熱の繋ぐ先


 ふとした時の何気ない仕草に惹かれる。
例えば、長い前髪を少し鬱陶しそうに掻き上げた時の様子や、賑やかな仲間達に囲まれた時に呆れたと小さく溜息を吐いた時の横顔。
考え事をしている時に無防備に薄く開いた唇や、緩んだ手袋を締め直す時の指先の形。
食事をしている時に覗く赤い舌。
そう言うものに、不意打ちのように目が引き付けられて、離せなくなる。





 クラウド、ティーダ、フリオニール、スコールの四人で行う探索が少し長引いて、森の中で夜の到来を迎えてしまい、そのまま野宿する流れになった。
クラウドとティーダがテントを張っている間に、フリオニールとスコールが夕食を作る。
スコールが火を起こしている内に、フリオニールが肉を狩って来たお陰で、中々豪勢な夕食にありつく事が出来た。
健啖家のクラウドとティーダを十分に満足させる量が作れたので、夜中に腹が減ったと目を覚ます事もないだろう。

 食事を終えると見張りの順番を決め、眠れる者は早い内に休んでしまおうと、各々寝床に入る。
最初に見張りをしたのはティーダだ。
基本的に寝起きの良いティーダだが、それはやはり十分な睡眠時間が確保されている事が前提なので、中途に目を覚ましてまた眠ると言うのは彼には向いていないらしい。
短い時間で必要なだけの休息を取ると言うのは、やはりある程度の訓練や慣れが必要な事だ。
だから何か事情がない限り、最初の見張りはティーダが行い、後は朝までゆっくり眠れるように調整されている。
後はフリオニール、スコール、クラウドと言う順番で交代する事になった。

 ティーダが何事もなく見張りを終え、眠気に耐えられなくなって来た所で、丁度良くフリオニールと交代した。
フリオニールは近場で追加の薪を拾いつつ、此方も平穏に当番を過ごす。
何もせずに過ごすのも暇だったので、夕食の時に捌いて余った肉で干し肉を作って置いた。
明日の朝食にしても良いし、道中で小腹が空いた時の足しにしても良いだろう。
仕込みが終わった所でスコールが目を覚まし、しばらく二人で火を挟んで、少ない雑談を交わした。

 フリオニールが眠った後も、夜は静かに更けて行く。
時折、遠くで獣がうろつく気配があったので、火だけは絶やさないように注意しつつ、それ以外は特に気になる事もない。
それだけに退屈だとスコールは思ってしまい、暇を潰す為に本でも持ってくれば良かった、等と悠長な事も考えていた。

 焚火に薪を追加しつつ、スコールはフリオニールが作って行った干し肉の具合を確かめる。
適当な木の枝と紐で焚火の上に吊るされた肉は、順調に水分を飛ばしている。
空気が乾燥しているので、この調子なら朝を迎える頃には完成しているだろう。
薪もフリオニールが十分に拾っておいてくれたので、スコールが拾いに行く必要はなさそうだ。
そうなると、いよいよ時間を持て余すスコールは、暇潰しにガンブレードの調整でも見ておこうか、と思っていたのだが、


「スコール」


 呼ぶ声に顔を上げると、クラウドが立っていた。
交代の時間かと思ったが、少し早いような気もする。
そんな気持ちが表情に出ていたのか、クラウドはスコールの隣に腰を下ろしながら言った。


「目が覚めたんでな。もう一度寝る気にもならないし」
「……そうか」


 特に何か変わった事があった訳ではなく、単純に目を覚ましただけなのだと言うクラウドに、スコールも淡泊な反応を返した。

 交代時間に早いとは言え、クラウドが起きて来たのなら、此処で見張りを変わっても良いのだろう。
が、今のスコールは睡魔もないので、テントに入った所で、見張りをすると言う役目もなくした分、余計に暇を持て余すに違いない。
目を閉じていれば直に眠れるかも知れないが、それまでに余計な時間を費やすような気がする。
それに、とスコールは一度目の入眠の時にはテントにいなかった仲間の存在を思い浮かべる。


(……寝相、悪いんだよな)


 誰の事かと言えば、ティーダだ。
賑やか組を公言する彼は、眠っている時も賑やかなのだ。
あっちへごろごろ、こっちへごろごろとよく転がり、近くで寝ている人のエリアへ遠慮なく入って来る。
のびのびと眠れる事は悪い事ではないのだが、寝ている時位は遠慮してくれ、と言うのが他者の気配に敏感且つ神経質なスコールの正直な気持ちだった。

