君色本能


 涙と汗と精液で汚れたスコールの頬を、フリオニールの節張った手が撫でる。
スコールはその手に頬を寄せて、日向の猫のように目を細めていた。
濡れた唇にフリオニールが指を宛がうと、ふあ、と小さく息を漏らして、唇が開く。
白く汚れた赤い舌が覗き、フリオニールが誘うように舌先を指でくすぐってやれば、スコールは素直に応じた。
差し出すように晒された唾液まみれの舌に誘われて、フリオニールは背中を屈め、スコールの唇に己のそれを押し当てる。


「はっ、はむ…っ♡むぁ……あん……っ♡」


 舌を絡ませ、くすぐられ、スコールの躰がヒクヒクと震える。
誘い出した舌をちゅうっと吸ってやると、スコールの舌の根に痺れるような快感が襲う。

 ゆっくりと唇を離すと、スコールは夢心地にいる表情で、ぼんやりと離れて行くフリオニールの貌を見詰めていた。
フリオニールはそんなスコールを尻目にして、身に着けたままだった鎧具足を全て外し、服も脱ぎ捨ててベッドの下に放った。
裸身になってスコールを抱き上げ、ベッドの中心に横たえて、その上に覆い被さると、


「スコールが、嫌だって事は…しないから……」
「ふあ……フリ、オ…ニールぅ……っ!」


 フリオニールの言葉は、自分への戒めだった。
αであろうとΩであろうと、スコールの事は何よりも大切な存在で、彼を傷付ける事はしたくない。
その為に自分へ言い聞かせるように呟いた言葉だったが、スコールはフリオニールが変わらずに自分の事を受け入れてくれるだけでも、救われたような気分だった。

 スコールの腕がフリオニールの首に絡み付き、縋るように抱き着いた。
フリオニールも応えるようにスコールの背中に腕を回して、どちらともなく唇を重ね合う。
精液の味が混じって独特の苦い感触があったが、フリオニールは構わずスコールの咥内を貪った。
舌の根を先端でちろちろと擽ると、スコールの躰がビクビクと跳ねて、しがみつく腕に力が籠る。


「んっ、んっ♡んふ、うぅんっ…!」
「ん、ふ……っは、んんんっ!」
「んむぅうっ♡んっ、んっ、んふぅうっ♡」


 舌をじゅうっと音を立てて吸われ、スコールはビクンッ、ビクンッ、と四肢を震わせた。
二人の体の間で、びゅくんっ、とスコールのペニスが蜜を噴く。
たったこれだけで、とスコールの敏感過ぎる反応に驚きつつ、フリオニールは下肢が張り詰めて行くのを感じていた。

 唇を離し、首筋に吸い付いて痕をつける。
ピリッとした小さな痛みに、スコールが「あっ……!」と声を上げたのが聞こえた。
構わずに胸まで移動して、シャツをたくし上げ、ぷっくりと膨らんでいる乳首に噛みつく。


「あぁんっ!」


 背筋を仰け反らせ、スコールが喘ぐ。
フリオニールが来るまで、自分で触れていたのだろうか、スコールの乳首は赤く色付いて固くなっていた。
それを舌先でくすぐってやるだけで、スコールは悶えて頭を振る。


「あっ、ああ…っ!乳首…あぁんっ♡」
「スコールの此処、もう固くなってる。こっちの乳首も────」
「はんっ♡はひっ、ひっ…♡ああぁ……っ!」


 反対側の乳首に舌を這わせば、其処も固く張り詰めていた。
まるで淫芽のように固くなっているその先端を、舌先でぐりぐりと穿つように刺激してやれば、スコールはベッドシーツを握り締めて快感に打ち震える。


「ふ…あ…っ♡ああ……っ、は…っ、はぁんっ♡」
「乳首、自分で触ってたのか?それとも、触ってないのに、こんな風に…?」
「やんっ、あっ、摘まんじゃ……あっあっ♡ひんんっ♡」


 囁きながら、フリオニールは左の乳首を舐めながら、右の乳首を指で摘まむ。
指先で挟んだ蕾がコリコリと転がし弄ばれて、スコールは胸から全身へと広がる快感信号に泣き喘いだ。

 乳首を甘く噛みながら、フリオニールはスコールの腰を撫でた。
それだけで逃げを打って腰を捩るスコールに、咎めるように脚の付け根で昂っているものを押し付けると、ヒクンと体を竦ませるのが伝わる。
怯えにも見える反応だったが、フリオニールは構わずに股間の熱をスコールのそれに当て擦る。
太く固いものが自分と擦れ合うのを感じて、スコールはシーツに足を滑らせながら悶えていた。


「んぁ、あ……っ、フリオぉ……っ♡固くて、んっ、ああ……っ!」


 ぬらぬらと唾液を纏うペニスが、自分の濡れそぼったペニスと擦れ合う感触に、スコールの躰が燃え上がって行く。
もっと、と言うように白い脚が左右に開かれ、細い腰が浮いて、自分からフリオニールのペニスに自身を擦れさせ始めた。


