バッカナーレ:スラー


 再建委員会が活動をしていると、街の住民から感謝のお礼だと言って、某かを手渡しされる事が儘ある。
それらは大抵は食べ物の類である事が多く、消費される事が前提で、後に残って無用な邪魔物になる事もないので、あちらも渡し易いし、此方も遠慮なく消費する事が出来る。
再建委員会の面々と言うのは、日々忙しなく過ごしている事が多く、ハートレスの被害があれば其方へ走り、建物の修繕要望があればその状況を確認しに行き、街の人々から相談事があれば時間を取りと、食事の準備ものんびりとは出来ない事が多いので、人々からの差し入れと言うのは非常に有り難いものだった。
───偶にしかホロウバスティオンにいる事のないクラウドも、時にその恩恵に与る事もあった。

 闇に囚われていた故郷を取り戻してから、一年近くが経っている。
その内にクラウドは、延べ一ヵ月になるかならないか程度の時間しか街で過ごしてはいないのだが、それ故に復興のスピードが非常に早く進んでいる事を察していた。
早いと言っても、元々がたった4人から始まった再建であるから、“その人数で出来ること”を鑑みて思うと、“早い”と言える程度の事だ。
その理由は、帰還してから真っ先にシドとレオンが寝ずの作業で機械システム類の修理に当たった事が功を奏しており、ハートレスに対して発動する防御システム『クレイモア』の運用が可能になった事が大きかった。
最初に拠点としていた城の中を、その外を、そして更に外へと少しずつ運用範囲を拡げながら、ハートレスの活動域を押し上げて行き、今に至る。
ただでさえ大きな街であったから、全ての地域をカバーするには全く足りてはいないのだが、それでも安全区域を確保する事に成功したお陰で、ちらほらと住人が戻ってくる事が可能になった。
人が増えてくれば出来る事も増え、レオン達と同じように街を再建する事に意欲的な人であったり、その下支えをしてくれる人々であったり、少しずつ街に活気が取り戻されていく。
そして今現在、そう言った人々が、街のリーダー的存在となった再建委員会を中心にして、皆で元の街を取り戻そうと動き出している。

 クラウドは相変わらず、自分の勝手で世界を行ったり来たりと繰り返している。
目的としている者は已然として碌に手掛かりがなく、空振り続きで溜息ばかりだった。
その疲れを癒す為にと、安全が確保され始めた故郷にふらりと戻るようになったのは、故郷の奪還から半年が経った頃だろうか。
その頃には戻って来た住民の姿がちらほらと見えるようになっていて、クラウドにも幼い頃に見た覚えのある影があった。
同時に、人が増えて来た───つまりは餌が増えて来た影響なのか、一時はクレイモアによって被害が減っていたハートレスの人々に対する襲撃事件が増えるようになり、街ではセキュリティ関係を強化する必要に迫られていた。
クレイモアはシドが都度バージョンアップさせてはいるのだが、これはどうしてもシド単独の仕事となり、進捗速度には限界がある。
シドが其方に手を取られると、他の機械類の修繕で指揮を執っていた者が離脱する事になる為、代わりの者が必要になる。
適任なのは街の概要の殆どを把握しているレオンなのだが、彼の手が其方へ割かれると、街に出没が増えたハートレスを退治して周る手が減ってしまう。
そんな所へ即戦力となるクラウドが戻ってくれば、幼馴染の面々に取っては又とない人材確保のチャンスである。
こう言った理由で帰還早々駆り出される事は珍しくなく、西の住居区を、北の細道を、と色々と指定されて、クラウドは仕方なしに剣を取り仕事に向かう。
終われば飯と宿にありつける訳だから、その分の代金だと思えば、また平時は全く幼馴染達の仕事に取り合わずに自分の都合で過ごしている、髪の毛一本分はありそうな申し訳の対価にはなるかと思っている。

 今日もクラウドは夕飯分の仕事位はしておくかと、エアリスに頼まれて住居区のパトロールをしていた。
先日ハートレス被害があった場所の状態を確認し、その周辺をぐるりと歩いて、隠れているハートレスを見付けては退治していく。
こうして延々と作業を続けても、ハートレスは以前として姿を消す事はなく、また現れる。
おまけに最近は新種のようなものも現れるようになって来て、面倒が増えていた。
しかし、地道なこの作業を辞める事は出来ない。
いたちごっこに辟易しても、いつかこの日々が報われる時が来ると見えない希望を信じながら過ごす以外に、自分達が出来る事はないのだから。

 街に人が増えて来ると、必要となる物資が増え、それを確保する為に流通に明るい人材が求められる。
そして流通に詳しいものは、それを元手にして商売を始めるようになり、中には店を開く者もいた。
今日クラウドが手助けをしたのもそうした人物で、元々この街で酒場を開いていた男性の頼みで、酒蔵に住み着いたハートレスをなんとかしてくれ、との事。
潜んでいたのは小さな影のハートレスだったので、クラウドは難無く片付ける事が出来た。
序に酒蔵の修繕を頼まれ───細かい仕事は得意じゃないと断りはしたのだが、大きな酒樽やら機材やらを運ぶことになった───、その礼にと、貯蔵庫の奥に仕舞われて無事に過ごしていたと言うワインを一本貰う事になった。