 ふう、と小さく溜息をもらして、スコールは何気なく握った木の枝をくるりと回す。
特に意味もなく握ったものだったので、直ぐにぽいっと焚火に放った。
小さな火の粉がゆらりと舞って、地面に落ちて消える。

 取り敢えず、まだ眠くはないのだし、そもそも交代の時間には少し早い。
見張りが二人いる事にも何ら問題はないのだ。
朝食はきっとフリオニールが作るのだろうが、仕込みだけ今の内にやって置こうか。
干し肉を使えば出汁の効いたスープが作れるだろう。
夕食の時にも世話になった川に行って、水を汲んでこようか───と考えていると、


「スコール」
「…何────」


 名を呼ぶ声に、なんだ、とスコールが顔を上げると、目の前に珍しい光彩を宿した碧眼がある。
余りに近いその距離に、スコールは思わず息を飲んだ。

 クラウド、と瞳の持ち主の名を呼ぼうとして、スコールは唇を塞がれた。
突然の事に丸く見開かれた蒼に、間近でそれを見詰める魔晄の瞳が映り込む。


「ん……っ!?」


 予告のない事に驚いて固まるスコールを、クラウドの微かに笑んだ瞳が見詰めている。
無防備に開いていた唇の隙間を、ぬるりと温かいものが撫でた。
ひくん、と震えるスコールの肩にクラウドの手が乗って、逃がさないとでも言うかのように力が籠る。
咥内に艶めかしいものが滑り込み、ゆっくりと歯列をなぞられるのを感じて、スコールの喉の奥で小さく音が漏れた。


「う…ん……っ、んん……っ」


 段々と息苦しさが増してきて、スコールの顔に朱色に染まって行く。
鼻で息をすれば良いと言う事を、スコールは完全に忘れていた。
そんな余裕のないスコールを宥めるように、クラウドの手が頬を撫で、顎のラインを辿って降り、強張っている首筋を指先が擽る。
そんな事をすれば、余計にスコールの体は強張り、敏感になってしまうと知っていながら。

 ひくっ、ぴくっ、と小さく震えるスコール。
クラウドはそんな恋人の腰に腕を回し、密着するようにと抱き寄せた。
抵抗を忘れたスコールが素直に腕の中に納まった事に満足しながら、舌を絡め合わせようとして、ぐいっ、とクラウドの顎が上向きに押された。


「……ま…て……っ!っは……!」


 はあ、はあ、と息を喘がせながら、スコールは自由になった口で必死に酸素を取り込む。
肺が生き永らえようと必死になっているのが判った。

 スコールの息がまだ幾らも落ち着かない内に、クラウドは自分の顎を押し上げているスコールの手を掴んで、視線を定位置に戻す。
眉根を寄せて睨むスコールと目が合う。
ゆらゆらと揺れる焚火の明かりに照らされた小さな唇に視線が引き寄せられて、もう一回、と口付けようとして、それを察したスコールの手がクラウドの口を塞ぐ。


「待てって言ってるだろう!」
「……」


 眉尻を吊り上げるスコールと、判り易く不満げな顔を浮かべるクラウド。
その表情に、なんであんたがそんな顔をするんだ、とスコールの眉間の皺が深くなる。


「いきなり何するんだ、あんたは」
「何って、キスだな。嫌だったか?」
「い…や、とか、そう言う問題じゃない。今は野営中だぞ」
「そうだな」
「寄るな。しようとするな!」


 スコールの言葉に手短に返事をしつつ、クラウドはまたキスをしようと迫る。
掌に口を抑えられたまま、ずいずいと近付いて来るクラウドに、スコールは目一杯の力で抵抗した。


「人の話を聞け!」
「聞いてやりたいが、聞いていると大体許してくれないだろう?」
「あんたが場所と状況を弁えないからだ」


 こんな状況でなければ、スコールとてクラウドに求められるのは嫌ではない。
寧ろ、自分から中々求める事が出来ない分、クラウドから求められるのは嬉しい事だとも言えた。
しかし、二人きりの探索であればともかく、仲間達も同行しているこの状況で求められても、理性と羞恥心が強いスコールには応えられない。
況してや、と懲りずにキスをしようとするクラウドを睨んで、スコールは言った。