「あっ、あっ、あっ…♡フリオ…フリオのちんぽ…っ、大きい……っ♡」
「はあ…っ、スコール……んっ、ちゅうっ……!」
「ああんっ♡はひっ、乳首…ヘンになるぅ……っ♡気持ち良いぃ……っ♡」


 股間の感触に夢中になっているスコールに、胸への愛撫を与えてやれば、スコールはビクンッ!と背筋を仰け反らせて悦んだ。
下腹部でスコールの雄がピクピクと震えながら膨らんで行く。

 スコールの足が何度も身動ぎをして、太腿がフリオニールの横腹に摺り寄せられる。
もっと、早く先を、と急かしているように思えて、フリオニールは誘われるままにスコールの両膝を掴んで割り開いた。
ぐっしょりと白濁に汚れた下肢が露わになり、涙を零しているペニスの更に下では、ふくふくと卑しい穴がヒクついている。
そこからむわぁっと蟲毒に似た甘い香りが溢れ出してくるのが判った。


「は…っ、は……っ…!スコー、ル……っ」
「ふあ…う…あ…っ♡んぁ……っ」


 耳元で聞こえる恋人の呼ぶ声に、スコールは応えようとして出来なかった。
口を開けば零れるのは喘ぎ声と熱を孕んだ吐息だけで、快感に痺れた舌がまともな形の音を出す事はない。

 フリオニールはスコールの足を限界まで開かせると、露わになった窄まりにペニスを宛がった。
先端が少し触れただけでも、其処は誘うように吸い付いて来る。
解した訳でもないのに、ヒクヒクと伸縮を繰り返す秘孔からは、じんわりと蜜が溢れ出しており、それを見たフリオニールの雄が本能で反応したようにむくぅっと大きく膨らんだ。


(抑えろ……抑えろ……っ!俺が、俺がしっかり…しないと……)


 どくんどくんと心臓の鼓動が煩く逸るのを聴きながら、フリオニールは努めて冷静を保とうとした。
スコールの様子をきちんと見て、彼が痛がっていないか、苦しんでいないか、何かを我慢していないか、見極めなくてはならない。
スコールは直ぐに苦しい事を我慢して、フリオニールに応えようとばかりしてしまうから、スコールの事はフリオニールが確かめなくてはいけないのだ。
無理をしなくて良いと、無理をさせてはならないと、これまでの経験でフリオニールはよく判っている、つもりだった。

 吸い付く穴に亀頭を宛がう。
ふあ、とスコールの唇から甘い音が零れて、白い脚がフリオニールの腰に絡み付いた。
早く、早くと誘うように、フリオニールに縋るスコールの腕に力が籠る。


「フリオ、フリオぉ……っ♡早く、はや、くぅ……っ!」


 待つのが苦しい────スコールは全身でそう訴えていた。
フリオニールの体温を感じる度に、腹の奥が熱くて灼けそうになる。
焦燥にも似たこの感覚を治めるには、目の前の雄に食べて貰うしかないのだ。
そして同時に、そうする事で、自分は至高の悦楽に飛んでしまう事も理解している。

 フリオニールはスコールの腰を掴んで、ゆっくりと腰を進めた。
ぬぷ……と先端が挿入された瞬間に、スコールが甲高い悲鳴を上げる。
まだ亀頭首も入っていないと言うのに、スコールは肉壺から甘い甘い分泌液を溢れさせ、背中を撓らせ強張らせる。


「は…ひぃいっ♡ああっ♡んぁああっ!」
「う、あ……っ!」


 まずい、とフリオニールは悟った。
持って行かれそうになる自分に気付き、中に入れたものを抜こうとするが、腰に絡み付いたスコールの脚がそれを赦してくれない。
それならせめて加減を、とスコールに声をかけようとするが、


「フリオっ、ふりおぉっ♡フリオが中にぃ…っ、入ってきてるぅうう……っ!」
「ス、スコー…ル……す、ごい……熱い……っ」
「もっと…もっときてぇ……っ!中突いてぇっ、早くぅうう……っ!」


 きゅうきゅうとフリオニールの亀頭を締め付けながら、艶めかしい肉壁が蠢いて、雄を奥へと誘う。
もう他の事など何も考えられなくなっているのだろう、スコールは掴まれた腰を振り、身を捩ってフリオニールに先を強請る。

 抑えろ、抑えろ、とフリオニールは自分に言い聞かせる。
スコールに無理をさせては行けない、酷い事をしてはいけない。
幾らスコールが求めてくれているからとは言え、自分まで正気を手放してはいけない。
だからゆっくり────と、思っていた筈なのに、


「─────っ!」
「んぁあぁぁぁぁぁっっ♡♡♡」


 ずぷんっ!!とフリオニールの禊がスコールの中を一気に貫いた。
長く太く、逞しく成長した雄に、雌壺と化した秘奥を一息に突き上げられて、スコールは悦びの声を上げる。
その反響が消えない内に、フリオニールは激しく腰を打ち付けていた。


「あひっ♡はひっ♡ひぃっ♡ひぃいっ♡」
「はっ、はっ、はっ…!スコール…ううっ、スコール……っ!」
「あうっ、あんっ♡はぁっ、あひぃっ♡フリオ、フリっ、オぉおっ♡」


