箱庭に芽吹く
レオンが食堂で選ぶ昼食のメニューは、殆どが値段も安く、準備に待たされる事もないA定食なのだが、今日はエッジの奢りである事もあって、日替わり定食を頼んでみた。
パンとサラダとハムエッグにスープ、それから紙パックの牛乳と言うシンプルなA定食に比べると、肉団子入りのスープや、日によってはミニハンバーグなどのグリル系があったりするので、かなり豪華になる。
そして今日の日替わりメニューは、ホットドッグにサラダに玉葱や人参がたっぷり入った具沢山のコンソメスープ、紙パックのコーヒー牛乳、デザートにヨーグルトも添えられている。
年頃の男子が喜びそうな程に華やかなメニューではないかも知れないが、レオンには十分ご馳走であった。
トレイに乗せられた定食を持って、レオンはエッジが先取りしていた席へと向かった。
合流した級友の食事のメニューを見て、エッジは呆れたように目を細める。
「なんか色々食うんじゃなかったのか?」
ノートを貸す代わりにと、エッジが自ら言い出した、昼食の奢り。
レオンの趣向を知っているから、それ程贅沢を要求する事はあるまいとエッジも考えてはいたが、それでもいつもよりは多めに注文するのだろうとばかり思っていた。
しかし、レオンの食事量は常よりも多くはなったものの、注文したのは日替わり定食一つだけだから、奢る側としては肩透かしを食らった気分だ。
レオンはエッジの隣に座ると、彼の言葉に「うん、」と一つ頷いて、
「そのつもりだったんだが、これだけでもう腹一杯になりそうでな」
「お前、ほんっと胃袋小せぇな」
「そうか?普通だと思うが」
「お前のそれが普通レベルなら、俺は大食いになるじゃねえか」
エッジのトレイには、ハンバーグセットの他に、単品でサンドイッチも追加されている。
ハンバーグセットのメニュー絵を見るだけで、腹が一杯になりそうなレオンには、到底無理な昼食であった。
「……強ち、大食いでも間違いはないと思うが……」
「俺のが普通だ、普通。本物の大食いってのは、ああいうのを言うんだ」
そう言ってエッジが指差した先には、空の皿を山のように重ねつつ、まだまだ食べ足りないと言わんばかりに食指を進めている、丸々とした体格の男子生徒がいる。
「何処をどうすりゃあんなに食えるんだろうな」
「……腹の中で、デジョンでも唱えてるんじゃないか」
苦笑して言うレオンに、ギャグに聞こえねえよとエッジが呟く。
「まぁ……その、なんだ。胃の大きさと言うか、食べる量なんて人それぞれだからな」
「それで済ませられる差かねぇ。お前はもうちょい食った方が良いんじゃねえの。身長の割に体重足りてねえって、この間の身体測定でカドワキ先生に言われたんだろ」
レオンは幼い頃から、比較的、体格には恵まれた方だった。
身長は高めで、体重は同年齢の平均より少し重い───身長の高さを考えると妥当な数値ではある───程度、だったのだが、その体重が最近は軽くなりつつある傾向があった。
理由は勿論、家計を補う為に自身の食事量を抑えているからだ。
レオンの妹弟も食べ盛りだが、まだ15歳のレオンもそれは同じ事だ。
大きく成長し、尚も成長しようとしている分だけ、必要となるエネルギーも大きくなって当然だ。
それを制限した状態では、身長ばかりが伸びる一方で、中身が足りなくなってしまうのも無理はない。
「……でも、これ以上食べろと言われても、入らないからな……」
「だから、やっぱ胃袋が小さいんだって。燃費が良いのは結構だけど、これから魔法実技の授業も増えるみたいだし、持たないかも知れないぜ」
「そうだな。魔法はかなり体力を消耗するし」
呟いて、レオンはホットドッグを食んだ。
挟まれていたソーセージの皮がぱちり、と音を立てて千切れて、肉汁が咥内一杯に広がる。
美味いな、と思って、弟達に食べさせてやりたい、と思う。