「大体あんた、キスだけで終わらないだろう……!」
「……否定はしない」


 スコールの言葉に、クラウドは悪びれる様子もなく返す。
この野郎、とスコールが米神に青筋を浮かべた。

 これまでの経験で、スコールは彼にキスをされる意味をよく判っている。
二人が付き合い始めたばかりの頃は、スコールが他者との接触に悪い意味で過敏になってしまっている事もあり、クラウドも忍耐強かったと思う。
スコールのペースに合わせて、少しずつ少しずつ慣らすように触れてくれていたから、性急に求められる事もなかった。
スコールにとってはそれ位が丁度良かったのだが、どうもクラウドにとってはそうではなかったらしい。

 繋がる夜を数える毎に、スコールが触れ合う事に慣れるに従い、クラウドの性急さも増して行く。
ただ触れ合うだけの日も勿論あるが、その先を求める事も増えた。
今となってはスコールもそれに応じる事は吝かではないのだが、時に環境を顧みずに求められるのはどうしたら良いのか戸惑う。
聖域にいればどちらかの部屋に籠れば良いのだが、皆が出ているからとリビングで求められたり、偶々入浴の時間がかち合った時には風呂でした事もある。
二人きりの散策の時はいざ知らず、時にはこうして仲間達がいる野営中であっても、わざわざ少し離れた場所に移動して交わる事もあった。

 求められる事は嬉しい。
始めは苦手だったキスも、今ではふわふわとした心地良さを覚えるので、嫌いではない。
何より、クラウドが自分を愛してくれていると全身で感じられるのは、スコールにとって幸福な事でもあった。
しかし、それでも、場所と状況は鑑みて欲しいと言うのが、スコールの正直な気持ちである。

 ───だが、クラウドにしてみれば、ようやく触れ合えるようになったのだから、もっとスコールを感じたいのだ。
スコールが接触嫌悪気味なのは見ていて判る事だったし、それでもクラウドは彼に触れたいと思った。
神々の闘争が終われば別れが待っていると判っていながら、判っているから、クラウドはスコールと言う存在が欲しい。
この世界で彼と触れ合える間に、スコールの体に触れていない所などないと思う位に、繋がって溶け合いたいのだ。

 スコールの腰を抱いていたクラウドの手が、するりと滑って引き締まった腰を撫でる。
ビクッとスコールの体が震えるのを見ながら、クラウドは口元を抑えるスコールの手袋を軽く食んだ。
ガンブレードを握る手を保護する為の手袋なので、それなりに厚みがある。
それでも噛んだ感覚は布越しに皮膚へ伝わったようで、反射のようにスコールの手が逃げた。


「スコール」
「やだ。嫌だ」


 名を呼びながら顔を近付けると、スコールは顔を背けて抵抗した。
また手がクラウドの口を塞ごうとするが、察したクラウドの方が早くそれを捕まえる。

 スコールの横顔に、クラウドはゆっくりと顔を近付けて行く。
これ以上動かせない頭に代わって、スコールは体を反らして尚も逃げる。
しかし、腰を抱く太い腕の力は緩まず、言外に逃がさないと言う意思を表示していた。
更には密着した場所にぐっと押し付けられる感触があって、その逞しさにスコールは顔を引き攣らせる。


「あんた…っ、なんでいつでも何処でも……っ」
「節操無しのような言い方は悲しいな」
「実際そうだろ。ティーダとフリオニールもいるんだぞ」
「ああ。でも大丈夫だろう。二人ともよく寝ていたから」
「そんな保障が何処にあるんだ」
「経験上、と言う所か」
「信用できない!」


 ティーダは一度寝ると朝が来るまで起きないし、フリオニールも眠る時はしっかり眠れる性質だ。
敵の襲撃があれば話は別だが、今の所はそんな気配は感じられないし、彼等が目を覚ます事はないだろう。
とクラウドは思っているのだが、スコールの言う通り、それは単なる希望的観測である。
先のクラウドのように、予定にないのに目を覚ましてしまった、起きたから折角なので散歩でも、と言う事は儘ある話だ。
そんな可能性が1ミリでもあるのなら、スコールはまるで安心できない。

 腰を抱いた腕が悪戯な動きをして、スコールの肌を撫でる。
指先の厚めの皮が微かにささくれ立っている感触があって、ひくん、とスコールの体が震える。
漏れかけた吐息を押し殺すスコールの唇に、クラウドのそれが宛がわれた。


「んん……っ!」


 下唇を吸われて、スコールはきゅうっと唇を真一文字に噤んで堪える。
クラウドの舌が丹念に唇の形をなぞった後、噤んでいる其処を舌先でつんつんとノックした。
開けて、と強請られているのが判るが、スコールは首を振って嫌だと訴える。
すると、舌先で唇をくすぐるように遊ばれて、ぞくぞくとしたものが首筋の後ろに走るのが判った。


