記憶紡ぎの交わる日


 出立は明日なので、各人は女神の塔の中で一夜を過ごす事になった。
塔の中は、昇って来た時には目立つものは何もなかったのに、嘗てのコスモスの力と同様のものなのか、各人の部屋になる空間が作られていた。
キッチンと言うものは初めはなかったのだが、腹を空かせたティーダやジタンが、台所があれば良いのに、と思っていたら、いつの間にか出来ていた。
神の力とは全く以て便利な事だ、とクラウドは二年振りに思った。

 久しぶりの異世界での食事は、フリオニールが主力になって、料理の出来る者が手分けして準備した。
クラウドは相変わらず料理は出来ないので、同じくその手の仕事を持たない(持てない)面々と共に、一際広かった部屋で待機した。
程無く運ばれて来た料理は、折角の再会なのだからと各メンバーの好きな食べ物が並んだ。
一人一人の食事の好みを覚えていたと言うのだから、フリオニールは大したものだ。
初めて神々の世界に召喚されたノクティスとヤ・シュトラは、一人は恐々と、一人は興味津々に食べていた。
食事の席を兼ね、新顔の者に対し、一通りの自己紹介も終わった所で、一同は明日に備えて休む事になった。

 しかし、塔の中を歩き回る人の気配は、中々消えない。
明日に備えなければと思ってはいても、久々の仲間との再会で興奮している者もいれば、新たに構築されたと言う異世界について調べようとしている者もいる。
クラウドも同様であり、仲間との再会による高揚が半分と、新たな世界に対する用心の気持ちから、直ぐに寝付く気分にはなれなかった。

 外観の作りに反して、案外と内部は広い。
その事にノクティスが驚く声が時折聞こえていた。
見た目からして然程年は重ねていないと思うが、彼も結構若いのかも知れない。
そんなノクティスの傍らには、既に世話係としての意識が芽生えたか、セシルが付き添っている。
それを横目に見ながら、クラウドはマーテリアと邂逅した、塔の中心部へと向かう。

 其処からは、外の世界が360度一望する事が出来る。
見えるのは殆どが荒れた山野であったが、僅かに森や川もあった。
旅路に置いて、向かう方角はよく考えて進まなければ、延々と荒野を歩いて道を見失いそうだ。
要注意が必要だな、と思いつつ、展望台のような作りになっている其処をぐるりと一周しようとしていると、


(スコール、と、ジタンか)


 夜闇に覆われた世界を見下ろしている二人を見付け、クラウドの足は真っ直ぐ其処へ向かう。
足音に気付いて先に振り返ったのは、人一番耳の良いジタンだった。
僅かに遅れてスコールも振り返り、白い頬にさっと朱が昇ったかと思うと、ふいと逸らされる。
目敏いジタンの目がそれを負ったが、空気の読める彼は知らない振りをして、クラウドに挨拶した。


「よっ、クラウド。お前も探検?」
「そんな所だ。お前達は、此処で何をしていたんだ?」
「いやあ、バッツの姿が見えないかなと思ってさ」


 そう言って、ジタンの視線はまた外へと向かう。
現在地点が明るい所為か、明かりもない外界の詳細は、クラウドには殆ど判らない。
しかし、夜目の利くジタンなら何かが見えるのかも知れないな、とクラウドは思った。


「それで、バッツらしき人はいたか?」
「いや、全然。しばらくこうしてるんだけど、人の気配所か、今の所は魔物や動物とかもいないんだ。夜行性の魔物位はいても可笑しくないと思ってたんだけど」
「…塔の周辺だけいないのかも知れない。前の戦いでも、聖域の周囲にはあまり魔物は近付いて来れなかったし」


 目を皿にして遠くを睨むジタンに、その隣で立ち尽くしているスコールが言った。
確かにそうだったな、とクラウドが頷くと、ジタンはふう、と短く息を吐いて、


「じゃあこれ以上は見てても変化はなさそうだな。他の所でも見て来るか。初めて会ったレディもいるし、不安にしてたらいけないから、様子を見に行くとするかね」
「………」


 いそいそと尻尾を揺らしながら離れて行くジタンを、スコールの胡乱な目が追う。
ジタンが言っているのはヤ・シュトラの事だろうが、そんな繊細そうには見えなかった、とスコールの目は告げていた。
クラウドから見ても強かそうな女性であったが、それはジタンには関係のない事だろう。

 たったっと軽い足取りで駆けて行ったジタンを見送って、クラウドはスコールの隣に立った。
途端、隣の気配が硬直したのを感じ取り、変わらない青さにクラウドも口元が緩む。


「そう警戒しないでくれ」
「!誰が……」


 警戒なんて、と言いながら、スコールの視線は逸らされたまま。
ちらりとクラウドがその横顔を見ると、白い肌には判り易く朱色が浮いている。
眉間に深い皺を刻み、きっと本人はポーカーフェイスのつもりなのだろうが、何もかもが漏れている。
以前にも況して何処か判り易くなったように見えるのは、久しぶりに見ているからか、それともクラウドが年を重ねた所為か。
後者だとすると、老兵にでもなったような気持ちで些か複雑なのだが、そのお陰で以前は気付かなかった少年の変化にも目が届くようになったのなら、喜ばしい事かも知れない。