 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!とフリオニールの腰が、スコールの尻肉を叩く音が響く。
フリオニールはスコールの腰を両手でしっかりと掴み固定して、容赦ない律動でスコールを攻めていた。


「ああっ、あっ、はぁんっ♡フリオ、フリオのちんぽぉっ♡奥にぃっ、届いてぇえっ♡」
「何、だ…これ……っ!スコールの中が、う、ごいて…うねって……っ!」
「フリオ、ニールぅっ♡ドクドクしてるっ!ふあ、太い、大きいぃっ♡あああぁっ♡」


 覆い被さり、押し潰すように肉棒を穿ち、秘孔内を耕す雄の律動に、スコールが全身を強張らせる。
ピンと張りつめた体は一層快感に敏感になり、フリオニールが胎内を擦るだけで、スコールの躰は高みへと昇って行く。

 肉壁に隙間なく密着した剛直が、ずるぅり、と蜜を滴らせながら抜けて行く。
スコールが甲高い悲鳴を上げている間に、フリオニールはまた腰を打ち付けた。
ばちゅんっ!と強く尻肉を叩かれて、スコールの躰が跳ねる。
あまりの衝撃に、突き上げられる度に上へ上へとずり上がって行く躰を、フリオニールの腕が掴んで、ベッドに縫い留める。


「はひぃっ♡ひぃっ♡いああっ♡フリ、フリオぉっ♡」
「はっ、あっ、あぁっ!ス、スコール、ごめん、止まらない…っ!ごめんっ…!」
「ひぃっ、ひんっ、ひきぃっ♡激ひ、激ひぃのぉっ♡フリオ、おふっ、おぉんっ♡」


 止まらない欲望の暴走に、フリオニールは喘ぐスコールを押さえ付けながら謝っていた。
突き上げられる度、ビクビクと腹を小刻みに痙攣させ、舌を伸ばして虚空を見上げて喘ぐスコールに、これ以上酷い事したら壊してしまう、とフリオニールの理性が警鐘を鳴らすが、


(まずい、まずい、まずい……っ!こんな…こんなに、気持ち良いなんて…っ!スコールとの、セックスが、こんなに……!)


 これまで交わした睦み合いは、始めこそ二人とも拙く苦しい事もあった。
それでも続けている内に少しずつ気持ち良くなり、二人で溶け合う充足感を得る事が出来た。
快感を得て、相手が気持ち良くなってくれていると思うと、幸福感はより増した。

 だが、このセックスはそんな次元のものではない。
ねっとりと熱く溶けた肉壺の感触が、フリオニールの肉欲を煽り、貪ってくれと言わんばかりに絡み付いて来る。
それを突き上げて抉ってやれば、スコールは歓喜の声を上げて、フリオニールを一層強く締め付けた。
きゅうきゅうと締め付ける媚肉は、もっと此処を、もっと奥を、と仕切りに強請って来る。
急かすばかりの卑しい体を押さえ付け、此方のペースで一方的に攻め立てれば、雌の器と化した躰はまた悦びながら雄を悦ばせて見せた。
秘孔の奥からは濃い匂いを放つ分泌液が次から次へと溢れ出し、突き上げる度にスコールの秘孔からはそれが飛沫になって噴き出した。
その度にあられもない声をあげて啼くスコールを見て、フリオニールは嘗てない充足感と、支配欲を満たしていく。

 フリオニールは自分の脚でスコールの太腿を押して、大きく開脚させた上で、その体に覆い被さった。
ぐぷぅう、と太いペニスが根本まで入って行くと、スコールが足を爪先までピンと伸ばして震える。


「ああああぁっ♡フリ、オ…ぉ……っ♡ふと、いのぉ…っ、いっぱひぃい……あぁんっ♡」


 奥深くまで到達したペニスの感触に感じ入っていたスコールだったが、フリオニールは構わず律動を始める。
ゴツゴツと奥を早いテンポで突き上げられ、喉を逸らしたスコールに、フリオニールは唇を寄せて噛み付いた。


「おっ、おっ、ほっ♡ほぉっ♡フリ、おぉんっ♡」
「はっ、んっ、はっ…!」


 噛み付いた痕が残った喉を慰めるように舌を這わせる。
スコールの背にぞくぞくと快感が奔って、アナルが咥えこんだペニスをきゅううっと締め付けた。
それを受けたフリオニールの腰が、びくん、びくん、と戦慄し、


「う、ううぅっ!スコール…っ!俺…も、もう……っ!」
「ふあっ、ああっ♡はひぃっ♡」
「で、出る……っ!イきそう、だから……っ!」


 抜かなければ、とフリオニールは腰を退こうとした。
しかしそれを感じ取ったのか、スコールが全身でフリオニールに抱き着きながら、駄目押しとばかりにペニスをマッサージする。


「やあっ、やらぁっ♡抜いちゃいやぁっ♡フリオのちんぽぉっ、中でイってぇえっ!」
「そん、そんなの駄目だ、そんな事したら────っ!」


 これはαとΩのセックスだ。
このままフリオニールが果ててしまったら、スコールの中に熱を吐き出してしまったら、どうなるのか。
スコールとて知らない訳ではないだろう、とフリオニールは縋るスコールの腕を振りほどこうとするが、スコールは目一杯の力でフリオニールに抱き着いて離れない。