 ワインのラベルには、この街が闇に飲まれた年の数字が刻まれていた。
あれから長い年月が過ぎ、闇に閉じ込められたこの世界で、ワインはじっくりと熟成されたらしい。
同じような商品は他にもあり、全ての状態を確認した所、どうやら中身に悪い変質は起きていなかったそうだ。
寧ろ味だけで言えば類を見ない程に良い出来だったと言う。
あの年の葡萄の出来に感謝しなければ、と嬉しそうにも寂しそうにも言った店主に押され、クラウドはそのワインを受け取った。

 ワインを貰った所で、時間は遅い夕飯の頃となり、クラウドはいつも寝床にしているレオンのアパートへと向かった。
鍵が開いていたので遠慮なく入ると、レオンが二人分の食事を用意している最中で、


「ああ、戻ったか。飯なら直に出来るから、少し待ってろ」


 ちらと此方を見て顔だけを確認し、また直ぐにキッチンへと視線を戻してレオンはそう言った。
その言葉通り、適当に座る場所を確保して待っても良かったクラウドだったが、その前にこれだけは報告して置こうと、持っていたワインを見せに行く。


「レオン。こいつを貰った」
「ん?……酒か?」
「ワインだ」


 鍋を掻き混ぜる手を続けながら、見せてくれ、とレオンの左手が差し出される。
其処に瓶を置いて、手ぶらになったクラウドは食卓の椅子へと向かった。

 レオンはワインのラベルをじっくり見詰め、口を噤んでいる。
彼が何を思っているのか、その背中から漂う気配にクラウドは気付いていたが、知らない振りをして言った。


「熟成が進んでて味も良いし、ちゃんと店売りにも出来る物だそうだ。店主が同じ条件のものを一本開けて飲み切ったと言うし、問題はないだろう」
「……そうか」
「飲むか?ワインなんてもの、シドはあまり好きじゃないだろう。エアリスは飲めるが、ユフィには早いし」
「ああ。手を付けないのも、悪いしな」


 これが手に入ったのは、街の住民からの厚意。
手を付けずに置物にするのも勿体無いし、此処で二人で消費してしまうのが妥当、とレオンも踏んだようだ。

 だが、その前に先ずは夕飯だと、レオンはワインをキッチンの端に置いた。
じゅうじゅうと野菜に火が通る音を聞きながら、クラウドは小さな天井を見上げて、自分の腹の空腹具合を確かめるのだった。




 ワインなんて久しぶりだ、とレオンは言った。
トラヴァーズタウンにいた頃に飲んでいなかったのか、と聞いてみると、あそこでワインは高かったから、とレオンは言った。

 常夜の街には様々な世界から人や物が流れ着き、全てを喪った人々が其処で身を寄せ合うように暮らしていたが、その生活に必要となる品物の多くは、どうしても足りない事の方が多かった。
相互補助でなんとか成り立っていたと言うのが精々で、こうなると趣向品と言うものは贅沢品となり、余り手に入らない。
シドが手に入らない煙草の代わりに、爪楊枝を咥えて噛んでいたのはその所為だ。
一応、酒場があったので、酒が飲めない訳ではなかったのだが、あの地で生活をしている人々にとっては、偶にしか飲めない高い商品であった事も事実。

 また、故郷に戻ってからも、酒類の入手ルートは決して多くない。
安いビールが比較的気軽に臨めるようになったのはつい最近の事で、復興が始まった頃、シドは禁酒状態であった。
今でも際限なく飲める程用意できる訳ではないので、可能な時に可能な分の確保が出来ると、それが直ぐにはなくならないようにとセーブしながら飲んでいる。
それを思うと、ワインであっても彼が喜ばない事はないのでは、と思うが、好みと言う点ではシドはどうあってもビールに軍配が上がるようだ。
気分的な気安さであろうか。
そう言う訳だから、クラウドもこのワインはシドの手ではなく、レオンの手へと渡るように向けた節はある。

 レオンはワインが久しぶりだと言ったが、クラウドも似たようなものだ。
闇の力を使い、世界を渡り歩く中で、その土地土地の醸造酒に触れる機会は、稀にだがある。
だがクラウドは、何処かのキーブレードの勇者のように、現地の人々との交流など端から必要としてはいない為、のんびりと杯を傾けていられるような、量と時間を手に入れる事は滅多にない。

 そんな二人で開けたワインは、中々に旨いものだった。
ほんの少し酸味を含んだリンゴのような味わいが、舌の上にさらりと広がって行く。
口当たりがすっきりと爽やかなお陰で、飲み易くて良い、とレオンが言った。
その口に合ったのなら幸いだと返しながら、クラウドも進む手でグラスを傾けた。


