうなのが怖いのか、スコールの眉間に益々深い谷が浮かぶが、


「スコール」
「はっ、んっ、んぁっ…あ、あ…っ!あうぅっ…!」
「スコール、目を開けろ」
「う、う……?」


 レオンに促され、スコールは恐る恐る瞼を持ち上げる。
涙に濡れた視界が上下に揺れて、中々ピントが定まらなかったが、すぐ近くに蒼灰色が映り込むと、其処を中心にスコールの視界がクリアになって行く。

 蒼い瞳、高い鼻、濡れた唇。
自分と同じ形の、眉間の傷。
けれど、自分よりも逞しい体つきと輪郭で、精悍な雰囲気を醸し出している男。


「レ…オ、ン……っ!」


 その顔をしっかりと認めた瞬間、スコールの体は熱く燃えた。
心臓の鼓動が早鐘を売って、血が一気に全身に巡り渡る。
彼の雄を咥え込んだ媚肉が、それそのものが意志を持った生き物のように動いて、レオンの形に添って縋り付いた。
全身で欲しがり求めるスコールに、レオンの剛直も一層硬くなり、ドクン、ドクン、と脈を打つ。


「あ、あぁ……レオン…っ!」
「スコール……っ!」
「は、ああっ、レオン……っ!レオン、中に……レオンの欲しいっ!」
「ああ……!」


 首に絡めた腕にも力を籠めて、秘孔をきゅうっきゅうっ、と締め付けて求めるスコールに、レオンも頷いた。
既に限界は近いのだ。
レオンはスコールを抱き締めたまま、激しく腰を動かして、まだ発展途上の青さの残る体を一気に高みへと追い立てる。


「あうっ、あっあぁっ!レオ、んぁっ、ひぅんっ
「はっ、スコール…っ、スコール……っ!」
「あんっ、あっ、奥、奥に…っ!届いて、あっ、あひぃっお、俺、イく、またイくぅうっ…!」
「イって良いぞ。一緒にイこう、スコール…!」
「ふっ、ふあっ、あんっあっあぅんっい、一緒、一緒に…んっあぁっ、あぁあああぁぁっ


 レオンの言葉に、スコールが頷く暇もなかった。
囁きにすら反応したように、スコールの中心部に一気に熱が集まって、衝動のままに彼の体は絶頂へと昇る。
ビクビクッ、ビクンッ、と連続的な痙攣を見せた直後、スコールは高い声を上げて、自身の精を吐き出した。
呼応して強く締まる肉壺の中で、絞らんばかりに締め付ける肉のねだりに耐え切れず、レオンも熱い劣情をスコールの腹の中へと注ぎ込む。


「うぅうう……っ!!」
「ンはぁぁああんっ


 胎内へ雄の肉欲を注ぎ込まれる事に、スコールの体が拒絶反応を起こす事はなかった。
ようやく与えられたレオンの精を、スコールは一滴も零したくないと思う。

 レオンの射精は、すぐには終わらなかった。
スコールと体を重ねる事もなく過ごした日々を取り戻そうとするように、レオンは愛しい少年を、長い時間をかけて愛し続けていた。




 とっぷりと夜が更けた頃、城のエントランスホールに一人の来客があった。
金色の鶏冠頭を揺らしながら、きょろきょろと辺りを見回しているのは、クラウドだ。
夜半になっても帰っていない、居候先の二人の住人の行方を探し、此処までやって来たのである。

 城の全容はとても巨大なので、ヤマを張って探した方が良い。
取り敢えず、何かと用事のある図書館から行ってみるか、と思った所で、頭上から声がした。


「クラウド。こっちだ」


 呼ばれてクラウドが顔を上げると、二階の周り通路にレオンの姿があった。

 階段を上って辿り着くと、レオンは一つの扉を開け、中に入って行く。
来るなと釘を差されていないので、クラウドも其処に吸い込まれて行った。

 来客用にと誂えられていたのだろう、簡素ながらもそれなりの調度品が揃えられた部屋には、三つのベッドが並んでいる。
此処はレオン達がこの街へと戻って来た当初、日々の生活を過ごす為に利用させて貰っていた場所だ。
街の復興が進んだ今では、賢者の研究について、缶詰めになって調査している時以外は使われなくなった。
が、エアリスが図書館やエントランスホールと共に簡単に掃除をして行くので、それなりに綺麗な状態が保たれている。

 その部屋の隅のベッドに、一人の少年が丸くなって眠っていた。
シーツの隙間から覗く白い肌に、クラウドは眉根を寄せる。


「おい、レオン」
「……何もない。そう言う事にしてやれ」


 クラウドの問いを、レオンは受け止める前に遮った。
その言葉にクラウドは更に眉間の皺を深くしたものの、レオンの続く言葉に閉口する。


「俺に知られたくなかったように、きっとお前にも知られたくない筈だ。お前の気持ちを殺す事になるが、堪えてくれ」
「……」


 スコールの気持ちを汲んでやって欲しい、とレオンは言っているのだ。
クラウドは腑に落ちない気持ちは否めなかったが、そう言われては強引に言及する訳にも行かない。

 だが、一つだけ確かめたい事があった。


「あんたの気持ちと、スコールの気持ちは判った。だから、“何があった”のかは聞かない」
「……ああ」
「だが、関わった奴等の顔は教えろ。根は絶やす」


 クラウドが暗に何を言っているのか、レオンにも直ぐに理解できた。
物騒だから止めろ、とは言わない。
何故なら、レオンも彼と同じ感情を抱いているからだ。

 スコールの体と心を踏みにじった男達は、レオンのお目溢しによって、腰を抜かせながら逃げて行った。
あれらが街の再建の為に働いていた事をレオンは覚えていたが、あんなふざけた真似をするような連中を、今後も街に置いておく訳には行かない。
あの場でレオンが彼等を切り捨てなかったのは、スコールが傍にいたからだ。
感情に任せて、彼の前で血の惨劇を撒き散らす訳には行かないと思ったから、辛うじてブレーキがかかったに過ぎない。

 きし、とベッドのスプリングが小さな音を鳴らすのを聞いて、二対の瞳が音の発信源を追った。
白いシーツに包まれた少年の体は、城の給湯室から運び込んだ湯とタオルで、清められた。
服はどれも酷い有様であった為、これも給湯室で全て洗い、風通しの良い場所で干している。
明日、スコールが目覚める頃には、乾いてくれているだろう。


「……ん……」


 寝返りを打つ少年に、レオンは小さく笑みを零す。
少し色の青い頬をそっと撫でると、スコールは甘えるように頬を寄せて来た。

 クラウドがスコールの髪を撫で、米神にキスを落とす。
ぴく、とスコールが小さく反応して、「んん……」とむずがるような声が漏れた。
猫を思わせる仕種に、クラウドの口元が一瞬緩むが、


「俺は行く」
「ああ」
「あんた、明日の昼には戻るか?」
「そのつもりだ」
「じゃあ、俺もそれまでには家に戻る」


 その間、何処で何をしているのか、クラウドは言う事はなく、レオンも問わなかった。

 踵を返し、部屋を出て行くクラウドを見送った後、レオンはベッドに横になった。
揺れが伝わったか、スコールの長い睫がふるりと震え、瞼が僅かに持ち上がる。
夢現の中にいる少年を抱き締めて、そっと背中を撫でてやると、蒼灰色はまたとろとろと夢の中へと落ちて行った。



END.3

知られてしまった恐怖と、もっと早く助けてやりたかった苛立ち。
全部ひっくるめて塗り潰して忘れてしまおう。

クラウドが何をするつもりでいるのか。ご想像にお任せします。