「出してっ、出してぇっ♡フリオのせーしっ、俺のおまんこの中に出してぇえっ♡俺のおまんこ、フリオのせーしで孕ませてぇえっ♡♡」
「う、あ、うっ、うぅううううっ!」
「はあぁっ♡あーっ♡ああぁーーーーーーっっ♡♡」


 覆い被さる男が、がくがくと全身を震わせた直後、固く張り詰めたペニスから濃い精液が一気に注ぎ込まれる感触を得て、スコールは至高の悦びを得る。
甘い悲鳴を上げてフリオニールの熱を享受しながら、スコールも絶頂を迎えていた。
スコールのペニスから、びゅううううっ!と白濁液が吐き出されて、二人の腹を汚す。
スコールの体内では、雄がどくんっどくんっと大きな脈を打ち、精嚢に溜め込んでいた劣情が次から次へと溢れて止まらなかった。
それを受け止めながら、スコールは腹の奥が熱く燃えるような感覚に見舞われて、ベッドに沈みながらビクッビクッビクッと四肢を痙攣させている。


「ああっ、んぁ…おぉお……っ♡」
「はっ、う…く……ううぅ……っ!」
「でて、るぅ…まだ…っ、いっぱ、ひぃ……っ♡」


 びゅくっ、びゅくっ、と秘孔内で断続的に吐き出される精液の感触に、スコールは虚ろな視線を彷徨わせながら、夢現の表情を浮かべていた。
ペニスを咥えこんだ肉壺からは、泡混じりの白濁液がごぷっごぷっと溢れ出し、スコールの尻とベッドシーツを汚していく。


「ふりお…の…せー、えき、ぃ……♡きもひ、い、いひぃ……♡」
「ス、スコー、ル……っ」


 うっとりとした表情を浮かべて呟くスコール。
フリオニールはその声を耳元で聞きながら、ヒクヒクと戦慄いてペニスを刺激する肉壺の感触に意識を囚われていた。
中出しした瞬間から、抱き締めた体から溢れ出す甘い香りが濃くなったような気がする。
それはフリオニールの鼻孔から脳へとダイレクトに吸い込まれて行き、疲労している筈のフリオニールから、その感覚を忘れさせ、


「は…は……っ、………っく!!」
「おひんっ♡」


 ずんっ!とフリオニールのペニスが、スコールの奥を突いた。
先端から未だ精液を溢れさせていたペニスが、無防備に酔っていた蜜壺を予告もなく突き上げたものだから、スコールは思わず呼吸を詰めた。
電流にも似た快感を突然押し付けられて、白目を剥いてヒクッヒクッと震えているスコールに構わず、フリオニールは腰を振る。


「おっ♡お゛っ♡フリっ、おっ♡おんっ♡んぉっ♡」
「スコール…スコール…!まだ、まだ熱い……っ!まだ、こんなに…っ!」
「ふあっ、あっ♡ふ、ふかっ、ふかひっ♡あっ、奥、一番奥っ♡そんっ、そんなっ!それ以上っ、はぁっ♡はいらっ、なひっ、のにひぃいっ♡」


 果てた直後にも関わらず、全く硬度を失っていないペニスが、奥壁に隠れていた窄まりの穴を突き上げる。
女で言う子宮と同じ役割を持つその入り口は、突き上げられた感触を悟ると、くぱっと小さな口を開かせた。
其処に亀頭が何度もキスをすれば、スコールは身を捩る事も出来なくなる程の快感を得て、


「フリオっ、フリオぉっ♡届いてるっ♡そこっ、孕むとこ♡フリオのちんぽがぁっ、とどいてるぅううっ♡」
「此処が……っ、此処が、スコールの…っ!」
「んぁああっ♡ぐりぐりだめぇっ♡ちんぽ擦り付けたらぁっ、雌穴ひりゃくぅううっ♡」


 吸い付く奥穴にペニスを密着させ、フリオニールが腰を揺らして擦り付けると、スコールは背中を撓らせながら絶頂した。
果てを見て強張っているスコールの脚を捕まえ、ぐるん、と体勢を引っ繰り返す。
秘孔の肉全体が竿で擦られる感触に、スコールは甲高い悲鳴をあげた。


「ひぃいいんっ♡擦っ、擦れっ、あはぁっ♡あうっ、あっ、奥っ、突き上げてっ♡フリオのちんぽがっ、おれのケツまんこぉっ、じゅぽじゅぽひてるよぉおっ♡」


 フリオニールはスコールを四つん這いの格好にさせると、自身も膝立ちになってスコールの秘孔を攻め始めた。
揺れる細腰を掴んで、ずんずんと突き上げてやれば、スコールはベッドシーツに縋り付いて啼き喘ぐ。
ぐしゃぐしゃになった顔を擦り付けたシーツには、涙と涎のシミが幾つも滲み出来上がっていた。


