なぞなぞわかるかな 3


「好きな人と一緒にいると、たってしまうものは?」
「んぅ……?」
「答えは時間だ」
「あーっ、言っちゃダメ!まだ考えてたのに!」
「……すまん」

「毛むくじゃらで、バナナから連想できて、“チ”で始まるものは?」
「クラウド!お前、また…!」
「バナナ……あっ、チンパンジー!お猿さん!」
「正解だ」

「女の子が大人になるまで、どれぐらいの時間がかかる?」
「おとな…?おとなって、何歳からおとな?」
「成人を大人で区切るなら、20歳だな」
「じゃあ…20年?」
「外れ。答えは一月」
「なんでそんなに早いの?」
「答えは一月、ひとつき、一突き……つまり突いたら」
「黙れ!!!」

「黒くて硬くて、先っぽからチョロっと液を出すものなんだ?」
「……?」
「これだ、こう。こうすると出て来る」
「こう?」
「おい、子供に何をやらせてる?!」
「?お兄ちゃん、どうしたの?」
「ちなみに答えは万年筆だ」
「まんねんしつってなに?」
「ボールペンみたいなものだと思えば良いか」
「…知らないもん」
「俺の問題の選び方が悪かった。だから怒るな、頼む。所でレオン、お前はなんで怒ってるんだ?」
「………」


クラウドが出したなぞなぞを幾つか解いた後、スコールはふと、ベッド縁に座って俯いたまま動かない兄を見た。
なぞなぞの答えを考えている時、何度か怒ったように声を荒げる事はあったけれど、答えを聞くとまた黙り込んでしまう。
そんな事が繰り返される度、レオンは顔を真っ赤にしていて、クラウドがくつくつと楽しそうに笑っていた。

じゃあ次の問題は、と考えるクラウドから離れ、スコールはレオンの背中にぴたりとくっつく。
驚いたように兄の背中が跳ねたが、振り返って、其処にいるのがスコールだと気付くと、レオンは小さく笑みを浮かべて見せた。
が、彼の顔はまだ赤い名残を残している。


「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ん…ああ、いや。大丈夫」
「顔、赤いよ。お熱ある?」
「ありがとう。何ともないよ。本当に大丈夫だから」


スコールを抱き上げ、膝の上に乗せて、ぎゅっと抱き締めるレオン。
スコールは全身で感じられる兄の温もりと、大丈夫と言う言葉に安堵して、えへへ、と笑った。
レオンがじろりと隣の男を睨んでいる事には気付かずに。
無論、そんなレオンを見て、クラウドがにやにやと笑っている事など、知る訳もない。


「じゃあ次は、そうだな……Hになる程固くなるものは?って痛いな、なんで殴るんだ」
「露骨過ぎる!」
「そうか?じゃあHじゃなくなると柔らかくなるも────だからなんで殴るんだ」


射殺さんばかりの眼光でクラウドを睨むレオンだが、耳まで赤くなった顔では、迫力も何もあったものではない。
そんなレオンの膝上で、スコールは首を捻って問題の答えを考えている。

クラウドは二連続で叩かれた頭を摩りながら、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべて、怒りともう一つ別の理由で赤くなっているレオンに顔を近付ける。


「なんだ。レオンはもう答えが判ったのか?」
「な……あ…違、」


息がかかる程、唇が触れ合う程に近い距離で囁くクラウドに、レオンが身を反らしていると、


「あ、判った!えんぴつ!」


スコールの明るい声が響いて、レオンが固まる。
呆然とした表情でフリーズした兄に気付かず、スコールはクラウドの服の袖を引っ張る。


「ねえ、あってる?正解?」
「正解だ。よく判ったな」
「えんぴつのね、こっちの方。お尻の方に書いてあるの。HとBって。Hの方が硬くてね、黒が薄くなるんだよ」
「そう。固い鉛筆はH、柔らかくて黒が濃いのはBだ。よく知ってたな」
「えへへ。……あれ?お兄ちゃん?」


頭を撫でて褒められ、嬉しそうに目を細めたスコールだったが、自分を抱き締める兄が不自然に固まっている事に気付くと、きょとんとしてレオンを見上げる。
レオンは弟の視線から逃げるように、明後日の方向を向いてしまい、クラウドからも目を逸らす。
どうしたの、と問う弟に、兄は何も言わなかった────言えなかった。





2013/02/02