僕の体温を君にあげる


 秩序の聖域に雪が降った。
それは一晩の内にすっかり積もり、此処は北国の只中かと言う程の積雪量だ。

 雪など、エルフ雪原方面に向かえば、ほぼ万年雪同然に見る事が出来るものだ。
運が悪ければブリザードに見舞われる事もあるし、凍り付いた湖を見る事も出来る。
飛び込んだ歪の中で、何処かの世界の断片であろう銀世界を見る機会も、少なくはなかった。
だから、今更雪などではしゃぐ事はないのかも知れないが───秩序の聖域に雪が降った、と言うの点が、未成年組の心をこれでもかと言わんばかりに輝かせた。
何せこの世界は、秩序の聖域こそ女神の力によって守護され、安全(完全にとは言い難いが)が約束されているものの、他の地に置いてはそうではない。
秩序の聖域以外の場所には魔物も現れるし、混沌の戦士やイミテーションは時と場所など選んではくれない。
彼等は自身の優位を確信した時点で、容赦なく襲い掛かってくる───イミテーションに至っては、見付けたら即襲い掛かってくるので、本当に時も場合もない───ので、のんびり銀世界を眺める事も儘ならない。
それを思えば、秩序の聖域に降り積もった雪を見て、年若い少年達がはしゃぎ始めるのも、無理からぬ話ではないだろうか。

 積雪は秩序の聖域をすっかり覆い尽くしてしまっている。
よくよく考えると、女神の加護の影響か、聖域近辺は極端な天候の乱れは余り見られなかったので、それが崩れたとなると憂慮すべき事態なのかも知れない。
クラウドやセシルは眉根を寄せてそう考えていたが、無邪気に雪合戦に興じる少年達を見ると、顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
ウォーリアも始めこそ厳しい顔つきをしていたが、バッツに「この雪じゃ、聖域の外にも出られそうにないし。これは、今日一日はゆっくり休んで、これからに備えろって言う、神様からの思し召しなんだよ」と言われ、この世界に置いては神様=コスモスである事もあり、ウォーリアは見事に丸め込まれてしまった。
最も煩型であろうウォーリアが折れた事で、今日一日、秩序の戦士達は雪遊びに興じる事を許されたのであった。

 ───が、秩序の年若い戦士達の誰も彼もが、この雪を歓迎していた訳ではない。
ルーネスはモーグリショップに用事があったらしく、雪の所為で向かえない事に溜息を吐いていた。
なんでも、先日赴いた時、入荷予定とされていたアクセサリーを予約していたらしい。
今日中に取りに行かなければ、予約は取り消しとなり、確保されていた分が普通に販売品として陳列する事になる。
今日は秩序の戦士達が揃って聖域から出られないので、仲間達と早い者勝ちの取り合いになる事はないが、この世界にいるのは自分達だけではないのだ。
混沌の戦士もモーグリショップを利用する事は儘あるらしい。
かと言って、聖域から程近い位置にいるモーグリの下を、わざわざ敵陣深くに潜って来てまで購入する者はいないと思うが───この世界で商売をしているモーグリ達は、それぞれの店で商品の取り扱いが異なっているので、物によっては一匹のモーグリだけが売っている商品と言うものがある。
あのアクセサリーはそれには中らない筈だが、万が一と言う可能性はあるのだ。
早く取りに行きたいな、と思いつつ、ルーネスはティナを喜ばせる為にせっせと雪兎を作っていた。

 もう一人、雪を歓迎していない少年がいる───スコールだ。
スコールは今朝、すっかり積もった雪を見る前から、ベッドを出るのが億劫だった。
雪の所為ですっかり冷え込んだ空気は、外気だけではなく、屋内の気温まで低迷させ、足下の底冷えが半端ない。
極端に暑いのも、極端に寒いのも嫌いなスコールにとって、今日と言う日は全くの厄日であった。
幸い、ウォーリアが今日一日の休息を許可した為、スコールは今日は絶対にベッドから出ないと決めて、ベッドの上で蓑虫になっている。
出て来たのは食事の時だけで、それも終えれば、さっさと部屋に戻ってベッドに入っていた。