「すごいっ、フリオのちんぽ♡フリオのαちんぽすごひよぉおっ♡俺の中ぁっ、いっぱい、いっぱいきもひよくてっ、飛んじゃうっ♡フリオでいっぱいになってるぅうっ♡」
「気持ち良い、のか…っ、スコール…っ!」
「きもひいぃ♡きもひいいよぉおっ♡フリオっ、フリオはっ…俺のっ、俺のΩまんこぉっ♡きもひよくっ、なってく、んひぃいいんっ♡♡」


 気持ち良くなってくれてるのか、と聞きたかったのだろうスコールの問いは、最後まで形にならなかった。
胎内でむくぅっ!と大きく膨らんだ雄に奥を突き上げられて、スコールは背中を仰け反らせる。


「はあっ、はっ、気持ち良い……っ!気持ち良いんだ…っ、今までの、どのセックスより…っ!」
「ふあっ、ほんっ、ほんとにっ♡フリオっ♡俺、おれっ、Ωでもっ、ちゃんと、ほぉおっ♡フリオに、きもひ、よくぅっ♡なってええっ♡」
「なってる…気持ち良く、なって……!スコールの、スコールのΩまんこで…うぅっ、また、イきそうだ……っ!」
「イって、イってぇっ♡Ωまんこに中出ししてぇっ♡フリオのαちんぽでぇっ、俺のおまんこ、雌にしてぇっ♡俺のΩまんこ、フリオだけのものにしてぇええっ♡」


 叫ぶようにねだりながら、スコールは秘孔で脈打つペニスを強く締め付けた。
肉壺全体で粘るような蜜を溢れさせながら、根本から先端まで隙間なく密着した内壁に閉じ込められて、フリオニールの熱が一気に高まって行く。
それが堰を壊す直前、フリオニールがスコールの背中に覆い被さって、尖った犬歯がスコールの項に突き立った。


「─────────っっっ♡♡♡」


 その瞬間にスコールの全身に雷が落ちたような衝撃が迸り、頭の中が真っ白になる程の快感が駆け抜けた。
既にフリオニールの形を覚え込んだ秘孔から蜜が溢れ出し、埋められた雄に絡み付く。
ドクンッ、ドクンッ、と大きく脈を打ったフリオニールが三度目の絶頂を迎えると同時に、スコールもこれまでの経験とは比にならない程の深い場所で天国を見た。

 背中に覆い被さる熱と重み、そして項に食い込む犬歯の感触。
閃光の中にいるような快感の波が続く中、スコールはその意味を悟っていた。


「あ…ひ……♡は……っ♡」
「……ぐ、…うぅ……んんん……っ!」
「んんんんぅぅっ♡♡」


 ぎりり、と項を噛む痛みが増すのを感じながら、スコールは悦楽の中にいた。
ごぷっ、どぷっ、と大量の精液が胎内に注がれている。
腹の中がまた熱を生んで、フリオニールが注ぎ込んだものが吸収されて行くのが判った。

 スコールの背中から回された腕が、赤く火照った細い体を抱き締める。
離さない、と言わんばかりに強い拘束感すらも、今のスコールにとっては幸福の証だった。


「ふ…り…お……っ♡そ、こぉ……か、んで……♡」
「……っは…!はぁっ、はあっ…!」


 小さな穴が開く程、スコールの項を強く噛んで、ようやくフリオニールは恋人を開放した。
抱き締めた腕の中で、かくんとスコールの首が垂れてベッドシーツに俯せになる。
無精に伸びた濃茶色の髪の隙間から、白い項に伝い落ちる一筋の赤い線を見付けて、フリオニールは満足感を得た。

 ベッドに力なく沈んだスコールであったが、アナルはまだフリオニールを強く締め付けている。
言葉を失くしたスコールの代わりに、其処がスコールの喜びを伝えているように思えた。


「あ…う……♡」
「っは…スコール…こっち、に……」
「んぁ……」


 フリオニールの手がスコールの頬に触れて、俯せていた頭を後ろへと向かせた。
肩越しに見えたスコールの横顔は、涙を流しながら悦に染まっている。
その顎に指を宛がい、後ろへとより首を傾かせて、フリオニールは唾液で濡れたスコールの唇に、自分のそれを押し当てた。


「んむ…んん……♡」
「んっ…ふ……っ、はふ…、んん……」
「んっ♡んっ♡ふ、はぁ、あぁあ……っ♡」


 絡めた舌でスコールの咥内をたっぷりとしゃぶって、フリオニールはゆっくりと口を離した。
スコールは舌を出しっぱなしにした顔で、ひくひくと舌の根を震わせながら、うっとりとした表情でフリオニールを見詰める。


「フリ、オ……く、び……かん、だぁ……♡」
「……ごめん…ちゃんと、言わなかった……止められなくて…」


 αがΩの項や首を噛む────それはαとΩが“番”になる為の行為だ。
本来なら、本当なら、相手の意思を確かめてから行わなければならない行為だと、フリオニールは思っている。
そうしなければ、Ωが無理やりαに従わされると言う形にも成り得てしまうのだから。

 嫌がる事はしないと言った。
きっと嫌がる事はないと、フリオニールも思っていた。
だがそれでも、スコールの意思を確かめ、それを尊重して行うべき行為であったと、フリオニールは唇を噛む。
愛し合っているからこそ、守らなければいけない順番もあったのに、と後悔に襲われるフリオニールだったが、


