不足分、充填中につき


 何処から手を付ければ良いのか判らない。
ならば、とにかく目についた所から手を付けて行くしかない。

 変わり果てた姿の故郷に戻って来ても、碌に感慨らしい感情は浮かんで来なかった。
人の気配など何処にもない、闇色の気配だけがあちこちでのさばっている故郷に、何故か涙すらも出て来ない。
自分はそんなに冷たい人間なのだろうか、と思ったけれど、隣にいたエアリスが「これから忙しくなるね」と言ったのを聞いて、少しだけ気分が楽になった気がした。
だって、そう、自分達は遥か彼方の記憶に思いを馳せているような暇はないのだ。
この世界に、街に蔓延る心なき者達を退治しながら、建物を修繕し、嘗て同じように此処を離れた人々が戻って来た時、昔と同じように平和に暮らせるようにして行かなければ。

 そう思ったら、のんびりしている暇はあっと言う間になくなった。
心なき者達への対処法、機械やら道具類やらを掻き集め、復興に使えそうな大型駆動の機械は大急ぎで修理。
それらと同時進行で、レオン達は小さな勇者達が集めてくれた情報の断片を解析・整理していた。
十数年の昔、この故郷を飲み込んでしまった事象の詳細が判明すれば、今世界で起こっている事について、もっと詳しく知る事が出来る。
そうすれば、同じ事が二度と繰り返される事のないよう、防ぐ事だって可能になる筈だ。

 レオン達は先ず、城内部とその周辺を整える事から手を付けた。
城内は暫くの間、自分達の生活スペースにも宛がう事になったので、客間を各人の個室として使わせて貰う事にし、食事は広く豪勢な厨房横のダイニングで、会議などを行う時は図書室を使う事にした。
図書室には、流石は賢者の所有していた蔵書室と言うべきか、この世界の全ての知識が蓄えられており、他ワールドに関する文献も少なからず置いてあった。

 現在、レオンはこの図書室で一日の大半を過ごしている。
復興作業は、シドが大きなクレーン等の改修を完了させるまで、一時休止となった。
かと言って、レオンはのんびり改修完了を待てるような性格ではないので、この余暇の間に出来る事、調べられる事を一通り片付けてしまおうと思い至ったのである。
ちなみに、ユフィは城を探検すると言って毎日何処かしらを駆け回っており、エアリスは「中庭をお花で一杯にしたい」と言って花や木の手入れに余念がない。

 皆それぞれに忙しいのだ。
ユフィの行動は子供っぽく見えるが、城の内部は構造も含め色々と謎な点が多い為、進んで散策に赴いてくれる者がいるのは、非常に助かる。
時折、奇妙なトラップを発動させて大騒ぎに発展する事もあるので、もう少し注意してから行動してほしい、と思う事はあるが。

 そんな中で、一人、故郷の復興に一向に手を貸さない人物がいる。
本人は「俺も暇じゃない」と言うのだが、レオンにしてみれば、ふらふらと何処かの世界を渡り歩いては、ふらふらと帰って来ているだけで、特に何某かの収穫があったようにも見られないので、風来坊が気儘に自由に旅をしているようにしか見えない。
何度か“彼自身の闇”なる人物について話をされたが、レオンはそれを五分五分程度にしか聞いていない。
帰って来たら、次に出て行くまでにあの辺の仕事をやらせよう────レオンにとって彼の存在の大きさとは、ぶっちゃけた話、その程度のものであった。


「……と、言う事だから。丁度良く帰って来た訳だし、西側の庭のハートレス退治と、開墾作業をやって置いてくれ」
「嫌だ」


 ────図書室の一角で、その遣り取りは行われていた。
質素な椅子に腰を下ろし、サイドボードに分厚い本を山積みにし、その中の一冊を膝上で開いて読んでいるのがレオン。
その傍らに立ち尽くし、一歩も動く様子を見せないレオンをじっと見下ろしているのが、クラウドである。

 レオンの先の言葉は、久しぶりにふらりと戻ってきたクラウドが「構え」とレオンにちょっかいを出し続け、無視し続けた末に「レオンにとって俺はなんなんだ?要らない子か?」等と発言してきた事に対する返事である。
要らない訳ではないが、平時から常にいない事が多いので、特別意識する事はなく、ただ帰って来たらその時は重要な人材の一つとして有効活用させて貰おう────と言うのが、レオンのクラウドに対する感覚である。

