境界の向こうに


 くったりとしどけなく沈む肢体を、アイスブルーの瞳が見下ろす。
緩んだ唇から、はあ、はあ、と静かな熱を孕んだ呼吸が繰り返され、それに合わせて、皺だらけになったレースカーテン越しに薄い腹が上下している。
ウォーリアの手が徐にその腹に触れ、臍から下に向かって指がつうっと滑る。
其処に、今、ウォーリアは欲望を注ぎ込んだ。
その感触がまだ残っているかのように、スコールがふるりと体を震わせる。


「あふ……ん……♡」


 スコールの腕がもぞもぞと動き、ウォーリアの指が辿った場所に手を当てる。
嫌がっての事ではない、ウォーリアの指を模倣するように、スコールは同じ場所に手を滑らせた。
スリット入りのカーテンがするりと滑り落ちて、体の横にふわりと広がる。


「ウォル…ウォル…あぁ……♡中…熱い…よぉ……っ」
「ああ……すまない」
「あっ……!」


 スコールの虚ろな言葉を聞いて、ウォーリアは腰を引いた。
まだ締め付けの緩まないアナルから、やはりこれも太いままのペニスがずるり、と出て行くのを感じて、スコールは切ない声を上げ、


「やっ、やっ……!ウォル……っ!」


 小さな子供のようにスコールが頭を振る。
泣き出しそうな顔で見上げている事に気付いて、ウォーリアは動きを停めた。


「すまない。苦しいか?」
「ちが……」
「では、何処か痛いのか」


 心配して訊ねるウォーリアだったが、スコールは首を横に振る。
そうじゃない、と言うスコールに、ウォーリアは何を我慢させているのか、無理をさせる訳には───と考えるが、


「もっと……して……」


 消え入りそうな声で、顔を真っ赤にしながら、スコールは言った。


「抜くの、やだ……もっと…いっぱい、したい……」
「それは────」
「なんで……だめ……?」


 躊躇うように言葉を淀むウォーリアを見て、スコールの顔がくしゃりと歪む。
泣き出す一歩手前の表情に、ウォーリアはぐっと唇を噤んだ。
その様子がまた、スコールの心を締め付ける。


「やぁっ……!やだ、もっと…もっとウォルが欲しい…っ!」
「ス───」


 がばっとスコールが起き上がり、ウォーリアに抱き着く。
勢い余ったその行動に、虚を突かれたウォーリアは、スコールの体を受け止めて背中からベッドへと倒れた。
繋がったままの秘所がぐりゅっとスコールの中を抉り、「ひぅんっ♡」と甘い声が上がるが、


「はっ、はふ……っ、ウォル……ウォルぅ……っ」


 縋るようにしがみ付いて、繰り返し恋人を呼ぶスコールの声は、涙交じりになっていた。
そのままスコールはウォーリアの上に覆い被さるように身を重ね、腰を上下に動かし始める。


「あっ、あっ♡ウォル、んっ……あぁっ!」
「……っ…!」


 スコールはウォーリアの胸に抱き縋り、膝を立てて腰を持ち上げて尻を振っている。
ウォーリアからは目の前にあるスコールの貌だけで視界が一杯になっているが、繋がっている場所が、艶めかしい肉壁が、何度も何度もペニスを扱くので、スコールが何をしているのかは分かった。

 スコールが腰を動かすリズムに合わせて、ベッドのスプリングが音を立てる。
その隙間に、にゅぷ、じゅぷ、ぐぷっ、と言う淫水の音が聞こえていたが、スコールは構わずに夢中で腰を振っていた。
太いペニスが柔らかくなった秘孔から出入りする度に、擦れる肉と肉の隙間から、注ぎ込まれた精液が溢れ出してくる。


「はっ、はっ、あっ、あっ!ウォル、ウォルのちんぽ…あぁっ♡まだ、こんなに、固い……んふぅっ♡」


 ウォーリアのペニスは、真っ直ぐに天を突いており、全く萎える様子がない。
スコールはそのペニスを確りと深く咥え込んで、逃がすまいとするように、意識して括約筋に力を入れて締め付ける。
きゅうぅ、と肉壁が締まる度に、耐えるようにウォーリアの眉間に皺が寄せられた。
スコールはそんなウォーリアに顔を近付けて、普段の自分と負けず劣らずの皺が寄った眉間にキスをする。


「っん、は……はっ、あっ、はぁっ、あぁ…っ!」
「スコール…、っは、君は……」
「あっ、あぁっ、ウォル…ウォル……っ!」


 薄らと戸惑いの混じった瞳が見上げている事に、スコールも気付いた。
途端にじわりと罪悪感か背徳感のようなものがスコールの背中に汗を滲ませるが、咥え込んだ雄を離す事は出来ない。
スコールは呼吸を荒げ、喘ぎながら、止まらなくなった心を吐き出した。


「ウォル、おれ、もっと…もっとしたい……!ウォルと、セックス、いっぱい、したいぃ……っ!」


 言いながら、スコールは言葉だけでは足りないならと、ウォーリアを締め付けて訴えた。
秘孔は蕩けているが、柔らかいだけではなく熟れて熱を持っており、咥え込んだものを誘うように何度も締まりを見せて来る。
それがスコールの言葉が嘘やまやかし等ではなく、本心から望んでいることだと示していた。


「ウォルは…あっ、あっ♡俺を、…んっ、大事に、してくれる、けど……はふぅ…っ!も、もっと、もっといっぱい、抱いて…あぁっ♡俺の中、掻き回し、て、ほしいって…お、おれ、思って、思ってぇ……んんぅっ♡」
「スコール、」
「い、一回だけじゃ、足りなくて……っ!あんたも、足りない、って、はっ…!だって、い、いつも、あっ♡ひ、一人で、してる…の、お、俺っ、知ってるんだ、から、な……あぁっ!」
「それは、」


 スコールの言葉に、ウォーリアは目を瞠る。
知っていたのか、と言うその表情に、気付いてないと思ってたのか朴念仁め、とスコールは言いたかったが、口から出て来るのは喘ぎ声しかなかった。
代わりに、ぎゅうっ、と秘孔を絞めてやると、ウォーリアの喉が苦し気にぐっと鳴る。


「う……スコール……っ!」
「ん、んんぅ……っ♡…やっぱり…大き、い……くふぅん…っ♡」


 締め付けた事で苦しいのは、スコールも同じだった。
たった一度の射精だけでは全く衰えないペニスは、狭いスコールのアナルを一杯に広げている。
それを意図的に狭めて締め付ければ、その形も脈拍もより鮮明に感じられるようになって、スコールの劣情を煽るものになる。