 が、スコールにとってはそうではない。
ブルーグレイが彷徨うように揺れて、ちらりとクラウドを見て、また逸らされる。
まとう空気からして、以前のような刺々しさはないので、可惜な警戒や苦手意識の所為ではないのだと判ったが、余りに何度も逸らされると、クラウドも少々気になって来る。


「スコール」
「……なんだ」
「こっちを見てくれ」
「……」


 嫌だ、という言葉が無音と共に聞こえた気がした。
恐らく、間違いではないのだろう。
スコールは完全にそっぽを向いてしまい、クラウドからはスコールの耳しか見えなくなってしまった。

 クラウドはしばらくスコールの耳を見詰めていたが、ピアスの嵌められた其処に徐に手を伸ばす。
つ、と指先で耳の形を辿ると、「ひっ!」と高い声が上がって、思い切りその手を弾かれる。
じんと痺れた右手を振りつつ、クラウドはくすりと笑った。


「其処まで嫌わないでくれ」
「あんたが妙な事をするからだろう!人を揶揄って面白いか?」


 目尻を吊り上げて睨むスコールに、クラウドは直ぐに両手を上げる。


「怒るな、冗談だ。すまない、少しふざけ過ぎたな」
「……」


 蒼の瞳が、少しじゃない、と訴えている。
クラウドはそんなスコールにも笑みを見せながら、未だ赤味の引かない頬に触れた。
それだけで、ビクッと怯えたように固くなるスコールに、クラウドの眉尻が下がる。


「揶揄ったのは悪かったが、お前も随分と緊張していないか?俺はそんなに驚かれるような奴になったかな」
「……い、や……それは、別に……」


 スコールはまた視線を逸らしつつ、もごもごと歯切れ悪く答える。
しかし、態度から見て、緊張していないとは否定出来ていない。
スコールもそれは自覚し、また自分の体が強張っている事は判っているのだろう。
またしばらくの沈黙の後、視線は交わさないまま、スコールは足元を見詰めてぼそぼそと言った。


「あんた……前と雰囲気が違うから、なんか……遠くなった、みたいで……」


 スコールの言葉に、成程、とクラウドは少しだけ合点が行った。
以前の時に比べると、スコールはあの頃のまま、クラウドだけが年齢を重ねている。
繊細な性質のスコールには、記憶と違うクラウドの容姿や雰囲気は勿論、それから感じ取られる自分との人生経験のようなものに差を感じて、無意識に身構えてしまうのだろう。

 赤い顔で俯いているスコールの頬を、クラウドはそっと撫でた。
両の頬を掌で包んで、顔を上げるように促すが、スコールは動かない。
仕方ないな、と強引ではない程度の力でスコールの顔を上げさせ、瞳の距離が近い事に目を瞠る蒼色に構わず、そっと唇を重ねる。


「……!」


 思いも寄らなかった事をされている。
そんな表情で、スコールはクラウドからの口付けを受けていた。

 重ね合わせているだけの口付けだったが、クラウドはしばらくの間、そのままで二年振りの恋人の温もりを感じていた。
そうしている内に、スコールの手がクラウドの胸の袂に触れ、服を握る。
恐々とした触れ方に、離れてからも彼は人の温もりに慣れないままで過ごしているのだと言う事に、ほんの少し安堵した。

 そっと唇を離すと、スコールは小さく吐息を漏らして、ふらりと足元を揺らした。
気が抜けたように座り込んだスコールに、クラウドはくつくつと笑いながら、正面でしゃがむ。


「大丈夫か?」
「……っ!」


 問うクラウドに、スコールは我に返って顔を真っ赤に染める。
沸騰したように赤いスコールの頬を撫でて、クラウドはもう一度キスをした。


「んぅ……っ!」


 思わず口を閉じるスコール。
その下唇を舌で辿ると、ふるりとスコールの肩が震えた。

 スコールの鼻先に、まだ記憶から埋もれていない、クラウドの匂いが触れる。
鉄錆の匂いを混じらせたそれは、間違いなくクラウドのもの。
元の世界で年月を重ね、雰囲気まで変わって、知っている筈なのに知らない人と向き合っているように感じていたけれど、こうして触れていると、確かに此処にいるのは愛しい人なのだと言う事が判る。
そう思うと、判り切っていた離別の後、元の世界で過ごす内に思い出した温もりに募った寂しさが、また一気に膨らんで破裂する。


「ん……ん…っ!」
「……!」


 されるがままだったスコールの方から、クラウドの唇を舐めた。
思いも寄らない事にクラウドは目を丸くするが、眼前の少年が顔を赤くしながら、懸命に口付けに応じようとしている事を悟ると、そっと唇を割って彼を招き入れた。