「中々旨いな」
「ああ。もう一本貰っても良かった」
「図々しい事を。ちゃんと金を払えよ?」


 そう言いながら、レオンの口元はくすくすと笑っている。
久しぶりに旨い酒と、のんびりと味わう機会にありつけて、中々上機嫌になっているようだ。

 クラウドはアルコールに対して酔う事は滅多にないのだが、レオンの方は違う。
シド曰く、父親の体質をそっくり受け継いでしまったらしい彼は、飲み始めてから幾らも経たない内に顔が赤らんで行き、酔いが回って行く。
その時のレオンの様子の変化と言うのは、非常に判り易い。
いつも理性的で引き締められている表情が緩み、眉間の皺が解けて行き、結ばれた唇も薄く開き勝ちになる。
彼の父親はこうなる頃にはお喋りが倍になったそうだが、どうやら元々の性質の違いなのか、其処は違ったようだが、しかし相槌の回数は増えるので、人との会話は嫌いではないらしい。
今日は飲みの相手がクラウドなので、相槌をする程の会話が発生する事もなかったが。

 この状態から暫く飲み続けると、レオンは酔い潰れるのが多くのパターンであった。
魔法使いの家でシドと飲んでいる時は、間借りしている場所なので片付けをしなければいけない事や、帰らなければいけないと言う理性が働けば途中でお開きにするのだが、今日は自宅飲みだ。
クレイモアのアラートでも鳴れば飛び出さなければならないが、今の所、街は至って静かなものだった。
そう言う気の緩みもあるのだろう、レオンのグラスを運ぶ手は中々止まらない。

 気分良く飲めたお陰で、ビンの中身は減るのが早かった。
少しペースが早かったかな、と今更ながらに思いつつ、それでもクラウドの頭は比較的しっかりと明瞭だ。
では此方はどうかと、飲み相手を見遣ると、


「んー……」


 レオンは顔の前で手を組んで、其処に額を押し付けて俯いている。
こくん、こくん、と頭が一定のリズムでゆっくりと揺れていた。
薄く瞼が開いているので、寝ている訳ではないようだが、睡魔は強くなっているのかも知れない。
お開きか、とクラウドは最後のグラスの中身を煽ってから、


「レオン。そろそろ寝るか」
「……うーん……」


 クラウドの呼びかけに対して、レオンの反応は鈍い。
このまま寝そうだな、とその様子を見ながら思い、一応ベッドに運ぶ位はしておこうかとクラウドが手を伸ばすと、その手を徐に掴まれた。


(あ)


 その握る手の強さを感じ取った瞬間、クラウドはこの後の流れが予測できた。
これは久しぶりだと思っていると、掴んだ腕がぐっと引かれて、強さに任せた勢いに蹈鞴を踏む。
そんな間に傾いた体に対して、レオンが持ち上げた首を伸ばし、二人の唇が重なった。


「ん」
「んん、」


 口の中で小さく、何の意図とも取れない音が漏れる。
腕を掴んだ手はしっかりとした力が込められて、外される様子がなかったので、クラウドはされるが儘に任せた。

 ほんのりと熱の上がった舌が、クラウドの唇を擽るようになぞる。
薄く隙間を開けてやれば、近い距離にある蒼灰色がふっと笑ったように見えた。
直ぐに舌が中へと侵入して来て、クラウドの咥内を弄り、相手からの動きを誘わんとばかりに、クラウドの舌先を突いて遊ぶ。
応えて此方も侵入者を舌でくすぐってやれば、


「ん、ふ、」


 ふふ、と笑う声が小さく漏れた。
細められた瞳が愉しそうに揺れているのが、酷く蠱惑的な色香を醸し出す。
ちゅぷ、ちゅく、と言う音が耳の奥から聞こえて来て、唾液を啜る音も判った。

 一頻り唇のじゃれ合いを堪能して、満足したのかレオンの動きが鈍って来た所で、クラウドは唇を離す。
はあ、とワインの香りを滲ませた吐息が漏れて、クラウドの鼻孔に吸い込まれた。
クラウドの愛撫を受けたレオンの唇は、薄らと光を纏って濡れており、それを彼の甘い舌がぺろりと舐めて、


「するならベッドだ」


 場所を指定するレオンに、クラウドはやれやれと溜息を吐いて見せる。


「して来たのはあんただろう」
「此処から先はお前がしたいんだろう」
「誘って置いて」


 手前勝手に言う相手に呆れつつ、クラウドはレオンの体を抱えて椅子から立ち上がらせた。
抵抗する気もなければ、クラウドを手伝う気もないようで、彼の体はすっかり脱力している。
レオンは身長の割には細身に見られ勝ちだが、それは彼の筋肉がしっかりと引き締められ、均整の取れたラインを形成しているからで、決して体重が軽い訳ではない。
そんなレオンが全身を預けて来るのだからクラウドは重くて堪らないのだが、今のレオンには文句を言っても無駄である。

 ほんの数歩分を引き摺るように運んで、レオンをベッドへと転がそうとした時だった。
抱えていた体が急にぐっと抵抗を見せて、ベッドに入る事を拒否する。
その感覚に、おい、と抗議をしようとした時だった。
クラウドの足がパシッと払い上げられて、バランスを崩し、二人揃ってベッドに倒れる嵌めになる。