「んっ、んぅ……っ!ふ……っ、」
「ん……は…、」
「ふ…っ、うん……っ」


 唇を小刻みにくすぐられる感触がむず痒くて、スコールは顎の力が緩みそうになる。
クラウドはそれをよく判っていた。
目を閉じて眉間に皺を寄せ、一所懸命に耐えるスコールの姿にいじらしさを感じつつ、頑なな其処を解かせようと何度も舐める。

 逃げたがって体を反らそうとするスコールだが、既に体は限界まで反らされている。
それでも逃げようとしていると、当然、重心が傾いて、体が後ろへと倒れて行く。
クラウドはスコールの背中に腕を添えながらそれを追い、やがてスコールは地面に横になって、クラウドに覆い被さられる格好になっていた。
もう逃げられなくなった唇が、二度目の息苦しさを嫌って、酸素を求めて緩む。
それを感じ取ってクラウドが唇を離すと、はあっ、とスコールは口を開けて息をした。


「はっ、はぁ…っ、は……」
「ん」
「んむぅ……っ!」


 二度、三度の呼吸が出来たと思ったら、また塞がれる。
咥内に舌が入って来るのが判って、スコールの体がふるりと戦慄いた。
舌が絡め取られて、たっぷりと唾液を塗して愛撫される。


「ん、んぁ……っ、は、ん……っ!」


 熱を持った生き物のようなものに舌を撫でられて、スコールは舌の根が痺れるような気がした。
自由にされている片手でクラウドの肩を押し、胸を叩きと戦うスコールだったが、クラウドは全く気にしない。
いやいやと首を振りたくても、クラウドは角度を変えて口付けて来て、より深くまで貪られる。

 ざり、と砂土を擦る音がして、クラウドの膝がスコールの太腿を押す。
クラウドが間に挟まる形でスコールの足が開かされ、昂ったものが股間に押し付けられて、スコールの顔に血が上った。
背中を抱いていた腕が解け、シャツの上からスコールの薄い胸を揉む。
揉みしだくような脂肪の塊などないのに、スコールは目の前でクラウドが楽しそうに笑うのを見た。


「ふ、う……っ!」


 何が楽しいのだろう、と聊か腹立たしさを覚えつつも、スコールは妙な感覚を覚えていた。
クラウドの手が胸を揉んでいると、それだけで体がじんわりと熱を持って、腹の中に貯まって行く。
シャツの中で小さな蕾が膨らんで、布の裏地に擦れる感触が判ってしまうのが、無性に恥ずかしい。

 耳の奥で、ちゅぷ、ちゅぷ、と言う音が聞こえてくる。
スコールの口の中は、二人分の唾液ですっかり濡れていた。
重ね合わせた唇の隙間から、溢れ出した唾液が伝い流れて行く。


「ん…ぅ……あ……っ」


 ちゅぱ、と音を立てて、クラウドはゆっくりとスコールの唇を開放する。
離れる瞬間、あ、と言う微かな声がスコールの唇から漏れるのを聞いて、クラウドは目を細めた。

 はあ、はあ、と甘く熱を孕んだ呼吸が、静かな夜の森に染み渡るように溶けて消える。
しかし、クラウドは頭上で囁く枝葉のさざめきよりも、恋人のその声が何よりもよく聞き取れた。
頬を紅潮させ、くったりと横たわるスコールの姿を、頭の天辺からじっくりと見下ろして、スコールの中心部が窮屈そうにしているのを見付ける。
胸を撫でていた手を下ろし、するりと其処を撫でてやれば、「ん……っ!」とスコールが息を詰まらせる。

 白いシャツをたくし上げれば、汗ばんだ肌が露わになる。
火照った体に夜の空気は聊か冷たかったようで、スコールは熱を守るように体を縮こまらせようとした。
しかしクラウドは肩を掴んでそれを制すると、スコールを外気から隠すように体を重ねてやる。
冷気から守られて少し安堵して、スコールはほっと息を吐く。
そんなスコールの首筋に甘く歯が立てられて、スコールの身体がビクッと震えた。


「や……っ、クラ、ウド……っ」
「大丈夫だ、怖くない」
「…ん…あ……っ!」


 体を重ねてまだ間もない頃、何かと不安に駆られたスコールを宥めていた時と同じ言葉を囁くクラウド。
始めはそれでもスコールは緊張し通しだったのだが、いつの間にかその声と言葉を聞くだけで、安心感を覚えるようになった。
状況は全く安心できるものではないのに、とスコールは視界の端にちらつく火の粉を見て嘆く。