 無論、クラウドはこれに反発した。
反発と言うか、子供の我儘にも似た駄々も同然であったが。


「そんな事してる暇あったら、レオンと一緒にいる。だから構え、レオン」
「断る。俺は忙しい。お前みたいに暇じゃない」
「俺だって暇じゃない。早くあいつを見つけてケリを付けたいんだ。でも、あんたとも一緒に過ごしたい。だから戻って来た時位、あんたも俺に構ってくれ」
「西側の庭が片付いたら考えてやる」
「そんな事してる間に、あんたまた他の事見付けて忙しい忙しいって言うだろう」


 唇を尖らせたクラウドの言っている事は事実だが、レオンが忙しいのも事実である。
レオンは、見下ろす不満そうな碧眼をちらりと見て、また直ぐに手元の本に視線を戻した。


「仕方がないだろう、やる事が山積みなのは本当なんだ。だからお前も、いるかいないか判らないような奴を追い回してないで、もう少し故郷の復興を手伝え。その分、俺の仕事も減るんだから」
「あいつを野放しにしてたら、何処で何仕出かすか判らない」
「じゃあ、いちいち帰って来ないで、さっさと目当ての奴を見つけて、用を済ませろ。此処で無駄な時間を過ごしている方が効率が悪い」
「無駄じゃない。あんたがいる。俺はあんたの顔が見たくて帰って来たんだ」


 真っ直ぐに向けられる言葉に、レオンは溜息を一つ。
読み終わった本を閉じて、サイドボードに置くと、碧眼がきらきらと輝いた。
が、次の本を手に取った途端、またムッとした色になる。


「俺の話聞いてたか」
「聞いてる。聞いてるから言ってるんだ。俺に構って欲しかったら、西の中庭を片付けて来い。どうせしばらく大きな作業は予定にないから、俺は夜まで此処にいる」


 待っている訳ではない。
しかし、クラウドが早めに作業を済ませれば、一応は構ってやっても良い。
そんな姿勢を見せると、ころりとクラウドの雰囲気が変わった。


「中庭行ってくる」
「エアリスが空中庭園にいるから、声をかけて行け。色々構想があるらしいからな」
「判った」


 駆け足で図書室から出て行く後ろ姿に、犬に似てるな、とレオンは小さく呟いた。




 物事に集中すると、ついつい他の事が見えなくなる癖がある。
そんなレオンにとって、本や書類などと言った文章は、暇潰しには絶好の道具であった。
特に面白いもの、興味のある分野、もっと言えば必要な知識の類の本であれば、暇潰しついでに知識も得られるので、一石二鳥である。

 そんな調子で、レオンは今日も活字の世界にのめり込んでいた。
読んでいるのは魔法書を科学的に分析したと言う内容のもの。
ほんの少し前まで、魔法使いの下で色々と世話を焼いて貰っていたレオンにとって、これは新たな角度からの指南書であった。
上手くすれば、魔法の力を使って機械の修繕が捗るかも知れないし、もっと言えば、魔法力を基盤にした新たな機械を作る事も出来るかも知れない。
後でこの本はシドに見せよう、と思いつつ、レオンはページを捲った。

 ────バァン、と派手な音を立てて図書室のドアが開かれたのは、レオンが本を三分の一程読み進めた頃である。
かなり大きな音が鳴ったのだが、活字世界にどっぷり浸かっていたレオンは、特別気に留めはしなかった。
何か音がしたかな、程度の認識になる程、入り込んでいたのである。

 ゴッゴッと硬い足音が鳴り、近付き、字面を追うレオンの視界に影が落ちる。
読み辛いな、と思ってレオンは顔を上げて、ようやく、男───クラウドが戻って来た事に気付いた。


「終わったのか」
「終わった」


 だから構え、と言わんばかりに見下ろす碧眼に、レオンは呆れ半分に嘆息を一つ。
持っていた本に栞を挟み、サイドボードに置くと、積んでいた他の本を腕に抱えた。


「おい」
「片付けるだけだ。その間くらい待てるだろ」


 出したものは、用が済んだら片付けないと気が済まなかった。
潔癖症ではないが、生真面目な性質なのである。

 手近な棚から順に本を戻して片付けながら、レオンは図書室の二階へ繋がる階段を上った。
その後ろをついて来る気配がある事には気付いていたが、気にせずに窓際の棚から戻す場所を探す。
分厚いハードカバーの本の色と、本棚に並べられた本の色を確認しながら、少しずつ場所を移動させていると、