 スコールは恋人に縋っていた体を起こして、ウォーリアの腹に両手を突き、膝立ちになった。
ベビードールの肩紐が落ちて、二の腕で引っ掛かって止まっている。
胸を覆っていた部分もずれているので、ぷっくりと膨らんだ乳首が晒されており、下から見上げているウォーリアからはより主張が強くなっているように見えた。
薄布はすっかり皺だらけになっていたが、その透けた皺が奇妙な臨場感を与えて、スコールの火照った躰をフェティッシュに飾る。

 どくり、とウォーリアの心臓が脈を打ち、血管に送り出される血液量が上がる。
それが集まるのは中心部で、咥え込んだスコールにはその効果が如実に体感できた。


「ウォルのちんぽ…ドクドクしてる……♡あんた、興奮、してる……?」


 そう言うスコールの声色には、「興奮してくれてる?」と訊く声も混じっていた。
ウォーリアが乾いた感覚のある口を動かさずにいると、焦れたスコールが腰を揺らす。


「んん……んっ♡んふぅ……っ♡」
「……っ…!」


 ゆら、ゆら、と腰を左右に揺らし、かと思うと緩やかに回すような動きを見せる。
肉壺の中でペニスがぬるぬると艶めかしい感触に包まれるのが判って、ウォーリアは息を飲んだ。

 スコールが腰を浮かせると、アナルから太いままのペニスがゆっくりと抜けて行く。
肉はそれを手放すのをいやいやと絡み付きながら離れて行き、半分まで抜けた所でまた中へと招き入れた。
艶めかしく濡れて蠢く肉壁が、逞しく固い雄を咥え込む度に、嬉しそうに震えて肉剣に吸い付く。
その感触に酔い痴れながら、スコールは徐々に上下運動のリズムを上げて行く。


「ん、んっ、はっ、はっ…♡はふっ、はう…っ!ふぅんっ♡」


 スコールの律動に合わせて、ベビードールの裾がふわふわと舞う。
白いレースが翻っては広がり落ちて、踊るスコールに細い腰を隠し晒しと繰り返した。
臍の下では、小さな布地では隠せなくなった可愛らしいペニスが頭を出しており、じわじわと先走りの蜜を溢れさせて、下着ごとスコールの股間をぐしょぐしょに汚している。

 体を重ねる時、二人はいつも裸だった。
ウォーリアは上だけを脱ぎ、下はラフにしている事もあったが、スコールが何か衣服を着たままと言うのはなかった。
況してや、普通の服ではない、下着としてすら機能しているのか判らないような服と言うのは、ウォーリアには初めて目にするものであった。

 裸のようで裸でなく、かと言って隠している訳でもない。
色付いて膨らんだ胸の果実も、汗を滲ませた薄い腹も、引き締まった腰も見えている。
見えているのに、薄いベールに覆われていたり、申し訳程度の面積しかない布で覆ったり。
そう言えば、後ろに至っては紐しかないのだと思い出して、どくんとウォーリアの鼓動が鳴った。


「ふあんっ♡」


 感触の変化を感じ取って、スコールが声を上げる。
仰け反った背中がヒクッヒクッと小刻みに震え、開いた唇がはくはくと呼吸に喘ぐ魚のように開閉を繰り返す。


「あ…は……、はっ、あっ、あっ、あっ♡」


 膨らんだ感触が少しでも衰えない内に、スコールは腰を振る。


「ウォル、なあ、ウォル……っ♡おれ、もっと、したいから、していいから、」
「っは……く…、う……っ」
「その為に、あっ♡あんたとしたかったの、がまん、して…っ、あんたが誘ってきてくれるの…待ってた、のに……っ!来ないから、こんな、こんな格好も、して…っ!」
「スコール…く、きつくなって……」
「な、なのにあんた、また、一回しか、しないでっ♡おわ、終わろうとしてっ!ちんぽ全然っ、萎えてっ、ないのにっ!こんなに、ああっ、かた、固いのにっ♡やだ、やだ、一人で、しちゃ、やだぁっ♡おれだって、おれだってぇっ!ウォルとっ、ウォルにしてっ、もらうのっ!がまんしてたっ、のっ、にぃいっ!」


 横たえたウォーリアの上に跨り、蕩け切ったアナルで雄を咥え込んで、夢中で腰を振って奉仕をしながら、スコールは叫ぶように心を吐き出していた。
何もかもぶちまける事への抵抗感は、秘孔が突き上げられる度に走る快感に飲み込まれ、何も考えられなくなって行く。
そうなれば一番柔らかくて素直な部分だけが残って、快感を欲しがり貪る躰と同じように、無我夢中で恋人を欲しがる事しか出来なくなる。


「やだぁっ、ウォルっ!一人でしないで、一人にしないで!おれ、おれっ、ウォルじゃなきゃっ、やだっ、ああっ!ウォルのちんぽじゃないと、おれ、イけないっ、からぁっ♡」
「スコール、私は……っ」
「はっ、あっ、ドクドクしてる、あっ♡ビクッて、震えて、んんぅっ♡はあ、中、ウォルのちんぽで…あふっ、掻き回してるの、気持ちいい……♡俺も、ウォルのちんぽ…気持ち良く、するから……がんばる、からぁ……っ!ウォルも、おれで、おれだけでイってぇっ!」


 叫ぶように声を大きくしながら、スコールは強く腰を落とす。
ずぷぅっ、と一際奥まで入った熱棒に、細い腰がビクンビクンと跳ねる。


「ふぅううんっ♡」


 食い縛った唇の奥から、官能の声が上がった。
びゅくんっ、とスコールのペニスが蜜を噴く。
がくがくとスコールの膝が震えているが、スコールはウォーリアの腹に置いた両手で体を支え、懸命に律動を続けた。


「はっ、はーっ、あっ、あっ、あっ♡ウォルは、おれだけっ…!おれだけで、ああっ、気持ち、良く、なって…ぇっ、あっ♡」
「スコール、待ってくれ……、う、く、」
「やだっ、あふっ♡待たない、んっ、止まんないっ!ああっ、ウォル、ウォル、ウォルうぅっ♡おれの中、おまんこ、ウォルのちんぽで一杯……っ!はあっ、イって、ウォル、イってぇっ♡俺の、おれのおまんこの中でっ、イってよぉおっ♡」