 首筋を食まれながら、スコールはベルトが外される音を聞いた。
このままだと───と先の読める展開に、目の前の男を止めなければと思うのに、体に力が入らない。
やめろ、の一言だけでも言いたい。
しかし、クラウドの舌で丁寧に愛撫された口にはまともな力が入らず、はくはくと唇を戦慄かせている事しか出来なかった。

 中心部が緩められ、下着の中にクラウドの手が侵入する。
中で窮屈にしていたものを捉えられると、それだけでスコールは腰全体に甘い痺れが走るのが判った。
籠った空気の中で汗を掻いているそれを、クラウドの掌が包み込み、やわやわと揉む。


「あ…あ……っ、や……っ」
「苦しいか?」
「ふ…うぅ……ん……」


 クラウドの声に、スコールはどう答えれば良いのか判らなかった。
苦しいかと言われると苦しいし、そうでもないと言えばそうでもない気がする。
握ったものを上下に擦って扱き始めるクラウドに、いやいやと首を横に振ってはみるものの、それでクラウドが辞めてくれる訳もないし、本心から辞めて欲しいのか言われると、スコールは何も言えなくなる。

 クラウドの手の中で、スコール自身はむくむくと膨らんで行った。
息が上がり、開かれた足の太腿がふるふると震えて、切迫感が近付いて来る。
唇を噤んで眉根を寄せ、体の反応を理性で抑えようとするスコールだが、クラウドの手はそんな恋人を益々追い詰めていく。


「んっ、ん…、んぅ……っ!」
「一度抜いておいた方が楽か」
「ふ…っ、あ……っ!」


 くりっ、と指先で先端の鈴口を苛められて、思わず高い声が出る。
しまった、と思うも遅く、クラウドは其処を何度も擦ってスコールを昂らせて行き、


「っ、っ…!あ……っ……っ!!」


 クラウドの首にしがみ付き、肩に齧り付くような格好で、スコールは果てた。
下着の中でびくっ、びくっ、と跳ねた中心部から蜜が溢れ出し、下着とクラウドの手を汚す。

 声を抑えた反動か、スコールの体は強い余韻の中で強張っていた。
立てた膝が震え、力が入らない。
出るものが出た筈なのに、体の奥に熱い蟠りが残っていて、スコールは物足りなさを感じていた。
まだ触れられていない所が疼いているのが判って、無意識に体を捩ってしまう。

 は、ふ、と息を漏らしながら、ようやくスコールの体が弛緩する。
恋人に縋っていた腕からも力が抜け、ぱたりと地面に落ちた。
すっかり蕩けた顔で、ぼんやりと視線を彷徨わせるスコールの頬に、クラウドの唇が落ちる。
前髪が頬を掠めるのがくすぐったくて、スコールは僅かに目を細めた。


「……いいな?」
「……は……あ……」


 近い距離で見詰めながら確かめる声に、スコールは言葉らしい言葉を返せない。
こんな時に、二人きりじゃないのに───そう思っていても、スコールの喉は小さく喘ぐ音を零すだけだ。

 ズボンが降ろされ、下着も脱がされて、スコールは濡れそぼった中心部を晒された。
火照った体に触れる空気がひんやりと冷たいのに、果てたばかりの其処は確りと頭を上げていて、まだまだ萎える気配がない。
それ所か、何もかも晒した其処を碧眼に見つめられて、スコールは体の芯にぞくぞくとした感覚が上るのを抑えられなかった。

 スコールの蜜を纏わせた手が、内腿を滑って行く。
ゆっくりと進む手に、早く、とスコールは腰を揺らした。
それを判っているのかいないのか、クラウドの手は足の付け根の皺を辿り遊んでいて、直ぐ傍でひくひくと寂しそうにしている秘孔には触れてくれない。


「……ふ…ぅん……っ」


 良いな、とわざわざ聞いて確認して来た癖に、こんな所で焦らすのか。
スコールは忌々しさで目の前のチョコボ頭を殴ってやりたくなったが、指がするりと移動する感触に、ビクッと体が期待に震えた。
指は会陰を舐めて、ようやく秘部の縁を掠め、具合を確かめるように指の腹で丁寧になぞる。


「…っは……、んっ……!」
「入れるぞ」
「んっ……!」


 指先が中に入る感触に、スコールは息を詰めた。
異物感に眉根を寄せ、強張ろうとする体を宥めるべく、必死に息をする。
しかし声を上げる訳には行かないから、口は噤んだままで、鼻息ばかりが荒くなった。