「レオン」
「なんだ─────!?」


 呼ぶ声に振り向かずに返事をすると、肩を掴まれて強引に振り向かされた。
腕に抱えていた本がばさばさと音を立てて床に落ち、唐突な出来事に強張ったレオンの背が、本棚へと押し付けられる。


「ん……!」


 目の前で金糸が揺れて、窓から差し込む緋色を反射させている。
綺麗だよな、傷んでるけど、と何処か他人事のように思考していると、唇の形を生暖かいものに舐められた。

 体を本棚へと押し付ける男の肩を押して、退かそうと試みる。
しかし、自分よりも年下で身長も低いのに、ウェイトだけは此方が負けている。
お陰で、純粋な力比べとなると、どうにもレオンの方が分が悪かった。


「ん、ふ……」
「ん……」


 呼吸を求めて唇を開いてしまえば、好機とばかりに舌が滑り込んで来た。
逃げるように退く舌を、あっと言う間に捕獲されて、絡め取られる。

 静かにするもの、が定説である図書室に見合って、殆ど音のしなかった空間に響く、小さな淫音。
己の口元で鳴っているから、それが殊更に大きな音であるような気がして、レオンは眉を潜めた。
が、仕掛ける男の方はお構いなしで、相変わらずレオンを本棚に縛り付け、レオンの咥内を好きに貪り続ける。


「ん、ちゅ……ふっ…」
「んー……」
「……ん、んん…っ!」


 しつこさと息苦しさで、レオンはクラウドの髪を掴んで引っ張った。
流石に答えたらしく、クラウドが眉を潜めて顔を放す。


「痛いだろ」
「こっちは…っ、死ぬとこだ……!」


 ハートレスに襲われて死ぬのならまだ良い、いや良くはないけれど、その覚悟はあるから。
けれど、男にキスさせて窒息死だなんて、笑えもしない。

 間近にある男の顔を、掌で押し退けようとする。
しかし、クラウドは梃子でも動かないとばかりに微動だにせず、もう一度口付けようと顔を近付けてくる。


「お前は、部屋に戻るまでの我慢も出来ないのか」
「今までずっと我慢してた。もう限界だ」
「あと五分足らずだろ……と言うか、此処でするな。誰か来たら」
「大丈夫だろ、誰も来ない」


 根拠のない言葉を自信満々に言うクラウドに、レオンは米神を引き攣らせた。
その間に、クラウドの武骨な手がレオンのシャツを摘まみ上げようとする。


「おい…!」
「レオン、煩い」
「ん……!」


 誰の所為だと言いかけた唇を、もう一度塞がれた。

 ぴちゃ、ちゅく、と絡めあう舌が音を立てて、クラウドは角度を変えながら、レオンの咥内を深くまで貪って行く。
舌の表面と、歯列の裏を執拗になぞられる。
クラウドの舌先が、自分の舌先を弄ぶように掠る度、レオンは背中にぞくりとしたものが走るのを感じていた。


「ん…ふっ、……う…!」


 シャツがたくし上げられて、胸板の上に凹凸の触感のある手が這う。
少しざらついた皮膚が、ゆっくりと肌の上を滑る感覚に、レオンは眉根を寄せて目を閉じた。


「ん、ん……ふ、ぁ…っ」
「感じる?」


 きゅ、と指先が胸の蕾を摘まんだ。
ぴくん、とレオンの肩が跳ねたのを見て、クラウドは満足そうに口端を上げる。


「レオンも我慢してた?」
「…お前じゃ、あるまいし……っ」


 親指と人差し指で摘ままれた乳首が、コリコリと爪先を当てられながら転がされる。
反対の手はレオンの背中へと回されて、腰骨の辺りを探るように撫でていた。
その手が徐々に下へ降り、レオンの引き締まった臀部を摩る。