 スコールは髪を振り乱しながら、無我夢中になって腰を振る。
最奥から分泌された淫蜜が、先に注ぎ込まれた精液と絡まり合い、肉の摩擦を和らげて、スコールの律動を助けている。

 スコールは両膝を浮かせてベッドを踏み、踵を上げた。
爪先立ちの両足と、ウォーリアの腹に乗せた手の三点で体を支える体勢になる。
両足がM字気味に開いている所為で、ベビードールの裾が捲れて後ろに流れ、股間が丸見えになっているかと思いきや、ウォーリアからは支点にしている腕が陰を作ってしまう。
それでも腰を左右に振ると、雄を咥えたアナルと、勃起したペニスがちらちらと見えた。

 全身全霊の奉仕をしている内に、スコールも高ぶって行く。


「ウォル、ああっ、あぁんっ♡もっ、もうっ…おれ、イく…っ!ウォルのちんぽ、んんっ、気持ち良くて、はふっ、先に……あぁっ!イく、イくぅううっ……!」
「っは、う…また、きつく……っ!」
「あうっ、うぅんんっ♡」


 きゅうっ、きゅうっ、と絶頂を堪えようとするスコールのアナルが何度も伸縮を繰り返す。
それがウォーリアは勿論、スコール自身をも更に追い込んで行き、


「イっ……んんんんっ!!」
「う、ぐ……っうううっ!」
「ふぇあっ♡あっ♡あぁあああんっ!!」


 競りあがって来た昂ぶりを抑えられず、スコールが絶頂した直後、その強烈な締め付けに搾り取られるように、ウォーリアもスコールの中へと二度目の熱を吐き出した。
一度目と何ら変わらない濃い精液の注入に、スコールは目を白黒とさせながら甘い悲鳴を上げる。

 どぷっ、びゅるるるっ!と勢いよく吐き出されたウォーリアの劣情を、スコールは一滴と逃すまいと、余す所なく受け止めた。
しかし小さく狭いアナルは、ウォーリアを咥え込んでいるだけで一杯一杯になっている。
奥に注がれたが居座る場所を貰えなかった精液が、繋がった隙間からごぷっと泡を噴いて溢れ出した。


「ふ……あ……」


 ビクッ…ビクッ……と強張り震えていたスコールの体から、かくりと力が抜けて、ウォーリアの胸に倒れ込む。
繋がる角度が変わって、ぐりっ、と肉壁の後ろを抉られる感覚に、スコールの体がびくりと反応した。


「は…はあ…は……う……♡」
「スコール……」


 胸の上で、はあ、はあ、と荒い呼吸を繰り返している恋人を見下ろすウォーリア。
名前を呼んでみると、ぼんやりとした蒼の瞳が、のろのろと此方を見上げた。

 これまでに何度か───少なくとも、両手で数えるには足りない位に───スコールとセックスをしているウォーリアだが、彼のこんな痴態は初めて見る。
セックスに誘ってくる事はあるが、最中はウォーリアの触れるように任せている事が多く、自分から積極的に行為を進める事はなかった。
二回目をねだるのをウォーリアが宥めると、少し不満そうな顔はするものの、大人しく眠る。
今夜のように、自ら激しく快感を求めるように動くスコールと言うものを、ウォーリアは初めて見た。

 驚きもあり、ウォーリアがじっとスコールを見下ろしていると、


「……っふ……うう〜……っ」


 ふる、とスコールの肩が震えたかと思うと、唸るような声が聞こえる。
どうかしたかと声をかけようとしたウォーリアだったが、ぐす、と鼻を啜る音に気付いて、目を瞠る。


「スコール?」
「っ……んっ…うぅ……」
「スコール、顔を上げてくれ」
「……っ…」


 名を呼び、促すウォーリアだったが、スコールはふるふると首を横に振った。
顔を見られたくない、とウォーリアの胸に顔を埋めている。


「…スコール」
「……っひ……ひっく……」
「……スコール」


 繰り返し読んでも、スコールは動かなかった。
しゃっくりを繰り返しながら、くぐもった泣き方をしているスコールに、ウォーリアは眉尻を下げる。

 スコールが泣いているのは、胸に伝う熱い雫の感触が教えてくれていた。
その雫を拭ってやりたいと思うのに、スコールは断固として顔を上げようとしない。
どうしたものかと悩んだ末に、ウォーリアはスコールの頭にそっと手を当てて、柔らかな髪を手櫛で梳く。
するとスコールは、すん、と鼻を鳴らした後、様子を伺うようにそうっと頭を持ち上げて、ウォーリアの顔を見上げる。


「……うぉる…、」


 ひっく、とまた喉を鳴らすスコールに、ウォーリアは不器用に微笑みかける。
汗と涙で濡れた頬に手を当てると、スコールはすりすりと猫のようにその手に頬を摺り寄せた。
それからスコールは、はふ、と一つ息を吐いて、


「……不安に、なったんだ。あんたが…一人でしてるの、見たから……」


 最中にスコールがぶつけるように吐き出した言葉。
それをもう一度、今度は静かな声で伝えられて、ウォーリアは俯いた。


「…すまない」
「……」


 詫びるウォーリアに、スコールの眉間の皺が深くなる。
眦にまた大粒の雫を浮かび上がらせて、スコールは「なんで…?」と言った。


「……なんで…一人でしてた?俺とした後に…俺には、寝ろって言って……なんで、俺にさせてくれなかった……?」
「君に無理をさせたくなかった」
「……いつも一回しかしてないだろ……俺がイくのは、一回だけじゃない方が多いけど…でも俺は、もっとしたいって言った。もっと出来るって…」
「………」


 セックスに体が慣れて来てから、スコールはいつも二回目を強請っている。
それは単純に若い性欲から来るものもあったが、心の安寧を求めて、もっと恋人の存在を感じたいからでもあった。
もっと繋がって、もっと重ねて、もっと熱を共有していたい。
明日の事を考えなくて良いのなら、朝までだって繋がっていたいとすら思っている。
けれど、それをウォーリアが許してくれなかったのだ。

 口を噤んでしまったウォーリアに、スコールの顔がくしゃりと歪む。


「本当は…俺としたくないんじゃないかって……俺がしたいって言うから、あんたは俺に甘いから……仕方なく、セックスしてる、だけ、で……本当、は……」
「スコール」


 ひく、とスコールの喉が引き攣った時、ウォーリアの凛とした声が名を呼んだ。
スコールの頭を撫でていた手が、後頭部にそっと添えられる。
緩い力で顔を上げるように促されて、スコールは素直に従った。
見下ろすアイスブルーが、悲痛な色を宿している事に気付いて、ずきりとスコールの胸が痛む。