「おい」
「ふふ……」
「酔っ払いめ」


 何をしてくれるんだとクラウドが眉根を寄せて、直ぐ隣にある顔を睨めば、レオンはくっくっと笑っている。
何を急に悪戯心なんて物に芽生えているのだと呆れていると、レオンがむくっと起き上がり、ベッドを降りる。
気まぐれな猫だとクラウドが埋めたベッドの中で溜息を吐いていると、すりすりとクラウドの中心部を摩る手があった。


「……おい」


 クラウドが頭を巡らせて下肢を見れば、ベッドの影から覗く不埒な影がある。

 カチャカチャと金属の当たる小さな音がしばらく続いた後、クラウドのウェストの締め付けが緩む。
腹の下で蠢く手は器用なもので、ベルトの金具を外すと、そのままズボンのフロントジッパーを下げに行った。
守りが緩めば其処から容易く掌が侵入して、クラウドの中心部を下着の上から揉む。


「おい、レオン」
「クラウド、仰向けになれ。やり難くて面倒臭い」
「…はいはい」


 再三咎めるように呼んでも、一向に自分のしたい事を辞める気のないレオンに、クラウドは早々に諦めた。
酒も入っているし、これは何を言っても無駄だと、経験上解っている。
それならそれで、自分もしたいように楽なようにしてやろうと、クラウドは思考を切り替えた。

 仰向けになって中途半端に抜けていたベルトを完全に取り去り、下着もずらして、中身を取り出す。
酒の力と、先のレオンの悪戯のお陰で、其処は緩く頭を持ち上げつつあった。
それを見たレオンは、床にぺたりと座った状態で、うっとりとした眼差しを浮かべながらクラウドの股座に顔を近付けて、汗臭い匂いを撒き散らすそれにゆっくりと舌を這わせる。


「っは……ん……」


 甘く蕩けた吐息が零れ、クラウドの竿を舌と一緒に擽った。

 レオンは丹念にクラウドの雄を舐め、舌の唾液を塗りたくって見せる。
時折、蒼の瞳がちらりとクラウドの頭の方を向いて、目が合うと笑うように細められた。
酒が入っている所為だろう、随分と機嫌が良い。
そうでなければ、こんな事を自分からする筈もない。

 舌で丁寧な愛撫をされたお陰で、クラウドの全身はすっかり濡れて、てらてらといやらしい光を帯びて起立する。
その天辺に高い鼻が寄せられて、すん、と鳴った。


「汗臭い」
「風呂に入ってないんだ、当たり前だろ」
「あむ、ぅ」
「うっ……!」


 文句に対して返してやれば、まるで聞いていないタイミングで、レオンはクラウドを口に含んだ。
小さな口を限界まで開けて、ぱっくりと全身を咥内へと招き入れる。
滑る感触が中心部を覆うのを感じて、クラウドが息を詰めている間に、レオンは頭を動かして口淫を始めた。


「んっ、んっ、…っぷ、んっ」


 じゅぷっ、じゅぷっ、と露骨な音を立てるのはわざとだろう。
先端から根本まで、これもまた丹念に隙間なく、唇を窄めながらぴったりと密着させてしゃぶる。
薄皮を唇が擦る度に、ぞくぞくとした衝動がクラウドの腰に広がって、雄に血が集まって行く。

 咥内で忙しなく動くレオンの舌は、すっかり唾液に塗れて滑り、艶めかしい感触をクラウドに伝えて来る。
鼻息が荒くなっている事を、彼は自覚しているだろうか。
ふう、ふう、と仕切りにかかる鼻息に擽られて、クラウドの雄がピクピクと震えるので、判っているのかも知れない。


「ん、ちゅ……んぷっ、んぐっ、んっ」


 レオンは更に股間に顔を近付けて、頭を前後に大きくストロークさせる。
膨らんだ雄の根本を片手で握り、陰嚢との境目に親指の爪先を当てて引っ掻いた。
神経が集中している海綿体を擽られる快感に、クラウドの腰がぶるりと震えれば、それを感じ取った蒼灰色が上目になってにやりと笑ったのが判った。


「ん、ふふ……んちゅ、んっ、おむっ」
「うぉ……っ!」


 喉を抉じ開けながら、レオンはクラウドを根本まで咥え込んだ。
ねっとりとした弾力の肉壺に飲み込まれて、生き物のような舌に竿を嘗め回され、堪らずクラウドの喉から声が漏れた。


「んぁ……は、ふぅ…っ、んふぅ……っ」


 うっとりとした吐息を零しながら、レオンは口の中で舌を動かし、雄を転がして遊ぶ。
根本を擽って遊んでいた手は袋の方へ移動して、くにゅっくにゅっと揉み苛めていた。
其処に詰まっているものをシェイクしているような遊び方に、咥内の肉欲が益々固くなって行く。