「……フリオ…が…かんだ……♡フリオ…フリオは……俺で、いい……?」
「…スコール……?」
「αじゃ、なくても……Ωの、俺、でも……フリオは…俺が……番で、い、い……?」


 消えない熱の中で、涙を浮かべた蒼灰色が、じっとフリオニールを見詰めて問う。
腕を持ち上げる力すらも入らないのだろう、シーツの波の中で投げ出されていた手が、緩くシーツを握るのが見えた。
同時に、不安の表れと、求める気持ちを隠せない体が、繋がり合ったままのフリオニールを締め付ける。

 スコールを抱き締めていたフリオニールの腕に力が籠る。
それを感じ取ったスコールが、ひくん、と体を震わせた直後、ずるぅっ、と秘孔に埋められたペニスが抜けて行き、


「んぁ────っはあんっ♡♡」


 抜けると思った瞬間、フリオニールは三度スコールの秘孔を貫いた。
半分以上まで抜けたペニスが、一気に根本まで押し込められて、最奥を突きあげられてスコールは嬌声を上げる。

 ずちゅっ、ずちゅっ、ぐちゅっ、と淫音を立てながら、フリオニールはスコールのアナルを攻め立てた。
スコールはベッドに沈んだまま、背中に覆い被さる雄に支配されて喘ぐばかり。


「はっ、あっ♡あっ♡あぁんっ♡フリ、オ、おぉっ♡」
「スコールが、スコールが良いんだ…っ!スコールだけが良いんだ……!」
「あひっ、んっ、ひぃんっ♡ま、た、奥ぅっ♡ゴツゴツしてるっ♡フリオのちんぽで、またっ、きもちいいのっ♡きちゃううぅっ♡」
「αでも、Ωでも、スコールが良いっ!スコールを、スコールを孕ませるのは、俺だけだ…っ!」
「ふあ、あああっ♡」


 腰を打ち付けながら、耳元で囁かれたフリオニールの言葉に、スコールの躰の熱が一気に膨らんだ。
そんな事を言われてしまったら、もうスコールにはフリオニールを拒む事は勿論、彼の気持ちを疑う事も出来ない。
全身の細胞がフリオニールの為に存在しているのだと思う程、スコールは満たされるのが判った。


「フリオ、フリオ、フリオぉぉっ♡俺もっ、フリオがいいぃっ♡フリオだけなのぉおおっ♡」
「はあ、はっ、熱い……っ!中が、また、絡み付いて来る……!」
「フリオのちんぽ♡俺の雌まんこ犯して、いっぱい、いっぱい中出ししてっ!フリオのおちんぽでぇっ、俺のおまんこ孕ませてっ♡妊娠させてぇええええっ♡」


 始まる以前から既にない羞恥心が、今更になって戻って来る筈もなく、スコールは剥き出しになった本能に身を任せて、フリオニールと言う雄を求めて叫ぶ。
スコールの中で雄がまた固くなり、拓いたばかりのスコールの秘奥をこじ開けた。
フリオニールは悦びの声をあげる恋人を抱き締めて、長い長い濃厚な夜は始まった。




 ────以前の闘争の時、他の召喚された戦士達の例に漏れず、スコールもα性であった。
神々の闘争の世界に、そう言った性を明確に示してくれる機械の類や手段は存在していなかったが、あの時自分の性を表明したスコールは、決して嘘を吐いてはいなかった。

 しかし、神々の闘争が終わり、元の世界に戻った後の事。
ある日突然に、スコールの体に変異が起こり、α性からΩ性へと転換してしまったのだ。
その理由は一概に語れるものではなく、二次性徴の最中に起こった体内バランスに因るものだとか、精神的なショックやストレス等が体に何らかの変調を齎しただとか、───とにかくそう言った事らしい。
スコールの世界ではそう言ったものを研究する機関が公的に存在し、これまでの研究記録もある程度は一般人に向けて開示されていたので、性の転換自体は騒がれる程の事ではなくなっていた。
しかし、傭兵学校と言う社会の縮図に等しい空間で過ごす青少年たちの間でも、“二つめの性”と言うものは大きな存在であった。

 自分がΩ性に転換した事に気付いてから、スコールはそれを誰にも気付かれないように隠していた。
しかし、二次性徴の時期であった事も運悪く、Ω性になってから間もなく、初めての『ヒート』が訪れた。
幸いにもスコールの世界と環境では、『ヒート』を抑える為の薬が比較的安価に手に入った為、それを常用すれば日常生活を送る事は可能だった。
この為に保険医にだけは事情を話し、定期的に服用する薬を備えるように努めていたお陰で、Ω性である事は知られずに過ごす事が出来ていた。
薬の常備は少々面倒だが、そうしなければ自分がΩ性だと知れ渡り、想像できる厄介事を避けられるなら耐えて然るべきだと自分に言い聞かせていた。