「ウォル……?」
「……随分と不安にさせて、すまなかった。そんなつもりは、なかったんだ」


 低く静かな声が、スコールの耳に溶けるように吸い込まれて行く。


「私は、君を大切にしたいと思っている」
「……ん……」
「君を傷付けたくない。苦しい思いをさせたくない」
「……」
「そう思っている。だが、時々、……そう言った気持ちとは反対の事を、君に対して行おうとする自分が、いる」


 ウォーリアのその言葉に、スコールはぱちりと目を丸くする。
どう言う事だろう、と見つめる蒼灰色の瞳が、いつもの大人びた双眸とは全く違う幼さを宿していて、その様子がウォーリアに言いようのない罪悪感を齎した。


「例えば、君を抱いている時。君をもっと乱すにはどうしたら良いだろうと、考える事がある」
「……!」


 思いも寄らぬウォーリアの台詞に、スコールの顔がぼっと赤くなった。
え、え、と混乱したような声を漏らすスコールを、ウォーリアは柔らかく頬を撫でながら見下ろす。


「繋がっている時の、私を感じている時の、君の顔が好きだ。それをもっと見ていたいと思う。私の手で感じ、果てている君を見る度に、酷く体が熱くなって抑えが利かなくなる。君は優しいから、私が求めれば応じてくれるのではないかと思いもしたが、その後、自分を制御できる自信がなかった。君の事を大事にしたいと思っているのに、それ以上に、君を私の思うがままにしたいと思う自分もいる」


 例えばキスをしている時、例えば中を解している時。
ウォーリアの愛撫一つで、スコールは乱れ喘ぎ、他の誰にも見せた事のない、あられもない姿を曝け出す。
それを知っているのが自分だけだと言う事に、ウォーリアは喜びを感じていた。
それだけでも十分な事だと言うのに、欲を覚えた体と言うものは際限を忘れたようで、もっと見たい、もっと欲しがらせたい、と言う欲望まで抱くようになった。

 その感情のままに、ウォーリアがスコールを抱く事は容易いだろう。
スコールはウォーリアの事が好きだから、ウォーリアが欲する事なら、強く拒絶する事はない───出来ないと言うのが正しいかも知れない。
しかし、だからと言って、衝動のままに彼を抱く事はあってはならない。
スコールから拒絶されない事を良い事に、自分の欲望に従うなどと言う事は、絶対に許されないのだ。


「……だから、セックスは一度だけと決めていた。二度目をすれば、きっと君に無理をさせる。自制が出来なくなってしまう。したいと言う君の願いを断る度に、悲しい思いをさせているのかも知れないと、思ってはいた。だが、君を傷付け、怯えさせたり、嫌われたりするよりも良いと、思っていた」
「……ウォ、ル……」


 そんなの初めて聞いた───言葉よりも鮮明な蒼灰色の瞳が、そんな感情を浮かび上がらせている。
ウォーリアはそれを見詰めながら、緩く口端を上げた。
それは笑みであったが、ほんのりと自嘲の気配を滲ませている。


「だが、その所為で君を酷く不安にさせてしまったのなら、謝ろう。すまなかった、スコール」


 言葉をともにウォーリアの頭が少し降りて、スコールの額に口付けが触れる。
特徴的な傷の走る其処は、他の所よりもほんの少し皮膚が薄くて敏感になっている。
くすぐったさに、ふ、とスコールが小さく吐息を漏らしたのが聞こえた。

 スコールの腕がウォーリアの首に回される。
ぐっと首を伸ばしたスコールの顔が、ウォーリアのそれに近付いて、二人の唇が重なった。
触れるだけのものだったが、なんだか随分と長い時間、そのままで過ごしたような感覚に甘えた後で、スコールがそっと放す。
と、ぽすっ、とウォーリアの首元にスコールの頭が埋められ、


「……ばか……」
「すまない」


 零れたのは抗議だったが、其処には安堵があった。
それでもウォーリアが詫びると、謝るな、と小さな声で言われた。


「……ウォル……」


 名を呼ぶ声と共に、スコールがウォーリアの体に体重を預ける。
二人の体の間で、薄い布地がするすると滑って、心地良いようなもどかしいような感覚がした。
それが、まだ繋がっている二人の燻る熱を煽り、神経を辿るようにじわじわと全身へと広がって行く。

 見上げるブルーグレイには、隠さない熱が宿っていた。
擦れ違っていた心の在処が、理由も含めてはっきりと判ったのだから、もう我慢しなくても良いだろう、と。
今まで許して貰えなかった分も含めて、欲しい、とねだる真っ直ぐな蒼を、ウォーリアはもう拒絶する理由を持っていなかった。

 ウォーリアはスコールの背を抱き、腹筋の力だけで起き上がると、そのままスコールをベッドへと沈めた。
繋がったままで視界が反転したものだから、スコールが「ひぅうんっ!」と甘ったるい悲鳴を上げた。
じんとした熱と刺激がスコールの腹の奥を抉って、引っ繰り返った身体がビクッビクッと跳ねる。


「あっ…う……ああぁんっ♡」


 はあ、はあ、と体の熱を宥めようと呼吸していたスコールだったが、直ぐにウォーリアが覆い被さって来た事で、また呼吸が止まる。
ぬぷぷぷっ、と一気に深くなった挿入に、スコールは喉を逸らして喘いだ。

 ぎしり、とスプリングの軋む音がして、スコールの視界に陰が落ちる。
銀糸と透明な青に占領された世界で、スコールはこくりと息を飲んだ。


「スコール。私は今も、君を大切にしたいと思っている」
「……ふ…ん……っ」
「だが、すまない。今夜だけは、無理をさせてしまうかも知れない」
「……っ」


 ウォーリアのその言葉を聞いて、スコールの腹の奥がきゅぅんっと切なく啼いた。


「……っいい……っ」
「…辛くなったら、言ってくれ。止めるよう、努力をしてみる」


 重ねて言うウォーリアだったが、スコールはそれでも良い、と首を横に振る。


「あんたの…したいように…っ、俺も、それがいい……っ」
「……良いのか」
「あんたの、好きに、され、たい…から……っ」


 そう言いながら、スコールは咥え込んでいる雄をきゅううっと締め付けた。
早く奥に欲しくて堪らない。
これ以上焦らさないで欲しい───と訴えるその反応に、ウォーリアはこれまで抑え込んできたものが一気に芽吹くのを感じた。