 ゆっくりと中へ侵入されて行くのが判る。
じわじわと自分の中が作り返られて行く気がして、怖いと思っていたのはいつまでの事だっただろう。
今では壁が擦られている感覚がするだけで、快感の種が芽吹いてしまう程に、スコールの体はクラウドの愛撫に従順になっていた。


「う…ん……っん…」
「痛くはないな?」
「……う、ん……」


 確かめるクラウドに、スコールは小さく頷いた。
そうか、とクラウドは呟いて、指を曲げる。
くにっ、と壁が押されるのを感じて、スコールの腰がビクッと跳ねた。

 くちゅ、くちゅ、と中を優しく掻き回されて、スコールの口から何度も小さな声が漏れる。
その都度、スコールは唇を強く紡ぎ直すのだが、首筋を舐めるクラウドの舌が、それを邪魔する。
ひくついた喉仏をちろちろと舌先で遊ばれると、喉の奥の神経がぴりぴりと微弱な電気を発して来るのだ。
口の中で溜め込んでいた苦しさが耐え切れなくなって、溺れて酸素を求めるように、口を開いてしまう。
そのタイミングで秘孔の弱い場所を擦られれば、耐えられる訳もなく。


「あぁ……っ!んっ、は、…あっ……!」


 弱い場所を爪先で柔らかく引っ掻かれて、痺れるような快感に喘ぎ声が漏れる。
はあっ、と息が漏れる瞬間に零れてしまう声が恨めしい。
そして、それを抑えられない程に、快感に素直であるように教え込まれてしまった事も。

 きゅうきゅうと締め付けていた秘孔が、少しずつ柔らかくなっているのを感じて、クラウドの口元に笑みが浮かぶ。
弱い場所に押し当てた指を上下に動かすように肉壁を擦ると、スコールの太腿がクラウドの躰を挟んでビクビクと震えた。
指先で強く推してやると、スコールは頭を振って悶える。
いつもなら高い声を上げて鳴いているのに、今日は仲間達の気配を気にして、必死に声を押し殺している姿が、妙にクラウドの興奮を誘っていた。


「ふ…っ、ふ、う……っ、うんっ……!」
「奥がヒクついてるな……」
「う……んんぅう……っ!」


 クラウドの囁きに、何をされるのか判って、スコールの体が耐えるべく腹に力を込める。
そうしてぎゅうっと強くなった締め付けの中で、クラウドは指を置くまで突き入れた。
深くへ侵入された快感に、スコールは体を丸め、口に手を当ててくぐもった声を漏らす。


「ん、んっ…!んふぅ、うんっ…!」


 奥を爪先で小刻みに擦られて、スコールの縮こまった体がビクッビクッと何度も跳ねる。
中心部からとろりと蜜が溢れ出し、竿を伝ってスコールの尻を濡らしていた。
指をくわえ込んだ秘孔は土手を色付かせて膨らみ、卑しい動きでクラウドの指をもっと奥へと誘おうと蠢いている。


「んっ…んぁ……っ、あ……っ!」


 絡み付いて来る肉壁を擦りながら、ゆっくりと指が抜けて行く。
奥の疼きが解放されないまま、愛してくれる指が離れて行こうとするのを感じ取って、スコールの体が我儘を唱えた。
引き留めようと吸い付く感触に、クラウドは喉奥が笑うのを堪えながら、最後まで指を抜く。
にゅぽっ……と名残惜しむように最後まで離れようとしなかったスコールのいじらしさが、クラウドには愛しくて堪らない。


「は…っ…あ……っ…」
「スコール」
「……んぁ……っ!」


 覆い被さり、耳元で名を呼ぶクラウドに、スコールはその声だけで体が震えた。
カチャカチャとベルトを外す音が聞こえて、スコールの体の熱がまた昂る。

 前を寛げて取り出したクラウドの一物は、すっかり大きく膨らみ、血管を浮かせる程に逞しくなっていた。
スコールはそれを視界の端で捉えて、ごくりと唾を飲んだ。
もう何度も与えられているものだけれど、咥えるまでは本当に入るのだろうかといつも思ってしまう。
同時に、それが与えてくれる充足感も幸福も知っているから、体は益々我慢を忘れて求めずにはいられない。


「クラ…、ウド……っ」
「ああ。良いな?」


 確かめるように問うクラウドに、どうせ駄目だと言っても聞かないんだろ、とスコールは思っていた。
実際に、今日は駄目だとか、此処までだとか言って、クラウドが聞いてくれた試しは殆どない。
そもそも、それを聞いてくれるのなら、仲間達が近くにいるのに事を始めたりはしないだろう。