 ストローを吸うように、レオンがちゅうちゅうと啜る音がする。
クラウドの雄ははち切れんばかりに膨らんでおり、レオンの端正な顔を歪めていた。


「はあ……レオン、もっと頭を動かせ」
「んむ……命令するな。俺の好きにやる。はむぅっ」


 クラウドの言葉に、レオンは一旦雄を離して、じろりと頭上の男を睨んで言った。
それからまた直ぐに雄を咥える。

 命令するなと跳ね付けたレオンだが、雄を扱く動きは激しくなった。
雄の向きを手で固定して、自分が咥え易いようにして、一心不乱に頭を前後に動かす。
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ、と卑猥な音が静かな部屋の中に反響していた。

 段々と顎と首が疲れて来ると、レオンの口淫は緩やかなものになって来る。
しかし咥える事は辞めようとはせず、口の中でれろれろといやらしい舌が仕切りに動いて、雄の熱を煽ろうとしていた。


「んむっ、んっ……っは、むぁ…んぅ、ん、」


 まだまだ味わい足りないとばかりに、レオンは夢中で雄をしゃぶっている。
クラウドはそんなレオンの頭に両手を添えて、ちらりと此方を見た蒼が、特に何も言わずに雄をしゃぶり続けたのを見て、一旦後ろに引いた頭をぐいっと股間に押し付けた。


「んぶっ!」


 自分のタイミングを無視して、深く咥内に穿たれた雄に、レオンは目を丸くした。
構わずクラウドがレオンの頭を前後に揺さぶると、


「んんっ、んっ、はっ、ぷっ!うっ、んっ、んっ、んっ!」


 レオンはベッド端にしがみ付くように身を寄せて、クラウドが股間へ押し付けるタイミングに合わせて、口を窄めては開けてと繰り返すようになった。
お陰で雄は一層喉の奥へと突き入れられ、息苦しさでレオンの目尻に涙が浮かぶが、レオンはそれを止めなかった。
寧ろ頭の動きはクラウドに任せ、舌を動かす事、啜る事に集中して、より丹念で粘着的な奉仕になって行く。


「んじゅ、んぢゅるっ、ふっ、ふぅっ……!う、むあ、んっ」
「っは、はあ…っ、く…っは……っ!」


 水音をしつこく立てながらしゃぶるレオンに翻弄されて、クラウドの息も上がって行く。
クラウドは、雄をしゃぶるレオンが、ゆらゆらと引き締まった腰を揺らしている事に気付いていた。
疼いているのであろう秘口が、今口に咥えているものを求めていると思うと、早く突っ込みたい、とバカ正直な欲望が高ぶって行く。


「はあ、レオン……っ!もう良いだろ、挿れさせろ」
「ん、んっ…、んんっ!んぢゅぅうう……っ!」
「ううぅっ!」


 急かしたクラウドの言葉を聞いて、レオンはちらりと上目に見遣った後、思い切りクラウドを吸い上げた。
どくんどくんと拡がった血管を大量の血が流れて行き、散々に煽られた劣情が弾けそうになったが、クラウドはレオンの頭を鷲掴みながら耐えきった。


「っふ、っぷ……っは、っはぁ……っ」
「く…はあ……っ、性悪め……」
「ふ、…っは……ふふ……っ」


 目一杯の吸引奉仕を耐えきって、汗を滲ませて睨み見下ろすクラウドを、レオンは口角を上げて見上げた。
その口から雄を抜こうとする間、レオンはまたちゅ、ちゅうっ、と舌の奥でクラウドを啜って遊ぶ。
窄められた唇からようやく雄が解放された時には、先端から我慢汁が滴り落ちる程、クラウドの熱は限界に来していた。

 レオンもようやく自分のズボンと下着を脱いだが、落としたズボンは足元に絡まったまま、ベッドに乗る。
いつもなら汚れるのが嫌だと全裸になるのだが、今日はシャツも着たままだ。
唾液と精液に濡れた唇を舐め、膝立ちになって、ベッドに座るクラウドの足を跨いだ。
肉付きの良い尻が、起立したクラウドの雄に擦り付けられる。


「っは…はあ…っ、固いな……」
「あんたのお陰で。満足か?」
「それは終わってから考える」


 まだ事は途中なのだと言うレオンの目は、飢えた獣のようだった。
此処までスイッチが入るのは珍しい。
やはり酒の力は偉大、とでも言うのだろうか。

 レオンはクラウドの雄に手を添え、しっかりと向きを合わせて、秘孔を宛がった。
今日は一度も触れていない、今し方ようやく晒されたばかりの場所だから、入り口は乾いている。
それはレオンも判っている事だったが、代わりに今日はクラウドの雄が隙間もない程に濡れている。
大丈夫だろう、と思っているのはレオンもクラウドも同じで、そのままレオンが腰を落としていくのをクラウドは止めなかった。


「うっ、んっ…ああ……っ、あぁん……っ!」


 悩ましい声を上げながら、秘孔にクラウドの雄が挿入されていく。
咥内とよく似た艶めかしさを持った内肉が、小刻みに震え動きながら、クラウドを全身で包み込んで行く。
開発され切った其処は入り口こそ少々の固さを維持しているが、中は熱く蕩けており、難無くクラウドの剛直を飲み込んだ。