 ぐちゅり、とスコールの下肢で濡れた音が鳴った。
二度の射精を受け止めた其処から、ゆっくりとペニスが抜けて行く。
肉壺はまた駄々を捏ねて引き留めるように絡み付くが、濡れそぼって柔らかくなっている為に、完全に留める事は出来ない。
ねっとりとした感触を味わいながらウォーリアが腰を引いている間、スコールはふるふると体を震わせながら、この後の期待に胸を高鳴らせていた。

 半分よりも更に抜けて、スコールは自分の奥内が物足りなく疼いているのを感じていた。
早く早く、もう一度早く、と急かしたくて堪らなかったが、見下ろす男の双眸に滾るものを感じ取って口を噤む。
ドキドキと煩く跳ねる鼓動が、ウォーリアに聞こえているのではないかと思うと、それだけで酷く恥ずかしく、興奮してしまう。
それが蜜壺を益々いやらしく濡らし、膣のように蕩けたその奥から、とろりと腸液を溢れさせた。


「っは…ん……ウォル…うん……っ♡」


 待ち遠しさについ名前を呼ぶ。
すると、ウォーリアの瞳がスコールを捉えて、すぅと細められた。
端正な顔が近付いて来るのを見て、スコールは目を閉じる。
望んだ通りに二人の唇は重なった。

 ちゅく、ちゅぷ、と唾液を絡ませて口付け合いながら、ウォーリアはスコールの膝裏を捕まえる。
その膝を自身の肘に引っ掛ける形のまま、真上から覆い被さる位置を取り、


「スコール」
「…っは……ウォ、ル……っ!」


 最後の確認の音で名を呼べば、スコールも応えた。
ウォーリアの先端だけを咥えている淫壺が、きゅぅ、と締め付けて雄を誘う。

 ────ずんっ!と強く重みのある衝撃が、スコールを襲った。


「んぉああぁっ♡」


 入口から奥までを一気に貫かれ、ペニスが根本まで捻じ込まれる。
全身を突き抜けた強烈な快感電流に、スコールは身を仰け反らせて喘いだ。
その声が反響になる暇も待たず、ウォーリアは力強い腰遣いでスコールのアナルを何度も何度も突き上げる。


「はっ、ひっ!あっ、あっ、あぁっ♡んぁあっ!」


 太く固いペニスが、ゴツッゴツッと秘奥を打つ度に、スコールの口から喘ぎ声が押し出てしまう。
ビクッ、ビクッ、と体が突き上げに合わせて跳ね、自分でそれを抑える事も出来ない。
いつも優しい律動から始まるセックスをしていたから、こんな事は初めてだった。


「んっ、んぁっ♡ああっ♡」
「スコール…スコール……!」
「あふっ、あっ、あっ、うぅんっ♡奥に、あっ、来て、ああっ♡」


 ウォーリアの手がスコールの腰を掴み、ぐっ、と強く引き寄せた。
同時に腰を前へと突き出せば、ずぷんっ、と一際深くスコールの体を貫く事になる。
スコールの手がベッドシーツを力一杯握り締めて、仰け反った喉に浮き上がった喉仏がヒクヒクと痙攣した。


「んぁ、ああぁっ♡あう、はっ、はっ、あっ♡はぁっ、あぁっ♡」


 ウォーリアが背中を丸め、スコールの鎖骨に唇を寄せた。
ちゅう、と吸われる感覚と同時に、ウォーリアの長い銀色の髪が落ちて、スコールの肌を擽る。
それさえもスコールには快感になって、縮こまらせた肩がビクンッビクンッと大仰に反応を示す。


「は、ひ、あぁっ♡ウォル、んっ♡」
「ちゅ、ん、」
「あぁんっ♡胸、胸だめっ♡乳首、あぁあっ♡」


 乱れたベビードールは、スコールの胸を隠す事をすっかり放棄していた。
色付いた突起にウォーリアが吸い付くと、スコールは胸から襲う快感に体が震え、秘孔がきゅんっと閉じてしまう。
ウォーリアはスコールの蜜壺が自身を強く締め付けたのを感じ取り、狭くなった肉道を押し開くように、ずんっ、ずんっ、と腰を打ち付ける。


「はふっ、あっ、あぁんっ♡ウォル、あっ、深いぃっ♡んや、抜けて、あひぃっ♡また奥にぃっ、ああぁっ♡」


 ウォーリアは大きく腰をグライドさせて、スコールの腸壁を入り口から行き止まりまで、余す所なく扱き上げる。
太いカリ首が何度も肉ヒダを前後に往復し、ぞりゅっ、ぞりゅっ、と細かな凹凸を擦りながら前後して、全ての性感帯を拓かせていく。


「ああ、ウォル…ああっ、太い♡やっぱり、んぁっ、ウォルのっ、大きくてぇっ♡俺の中っ、すごくっ、拡がってるぅうっ♡」
「スコール…っ、は…苦しくは、ないか…?痛みは……っ」


 律動を続けながら、ウォーリアは問う。
汗を滲ませ、眉根を寄せるウォーリアのその言葉に、スコールはぶんぶんと首を横に振り、


「ないっ、ないからっ♡平気だから、もっとぉっ!もっと一杯、ずぽずぽしてっ♡ウォルのことだけっ、考えたい、からぁっ♡」


 痛いのも苦しいのも、寂しいのも、スコールは要らないし、感じていない。
そんなものよりも、今はウォーリアの存在だけを全身で感じていたかった。

 きゅううっ、とスコールのアナルがウォーリアを強く締め付ける。
余計なことを聞かないで、集中しろと言われているような気がしたのは、強ち間違ってはいないのだろう。
強い締め付けにウォーリアが眉根を寄せていると、スコールの腕が伸びて来て、ウォーリアの首に絡み付いた。
吐息と一緒に喘ぐ声がウォーリアの耳朶に触れる。
更には、喘ぎ啼く唇から覗いた赤い舌が、ウォーリアの耳殻をちろりと舐めた瞬間、


「はぅうんっ♡」


 むくぅっ、と胎内でペニスが膨張したのを感じて、スコールが悦びの声を上げる。
ウォーリアはスコールの体の横に両手をついて、一層激しく腰を打ち付け始めた。
ウォーリアの腰骨と、スコールの尻がぶつかり合って、パンッパンッパンッと高い音を鳴らす。