「おい…触るな、撫でるな」
「嫌だ」
「ぅあ……!」


 クラウドの指が乳首を摘まんで、きゅう、と引っ張る。
痛みと同時に、ぞくりとしたものが背を走って、レオンは喉を反らせて声を殺した。

 目の前に晒された喉仏に、クラウドは誘われるように躊躇わず食いついた。
喉笛に歯が当たる感触に、レオンは顔を顰める。


「やめ…、この、バカっ」
「ん……」
「っ……!」


 ぺろ…、と喉を生温いものが滑る。
数か月前までいた世界で、犬によくじゃれつかれて顔を舐められたが、あんな可愛らしいものではない。
ぬるぬるとしていて、酷くしつこい、そんな舐め方。

 ────それなのに、息が上がる自分がいる。
喉元と言う、食い千切られれば一巻の終わりという場所を押さえられている緊張感の所為か、それとももっと他の。
あまり深く考えると、地雷を踏むような気がして、レオンは頭を振って思考を切り捨てた。

 クラウドの頭が、レオンの胸に降りて、金色の髪が肌上を掠める。
弄られて膨らんだ乳首を、はむ、とクラウドが口の中へと含み入れた。
生暖かい吐息がかかって、ねっとりとしたものが乳頭の先端をノックするように突く。


「んっ…う……」
「あぐ」
「っ……!歯、立てるな…っ!」


 カリ、と甘く当たる硬い感触に、レオンの体が小さく震える。
クラウドはそんなレオンの反応を楽しむように、舌で乳輪をなぞりながら、掠めるように乳頭に歯を当てる。


「この……っんん…!」


 鶏冠頭を殴ってやろうと腕をあげようとしたら、目敏く勘付かれて、手首を掴まれた。
敷き詰められた本の背表紙に手首を押し付けられる。

 舌の腹が乳首を押し潰すように当たる。
ぬろり、と丹念に舐め取った後、クラウドはちう、と乳首を強く吸い上げた。


「……っ…!」


 はぁっ、とレオンの喉から押し殺した吐息が漏れるのを聞いて、クラウドはもう一度乳首を吸う。
ちゅ、ちゅ、と音を立ててしつこく吸い付かれる感覚に、レオンは唇を噛んで耐え続けた。

 シャツを持ち上げていたクラウドの手が下へ降りる。
腰のベルトをがちゃがちゃと乱暴に外される音がして、ちょっと待て、とレオンは顔を顰めた。


「やめ、ろ……後は、部屋で…させて、やる、から…っ」
「嫌だ」
「っん、ぁ……!」


 ぢゅぅっ、と抵抗を許さないとばかりに、強く乳首に吸い付かれて、レオンは肩を強張らせた。

 ベルトが外され、ズボンの前を緩められ、下着ごと引き下ろされる。
太腿に纏わりつく布地が、酷く鬱陶しく思えた。


「半勃ち」
「煩い…!」
「やっぱり溜まってた?」
「煩いって言ってるだろ…!」


 露わになった雄を、クラウドの手が包み込み、上下に動かして扱く。
淡白な方らしいと自覚してはいるが、それでも成人男子であるから、溜まるものは溜まる。
久方ぶりの刺激に、体は酷く正直な反応を示し、あっと今にレオンの雄は天を突くように頭を持ち上げていた。


「は…ん……っ」
「これでも止めろって言う?」
「う…んく、……当たり、前、だろ…!」


 シドやユフィ、エアリスが此処に入って来ない保証はない。
あの三人に、こんな場面を見られるのは、絶対に嫌だった。
もしも見られたら、舌を噛み切って死んでしまいたい位に。

 けれども、そんなレオンを見ても、クラウドは益々性質の悪い笑みを深めるばかりで、止める気は毛頭なかった。
クラウドは膝を折ると、レオンの足の間に顔を近付け、反り返った雄に舌を伸ばす。


「あ、や……!バカ、止めろっ…!」


 れろ……と根本からゆっくりと舐め上げられて、レオンの体がぞくぞくと甘い痺れに震える。
ぬる、ちゅぷ、ねと……と丹念に下から上へとなぞられて、膨らんだ部分を指で圧すように捏ねられて、レオンの腰が戦慄いた。


「う、んっ…あ…っ…!ふ、く……」
「気持ち良いか?」
「喋るな……息がっ……あ…!」


 クラウドの舌が、皮肉の上で動く度、レオンの体が小さく跳ねる。
先端からとろりとした液が溢れ出している事に気付いて、クラウドは誘われるようにそれを口に含んだ。


「………っっ!!」


 ぢゅるぅ、とわざとらしく音を立てて吸われて、レオンは溢れそうになる声を、手のグローブを噛んで押し殺す。
ぎりぎりと食い千切らんばかりの力で噛み付くレオンを上目に見て、クラウドはもう一度、二度、三度とレオンの雄を吸い上げた。