 そんなスコールを、仕方ないなと思いつつ、些か不満だったのが、バッツだ。

 スコールが任務以外で出不精な性質である事や、極端な寒暖の差を嫌う事は知っている。
だから、スコールが部屋から出て来ないんだ、とジタンから聞いた時には、だろうなぁ、と笑った。
朝食の時にはちゃんと顔を出していたから、体調不良などと言う心配はしていない。
今日一日はきっとベッドの住人になるつもりなのだろうな、とも予想していたので、外の雪にはしゃぐティーダ達の声など聞こえないかのように、頭まで布団の中に潜らせているスコールの図は、簡単に想像する事が出来た。

 正直、彼がティーダやジタンのように雪遊びではしゃぐ図と言うのも思い浮かばないので、バッツは彼を無理やり外に連れ出そうとは思わなかった。
以前のバッツなら、ジタンと一緒になってスコールを引き摺りだし、ティーダやフリオニール、クラウドも巻き込んで雪合戦を始める所だったのだろうが、今やバッツとスコールは恋仲である。
寒さを嫌う恋人を、ただ自分が一緒にいたいと言う理由だけで、雪空の下に引っ張り出すのは、少し抵抗があった。
反面、ちょっとは顔を出してくれたら良いのに、と雪の中から、カーテンの閉められた彼の部屋を見上げて思う。

 ────思っていると、


「隙あり!」


 聞きなれた親友の声がして、ぱかん、と軽いものがバッツの頭にぶつかって弾けた。
冷たいそれは雪玉だ。
バッツが振り返ると、丸めた雪玉を腕に抱え、その一つを右手に持ち、じりじりと此方ににじり寄って来る悪魔───ジタン、ティーダ、クラウドの姿があった。


「えっ、あれっ」


 凶悪な笑みを浮かべたジタンとティーダ、無表情の割に瞳ばかりは楽しそうなクラウドに、バッツは思わず後ずさりする。
バッツが下がった分だけ、三人は更に近付いた。

 さっきまで二対二の雪合戦していた筈なのに、ティーダとクラウドはともかく、チームメイトである筈のジタンまでもが此方に向かって雪を構えているとは、どういう事なのか。
ちょっとタンマ、と一時休戦を申し出ようとしたバッツだったが、遅い。
真っ白な玉の一斉放射に、バッツは回れ右をして逃げ出した。




 走り回って雪塗れになった後、なんでお前まで?と言うバッツに、ジタンは「お前の所為」と言った。
どうやら、バッツがぼんやりと立ち尽くしている間に、ジタンはティーダとクラウドに集中攻撃を食らったらしい。
助けに入ってくれる筈のバッツが、まるで我関せずとばかりに呆けていたので、彼は非常に寒い思いをしたのだと言う。
雪合戦も負けてしまったので、敗因となったバッツの戦闘放棄の罰として、雪玉集中砲火の刑に至ったとの事だ。

 バッツが雪塗れになった所で、雪合戦はお開きになった。
まだまだ遊び足りないティーダには、引き続きクラウドが付き合う事になり、バッツとジタンは一足先に屋敷に入って、フリオニールが用意してくれていた風呂に入った。
遊んでいる間はまるで気にしていなかったが、指先や足はすっかり悴んでいて、温かい湯が沁み入るように感じられる。
芯までしっかり温まって、バッツとジタンは風呂を出た。

 リビングに行くと言うジタンと別れて、バッツは屋敷の二階に上がった。
向かったのは、まだベッドの住人と化しているであろう、恋人の部屋だ。
ドアに鍵がかかっていない事を確認して、バッツはドアを押し開ける。