「はふっ、あひっ、あぁっ♡ウォ、ああっ、ウォルっ、熱いっ♡熱くて太いのが、あっ、当たるっ♡きもちいっ、とこぉっ、当たってるよぉおっ♡」


 幹がやや反り返る程に固く勃起したペニス。
その亀頭が、秘奥に隠してあった弱点を捉え、何度も何度も突き上げる。


「だめ、そこ、あぁっ♡ウォルぅっ♡」
「はっ、スコール…!く、ふっ、ふぅっ…!」
「いい、いいよぉっ♡ウォルのちんぽで、あっ、きもちい、きてる、キてるぅっ♡」
「は……はっ、はぁっ…!此処が、ヒクついて……っ」


 スコールの一番奥の僅かに手前がヒクンヒクンと蠢いて主張している。
ウォーリアが其処にペニスを宛がい、ぐっと腰を押し付けて、壁を圧しながらぐりぐりと抉ってやると、


「ひぃんんんっ♡」


 スコールは甲高い悲鳴を上げながら、ビクッビクッビクッと四肢を痙攣させる。
余りにも強い官能に、涙を浮かべて喘ぐスコールの姿に、泣かせている、とウォーリアの心に罪悪感が浮かぶが、それ以上に、きゅうきゅうと嬉しそうに締め付けて来るおねだりに、獣染みた欲求が膨らんで行く。

 ぐりっ、ぐりゅっ、とウォーリアが腰を回す。
突き立てた膣壺の中で、ペニスが角度を変えながら奥壁を抉った快感で、スコールの頭は真っ白になった。


「あっ、あぁっ!また来るっ、ウォルっ♡ウォルのちんぽでっ、おれっおれ♡イくぅうううっっ♡」


 絶頂を宣言する言葉に違わず、スコールは一気に上り詰めた。
汗に張り付き始めたベビードールをふわふわと左右にひらめかせながら、細い肢体を左右に揺らし悶えて射精する。
びゅううううっ、と勢いよく噴き出した精子が、ウォーリアの腹にぴしゃぴしゃと飛び散った。

 今夜一番の深い場所での快感を与えられて、スコールの体がピンと糸を張ったように強張った。
そのままの力が体の中にも作用して、ウォーリアのペニスが噛み千切らんばかりに強く締め付けられる。
逞しい雄はそんな締め付けの中でもドクンドクンと脈を打ち、


「く……出る…っ、スコール……!!」
「あっあっ♡あああっ♡あぁぁあぁぁああっ♡♡」


 スコールの胎内で、二度の大きな脈動の後、ウォーリアは絶頂した。
三度目の射精も全く勢いは衰えず、どぴゅうううっ、と奥壁の窄まりをこじ開けんばかりの強烈な射精を、スコールは最高潮の官能に達した躰で受け止め、


「ああっ、またっ♡またイくっ♡ウォルのせーしで、イっひゃうぅうううっ♡」


 奥壁を強く叩かれているような刺激を得ながら、スコールは間を置かずに再び絶頂した。
ベッドに沈んでいた腰が浮き、エビ反りになった躰が何度も何度も跳ねて踊る。
びゅくっ、びゅるっ、びゅるっ、と断続しながら吐き出された精液が、ベッドシーツに飛び散って濃い染みを作った。

 快感の海に溺れ、ビクッビクッ、ビクッ、といつまでも躰を痙攣させているスコール。
一向に締め付けの緩まないアナルから、ウォーリアはゆっくりとペニスを抜いた。
ねっとりと絡み付いてくる肉壁が、行かないでと追い縋るが、最後に…にゅぼっ、と言う音を立ててペニスは抜き取られた。


「はっ…あっ…♡あっ…♡」


 咥えていたものがなくなっても、スコールの意識は帰って来ない。
慎ましい筈のアナルはすっかり口を開け、ごぷっ、ごぽっ、と泡濁の精液を溢れさせている。
その蜜が溢れ出す瞬間にもスコールは快感を得ているようで、


「はふっ…あっ…あぁ……っ♡ウォル…のぉ……いっぱい……っ♡」


 スコールはうっとりとした表情で、中出しされた腹を掌で撫でた。
ベビードールのカーテンで薄く隠された其処に、ウォーリアが注ぎ込んだ子種が詰まっている。
それがスコールは無性に嬉しくて堪らない。

 と、ぐっ、と太いものがまたスコールのアナルに宛がわれた。
何処か意識が浮いていたスコールが、熱いものの感触に気付き、ぱちりと瞬きを一つした後、────ずぷぅっ!と一気に侵入される。


「んおぉおっ♡」
「はっ、はぁっ、はっ、はっ、」
「あっ♡あっ♡ひっ♡はぁっ♡」


 侵入者───ウォーリアは、もう一度スコールの上に覆い被さり、直ぐに律動を開始した。
無防備だったアナルは、容易く陰茎に支配され、最奥へと到達される。
そのまま知られてしまった弱点を何度も強く押し潰されて、スコールはあられもない声を上げるだけの生き物に変えられてしまった。


「おっ、あっあっおっ♡うぉる、うぉるっ♡ああっ、ちんぽ、まだっ、おおきいぃっ♡」


 ウォーリアのペニスは、萎える事は愚か、衰える様子も全くなく、寧ろ最初に繋がった時よりも更に太く固くなっている。

 ウォーリアはスコールの体を半身にさせて、左足を掴んで持ち上げた。
側位でスコールは結合部を見せつけるように足を大きく開き、ウォーリアの体が割り込み、スコールの脚を肩に乗せた。
ウォーリアの腰が前へと突き出されると、更に深い場所へとペニスが届く。


「あぁぁんっ♡はひっ、すご……っ!ウォルのちんぽっ、全然っ、ああっ、太くて…はぁあんっ♡奥に来るっ、おれの、弱いとこぉっ♡ずっとごちゅごちゅしてっ♡おれ、飛ぶっ、きもちいいのっ♡いっぱいきてるぅっ♡」
「スコール、君は…君の中は、こんなにも……、いやらしい、のか……!」
「ふぅっ、うぅんんっ♡」


 ずんずんと秘奥を犯しながら、零れ落ちたウォーリアの言葉に、スコールは顔と言わず全身が紅潮する。
肉欲に溺れた浅ましい姿を晒し、それでもまだ足りないと貪欲に雄を求める卑しい体。
そんなものを、高潔と言う言葉をそのまま体現するような男に見られている。
そう思うと無性に罪悪感が募るのに、そんな自分を見て男が興奮している事を知ってしまったから、劣情の波は益々止められない。


「ウォル、だって、ああっ♡全然っ、萎えないっ♡ちんぽ、おおきいっ、かたくて、熱くてっ…!もっ、いっぱい出してるっ、のにぃっ♡」
「すまない……っ、は…私は…、私は、いつも……、君に、無理をさせたくない、と…っ、思って……!だから、私は……っ!」
「ウォルうぅう……っ!」