 だが、再び神々の闘争の世界に召喚されてからは、そうも言えなくなった。
変異してしまった自分以外は、敵も含めて全ての戦士がα性───Ωとなったスコールにしてみれば、この環境は恐ろしいものだ。
『ヒート』が始まればそれこそ阿鼻叫喚が起こりかねない。
それを避ける為にも、抑制剤は欠かさず飲んでいたのだが、スコールにとって最悪だったのは、この世界で抑制剤を手に入れる方法が見つからなかった事だった。

 召喚された時に持っていた薬は、日に日に減って行く。
記憶にある限りの周期を計算して、飲む量を調節し、出来るだけ長持ちさせようとは努力したが、それでも枯渇するのは早かった。
恋人であったフリオニールと再会してから、初めてのセックスをした時、以前のセックスを遥かに凌駕する快感を得た。
フリオニールを受け入れた瞬間から、理性が消し飛んでしまいそうだった。
いっそ飛んでしまえば楽になれたかも知れない、けれどフリオニールは自分をαだと思っているから隠し通さなければならない。
そんな意識もあって、節約したい筈の薬でも、飲まなければ平常心を保つ自信が持てず、常用する事になる。
そんな事をしていれば、元々多くはなかった薬のストックは、あっという間に空になった。

 周期の問題なのか、薬がなくなっても、直ぐに『ヒート』にはならなかった。
しかしそれは、いつ『ヒート』になるか判らない、と言う期間が延びるだけで、安寧には程遠い。
今日かも知れない、明日かも知れない、今かも知れない────そんな不安が付きまとう中で、何も知らないフリオニールに触れられては、嬉しい筈なのに怖い、と言う想いを抱えていた。

 そして遂に、『ヒート』は始まった。
幸か不幸か、一人で散策に出ている時に始まったそれを、どうするべきかスコールは考えられなかった。
荒野の真ん中で蹲っていても治まる筈もなく、ただただもどかしいばかりの体を引き摺りながら、拠点である塔までは帰った。
理性が意識に留まっていたのは其処までで、あとは自分を慰めて誤魔化すしかなかった。
自分の部屋に閉じこもり、どうか早く終わってくれと、必死に慰めていたけれど、一人遊びは虚しいばかり。
恋人の熱が欲しくて欲しくて、考える程に体は熱くなり、もうそれがなければ壊れてしまう、とスコールは思った。
────フリオニールが帰って来たのは、そんな時だ。

 茹った頭では恋人の宥める言葉など聞こえず、自分の躰の変化など伝えられる筈もなく、スコールは夢中でフリオニールを求めた。
ただ、そんな中でも、自分がΩであると知られた事で、フリオニールが自分をどう思うのかと言う不安はあった。
フリオニールがΩ性を卑下するような人物ではないと言う事は判っているけれど、戸惑いを与える事は勿論、α同士ならば考える事がなかった問題など、付きまとうものは幾ら上げてもキリがなかったのだ。

 結果として、スコールのそうした不安は、溶けて消えた。
フリオニールに愛され、項を噛まれた事で、二人は“番”となった。
“番”とはα性とΩ性の間を結ぶ、絶対的な繋がりと言われ、俗に「運命の相手」と称される事もある。
その関係を、フリオニールの方から求められた形となった事で、スコールはようやく安心を得た。
同時にフリオニールと言う“番”を得た事で、Ω性の特徴である『ヒート』も、本能がその必要性を終わらせた事を悟ったかのように、治まって行った。
『ヒート』そのものが消えたのかは判らないが、少なくとも、全ての人間を誘うような強烈なフェロモンが振り撒かれる事はないだろう。

 ────と、一連の出来事をフリオニールが仲間達に説明したのは、一昼夜が明けた後の事であった。

 塔に充満していたフェロモンの匂いは、一晩が経って消えた。
フリオニールと共にバッツがそれを確認して、野宿をしていた仲間達が揃って塔へと上がり、戦闘や散策で疲れた仲間達はようやくの休息となった。
その傍らで、昨日の出来事の委細をしっているメンバーへ、フリオニールから説明が行われ、事情を知った仲間達は、それぞれ安堵する。


「そっか。スコールも大変だったんだね……」


 昨日、『ヒート』のフェロモンによって昏倒寸前まで陥ったルーネスの言葉に、フリオニールは頷く。


「誰かに相談した方が良い、と思わなかった訳ではないらしいんだ。でも、誰に相談して良いのか判らなくて、誰にも言えなかったって」
「スコールだからな。有りそうな事だ。色々と余計な事も考えた節がありそうだが、この環境では仕方がないだろうし」
「自分だけがΩだもんな。おれでもそうなったら多分黙ってるだろうなぁ」


 飄々として、性の差異など大した事ではない、と言いそうなバッツだが、それも環境が許してくれればの話だと判っている。
異世界から召喚された者ばかりが集まり、それぞれ常識の水準も違うとなれば、迂闊な事は言えないだろう。
万が一、敵である混沌の軍勢にも知られる事があると思えば、尚更。


「それで────貴方が彼の“番”になったと言う事は、少なくとも、『ヒート』に関する心配はもうしなくても良いと言う事かしら」
「ん……ああ。多分、もう大丈夫だと思う」