「スコール。起きてるかー?」


 ドアを開けるのと、呼ぶ声が重なるのは、いつもの事だ。
部屋主からはノック位しろと度々言われているが、ノックをしても部屋の主が返事をしないものだから、バッツはノックを止めたのだ。
ちなみに、部屋主が返事をしないのは、気紛れや返事が面倒な為ではなく(皆無ではないだろうが)、眠っていてバッツの来訪に気付いてくれないからだ。
寝ているのなら部屋に入るな、と彼は言うが、それじゃいつまで経ってもスコールと話が出来ない、とバッツは思う。

 案の定、今日の呼び掛けにもスコールからの返事はない。
足音を殺し、ベッドの上の蓑虫にそぉっと近付いて観察してみると、蓑虫は規則正しく、静かな呼吸をしていた。
やはり眠っているらしい。

 そっと蓑を剥いでみる。
閉じた瞼に、カーテンの隙間から差し込んだ、曇り空の光が届いた。
長い睫がふるりと震え、とろとろと持ち上がる。


「……ん……」
「スコール」
「……ばっつ……?」


 名を呼んでみると、とろんとした蒼灰色の瞳がバッツに向いた。


「おはよ」
「……さむい」


 寝起きの挨拶をしてみたバッツだが、スコールから返す言葉はなかった。
それ所か、スコールはバッツが摘んでいた蓑を引っ張り、またその中へと潜り込もうとする。


「おーい、待てって」
「……うるさい……さむい……」
「動かないで丸まってるから寒いんだよ」
「………さむい………」


 ちょっとは体を動かそうぜ、と言うバッツだったが、スコールは頑として動かなかった。
予想の範疇ではあったので、腹を立てる事はしない。

 しょうがないなあ、と嘆息して、バッツはベッドに上った。
いつもの凛とした立ち姿は何処へやら、寒さを嫌って子供のようにベッドシーツに顔を伏せようとするスコールの首筋に、手を当てる。


「……?」


 体温を取り戻そうと、もぞもぞと身動ぎしていたスコールだったが、ぴたりとそれを止めて目を開けた。
まだ幾らか眠気の残る瞳で、バッツを振り返ってみる。


「……あんた、外で遊んでたんじゃないのか?」
「うん、遊んでたぜ」
「……なんで温かいんだ」
「さっきまで風呂に入ってたからな」


 ああ道理で、とスコールは納得した。
それから数瞬の沈黙の後、スコールがのろのろと体を起こす。


「外、行くか?」
「…行かない」
「今ならまだクラウドとティーダが雪合戦してるぞ。スコールがやるなら、おれも一緒にやるぞ」
「だから行かないし、雪合戦もやらない。風呂に入るだけだ」


 すっかり逃げてしまった体温を手っ取り早く取り戻すには、熱い湯に入るのが一番良い。
雪遊びに興じていた筈のバッツが、ずっと布団に包まっていた自分よりも温かい体温を持っているのを感じて、スコールはそう思ったようだった。

 バッツとジタンが風呂を出てから、まだ数分と経っていない。
ルーネスが熱めの湯を用意してくれいた事もあって、風呂にはまだ温かな湯が残っているだろう。
ゆっくり、じっくり入って温まるのなら、そろそろ適温程度にはなっているのではないだろうか。

 ティーダが入って来ると煩いだろうから、今の内に───とベッドから降りようとしたスコールだったが、その腕をバッツの手が掴む。


「……?」


 何だ、と言わんばかりに、眉根を寄せてスコールが振り返った。
掴む手を振り払おうと、スコールの細腕に何度か力が籠められるが、バッツの手は確りとした強さでスコールを捕えている。


「何してるんだ、あんた」
「いや、何って訳でもないんだけど」
「なら、離せ」
「いや、それもちょっと勿体ないし」


 言葉は濁しつつも、手は確りと自分を捕えているバッツに、スコールの眉間の皺が深くなる。

 殴ってでも振り払おうとしたのだろう、スコールの自由な腕が拳を握ったのを、バッツは見た。
その瞬間、掴んでいた腕をぐっと強く引っ張って、スコールをベッドの上に引き倒す。


