夢さえも届かない





夢を見る位ならタダだろうって誰かが言ったけど、タダで見れる夢ほど酷いものはないと思った。



夢見るくらい良いだろうとか、夢でくらい逢いたいとか。
それで叶えられる願いなら、どれだけ気楽な夢なのかと思う。

死に物狂いで掴もうとして、足掻いて手を伸ばして、それでも結局手に入らない。
手に入ったと思ったら、それはほんの少し掠められた欠片が見せた幻で、直ぐに消えて見えなくなる。
夜に見る夢で叶えられる願いのそれの虚しさと言ったら。


結局消えてなくなるんだ、何もかも。
夢の中で束の間に得た喜びなんて、目覚めた時の絶望感に比べたら、空っぽも同然だ。


ずっとずっと手を伸ばす。
其処にある光に向かって、手を伸ばす。

足元から何か冷たい物が這い上がってくるのが、怖くて怖くて仕方がなかった。
逃げても逃げても追い駆けてくるそれは、光が差し込むと途端にその速度を鈍らせる。
だから、あの光を掴む事が出来たら、きっとこの冷たくて怖い物は消えるんだと思って。


光に向かって走る。
光に向かって手を伸ばす。

遠く遠くにあった光が、少しずつ近くなって、あと少しだと、地面を蹴って。



空っぽの手が、白い天井に向かって伸びていて。




……夢を見る位ならタダだろうって誰かが言った。
夢見るくらい良いだろうとか、夢でくらい逢いたいとか。

けれど夢の中で束の間に得た喜びなんて、目覚めてしまえば空っぽになる。




空っぽの手を握り締めた。
空っぽの手で、溢れそうになる雫を握り締めて、消し潰す。



「……大丈夫」



もう少し、きっとあともう少しで、こんな弱い自分もいなくなる。
空っぽの手を見て、雫が溢れる事もなくなる。

そうしたら、そうしたらきっと。



(またあえるよね、“     ”)




呼ぶ名前さえ、判らないのだとしても。





2011/12/29

ガーデンに入学してから数年経った頃のスコール。
思い出せなくなっちゃったけど、まだお姉ちゃんを追い駆けてる。

ジャンクションって何歳頃からやってたんだろ…?