「っは…はあ…ああ……っ、大きい……んっ」


 レオンはクラウドの肩に傷のある額を押し付けて、甘露を孕んだ声で呟いた。
それがクラウドの耳をくすぐり、その言葉による興奮がダイレクトに下肢へと響く。
むくっ、と脈を打った雄の感触を覚って、ふるりとレオンの腰が震えた。

 中にあるものが馴染むのを待つのは、ほんの数十秒で良かった。
熱の感触をリアルに知覚できる頃、またレオンの躰は熱く火照り、もっと大きな快感を欲するようになる。

 レオンの手がクラウドの両肩を掴み、膝立ちで腰をゆらゆらと揺らす。
しな垂れるように寄り掛かり、緩慢に腰を動かしながら、レオンは固く張り詰めた雄が自分の中を捏ね回す感触に酔った。


「あっ、ああ……っ!はっ、あんっ…あ……っ!」


 くねくねとレオンが腰を捩る度に、柔らかく弾力のある肉が、クラウドの雄をきゅっ、きゅっ、と締め付ける。
丹念で粘っこい口淫を施したお陰で、たっぷりと塗された唾液が潤滑油となり、絡み付く肉ヒダの感触を、一層いやらしいものに演出していた。


「はあ、はあ…ああ……っ」
「おい、レオン。いつまでも遊ぶな」
「う…あ…っ、はぁん……っ」


 一人クラウドを使って愉しげに享楽に浸っているレオンに、クラウドが抗議すると、蒼の瞳が無粋な真似をするなと言わんばかりにクラウドを映す。
とは言え、中途半端な刺激で物足りないのはレオンも同じ事で、雄を咥えた秘孔の更に奥、一番気持ち良いと知っている場所が疼いて疼いて仕方ないのも事実だった。

 レオンがふう、と息を吐いて、また腰を落とす。
ぬぷぷ……と侵入が深くなって行く感覚に、レオンの鼻穴が膨らんで、ふーっ、ふーっ、と荒い呼気が漏れた。
程なく熱の塊が奥に届いた瞬間、びりっとした電気のような快感がレオンを襲う。


「んんっ!」


 ビクンッ、とレオンの躰が仰け反るのを、クラウドはレオンの肩を掴んで支えた。
それからレオンは間を置かずに腰を持ち上げ、ぬりゅぅ、と媚肉に雄が擦れる感触を味わいながら、半分まで雄を抜き、


「はっ、はあ……、うふぅうんっ」


 浮かせた腰を落とし、ずぷう、とまた一気に奥まで咥え込む。
抜いては入れ、入れては抜き、レオンの動きは徐々に激しさを増して行く。


「はっ、あっ…、あぁっ…、あっ!んっ、んぁ……っ、くぅんっ!」


 自身の律動で奥を突き上げる度に、レオンの腸壁がびくびくと震えるように蠢き、咥え込んだ雄を扱き上げる。
上がる嬌声も大きなものになって行き、若しもこのアパートにレオン以外の住人がいたら、煩いと抗議が飛んで来た事だろう。
いや、おかずにされてるか、と居もしない隣人に当て付ける気分で、クラウドは喘ぎ乱れるレオンの姿を眺めて楽しんでいた。


「はあ、はあ、あっ、あぁっ……!クラ、ウド…ああっ、あっ…!」
「なんだ?」
「あっ、あっ…!お前も、んっ、動け……っ!んっ!」
「あんたの好きにやるって言ったのはどの口だ?」
「はっ、はっ、だか、だから…あっ!動け、と言ってる…んん……っ!」


 言いながら、レオンは秘孔をきゅうっと閉じて、クラウドを締め付けた。
やれと言っているんだからやれと、人質にした急所を目一杯苛めながら命令するレオンに、クラウドは歯を噛みながらにやりと笑う。

 後少しで良い所に届くのだろう、レオンは一心不乱に腰を振り、快感を追っている。
その腰をクラウドの両手がしっかりと捕まえて、降りて来るタイミングに合わせて、ずんっ!と打ち上げた。


「ひぃんっ!」


 自分の力では、どうやっても届きそうで届かなかった場所に、遂に届いた。
その瞬間、レオンの躰は大きく仰け反り、汗ばんだ喉が露わになった。
その喉に食らいつきたい衝動に襲われながら、クラウドはバネを効かせた動きで、レオンの躰を突き上げる。


「あっ、あっ、あっ!クラ、あっ、んぁっ!」
「これが、良いんだろ、あんたはっ」
「はっ、はあっ、ああっ…!いい、あっ、いいっ……あぁっ!」


 奥を突き上げられる瞬間に合わせるように、レオンは素直な胸中を吐き出した。
気持ちが良い、心地が良いと、天井を仰いだまま、レオンは舌を伸ばして悦び喘いでいる。

 クラウドの肩を掴んでいたレオンの手に力が籠る。
仰け反っていた背中が元へ戻り、頭がかくんと前へ倒れた。
長い前髪でレオンの目元が隠れ、クラウドからはその表情ははっきりとは見えなかったが、口元が愉悦に歪んでいるのは見えた。
更にレオンの腰が律動に合わせて動き出し、一層深くへの侵入を求め始める。