「何なんだ、あんた───って、退け、重い!」


 ベッドに戻されるなり、覆い被さって来たバッツに、スコールは声を荒げた。
しかし、バッツは構わず、スコールの体に自分の身体を密着させる。


「うわ、スコール、冷たいな」
「あんたの体温が高いだけだ。早く退け」
「そう言うなって。おれが温めてやるから」
「要らない!」
「寒いんだろ?遠慮するなよ」
「風呂に入るって言ってるだろう。離れろ、───変な所を触るなっ」


 薄手のシャツの下に手が滑り込んで来て、スコールはじたばたと手足を暴れさせた。
スコールの長い脚がバッツを蹴り飛ばそうとしているが、足は宙を蹴るばかりで、馬乗りになったバッツには何の効果も成さない。

 厚手の羽毛布団と、ふわふわとした手触りの良い毛布に包まっていた筈のスコールの体は、冷たかった。
スコールの言う通り、バッツが風呂上りで体温が上昇しているのも確かだが、それでも此処まで冷たくなるものではない筈だ。
実際、午前中に雪を堪能した後、正午以降はリビングで過ごしているティナやセシル、ウォーリアの体温は此処まで低くはない。


「やっぱり運動しないからだよ、スコール。風呂に入るのも良いけどさ、その前にちょっと体動かそうぜ。それから風呂に入った方がさっぱりするだろ」
「最もらしい事言って、あんたがやりたいだけだろう」


 忌々しげに睨んで言うスコールに、バッツはへらりと笑った。
スコールの言葉は否定しなかったが、純粋に温めてやりたいのも事実。
だが、それを言ってもスコールは信じないだろうから、曖昧に笑って誤魔化した。

 諦め悪く暴れるスコールを意に介さず、バッツはシャツを捲り上げて、薄い胸板に触れた。
仄かにひんやりとした肌に熱が移るように、ゆっくりと皮膚を撫でてやる。


「バッ…ツ……っ」


 スコールが眉根を寄せて、殺した声でバッツの名を呼ぶ。
愛撫に耐えるように唇を噛むスコールを、バッツはじっと観察していた。

 熱を持っている時、冷たいものに触れると、その冷たさをより強く感じる。
逆も然りで、冷え切った時に熱を持ったものに触れると、一層暖かく感じられる。
自分がスコールの冷たい体温を感じている今、スコールも自分の体温をより暖かく感じているのだろうか。
バッツはそんな事を考えながら、寒さの所為だろう、ぷくりと膨らんでいた胸の頂きを指先でぴんっと弾いてやった。


「んっ……!」


 びくっ、とスコールの体が震える。
赤らんだ顔が僅かに歪められるのを見ながら、バッツは乳首を柔らかく摘まんだ。
親指と人差し指で揉むように捏ねてやると、スコールの手がベッドシーツを握り締める。


「んっ…ん……っ!」
「スコール」
「……ふ、んん……っ」


 名を呼ぶバッツに、スコールが薄く目を開けると、褐色の瞳が目の前にあった。
唇に柔らかなものが押し当てられて、スコールが薄く口を開く。
バッツは、誘われるままに舌を挿入して、スコールのそれを絡め取り、ねっとりと肉の表面を舐め上げた。

 捏ね回された乳首が固くなっているのが、指先の感触でよく判る。
更に転がすように捏ね続けていると、スコールの喉からくぐもった喘ぎ声が零れ始めた。


「んっ、ふうっ……んんぅ…っ…」


 眉を潜めて、ベッドシーツを強く握り締め、細い肩を震わせるスコールを、バッツは細めた眼で見詰めていた。
その視線を感じるのか、スコールの顔はどんどん赤らんで行く。

 舌を嬲られる快感にか、息苦しさにか、少しずつスコールの体から力が抜けて行くのを見て、バッツは彼の唇を解放した。
ようやくの呼吸の自由に、はぁ…っ、と熱の篭った吐息がスコールの濡れた唇から零れる。