そんなレオンの横で、エッジは手に持っていたフォークをひらひらと揺らし、
「だからな、レオン。これから俺が定期的にお前に昼飯奢ってやるから、代わりに────」
「ノートは貸さない」
エッジの言葉が最後まで紡がれる前に、レオンはきっぱりと言い切った。
「なんでだよ!?いいじゃねえか、これならギブアンドテイクになるだろ?」
「貸し借りの問題じゃない。丸写しばかりに頼って、自分で考える癖をつけていないと、後で泣きを見るのはお前だぞ。中等部の頃と違って、これからは補習だけじゃなくて、テストの点数によっては、落第だって有り得るんだからな」
甘えるな、と言うレオンに、エッジはがっくりと項垂れた。
落第は嫌だ、とエッジが呟く。
「今日の古代史と、明後日提出の数学と世界史は貸してやるから、後は頑張れよ」
「へーい」
「どうしても判らないなら、俺も教えるよ。判る範囲で、だけどな」
「そりゃ有難ぇ。高等部になってから、いきなり色々難しくなってついて行けねえんだよ」
「……去年も同じような事を言ってたような気がするが……」
「一年前の事なんて覚えてねーよ。三日前の授業の内容だって思い出せねーんだから」
「それはちゃんと思い出せ」
つい今し方、成績如何によっては落第も有り得ると言う話を下ばかりだと言うのに。
また試験が近付いたら、教えてくれと泣き付かれるのだろうなと思いつつ、レオンはスープを掬った。
適度に冷めてくれたそのとした液体を口に入れようとした時、
「レオン!レオンいたー!」
「お兄ちゃ、あ、あ、ティーダ待ってよぉ」
高い声が名を呼んだのを聞いて、レオンは振り向いた。
食堂に並べられたテーブルと椅子の隙間を駆けてくる、小さな金色がある。
それに引っ張られるように、レオンと同じ濃褐色が金色の後を追い駆けて、レオンの下へと駆けて来ていた。
周りの生徒達を避けながら、金色と濃褐色は近付いて来る。
レオンは腰掛けていた椅子を少し引いて、金色と褐色に体ごと向き直った。
金色の子供はティーダと言う名で、レオンが数ヶ月前から預かっている子供だった。
濃褐色の髪の子供は、スコールと言う名で、レオンと同じ青灰色の瞳をしている。
スコールは正真正銘、レオンと血の繋がった弟だ。
「レオン、見てみて!今日のテスト!100点取った!」
「僕も、僕も。これ、100点っ」
2人は、レオンの傍まで駆け寄って来ると、我先にと手に持っていた紙を見せて、一所懸命に主張した。
紙には算数の問題が連ねられていて、子供らしい大きな筆跡で答えの数字が書かれている。
正解の赤丸が数字を囲い、右上の名前蘭の隣に『100』の数字と花丸マーク。
自信満々に見せて来る子供達は、褒めて褒めて、と言わんばかりに頬を期待に紅潮させていた。
レオンはそんな弟達に小さく微笑み、ぽんぽんとそれぞれの頭を撫でた後、人差し指を立てて口元に当てる。
「静かに」を意味するそのジェスチャーを見て、2人は顔を合わせ、同じように口元に指を当てて「しーっ…」と囁き合う。
「よし、良い子だ」
もう一度レオンが2人の頭を撫でると、子供達はくすぐったそうに笑う。
「それで……今日、テストだったのか」
「うん」
レオンの確認に、スコールが頷いて、椅子に座ったままの兄の膝に手を乗せる。
ぎゅっと捉まえるように握られる手を見て、レオンは小さく微笑んだ。
その隣から、ひょこっと金色───ティーダが割り込んで来た。
「オレも。オレもテストだった」
「ああ。2人とも100点か。よく頑張ったな」
笑みを浮かべてレオンが言うと、スコールとティーダは顔を見合わせ、嬉しそうに頬を赤らめて笑う。
「レオンに褒められた」
「うん」
「へへ、嬉しい!」
「うん!」
自分の感情をそのまま口にするティーダに、スコールも頷いて、同じ気持ちである事を伝える。
レオンは、膝にくっついているスコールの体を抱き上げると、自分の膝の上に乗せてやった。