 ぐ、と熱く太いものが押し当てられて、拓かれて行く。
指で十分に解されていても苦しいのは変わらないのに、早く、と求めてしまうのは、その先の熱を知っているからだ。


「う…ぅん……っ!」
「く……っ!」
「…は…ク、ラ、んん……っ!」


 ゆっくりと侵入して来る雄が、どくんどくんと脈を打っていて、クラウドの興奮振りを示していた。
それが露骨に伝わって来て、スコールの腹の奥が切なくなる。

 狭いスコールの中が、クラウド自身で大きく拡げられていく。
自分の中が恋人の為に作り替えられていく感覚に、スコールは言いようのない喜びを感じていた。


「は……は、ぁ……っ、」
「スコール……っ」
「う…んぅ……っ、奥、に……っあ……!」


 一番奥の壁に、太いものが当たるのを感じて、スコールは背を仰け反らせた。
全てを納めた秘孔が、きゅうきゅうと嬉しそうにクラウドを締め付けている。

 クラウドはスコールの両膝の裏に手を入れて、足を大きく開かせた。
腰を揺らして中を擦ると、ビクンッとスコールの体が跳ねる。
すっかり性感帯として出来上がっている媚肉を、ゆっくりと一物で擦りながら腰を退いて行くと、スコールは薄い腹をふるふると戦慄かせて快感に耐える。


「っ…あ…っ、ふ…んんぅ……っ」
「動くぞ、スコール」
「ふ、うんっ…!んっ、んっ…、んぅっ…!」


 じりじりとした快感に悶えていたスコールに、短い断りだけをして、クラウドは律動を始めた。
柔らかく解された肉壁が、クラウドの形に擦られ突き上げられて、またスコールを快感の海へと押し流して行く。


「はっ、ふ…、うっ、うんっ!んんっ!」


 初めは浅い所から、徐々に深い所を目指して激しくなって行く攻めに、スコールは声を漏らさないように必死だった。
二人の繋がる深度が深まって行けば行く程、スコールが得る快感も大きくなる。
それが最高潮になると、前後不覚になって、気持ち良いと言う事以外は判らなくなってしまう。
そんな時、自分がどんなに酷い有様になっているのか、スコールはよく覚えていない───覚えていられないと言うのが正しい。
けれど、今日はそんな流れに身を任せている訳にも行かなかった。


(…声…抑え、ないと……んっ!お、起きたら……ああ……っ!)


 ゆらゆらと揺れる焚火の向こうで、静まり返っている小さなテント。
其処で寝ている仲間達に気付かれないように、起こさないように、スコールは必死だった。

 段々とクラウドの律動が激しさを増して行く。
突き上げられると、弱い所に届くようになって、スコールを襲う快感が一層強くなった。
少しでも油断すると、噤んだ口が解けてしまって、あられもない声を上げてしまいそうになる。


「ふっ、ふぅっ…!ふ、あ!んんっ……!」


 ずんっ、と奥の壁を突き上げられた瞬間、堪らず高い音が出た。
しまった、と真っ赤になって手袋をはめた手の甲を噛んでいると、薄く笑うクラウドの貌が見えた。


「んっ、あん、た…っ、何、笑って……っ!」
「…ああ、悪い。ちゃんと集中する」
「違、あぁっ!」


 覆い被さって来たクラウドに、そう言う事を言っているんじゃない、と言おうとして、出来なかった。
より深くまで入って来たクラウドの存在感に、スコールの意識は容易く攫われてしまい、それ以上の句を封じられる。

 焚火の明かりも見えない位に、スコールの視界はクラウドで埋められていた。
ひらひらと微かにオレンジ色の光を反射させる碧眼が近付いて来る。
薄く開いたスコールの唇が、クラウドのそれに塞がれて、舌が絡め取られた。
ちゅう、と音を立てて舌を吸われて、スコールはぞくぞくと喉に走る快感を感じながら、クラウドの首に腕を絡めた。


「んっ、んっ…!んっ、ふ……っ!」


 キスをしながら、クラウドはスコールの中を攻め立てる。
クラウドの熱が大きくなり、今にも弾けんばかりに成長している事に、スコールも気付いていた。
その限界を目指して、クラウドが一層激しく腰を振れば、スコールも同様に上り詰めて行く。