 ヤ・シュトラの確認の言葉に、フリオニールはやや口籠りつつ頷いた。
僅かに顔を赤らめ、囲むメンバーの視線から逃げるように顔を逸らすフリオニールに、ヤ・シュトラがくすりと笑う。


「可愛いものね」
「え?」
「いえ、何でも」


 聞こえた言葉にフリオニールが聞き返すと、ヤ・シュトラはひらりと視線を逸らしてしまった。
何の話だろう、とフリオニールが首を傾げていると、つんつん、と背中を誰かに突かれる。
振り返ると、ティーダが立っていた。


「な。スコールはもう大丈夫なんだろ?」
「ああ、一応は」
「今は何してるんスか?部屋にいる?」


 帰って来た一同が思い思いに集まり、過ごしているフロア内を見回しながら、ティーダはスコールの居場所を聞いた。
落ち着いたのなら見舞いでも、と言う気持ちなのだろう。
仲間思いなティーダの言葉は、フリオニールにとっても嬉しいものであったが、


「部屋で休んでると思う。だから、その……様子を見に行くなら、後にしてやってくれないか」
「そうそう。空気を読もうぜ、ティーダ」


 やんわりと見舞いを断ろうとするフリオニールに、援護射撃をしたのはジタンだ。
しかしティーダは唇を尖らせて拗ねて見せる。


「ジタンはスコールが心配じゃないんスか?フリオが言うんだからもう平気だとは思うけどさ、Ωの『ヒート』の後って、色々大変だって皆言うし。何かしてあげた方が良い事とかあるんじゃないの?」
「だからこそって事だよ。今はそっとしておいてやるのが、オレ達がスコールの為に出来る事だ」


 ジタンの言葉に、ティーダは余り納得していない顔をしているが、辺りを囲む仲間達が総じて頷いているのを見て、「判った」と言った。
拗ねた顔は相変わらずであったが、素直なティーダの反応に、フリオニールは蜜色の髪を撫でる。


「ありがとう、ティーダ。気持ちだけで十分嬉しいよ。もし何か必要な事があれば、その時は頼るから、良ければ手伝ってくれ」
「勿論っス!」


 なんでも任せろ、とばかりに胸を張るティーダに、フリオニールもよろしく、と頷いた。

 ティーダも納得した所で、カツン、と踵の音が鳴る。
ライトニングのブーツの音だ。


「スコールがΩと言う事は、皆に伝えておくか?偏見を持つ輩はいないと思うが、どうする?」
「…話しておくか。スコールは隠したがるかも知れないが、隠していた事であの騒ぎになってしまった訳だしな。下手な憶測で余計な誤解は招きたくない」


 ライトニングの問いに、クラウドが返す。
それで良いか、と仲間達の貌を見回して、一連の反応を確かめた。
最後に二人の視線はフリオニールへと向いて、スコールの代わりの返事を求める。


「ああ。スコールには俺からちゃんと話しておくから、皆の方は頼む」
「了解。じゃあ、各自で手分けして」
「判った」


 それぞれの気持ちを汲み取って、クラウド達は散っていく。
フリオニールは少しの間それを見送った後、踵を返した。

 『ヒート』は収まった筈だと仲間達には伝えたが、フリオニールは未だに甘い香りを嗅ぎ取っている。
昨日のように、頭を揺さぶる程の強烈なものではないが、ほんのりと漂うような気配は、絶えずフリオニールを誘っていた。
けれど、仲間達の様子を見るに、恐らくそれを感じ取っているのはフリオニールだけなのだろう。

 匂いを辿るように通路を進み、一晩を過ごした部屋の前で止まる。
コンコン、と形ばかりのノックをしてから、ドアを開けて中に入った。
電気を点けず、薄暗い部屋の中には、ベッドで蹲るように丸くなって眠る恋人の姿がある。

 フリオニールはベッドに座って、眠るスコールの頬に手を当てた。
すぅ、すぅ、と規則正しい寝息の音を聞けば、彼が深い夢の中にいる事が判る。
それだけ深い眠りにいるのは、昨日の夕方から今日の朝まで、交わり続けていた事が原因に他ならない。
一度事情を聴く為に休憩する時間も設けたが、その後にはまた体を重ね合っていたから、休息などなかったも同然だ。

 頬を撫で、そっと滑らせて行ったフリオニールの手が、スコールの項に触れる。
昨日強く噛んだ其処には、血を滲ませた歯型の痕がくっきりと残っていた。
フリオニールの指先が其処をくすぐると、ぴくん、とスコールの肩が微かに震える。


「ん……」


 むずがるような声が漏れたが、スコールが目を開ける事はなかった。
もぞもぞと身動ぎをして、端に座るフリオニールに甘えるように身を寄せる。
以前と変わらない甘え方に、フリオニールは小さく笑みを零していた。




オメガバースで全員α×スコールだけがΩと言う萌えを頂いた。
そんな環境で発情期が始まったら大変だよね!それも良いよね!でも今回はフリスコでラブラブエンドです。

いつもの事ですが、美味しいとこだけ設定を貰っています。
一先ず落ち着いたスコールだけど、フリオニール限定で不定期に発情期を迎えていたら私が楽しい。