「んっ、あっ、もっと…!あっ、奥に、いっ……!あっ、来る、あっ、来て……あぁっ!」
「はあ、くそ……っ!締め付けが、きつい……っ!」
「ふっ、ふっ、ああっ…!まだ、まだだ…クラウド……んぁっ!まだ、イく、な……あぁんっ!」
「此処まで、俺を煽ったのは、あんただろうっ!」
「あくぅんっ!ふっ、深い…あっ、そこ、おぉ……っ!もっと、お…っ!」


 ずぷんっ!とより深くを突き貫かれて、レオンは高い声を上げた。
びくっびくっと震えるレオンの腹に、たらりと銀糸が垂れ落ちる。
開きっぱなしの口から零れたそれは、汗を吸い込んだレオンのシャツに露骨な染みを作って残った。

 クラウドはレオンの奥を突き上げて、良い所を捕まえると、レオンの腰を押さえ付けて、其処をぐりぐりと抉ってやった。
ビクンビクンとレオンの躰が大きく震え、雄を咥え込んだ秘孔がその摩擦に根を上げて、


「あっ、ああっ!うぅうんんん───っ!!」


 レオンはまた背筋を大きく撓らせ、エビ反りになった格好で絶頂した。
クラウドの肩を掴んでいた手は離れ、頭上に放られ、ベッドシーツを藻掻き掴む。
ベッドについていた膝皿が僅かに浮いて、ブリッジするような格好で全身が強張る。
挿入前の菊座と同じく、今日は一度も刺激していないレオンの雄から、勢い良く蜜が噴いて、クラウドの腹に飛び散った。

 強烈な快感と共に上り詰めた体は、咥え込んだままの雄も道連れにせんと、柔らかな肉が一斉にそれを締め付ける。
小刻みに震えながら自身を余す所なく揉みしだく肉襦の感触に、限界まで持ち上げられていたクラウドもまた堰が崩壊した。


「ぐぅっ、うううっ!レオン…っ、ううっ!」
「あっ、あぁっ!出て…ああっ、熱い、ぃ……っ!」


 散々に煽られ我慢を強いられていたお陰で、クラウドの精液はたっぷりと溜め込まれていた。
それを一気に解放すると、マグマのように熱い劣情がレオンの胎内へと注ぎ込まれ、悦に染まったレオンの貌がまた蕩けて行く。


「っは、はあ…あぁっ…ああ……っ」


 どくどく、どくどくと自身の中へ、他人の欲望が注ぎ込まれる快感に、レオンは甘い声を零していた。
はあ、はあ、と呼吸をしているだけで、じわじわとした熱が神経を犯し拡がって行くのが判る。

 クラウドの射精が終わっても、レオンの躰は硬直したままだった。
快感信号が一番多く分泌された状態から戻って来れないレオンの腰を掴んで、クラウドはゆっくりと雄を引き抜く。
その間も、レオンの唇からは悩ましい声が漏れていた。
強張らせたままの体が無理やりに捩られ、ベッドシーツの波を滑っては、赤らんだ肌から珠のような汗が伝い落ちる。

 締め付けの緩まない穴から雄を引き抜くと、栓を喪った穴から甘ったるい匂いが醸し出され、部屋の中を満たしていく。
ヒクヒクと戦慄く其処をクラウドが指で縁を摘まんで広げてやれば、中に注ぎ込んだものがとろりと溢れ出した。


「あっ…あ……っ」


 喘ぐレオンの片足から、クラウドはズボンと下着を引き抜いた。
まとわりついた拘束から逃れ、自由になった足から力が抜けて投げ出される。
クラウドはその足を掴むと、自分の肩へと担ぎ上げて、露わになった菊穴に自分の雄を擦り付ける。


「んっ、んっ…あっ、クラウ、ド……んっ」
「ふっ、はっ、はっ…はっ…!」


 レオンの秘孔に擦り付ければ、クラウドの肉棒はあっという間にまた起立した。
その先端を、土手を膨らませて物欲しげにヒクついている穴に宛がえば、自然のようにくぱっと口が開き、


「はあ…はっ…クラウド……早く……」


 レオンも自ら腰を揺らし、男を中へと誘おうとする。
一度中出しされた位では足りない、と熱と劣情に溺れた蒼の瞳が告げていた。
色の薄い唇から、真っ赤に熟れた舌が覗いて、早く寄越せと急かすのを見て、クラウドは遠慮なく一気に腰を突き入れた。
ずぷぅっ、と一息に奥へと侵入した雄の逞しさに、レオンが歓喜の声を上げる。


「ああぁっ!はっ、はぁっ、ああっ!あぁんっ!」


 直ぐに律動が始まって、痺れの抜けないレオンの躰を、また強烈な快感が襲う。
ぱんっ、ぱんっ、とクラウドの腰とレオンの尻とがぶつかり合う音が大きく響いて、ベッドの軋む音を掻き消す。