それから、羨ましそうに見上げるティーダの頭を撫でて「後でな」と約束してやる。
ティーダは頷いて、レオンの傍にくっついたまま、順番待ちを始めた。
「2人とも、もうお昼ご飯は食べたのか?」
「うん。そしたらね、ティーダがお兄ちゃんに100点見せに行こうって言ったから」
「わざわざ見せに来てくれたのか」
「だってオレ、算数の100点、初めて取ったもん!」
「そうだったか。良かったな、ティーダ」
レオンは、スコールを膝に乗せたまま、ティーダの頭を撫でた。
ティーダは初めて取った100点の算数テストを握って、えへへ、と照れ臭そうに笑う。
頭を撫でる手が離れると、ティーダはレオンの隣の空いていた椅子に上り始めた。
食堂を使用する生徒の殆どは、中等部以上である事が多い為、初等部一年生になったばかりのスコールとティーダには、まだまだ椅子もテーブルも高い位置にある。
ティーダはうんしょ、と椅子に上ると、自分の鼻と同じ高さにあるテーブルに置かれている、レオンの昼食へ視線を向けた。
途端、青色の瞳がきらきらと輝いたのを見て、レオンは苦笑する。
「ティーダ。お昼ご飯、食べたんだろう?」
「うん。でもまだ食べれるよ」
だから食べたい、とは言わなかったティーダだが、丸い瞳は完全にホットドッグに釘付けになっている。
仕方がないな、とレオンはホットドッグを取って、ティーダに差し出す。
「100点のご褒美だ。でも、お腹一杯になったら止めるんだぞ。無理して食べたら苦しくなるからな」
「うん!」
ティーダは嬉しそうに破顔して、ホットドッグを受け取った。
大きく口を開けて被り付き、パンとレタスとソーセージを一所懸命に噛む。
ちょっと口に入れ過ぎだな、と頬袋を膨らませているティーダを見て、喉に詰まらせなければ良いがと思う。
よく食べるティーダの傍らで、レオンは、膝上の弟が随分と静かにしている事に気付いた。
見下ろしてみると、スコールはレオンに抱き着いたまま、トレイの上の一点を見詰めている。
「ヨーグルト、食べるか?スコール」
レオンの言葉に、顔を上げたスコールが一瞬嬉しそうな表情をした。
が、自分が既に食事の後である事、此処にあるのはレオンの昼食である事を思い出してか、もじもじとしてしまう。
「う、んと、えと……」
「良いぞ。でも、全部はちょっと食べ過ぎだから、半分までな」
欲しがるものをなんでも与えてしまうと、その甘やかしが癖になってしまうものなのだと、レオンはイデアに教わった。
それでも、ついつい甘くしてしまうのがレオンの癖になっているのだが、流石にいつまでもその状態では、弟達の教育にも良くない。
だからこうして、過度なストレスにならないように、且つ当たり前に欲しいものが手に入る訳ではないように、躾るように努めていた。
が、エルオーネからすればレオンは十分甘やかしているように見えていたりするのだが。
レオンはヨーグルトのアルミ蓋を開けると、ビニールに入っていたプラスチックのスプーンを出して、スコールに渡してやる。
スコールは嬉しそうにヨーグルトを見詰め、ぱくん、と一口。
「美味しいか?」
兄の問いに、スコールはスプーンを咥えたまま、こくこくと頷く。
「昼の授業は何があるんだ?」
「んとね……図工するの。お絵かきするんだよ」
「むぐ、ん……うあぅ」
「ティーダ、口の中に食べ物がある時は喋らない」
「ん……はーい」
ごくん、と口の中のものを飲み込んで、ティーダが返事をする。
スコールも二口目のヨーグルトをゆっくり飲み込んで、レオンを見上げた。
「あのね、お兄ちゃん。さっきね、見たらね。クレヨンの茶色、こんなに小さくなってた」
「オレも茶色がないよ。黒もこーんなになってた」
「毎日、家で描いてるからな……今日の図工は大丈夫そうか?」
「うん」