「っう、ふ、…んぐっ、う、う、」


 ビクッ、ビクッ、とレオンの体が痙攣し、先走りの蜜がクラウドの咥内へ送り出されていく。
小出しにされる感覚が、どうにも焦らされているような気分になって、レオンはもどかしさで無意識に腰を突き出す格好を取っていた。
クラウドはそんなレオンの腰を捉まえると、逃げないように固定して、一際強く吸い上げる。


「ふっ、う!んぐ……────っ…!!」


 声を必死に殺しながら、レオンはクラウドの咥内へと熱を吐き出した。
どろりとした液体が口一杯に広がるのを、クラウドは満足げな表情で受け止める。

 レオンの体がビクッビクッと痙攣を起こしているのを見上げながら、クラウドは口の中に含んだ蜜液を飲み込んだ。
それを信じられない、と言わんばかりの表情で見下ろしているレオンに、べ、と舌を伸ばして見せてやれば、赤い肉の上に、粘ついた白が残っている。


「……最悪だ……」
「俺は最高の気分だ」
「……変態め」


 憎々しげに睨んだレオンだったが、クラウドが腰を掴む手を放すと、支える力を失って簡単に膝が折れてしまった。
ずるずると座り込むレオンに、クラウドが顔を寄せ、もう一度自分の舌を見せる。


「濃かったぞ。やっぱり溜まってたんだな」
「……仕様がないだろう。抜く暇なんかなかった」
「じゃあまだイけるよな」
「は?……ちょ、待て、おいっ」


 ひょい、と抱え上げられて、レオンは目を丸くする。
横抱きの格好で、下肢を晒して抱えられているなど、屈辱以外の何者でもない。

 下ろせと叫ぶレオンの命令は、思いの外早く叶えられた。
しかし、降ろされたのは図書室二階にあるロールトップデスクの上。
恐らく、嘗ては賢者が此処で書き物をしていたのであろう、質素だが上品な光沢のある其処に下ろされて、レオンは嫌な予感を覚えた。


「待て、こら。離せ、離れろっ」


 逃げを打とうと下がろうとすれば、足を掴まれて阻止されたので、ならばと乗り出そうとするクラウドの頭を踏む形で遠ざける。
しかし、クラウドはレオンのズボンの一端を掴むと、引っ手繰るように下ろして脱がしてしまった。


「おい!」
「暴れるなよ」
「お前が止めれば済む話だ!」
「それは無理」


 クラウドの手がレオンの両足首を掴んで、デスクから下半身を下ろし、足を左右に大きく開かせる。
レオンが真っ赤になって上半身を起こすと、其処にクラウドの姿は見えず、


「────ひっ!」


 ぴちゃ、と股の間に生き物が滑る感覚。

 クラウドは、先程の射精の余韻に汚れたレオンの内股に舌を這わしていた。
蜜で濡れた其処を、拭い取るように丹念に舐めとりながら、腿の裏側を悪戯に掌で撫でる。
ゆったりと、皮膚の表面だけを優しく摩られて、レオンはぞくぞくとした感覚に見舞われる。


「う、ん……!バカ…舐め、るな……!」
「嫌だ。勿体ない。レオンが出したもの、全部俺のなんだから」
「ふ…!あ、ぁっ、んん……!」


 舌が秘部へと近付いて来るのを感じて、レオンの足が爪先までピンと伸びる。
強張った足の付け根の場所をクラウドが舐めると、レオンは息を飲みこむように口を噤んだ。

 クラウドの眼前で、レオンの雄はまた膨らんでいた。
クラウドは裏筋を根本から舌でなぞり上げ、レオンの雄の先端まで行き付くと、膨らんだ其処を口の中に頬張った。


「う…ん、んんっ!」


 ぢゅ、ぢゅるっ、と強く吸いつかれて、レオンの体がビクン、ビクン、と跳ねる。
手袋を嵌めた手がデスクに爪を立てていた。


「っは、あ…!やめ、ろ、…っ!」
「んぷ」
「舐めるな…あっ、あっ、…吸うなっ!」


 クラウドの舌が転がって、レオンの雄の膨らみを撫で回す。
ぬちゃぬちゃとしたものに包み込まれる感覚が我慢ならなくて、レオンは顔を顰めてクラウドを睨んだ。
しかし、指で裏側をゆったりと擦られてしまうと、直ぐに面は蕩けてしまう。