「う、あ…っ、はんっ、んっ、うん…っ!んんっ!」
「っは…スコール……ん、」
「んむぅ…っ!う、んっ、んうん…っ!」


 何度も触れては離れ、角度を変えて重ねられる口付けに、スコールは溺れそうになっていた。
舌を絡めて混ぜ合った唾液が、飲み込み切れなくなって溢れている。
それをクラウドが舌で舐めて掬い取り、また口付けて絡めてくるから、スコールの口の中は二人分の唾液で濡れそぼっていた。

 下腹部もそれは同じ事で、スコール自身からは限界を訴えるように、ぴゅっ、ぴゅくっ、と飛沫のように蜜が噴いている。
イくなら一緒が良い、と必死に我慢してはいるけれど、それもいつまで持つか。
秘孔が求めるようにクラウドを締め付け、早く欲しい、と体の全てで恋人の存在を強請り訴える。


「んっ、むぅ…っ、んっ、んんんっ…!」


 律動に合わせて揺さぶられていたスコールの脚が、爪先までピンと伸びて行く。
同時にスコールの秘孔も一際強く締まり、クラウド自身に隙間なく絡み付いて、いやらしい動きで劣情を煽った。


「っは…スコール……っ、出る……っ!」
「あ、あっ…!んっ、俺、も……う…んぅうううっ!」


 ずんっ!とクラウドが大きなストロークで奥を突き上げた瞬間、スコールは絶頂した。
覆い被さる恋人の首に目一杯の力でしがみつき、声を殺して迎えた果ては、スコールに予想以上の大きな波を持ってきた。
張り詰めた体に与えられた至高の瞬間は、スコールの理性を蕩けさせるには十分だったが、其処に更に追い打ちが来る。


「くぅ……っ!あああ……っ!」
「─────……っっ!!」


 スコールの耳元で、クラウドの低い声が響く。
耳を犯す心地良い声を聴きながら、スコールは自分の中に熱いものが注がれるのを感じた。
その時のスコールは、声を殺す余裕もなく、それ所か声を上げる事も出来ない程の強烈な快感の中にいた。

 はあ、はあ、と二人分の洗い呼吸が、静かな森の中で繰り返される。
覆い被さる重みの下で、スコールは強張った体をビクッビクッと痙攣させていた。
秘孔も同じように小刻みに震えており、咥え込んでいる雄を揉むように締め付けて、まだ残っている熱を絞り出そうとしている。
その媚肉の誘いは、クラウドにはとても魅力的なものだったが、茹った頭に微かに戻って来た理性が、流石にこれ以上は、と自重を促した。


「…は……スコール……」
「う……んむ……ぅ……」


 それでも直ぐには離れ難くてキスをすると、スコールはとろんとした表情でそれを受け入れた。
ちゅく、ちゅく、と音を立てて、たっぷりと堪能するように愛して、クラウドはスコールを開放した。
はあっ、と甘い吐息を漏らし、くったりと地面に沈むスコールの頬を撫でて、クラウドはゆっくりと秘孔に収めている己を抜いて行く。


「…っあ…あ……っ、んぁ……っ」


 擦れて行く感触に、ビクッ…ビクンッ……とスコールの腰が震える。
甘やかな声と、悩ましげに腰を揺らす姿に、クラウドはまた熱が高ぶって行くのが判った。

 秘孔に咥えるものがなくなると、きゅうっと切なそうに穴が閉まる。
奥から押し出されてきた白濁液が溢れ出し、スコールの下肢をしとどに濡らして行く。
もう一度挿れたらもっと気持ちが良いのだと言う事を知っているだけに、クラウドの興奮は未だ衰えず、出したばかりの熱がまた育っていく。


「スコール」


 快感の余韻に浸かっている恋人の名を呼ぶと、ぼんやりとした瞳が見上げて来た。
その目に再び大きくなっているクラウド自身が映って、呼ぶ声が何を求めているのかを感じ取ると、


「……この……バカ……っ」


 スコールにしては珍しい、直球な一言であったが、クラウドは悪びれもしなかった。
もう一度覆い被さってキスをしようとするクラウドに、スコールはせめてもの抵抗のに頭を振る。
しかし顎を捉えてしまえば、もう逃げる事は出来ず、深く深く口付けられる。

 木々の向こうに見える夜はまだ深く、朝は当分先まで待ってくれるらしい。
その間に目の前の男が満足してくれる事を願いながら、スコールもクラウドの首に腕を回した。




野営中に突然迫って来られて駄目だって言うけど強くは拒めないスコールが書きたかった。
スコールから見るとクラウドはいつも突然迫って来るけど、クラウドはクラウドで何かと無意識に煽ってくれるスコールにいつも我慢を強いられているって言う。