「まだヘーキ。まだ描けるよ」
「じゃあ、図工はそれで頑張れるな。今日、帰りに買っていくけど、交換するのは今使ってるのがなくなってから。良いな?」
「「はーい」」
二つの声が重なって、よし、とレオンはスコールの頭を撫でてやる。
それからティーダの頭も撫でて、ポケットからティッシュを取出し、ティーダの口端についているケチャップを拭いた。
くいくい、とシャツの襟を引っ張られて、レオンが視線を落とすと、スコールがスプーンに乗ったヨーグルトを差し出していた。
「お兄ちゃん、あーん」
弟の希望に応えて口を開け、ヨーグルトを食べる。
とろりとした甘味が口の中一杯に広がった。
「おいし?」
「ああ」
「スコール、オレもヨーグルト欲しい」
「ティーダはホットドッグ食べてるじゃん」
「ヨーグルトも食べたい。これと交換!」
「僕、お腹一杯だもん。そんなに食べれないよ」
ふるふると首を横に振って、差し出されたホットドッグをいらないと言うスコールに、ティーダが頬を膨らませる。
「ティーダ、欲張りは駄目だぞ」
「だって食べたいもん」
「帰ったら、俺が作っておいてやる。エルに伝えておくから、晩ご飯の後に食べれば良い。だから今は我慢しろ、な?」
「うー……」
不満げに唇を尖らせるティーダだったが、しばらくすると「わかった…」と渋々頷いた。
今直ぐ食べたい、と言わんばかりの表情に、レオンは眉尻を下げて、我慢を約束した子供の頭を宥めるように撫でてやる。
ことん、と音がして、スコールがヨーグルトをトレイに戻していた。
減った量は三分の一ほど。
「もう良いのか?」
「うん。お腹いっぱい」
スコールは小食だし、いつもなら給食だけで十分お腹一杯になるので、今日はこれでも多めに食べた方だろう。
スコールは「ごちそうさまでした」ときちんと食後の挨拶をして、いつもよりも微かに膨らんだように見えるお腹を撫でた。
その隣で、ティーダもホットドッグをトレイに戻す。
「ティーダ、お腹一杯か?」
「うん。ごちそーさまでした!」
手を合わせて挨拶を終えると、ティーダは椅子を飛び降りる。
「スコール、探検しよ!」
「探検?」
「早く早く!」
「あ、待って、ティーダ!」
言うが早いか、駆け出したティーダに、スコールが慌てだす。
レオンはそんな弟を膝から下ろしてやると、転ぶなよ、と注意を促して、小さな背中を押してやる。
スコールは短い脚を一所懸命に動かして、ティーダの後を追い駆けて行った。
背が低い所為で、子供たちの姿は、直ぐに食堂を往来する生徒達の陰に隠れてしまった。
そういえば、ティーダを抱っこしてやるのを忘れたな、と思いつつ、レオンは子供達を見送った後で、ようやく昼食を再開させる。半分になったホットドッグを手に取って、口に運ぼうとした時、
「お前なぁ~……」
「ん?」
弟達が来て以来、ずっと沈黙していたエッジの声に、レオンは振り返る。
エッジはテーブルに頬杖をついて、呆れたと言わんばかりに紫電を細めてレオンを見ていた。
「なんだ?」
「なんだじゃねーよ。お前、ひょっとしていつもあんな調子でチビ達に飯食わせてるのか?」
「まぁ……そうだな」
レオンが小さな子供達に食事を譲るのは、今に始まった話ではない。
孤児院で、自分より小さな子供の面倒を見ていた頃から、レオンは自然と子供達を優先するようになっていた。
それは現在でも変わらず、レオンの優先順位は妹弟が一番で、自分の事は二の次だ。
何か可笑しいか、と首を傾げる級友に、エッジはわざとらしい程に大きな溜息を吐いて見せる。
そんなエッジに、レオンが益々不思議に思っていると、
「来い、レオン!」
「は?おい、エッジ!?」
エッジは席を立つなり、レオンの腕を掴んで歩き出した。
転ばないように、レオンも慌てて席を立って、エッジの後を追う。
まだ残っている昼食は、そのまま放置して。