 レオンの胎内で、唾液と腸液と精液が絡まりあって、突き上げる度にぐちゃりぐちゅりと卑しい音がする。
それでもレオンの躰は更に浅ましく快感と性を欲しがり、クラウドを締め付けて扱き上げ、溜め込まれた雄の種を搾り取ろうとしていた。
そんな淫らな躰に誘われ煽られるままに、クラウドは二度目の天国の瞬間に向かって、一層激しく腰を振るのだった。




 酔っ払ったレオンが、前夜の事を全く覚えていないと言うのは、よくある事だ。
それは本人にとって良い事なのか、悪い事なのか。
時と場合にも因るので一概には言えないが、彼の性質を考えると、覚えていない方が良いだろうと思うような事は、一度や二度ではなかった。

 レオンは元々、抑圧的な性格をしている所がある。
物事は基本的に道理や論理に則って考えるから、それらを無視する突発的な出来事や、理屈を無視する物には判り易く弱さが露呈する。
若い内から見られていたその傾向は、成長に伴って少しずつ対応力が身についたようだが、根本的な所は今も変わっていない。

 だからだろうか。
酒と言う、少々特殊な効能を持つ物に触れると、そう言った抑圧意識が緩むようで、常とは全く違う行動を取る事も儘見られるものであった。

 セックスの時でも、レオンは理性的である事が多い。
事が進めば次第にそれは蕩けて行くのだが、始めは大抵、抵抗を見せる。
電気を消せ、服は汚すな、後処理が大変だから中には出すな。
三つ目はクラウドが無視をするのと、その頃にはレオンの方も理性が飛んでいるので殆ど守られた事はないが、一つ目と二つ目は守らないと、情事に入らせてくれない事も多かった。
口淫なんてものも自分からする事は先ずないので、クラウドがしてくれと言って、渋々応えてやる程度だ。

 それが酒が入ると全く変わる。
自分からやりたがるし、電気を点けたまま、服を着たままでも怒らない。
それより早く始めろと言ったり、自分からクラウドを煽ったり、とかく性に奔放になる。
時には少々アブノーマルな事でも嫌がらずに応じるので、もしその事を正気に戻った時に覚えていたりしたら、羞恥で憤死しそうな程の事をした日もあった。
あいつはムッツリな性質だとクラウドはシドとこっそり意見が合った事があるが、実際その通りだと、いやそれ以上だとクラウドは思う。
それなのに普段は、性的な事にはまるで興味がないような貌をしているのだから、中々の詐欺師だ───彼にそんな自覚は全くないが。

 尤も、毎回毎回、レオンが酔っ払う度にそうなる訳ではない。
どちらかと言えば酔い潰れて眠ってしまう事の方が多いし、彼がセックスに積極的になるのは、自宅でクラウドと二人きりで飲んでいる時だけだ。
それ位に、彼が気を緩めているのだと言う事だろう。
それは悪い事ではないし、何より、普段から必要以上に気を張って肩の力を入れて過ごしているレオンだから、理由や切っ掛けが何であれ、息抜きが出来るのは良い事だ。

 ……翌日、確実に二日酔いになる上に、腰の痛みで起き上がれない事を覗けば、だが。


「……目が回る……」


 ベッドに沈んでそう言ったレオンに、そうだろうな、とクラウドは言うしかない。

 昨夜は結局、レオンが三度果てた所で終わった。
時間の方はクラウドが時計を見ていないので判らないが、深夜も深夜だったのは間違いない。
その間、濃厚な交わりは続き、最後の最後までレオンはクラウドを離そうとしなかった。
終わった時には、流石にクラウドも疲れていたので、そのまま───中に入った物も抜かずに───寝落ちている。
幸い、クラウドはレオンよりも早く起きる事が出来たので、雷が落ちる前にと最低限の処理をして、二度寝を決める程の余裕は持ち直していた。

 そしてレオンが目を覚ましたのは昼過ぎで、寝坊をしたと起き上がろうとして、動けなかった。
第一にベッドを抜け出そうとした所で腰が持ち上がらず、撃沈。
その拍子に頭を揺らして、脳がくらくらと揺れるような感覚に襲われた。
それらの原因が、昨晩の酒の所為であると思い出すまで、時間は要らなかった。


「飲み過ぎたんだ……」
「だろうな」
「…腰が痛いのは……またやったのか、俺は」
「そうだな」
「……はあ……」


 昨晩の奔放振りは何処へやら、レオンは枕に顔を埋めて、深々と溜息を吐く。
どうしてまた、と呟くレオンに、クラウドは返す答えを持ち合わせてはいなかったが、


(普段からもう少し遊んでいれば、あそこまでは行かないのかも知れないが……まあ、それが出来れば苦労はしないか)


 ベッドで鬱々と過ごすレオンを見ながら、クラウドは密かにそんな事を考えていたのだった。
 


酒の力でノリノリになるレオンさんが見たかった。
相手もクラウドなので見栄を張ったり気を遣う必要もなく、クラウドの方がやれやれと言いつつこっちも悪い気分はしていない。