 ウォーリアの言葉端から、スコールは彼が本当はいつも耐えていたのだと───いつもこんなにも興奮していたのだと言う事を悟って、感極まった声で恋人を呼んだ。
繋がっている肉壺の奥からとろりと艶めかしいものがまた溢れ出して、ウォーリアの精液と混じり合い、ペニスに絡み付く。
ぬりゅっ、じゅぷっ、ぐぽっ、ぐちょっ、と卑猥な音を立てながら、ウォーリアはスコールの中を掻き回す。


「ああぁっ、ああんっ♡はひっ、いぃいんっ♡もう、もう良いから、ウォルぅっ♡いっぱい、して、ウォルのちんぽでっ、おれのおまんこっ、いっぱい突いて♡もっと沢山中出ししてぇっ♡」
「スコール…、スコール……!っは、はぁ、君の中に───私の、精子、を、」
「出して、ああっ♡も、一人でしないで、おれの中にっ♡じゃないと、やなの、ウォルが一人でしてるなんて…っ!おれ、おれがっ、いるんだから…っ!ウォルの全部、おれの中に出してよぉおっ♡」


 全身で恋人を欲しがり、愛の証を求める少年に、ウォーリアの熱がまた昂って行く。
雄を穿ち入れる度、圧し出されるように中から溢れ出した精液が、スコールの股間をドロドロに汚して行く。
既にスコールの中はウォーリアの精液を一杯に溜め込んでおり、これ以上出した所で、その傍から溢れ出すのは明らかだ。
しかし秘奥は貪欲にウォーリアを求めており、早く出して、早く注いでと、引っ切り無しにペニスを嘗め回す。

 腹の中で雄が脈を打つのを感じて、来る、とスコールは理解した。
感じ取った瞬間に頭の中は直後に来る筈の熱の事しか考えられなくなり、全身の毛穴が開いて、官能への準備を整える。


「はふっ、はっ、あっ♡あっ♡ウォル、ウォル、」
「スコール、出る……また、君の中に……!」
「んっ♡んっ♡」


 眉根を寄せ、顰めた顔で限界を訴えるウォーリアに、スコールはこくこくと首を縦に振って返事をする。
もうまともに声も出ないのだ。
その唇にウォーリアが顔を寄せ、開いたそれに誘われて唇を重ねて深く深く交わっている最中に、それはやって来た。


「んっ♡んんぅっ♡んんんーーーーーっっ♡♡♡」


 スコールと唇を重ね合ったまま、ウォーリアは絶頂した。
腹の奥に今日何度目になるかと言う熱いものを注ぎ込まれて、スコールはくぐもった喘ぎ声を上げて、彼も同時に果てを見る。
ウォーリアと違ってスコールは射精する事はなかったが、秘奥からの快感だけで見る絶頂は、これまでのどの官能よりも深く重い痺れを齎していた。

 どくん、どくん、と脈動と吐精の感触を味わいながら、スコールはウォーリアとのキスに甘えていた。
スコールの舌は最早ウォーリアの愛撫に応える仕草も出来ない状態だったが、ウォーリアが絡め取ると、健気にひくりと根を震わせる。
ないも同然の距離で見る蒼灰色の瞳は、強すぎる快感に涙を浮かべていたが、其処に滲んでいるのは幸福の熱だった。

 唾液を絡み付かせたまま、ウォーリアがゆっくりとスコールの唇を開放する。
二人の口を細い銀が繋ぎ、ぷつりと切れてスコールの桜色の唇を濡らした。


「あ……は……♡うぉ…る……♡」
「スコール……」


 覆い被さり、名を呼ぶ恋人の中心部が、まだ自分の中で固く張り詰めているのを感じ取って、スコールの体が震える。
いつも冴え冴えと前を見つめる白藍色の瞳には、これまで隠し続けていたのだろう、獲物を前にした獣のような貪欲な情が浮き彫りになっている。

 はあ、とスコールの唇から甘い吐息が漏れた。
それが合図になって、ウォーリアは律動を再開させる。


「あっ、あっ♡あんっ♡はっ、はっ、ああぁっ♡」


 揺さぶられるままにスコールの体は弾み、踊り、組み敷く男を煽り誘う。
スコールの体は疲労の気配を訴えつつあったが、腰を掴む手が離してくれない事は、言葉で聞かなくとも判った。




 翌日、スコールが目を覚ました時には、生まれたままの格好で、ベッドシーツに包められていた。
傍らにはウォーリアが横になり、目を覚ましたばかりのスコールの顔をじっと見詰めていた。


「……ウォ、ル……?」


 名前を呼ぶと、切れ長の目がふわりと和らぐ。


「おはよう。もう夕方だが」
「……」


 そんなに寝てたのか、とスコールが窓に目を向けると、確かに雲の隙間から夕焼け色が覗いている。
半日どころかほぼ丸一日を寝倒したのだと知り、どうしてそんなに寝たのか───と考えてから、数時間前までの濃厚で激しいまぐわいを思い出して真っ赤になる。


「スコール?」
「………っ」


 ふしゅううう、と頭から湯気が出そうな程真っ赤になったスコールに、ウォーリアが首を傾げて声をかける。
どうしたのかと問いかける瞳は純粋な心配の色に満ちていて、スコールは自分の頭の中の話をする事を拒否した。
シーツを手繰って潜り込み、貝になって閉じ篭る。

 セックスをした次の日、寝起きのスコールが恥ずかしがって顔を見せたがらないのは、よくある事だった。
今日もそれと同じと思ったのだろう、ウォーリアの手があやすようにスコールの頭を撫で、


「昨日は、酷く無理をさせてしまった。体は大丈夫か?」
「……っ……!」


 ウォーリアのその問いに、スコールは布団の中で真っ赤になった。
顔から火が出そうな程に赤いそれを、ウォーリアには見られたくなくて、彼の胸に抱き着いて誤魔化す。
優しい恋人はスコールが偶に見せる甘えん坊を発揮させたと思ったようで、大きな手が優しく髪を撫で梳いた。