「ふ、は…ん、んん……っあ、く…っ」


 デスクに上半身だけを乗せて、足を大きく開かせて。
自分の有様が堪らなく恥ずかしくて、レオンは泣きたい気分だった。
しかし、己をこんな有様にした男は、まだまだ飽きずにレオンの体を弄ぶ。

 雄を丹念に舐めしゃぶりながら、クラウドは指を秘孔へと近付け、指先で口をなぞる。
びくん、とレオンの足が跳ねたのを見て、碧眼が満足げな笑みを滲ませた。


「う、……んんっ!」


 つぷん、と指が秘孔に挿入されて、レオンは漏れそうになる声を唇を噛んで堪える。
ひくひくとレオンの腹筋が震えているのを見ながら、クラウドは更に指を奥へと挿入させて行った。


「う、あ……はっ、ん…!」
「……勃ってるぞ。後ろも感じる?」
「う、はっ…そこで、喋るな……っ!」


 吐息がかかる感覚が嫌で、レオンは言った。
するとクラウドは「判った」と言ってレオンの雄から離れ、秘孔から指を引き抜き、


「…ば、其処はっ!」
「解さないと痛いだろ」
「だからってそんな所……んあっ!」


 ぐにぃ、と生暖かいものが秘孔を押し広げ、内部に侵入してくる。
止めろって言ってるのに、とレオンは唇を噛んで胸中で叫ぶが、そんなものが傍若無人な男に聞こえる訳もない。

 人の指ほど長くはないが、指よりも太さのあるものが、内壁を執拗に撫でては尖らせた先端で突く。


「う、んっ!ん、あ…く、ふぅっ……うぅん…!」
「れぉ…んぷ、ふ、れおんの、なか、あふい…」
「だ、だから…あっ、喋る、なって、……あぅんっ」


 クラウドが何事か喋ろうとすれば、当然、それに合わせて舌も蠢き、レオンの秘孔内を探るように動く。
ぐねぐねと生々しい感触が続いて、レオンは背を反らせて悶える。


「う、んん……っは、ふ、……ん……!」


 ぎ、とグローブを噛むレオンに、クラウドは不満げに眉根を寄せると、秘孔から指を抜いて、ひくつく穴口に唇を当てた。
ぢゅるるっ、と吸い付く音に、レオンの体がびくりと強張る。


「あ、や…!ん、ぅ…くぅ、あ……っ!」


 ビクッ、ビクン!と肢体を跳ねらせ、レオンは狭間に埋められた頭を押し退けようと、金色の鶏冠を掴む。


「ん、クラウド…、やめ、ろ…!」
「やだ」
「はっ、あっ!う……ぁ、あ!」


 クラウドはレオンの太腿を肩に乗せ、抱えるように腕で囲って固定する。
虚ろな目で天井を仰ぎ、躯を震わせるレオンの様子に、クラウドの口元が弧を作るが、レオンがそれを見る事はない。

 ちゅぅ、とクラウドはレオンの内腿に赤い花を残し、その周囲にまとわりついている蜜液に舌を這わせる。
舌と共に腿に当たる呼吸に熱が篭っているのが判って、レオンの吐息もつられるように艶が零れ始めていた。
レオンの悩ましげな吐息と声を聴きながら、クラウドはもう一度レオンの秘孔に舌を寄せる。


「だ、から…舐めるなって……っ」
「でも、気持ち良さそうだぞ。勃ってるし」
「ん……んんっ!あ、ひ…っ!」


 れろぉ……とクラウドの舌がレオンの雄を舐め上げる。
クラウドは雄の先端を口に含むと、またぬとぬととしつこく舐め回しながら、レオンの秘部に指を当てた。


「う……あああっ!」


 雄への刺激に意識を攫われていた所へ、無防備だった秘孔に突きいれられて、レオンは思わず声を上げた。
厳かな図書室に反響する自分のあられもない声を聞いて、恥ずかしさで死んでしまいたい気分になる。