「あ、あっ…!」


 差し出すように逸らされたスコールの白い喉に、バッツは食い付いた。
柔らかく歯を当てて、舌を這わす。
スコールの背中にぞくぞくとしたものが走った。

 バッツの舌は首筋をゆっくりと下りて行き、ツンと膨らんだスコールの乳首を食んだ。
生暖かい、艶めかしいものが胸を這う感覚に、スコールの白い肌が少しずつ上気して行く。
心臓の鼓動が逸り始めて、彼の体温もようやくの上昇を始めていた。

 ちゅ、と乳首を軽く吸って、バッツは顔を上げる。


「スコール、ちょっと腰、上げて」


 促すと、スコールは赤い貌でじろりとバッツを睨んだ。
が、雫の滲んだ瞳では覇気も何もなく、ただ恥ずかしがっているだけだと言う事が判る。

 スコールは唇を噛んで、ベッドに膝を立て、僅かに腰を浮かせた。
ズボンが下着ごと降ろされて、中心部がひんやりと冷えた外気に触れ、スコールの体がふるりと震える。


「まだ寒い?」


 スコールは答えず、ゆるゆると首を横に振った。
やせ我慢しているようにも見えるが、緩く頭を起こしている雄を見ると、嘘とも言い難い。
どっちでも良いか、とバッツは思って、右手でスコールの下腹部に触れる。

 太いエラの部分をなぞるように指を這わせると、スコールは嫌がるように首を横に振った。
じゃあこっち、とバッツがスコールの胸に吸い付くと、ビクンッ、と細い身体が反って、はぁっ、と甘い吐息が漏れる。


「や、あ……っあ…んんっ…!」
「汗、出て来たな。でも、もっと暖かくしてやるからな」


 胸元に顔を寄せたままバッツが喋るものだから、その吐息がスコールの乳首をくすぐる。
そんな事で感じている自分を知られたくなくて、スコールは目一杯の力でシーツを握り締めて反応を殺そうとしていたが、其方ばかりを警戒していると、雄の裏側を指でゆっくりと辿られて、腰から下の力が抜けてしまう。


「ふぁっ、ああぁっ…!あっ、やっ…バッツっ…!」


 自分のものではないような、切ない声ばかりが漏れて、スコールは耳を塞ぎたかった。
しかし、快感に耐えようとシーツを握り締める手を離す事も出来ず、彼は結局、駄々を捏ねる子供のように弱々しく頭を振るしか出来ない。

 バッツの手は反り始めたスコールの中心部を辿り、その下で慎ましく閉じている秘孔に触れた。
つん、と爪先を宛がわれて、スコールの腰が逃げを打つ。


「や、めろ…バッツ……っ!」
「んーと……」
「バッツ……あぁっ!」


 具合を確かめるように、入り口を探っていた指が、つぷり、と挿入される。
異物感にスコールは短い悲鳴を上げた。

 締め付けて来る肉壁の感触を感じながら、バッツはうっそりと笑みを浮かべて、スコールの胸に舌を這わす。


「スコールの中は、いつでも温かいんだな」
「……っ!」


 バッツの言葉に、スコールは耳まで熱くなるのが判った。
同時に秘部がきゅうっと閉じて、バッツの指を締め付ける。


「あ、くっ……ぅうん…っ!」
「奥は、もっと……?」
「……っ!」


 バッツの指が更に奥まで潜って来るのを感じて、スコールは背を仰け反らせ、唇を噛んだ。
ひくっ、ひくっ、とスコールの薄い腹筋が痙攣するように反応を示している。
バッツは空いていた手でそれを撫でた後、スコールの片足の膝を掬って、押し遣った。


「ちょっ……止めろ、バッツ!」


 下肢を曝け出す格好にされて、スコールは顔を真っ赤にして叫んだ。
が、ぐにゅ、と秘奥の壁を押し上げられて、また喘ぎ声が漏れる。


「あっあ…!や、う……ひぃんっ…!」


 奥に挿入したまま、短いストロークで指を前後に抜き差しすると、スコールは身を捩って、ベッドシーツに顔を埋めた。
手繰り寄せたシーツを縋るように握り締め、奥を突かれる度に細い肩をひくっ、ひくっ、と跳ねさせる。