レオンの制止の声を、エッジは一切無視したまま歩を進める。
そうしてレオンが連れて来られたのは、メニューを注文する為の列だった。
エッジに腕を掴まれたまま、レオンは列の最後尾へと並ばされる。
「何してるんだ、エッジ」
「何じゃねえよ。お前、折角俺が奢ってやってんだから、ちゃんと食うもの食いやがれ」
「ああ……そうか、悪い」
あの日替わりメニューのセットは、レオンの為にエッジが支払をしたものだったのだ(厳密に言えばレオンのノートを借りたいエッジの為のものであるが)。
それをいつもの癖で、奢ってくれた本人の目の前で、欲しがっていたからと断りもなく弟達に分けたのは、少し悪い事をしたかも知れない。
エッジにとっては“レオンの昼食”を奢ったものだったのだから。
悪かった、と至極真面目な顔で詫びるレオンに、エッジは銀髪をがりがりと掻いて、級友を睨む。
「お前、もう一品食え。いや二品だ。明日と明後日も俺が奢ってやるから食え。それでノートの貸しはチャラだ」
「……計算が合わない気がするが」
「そりゃお前が昼飯をセットメニュー一つって固定してるからだろ。誰も一つ分しか奢らないなんて言ってねえぞ。セット一つだろうが二つだろうが一品ものだろうが、昼飯一回でノート一回って計算しろよ」
「いや、そんなに厚かましくは、」
「お前はもうちょっと図々しくなれ。その方が丁度良くなるぜ、絶対に」
ずいっと顔を近付けて言われ、レオンはきょとんとした表情を浮かべながらも、エッジの気迫に押されたように、判った、と小さく頷く。
取り敢えず頷いたレオンを見て、エッジはよし、と満足げに言った。
レオンは十分前に見た今日のランチメニューを思い出しながら、注文するものを考えるが、中々決まらない。
テーブルにはまだ残したままのホットドッグやスープがあるので、あれも食べて、次のものも食べるとなると、胃の許容量を超える気がする。
体育と戦闘実技の授業が続いた後とは言え、胃袋の大きさが数時間で倍になった訳ではないのだから、食べられる量はいつもと大して変わらない。
「エッジ、やっぱり俺はもう」
「だから遠慮すんなって。ほら、お前の番だぜ」
背中を押されて、注文カウンターの前に立たされる。
てきぱきと食堂を切り盛りする、恰幅の良い女性が「注文は?」と言った。
「え、あ……ツ、ツナサンド、を…」
レオンの後ろには、既に順番待ちの列が出来ている。
もたもたしていると迷惑になってしまうので、注文するものは早く伝えて、配給口前に移動して待機しなければいけない。
取り敢えず、軽くて準備も早いものを注文しようとレオンは思ったのだが、
「またそんなのしか食わねえのかよ。おばちゃん、さっきの無しでカツサンドと牛丼な!」
「な……!エッジ、勝手に、」
「んじゃ、おばちゃん宜しくー。邪魔になるからあっち行こうぜ」
「おい!」
エッジは先程と同じように、レオンの手を引いて急ぎ足で注文の列から離れる。
レオンの主張などお構いなしに、自身の気の済むように行動する友人に、レオンは眉尻を下げる。
食べ切れなかったらどうすれば良いんだ、勿体ない……等と考えつつも、気心の知れた級友の気遣いは嬉しく思う。
全部は無理でも、半分くらいは食べられるだろう。
カツサンドなら、残った分はパックを貰って持って帰る事も出来るし。
────結局、レオンが食べ切る事が出来たのは、日替わり定食と牛丼が半分まで。
カツサンドに至っては手を付ける事すら出来ず、エッジから文句のような小言を言われる事になるのだが、それも含めて、レオンは嬉しかった。
自分を想ってくれているからこその、友人の言葉なのだから。
ガーデン生時代のレオンお兄ちゃん。相変わらず妹弟優先だけど、本人はそれなりに学生生活を楽しんでます。
レオンのガーデン生時代は色々書きたい話が一杯あります……ガーデン行事とか色々書きたい。