 埋められた指が曲げられて、内壁を探るように万遍なく擦られる。
レオンは手袋を噛んで必死に声を殺した。


「ふ、ぐ、うっ…!ん、ん……」
「……んぢゅっ」
「んうぅっ!」


 舐められていた雄の先端を強く吸われて、レオンの躯がビクン!と跳ねて反り返る。
耐えるようにふー、ふー、と意識して長い呼気を吐くレオンだったが、内壁を探る指が一点を突いた瞬間、息を詰めて目を見開く。


「……っ!…!」


 ビクッ、ビクッ、と声にならない声で悶え喘ぐレオンの姿に、クラウドの碧に淫悦の笑みが浮かぶ。
尖らせた舌で咥内の雄の先をぐりぐりと押して刺激しながら、秘孔内の反応があった所を爪先で引っ掻くように擦れば、レオンの喉奥からあられもない音が漏れて、


「っあ、あっ、ふ……んぁっ!ひ、は…あっ、ぁあっ…!」
「んん……この辺、」
「んぁっ…!あ、は、あ……!あっ、んっ、…あ、あ!」


 何度も手袋を噛んで声を押さえようとするレオンだったが、呼吸の隙間を縫うように秘孔を突かれて、溜まらず声が溢れ出す。
その癖、秘孔に埋められた指から与えられる刺激は、どうにも物足りない気がしてならない。

 しつこく雄を舐めしゃぶる男に、レオンは手を伸ばした。
じゅるる……と絞り出そうとするように吸い付く頭を力任せに掴めば、頭皮を引っ張られる感覚に痛みを覚えたか、クラウドは眉を顰めて顔を上げた。
良い所なのに、と言わんばかりの男の顔に、レオンは苛立ちながら、持て余す体の熱の吐き出し口を求めて、熱に溺れた瞳を向ける。


「もう、…いれ、ろ、っ…!」
「そんなに欲しい?」
「…違、お前、が……しつこい、っ…う、んぁあっ!」


 ぐりゅっ!と指が秘部を強く推すように突き上げる。
その瞬間に絶頂を迎えかけた気がしたが、熱を吐き出すまでには至らなかった。
余計に体内で熱が燻る状態にされて、レオンは荒い呼吸で、汗の滲んだ胸を上下させる。


「はっ、あっ…う……んあ、あぁっ…!」


 悶えるように躯を捩じり、腰を揺らすレオンに、クラウドがごくりと唾を飲む。
散々焦らして散々弄んだ男は、思った以上の痴態を見せる恋人に、自身の我慢と余裕の壁が粉々に砕け散って行くのを知った。

 クラウドは、がちゃがちゃと乱暴にベルトを外して己の中心部を晒すと、唾液と蜜液でどろどろに濡れた秘孔に熱の塊を宛がった。


「入れるぞ、レオン」
「……早く、…しろって……!」
「そんなにねだるなんて初めてだな。どれだけ欲しかってるんだ?」
「………!!」


 揶揄うように囁く男に、レオンは顔面を掴んで力任せに握る。
痛い痛い悪かった、とおざなりな返事があった所で、手を放してやる。

 デスクの上に躯を投げ出し、差し出す形となったレオンに、クラウドは先の詫びのように唇を寄せた。
ぺろ、と喉を撫でられて、─────秘奥が拡げられる圧迫感に襲われる。


「う、あ……あぁっ…!」


 熱と艶と、少しだけ痛みの混じる悲鳴。
それに反して、レオンの内側は男を招き入れるように開かれて、侵入者を悦ぶように肉壁が絡み付いて行く。

 クラウドは、己の雄を根本まで一息に挿入させると、レオンの呼吸が整うのを待たずに腰を打ち付け始めた。


「あっ、う、ん…っ!ん、ふ…」
「この辺……」
「は…あっ!」


 クラウドが狙って突き上げた一点に、レオンが背を仰け反らせて声を上げた。


「あっ、う…あっ、あっ、んぁ、あっ!」
「レオン、声、大きい」
「んぐ、ぅ、」
「我慢するなよ」


 冗談じゃない、とレオンは眉を潜めて唇を噛んだ。
クラウドはそんなレオンに不満げに唇を尖らせ、腰を打ち付けながら、レオンの唇に己のそれを重ね合わせる。

 唇の形を舌でなぞって、ほんの少し隙間が空いたのを逃さず、顎を捉えて深く口付ける。
舌を絡ませて弄び、間近にある青灰色が蕩けて行くのを見ながら、クラウドはゆっくりと顔を放した。
二人の舌の間で銀糸が光る。