「んっ、んっ…んっ!あ、んっ…!」
「奥の方、トロトロだ」
「…ば、かぁ……っ!」


 囁くバッツに、スコールは涙の滲んだ目で睨んだ。
その眦の雫を舐め取って、バッツはスコールの最奥に爪を引っ掛ける。


「ひくぅっ……!」


 びくん、とスコールの体が跳ねて、足の先までピンと張り詰める。
スコールの中心部も、すっかり頭を持ち上げて、先端から先走りの蜜を溢れさせていた。


「あ…あ……はぁ、んっ……」


 ねっとりと絡み付く内壁を弄りながら、バッツは指を引き抜く。
擦られる感覚にスコールは悩ましい声を零し、きゅうきゅうとバッツの指を締め付けたが、留める事は敵わなかった。

 解れた秘孔がひくひくと物欲しげに伸縮しているのを見て、バッツの喉が小さく鳴る。
スコールは、褐色の瞳が自分の局部をまじまじと見つめているのを感じて、腹の奥でじんわりとした熱が溢れ出すのを感じていた。


「バッ、ツ……、もう…いい……」
「……いいって、何が?」


 息も絶え絶えに呟いたスコールに、バッツが問う。
スコールは熱を孕んだ瞳でバッツを見詰め、おずおずと両足を開いて見せる。


「もう……熱い、から……」
「……熱いから、もう要らない?」
「……っは…んんっ…!」


 ふるふる、とスコールは首を横に振った。


「熱い、から…あんたの……早く……」


 此処に───とスコールの手が、自ら自身の秘孔の口を開く。
白く細い指に引っ張られて、脾肉が捲れるように入口を開けるのを見て、バッツは自分の血が凝結するのを自覚した。

 バッツが下肢を寛げると、大きく怒張した雄が露わになった。
どくどくと脈打つそれを見て、今度はスコールの喉が鳴る。
釘付けになったようにバッツを見詰めるスコールの目には、少しの恐怖と、熱に浮かされた期待が映し出されていた。

 バッツはスコールの両脚を押して、限界まで開かせると、ひくひくと誘うように伸縮している淫部に己の欲望を宛がった。
触れただけで判る熱の塊に、スコールの雄が喜ぶように微かに震える。


「行くぞっ……」


 ぬぷ……と先端がスコールの秘孔を押し広げて、ゆっくりと奥へと這い進んで行く。
反り返った固い部分が、凹凸のある内壁を撫でながら侵入して行く感覚に、スコールは天上を仰いだ。


「あっ、あっ…!あぁあ……っ!」


 繋がりが深くなるに連れるように、ビクッ、ビクンッ、とスコールの体が震える。
ベッドシーツはすっかり皺になって、スコールは白い波の中で溺れていた。

 ぎゅうぎゅうと締め付けて来る秘孔の熱に煽られながら、バッツはスコールの上に覆い被さった。
自重と合わせて腰を落とすと、ずんっ!と雄が根本まで一気に挿入される。
最奥を突然突き上げられたスコールは、悲鳴を上げる暇もなく、押し寄せる快感に目を白黒とさせている。


「は、あ…!あっ……んぁ……!」


 舌を伸ばして喘ぐスコールの頬に、バッツはキスをした。
そのままスコールの頭を抱えるように抱き締めて、腰を振る。


「あっ、あっ、あっ…!バッ、ツ…、バッツっ…!」
「んっ、く…!スコールの中、すっげー、熱いっ…!」
「ひっ、はっ、はぁんっ!ん…ば、バッツ、も……あぅんっ!」


 ぴったりと雄を咥えて離さないスコールの秘奥は、蕩けそうな程に熱かった。
そんなスコールの皮膚にバッツが舌を這わせば、滲んだ汗の所為でしょっぱくなっていて、彼の身体が先程まであんなに冷たかった事など忘れたようだ。