 ────昨晩、いや、空が白む明け方まで、二人はセックスに没頭した。
スコールは今までの不安を払拭しようと夢中でウォーリアを求め、ウォーリアもそんな恋人に応えて、何度も何度も繋がった。
これまで、一度繋がり果てれば終わり、スコールが二回目を求めても宥め寝かされていた事が嘘に思える程、激しく濃厚なセックスを繰り返したのだ。
最後の方はスコールが疲れ切り、腹が膨らむ程に沢山の子種を注がれて、もう無理、と泣き言も漏れたが、ウォーリアはスコールを離さなかった。
スコールも泣きながらウォーリアを離そうとしなかった。
終わったのが何時だったのかスコールは覚えていないので、きっと意識を飛ばしたのだろう。


(あんな、に……激しく、なる、なんて……)


 昨晩の情景を断片的に思い出しながら、スコールは全身が熱くなって行く。
ずっとウォーリアと繋がっていた秘部に、まだその感覚が残っているのが判って、じわりと欲望が頭を擡げる。
しかし体は疲れており、今朝の今で流石にそれは死ぬ、と冷静な頭が呆れ叱った。

 火照った頬の熱に、下がれ下がれと念じていると、手櫛がスコールの項を擽った。
ん、と声を漏らして顔を上げると、心なしか心配そうな瞳がスコールを見下ろしている。


「スコール」


 大丈夫か、ともう一度ウォーリアが言った。
まだ目を合わせるのが恥ずかしかったが、流石にもう返事をしないと駄目だろうと、スコールは小さく頷いて、


「…問題、ない。一応……」
「体は───痛みなどは?」
「……」


 ない、と言おうとして、スコールは止めた。
昨晩の事を思えば、スコールの体が全く何事もない、などと言う事は有り得ない。
ウォーリアもそれを判っているだろう。


「……腰は、痛い。多分立てない」
「すまない」
「…謝るな。判って……やったこと、だから」


 あんなにも激しく長い夜になるとは思っていなかったけれど、と言う正直な感想は飲み込んで置く。
今はただ、昨夜の出来事を求めたのは、スコール自身でもある事をウォーリアに伝えるのが優先だ。


「俺がしたいって言って、あんたがそれに応えてくれた。だから、あんたは悪くない。……嬉しかった」


 ウォーリアの胸に頬を寄せて、スコールは言った。
とくん、と胸の奥で心臓の鼓動が跳ねた音を聞く。


「……私も、君が求めてくれて、嬉しかった」
「……ん……」


 囁かれた言葉に、スコールもほう、と息を吐く。
安堵の混じったそれを受け止めるように、ウォーリアの腕がスコールの背中を抱いた。
その腕の檻の中で、スコールはウォーリアに身を預けながら言う。


「昨日は確かに嬉しかった、けど。いつもあんなだと、ちょっと……持たない、かな……」


 昨夜の激しい睦み合いを思い出しながら、スコールは呟く。

 ウォーリアの真っ直ぐな情熱は、それはそれは濃厚だった。
スコールが何度果てても、ウォーリアが何度吐き出しても、夜は終わらなかった。
しばらく間が空いていた事もあり、一度や二度のまぐわいで終わらないのは判っていたつもりだったが、まさか空が白むまで抱かれ続けるとは思っていなかった。
ウォーリアは何度吐き出しても、ややもすれば再び固く膨らみ、スコールが意識を飛ばす最後まで、一片と薄れる事のない劣情をスコールへと注いだのである。

 あれだけの愛情を浴びせられたから、スコールの心にはもう不安と言うものは存在しなかった。
しかし、毎回あんなにも激しいセックスを求められるのは、少々厳しいものがある。
それを小さな声でぼそぼそと話したスコールに、ウォーリアは言った。


「君に辛い思いはさせたくない。だから、もう二度と君に無理をさせる事はしない」
「……」


 きっぱりと言い切ったウォーリアは、本当に真摯だ。
こんな人物だから、今までスコールが二回目を求めても、頑としてセーブを駆けて来たのだろう。
───それは恋人として、大事にされていると言う証であるから、きっと良い事なのだろうとは思うのだが、


(それは、それで……なんか……)


 寂しい、とスコールは胸中で独り言ちる。
別段、求められる事が嫌な訳ではないし、もっともっと激しく求めて欲しいとも思っていた。
それこそ、昨夜のように溺れる程に愛して欲しい、と。
だが、スコールを慮るからこそ、ウォーリアは昨夜の事はこれ限りだと言う。

 スコールはウォーリアの背中に腕を回して、ぎゅ、と抱き着いた。
シーツの中で裸の足を、ウォーリアの足に絡み付かせる。
腰を押し付けるように密着するスコールに、ウォーリアの中心部が僅かに反応を示した。


「……スコール、」


 咎めるように名を呼ばれる。
そんなウォーリアを、スコールはぴったりと身を寄せて見詰め、


「…昨日のが嫌だなんて、俺、言ってない。確かにいつもああだと、死にそうだけど。でも……たまになら……して、ほしい……」


 大切にしてくれる事は嬉しい。
けれど、それだけでは満たされないものがあって、いつまでもそれが続くと、きっとスコールはまた不安に捕まってしまうだろう。
自分がそんな風に弱い生き物である事を、スコールは判っていた。
だからせめて、そんな不安に捕まって、ウォーリアの事さえも信じられなくなってしまわないように、時々で良いから、ウォーリアから溺れる位の愛情を注いで欲しい。

 我儘だ、とスコールは思った。
自分が欲しいと思う時には、欲しいと思う分だけ頂戴、なんて。
けれど、そんなスコールの身勝手な願いを、目の前の恋人はいつも受け止めてくれる。


「ありがとう、スコール」


 人形のように整った面に、柔らかく綺麗な笑みを浮かべて、ウォーリアはスコールを抱き締める。
礼を言うのは俺の方だろ、とスコールは思ったが、優しい恋人に甘えて、口を噤んだ。

 ずっと欲しくて我慢していた、愛しい腕に抱かれながら、あいつらにも礼を言わないと、とスコールはお節介を焼いてくれた二人の仲間を思い出す。
相談をしている最中、飛び出してくる色々な提案に、時にはふざけるなと怒る事もあったが、彼らはずっと真剣だった事は判っている。
だから、ウォーリアときちんと向き合い、心を明かし合えた事は、早く知らせるべきだとは思うのだが、どうにも包む腕が心地良い。
伝えるのがもう少し遅くても、きっと赦してくれるだろうと甘える事にして、スコールは目を閉じた。





理性の強そうなWoLが、実はスコールを前にすると、男としての欲が止められなくなってるとか良いなって。
それをスコールの為を想って抑え込んでいるのに、それを全部引っ繰り返そうとするスコールって良いなって。
あとベビードールとかセクシーランジェリー着てるスコールが見たいなって……
そんな書き手の欲望の塊。