「んあ…あっ、はっ…あ、……あく、はっ、」


 ぐちっ、ぬちっ、と淫音が鳴って、クラウドの雄が締め付けられれる。
レオンの腹の上で、彼の雄もすっかり膨らんで反り返り、今にも熱を吐き出そうとしているように見える。


「んぁ、あ、ふ…あっ!」
「う、ふ……んっ!レオンの中、やっぱり、イイ」
「あっ、あっ!く、ふ……ふぁ、あ、あ、」


 ビクッ、ビクッとレオンの躯が大きく跳ね、それに合わせるように秘孔が締まってクラウドを悦ばせる。

 クラウドが律動のリズムを上げれば、レオンはいやいやをするように頭を振って身悶えた。
レオンの足がクラウドの腰に絡み付く。
あれだけ殺そうとしていたレオンの声は、最早耐えられるものではなくなっており、突き上げられる度に快感に従事した嬌声が上がっていた。


「ふ、ふあっ!あ、く、クラウド、も、もうっ…もう、イく…っ!」
「う、待って。もう、ちょっとで、俺も、」
「はっ、ひっ!ひあっ、あっあっ!う、激し、ばか、無理っ…!」


 秘部の最奥を連続して突き上げられて、レオンは舌を伸ばして喘ぎ鳴く。
ぞくん、ぞくん、と断続的な強い快感に押し上げられて、レオンは頭の中が混沌としていくのを感じていた。


「ふぁっ、あっ、ん…!う、んん…!もう、無理、イく、イくっ…!」
「う、っく、俺も、一緒に、」
「あっ、ああっ!んぁあぁっ!!」


 レオンの腹に白濁液が飛び散り、同時に秘孔内へもどろりとした熱が吐き出される感覚に、レオンの声が一際高く大きなものになって、広い図書室の壁に反響する。

 それから暫く、二人の荒い呼吸の音だけが、図書室内を支配していた。
絶頂感を直前にして強張っていたレオンの躯はすっかり弛緩し、ぐったりとして投げ出されている。
背に当たる、光沢のある上質のデスクの冷たさが心地良くて、同時に汗がべたついているのが鬱陶しい。
そして何より、


「……もう、退け。邪魔だ……」


 自分の上に伸し掛かったままの男の存在が、他の何よりも鬱陶しくて、レオンは胸に乗ったクラウドの髪を引っ張った。
しかしクラウドは「やだ」と小さく呟いて、汗の滲んだレオンの胸に頬を摺り寄せる。


「まだ足りない。もっとしたい。レオンを感じたい」


 口説き文句と聞こえなくもないが、レオンには駄々を捏ねられてるようにしか思えなかった。
幾ら自分の方が年上とは言え、精々三つ四つしか離れていないのに、どうしてこの男は二十を越しても子供っぽいのだろうか。
何処かで躾を間違えたか、とレオンが胸中で愚痴を零していると、


「……っ!」


 ぐん、と体内に埋められたままの欲望が、再び大きくなるのを感じて、レオンは目を瞠った。


「おい…!」
「足りない」
「判ったから部屋に……っ!」


 ぐちゅっ、と突き上げられた所為で、言葉が最後まで続かなかった。
射精して間もない、力が抜けた状態のレオンの足を抱え上げて、クラウドはまた律動を始める。


「やめ、ばかっ、あっ!」
「ん、締まってる、」
「ひっ、ふ…!抜け、って…言って…あっ!」


 レオンの止める声に構わず、クラウドは雄をぎりぎりまで引き抜いては、最奥まで一気に貫く攻めを繰り返す。


「あっ、あっ、く、う……んぁっ!」
「部屋なんて、待ってられない。勿体ない」
「ふ、う、……んっ、んっ!あっ、ああっ…!」


 肉欲に夢中になって貪る男に、レオンが勝てた例はない。
明日からは絶対に甘やかすまいと決めて、レオンは早くこの子供のような男が気が済む事を祈った。




うちのクラレオのクラウド(KH仕様)は大体こんな感じです。レオン好き好きまっしぐら。
そんな年下に「…やれやれ」みたいに流されながら付き合ってるレオンです。

しかしクラウド、しつこく舐め過ぎだろうお前。