「あ、あ…!んんっ…!っふ、く……あひ、ひいっ…!やぁあ…っ!」


 奥壁を突き上げられていたと思ったら、雄は突然角度を変えて、壁の上部をなぞり始めた。
スコールの弱い場所を探すように、万遍なく、激しく撫でられて、スコールはびりびりとした快感に悶え喘ぐ。
無理、と言うようにスコールの唇が形を紡ぐが、音にはならなかった。

 バッツの唇がスコールのそれと重なって、舌を絡め取る。
スコールは握り締めていたベッドシーツから手を離して、バッツの首に腕を絡めた。


「んっ、ん…ふぁっ、あぁっ!」


 唇が離れると同時に、また最奥を突かれて、スコールの体が弓形に撓る。


「あっ、あっ!バッツ、や、もう…!んっ、あっ、あぁっ!」
「スコール、きつっ…!おれ、溶けそう…!」
「やっ、やぁっ…!バッツ、んんっ!熱、い、熱いぃっ…!バッツの、あぁあ…っ!」


 前後不覚になって、意識が混濁しかかっているのだろう。
熱に溺れた眼を彷徨わせながら口走るスコールの言葉に、バッツは自身の欲望が更に高まるのを感じた。
体内で質量を増した熱の塊に、スコールは悲鳴とも嬌声とも取れる甲高い声を上げる。


「んぁっ、あっ、あっ…!も、う…イくっ…イくぅっ……!」
「んっんっ…!お、おれもっ…イきそ……っ!」


 共に絶頂が近い事を感じ取って、スコールはバッツの首に回した腕に力を籠め、バッツは更に律動を速めて行く。

 ずんずんと呼吸する暇もない程に激しい突き上げに、スコールは足を攣りそうな程に強張らせていた。
スコールの秘孔はバッツを強く締めつけて、どくん、どくん、と脈打つそれを限界へ押し上げようとするように、艶めかしく蠢いている。
その誘いに促されるままに、バッツは一際強くスコールの体を突き上げた。


「あぁあああっ……!」
「っく……うぅっ!」


 スコールが悩ましい声を上げて絶頂を迎え、直後にバッツもスコールの体内へと、己の熱を吐き出した。




 湯船の縁でぐったりとしている恋人に、バッツはそおっと近付こうと試みた。
が、ちゃぷん、と波音が立った瞬間、ぎろりと凶悪な眼で睨まれる。
────流石に、怖い。

 そんなスコールの様子を露とも知らず、無邪気な声がバスルームに反響した。


「スコール、背中の流しっこするっスよ!」
「……断る」


 スポンジ片手に誘うティーダを、スコールは一蹴した。
しかし、ティーダは負けじとスコールの下に駆け寄って、なあなあ、と構って欲しいと言わんばかりに声をかけ続ける。
スコールはバッツに対するように睨む事はせず、相手にするのも面倒臭いとばかりに、湯船の縁で組んだ腕に顔を伏せた。

 対照的な少年達を眺めつつ、バッツは顔を半分湯に沈めて、ぶくぶくと泡を作っていた。
バッツの様子に眉根を寄せたのは、ティーダの雪遊びの相手をしていたクラウドだ。


「あんた、今度は一体何をしたんだ?」


 何をしてスコールを怒らせたんだ、と問うクラウドに、バッツは顔を上げ、


「寒いって言うから、暖めてやろうと思ったんだ」
「……で?」
「親切心だったのに……」


 怒る事ないじゃないか、と呟くバッツの頬には、くっきりとした拳の跡が残っている。
それだけで、察しの良い男は大体の事を把握したようで、呆れたように溜息を吐いた。




何かいちゃいちゃしてるバツスコが書きたくなったので、衝動のままに。

バッツはいつでも全力で遊びます。熱量高そうなので、寒さとか自覚するまで気付かなそう。
布団の中で丸くなってるスコールが可愛い。寒いと腰が重くなる子。