 スコールの口付けは、クラウドの記憶と寸分違わず、不器用なままだ。
クラウドにされた事だけを記憶していて、それを一所懸命になぞるように追っている。
それが無性に嬉しくて、クラウドはスコールの好きなようにさせていた────が、


「…は……っ、クラ、ウド……っ」


 唇を離し、零れた吐息混じりの呼ぶ声に、どくん、とクラウドの心音が跳ねる。
この声は、夜の帳の中で何度も何度も聞いたものだ。
枯れるには早過ぎるクラウドを煽るには、十分すぎるもの───なのだが、場所が悪い。


「スコール、少し待て」
「……?」


 ストップをかけるクラウドに、スコールが眉根を寄せる。
不安そうに揺れる蒼灰色を見ながら、前とはブレーキをかける役が逆だな、と思いつつ、


「此処は、良くないだろう。誰か来るかも知れない」
「……あ」


 クラウドの言葉で、スコールは此処が何処であるのか、ようやく思い出した。
仲間達と共に女神の話を聞いた、この塔の中心部分。
つい先程まで、自分とジタンが話をしていたように、誰が来ないとも限らない此処で、まさか事を始める訳にもいかない。

 自分が周りが見えなくなるほどにクラウドに夢中になっていた事に気付いて、スコールの顔が可哀想な程に真っ赤になった。
座り込んだまま動かなくなったスコールに、クラウドは漏れそうになる微笑みを堪えつつ、変わらない表情で移動を促す。


「スコール、俺の部屋に来ないか」
「……あんたの、部屋?」
「ああ」


 誘うクラウドの言葉の意味を確かめるように、スコールはそれを反芻する。
良いのか、本当に、と問うように見詰める瞳に、クラウドははっきりと頷いた。

 蚊の鳴くような小さな声で、「……いく」と言ったのが聞こえた。




 スコールが自分の部屋にいる。
二年前、闘争の世界に召喚され、秩序の戦士として目覚めてから、そう言う光景を何度見ただろう。
いつか離別が来ると判っているから、クラウドは明確に彼との繋がりを欲していた。
スコールも始めこそ男としてのプライドは勿論、離別に対する怯えから、必要以上の接触を避けている節があったが、それでも彼の根は寂しがり屋の子供である。
触れる事を覚えると、今度はそれなしでは不安が拭えなくなり、度々温もりを求めて彼はクラウドの下へやってきた。
クラウドもそんなスコールを抱き締め、あやして、彼が自分の事を忘れないようにと何度も気持ちを注いだものだ。

 元の世界に戻ってから、二年。
様々な出来事があったから、それに振り回されて酷く濃い時間になったと思う。
それでも、異世界での出来事を思い出した時には、まるで霞が晴れたような気分だった。
同時に、二度と逢えない恋人の事も思い出し、酷な記憶になったものだとも思った。
二年と言う時間のお陰か、クラウドはその記憶との折り合いもついたつもりだったのだが、こうして期せずの再会を果たすと、潰えない気持ちは再び燃え上がる。

 服を脱ごうして、それよりも早くスコールにベッドに引っ張り込まれた。
初めて使うベッドは、まるでホテルのベッドのような感触がする。
二人分の体重を受け止めたそれが軋む中で、また口付け合った。
人目を憚る必要もない所為か、スコールの方から積極的に舌を絡ませて来る。
性急にも思えるそれを受け入れながら、クラウドはスコールの咥内をねっとりと舐め回し、唾液を交換し合う。


「ん、ん………っ」
「…ふ……スコール、ちゃんと息を…」
「んん……あ…は……っ…!」


 窒息しそうな程に夢中でキスを欲しがるスコールに、クラウドは柔らかな髪を撫でながら、落ち着くようにと促す。

 息をさせようとクラウドが唇を離すと、スコールはいやいやと頭を振り、クラウドの首に腕を絡めた。
随分と積極的だ、と思ったが、悪い気はしない。
クラウドとて二年振りに触れる体なのだから、全身で求められるのは嬉しかった。


「クラ、ウド……ん……っ」
「ん……ふ……っ」


 ちゅく、ちゅく、と音を立てて深いキスを交わしながら、スコールの体がクラウドへと密着させられる。
早く、と急かすようなスコールの様子に、服も脱がせてくれなかったのはお前だろう、とクラウドは仕様のないと眉尻を下げた。

 クラウドはキスを続けながら、嵌めたままだった手袋を外して、スコールのシャツの中に手を入れる。
相変わらず肉の薄い腹だ。
心なしか痩せているように思うのは、気の所為か、記憶違いか。
元の世界で、スコールが一体どんな生活をしているのか、クラウドには知る由もない。
元気にしていたのなら良いのだが、スコールの繊細さを考えると、心労も少なくはなさそうだ───と思いつつ、薄い胸板にぽつりと浮いている乳首を捏ねてやる。


「んっ……!」


 ヒクッ、とスコールの体が跳ねて、唇の隙間から微かに甘い声が漏れる。
そのまま指先で蕾を捏ね続けると、其処は直ぐに膨らんで硬くなった。


「ん、ぅ……あ……っ!」
「痛くはないな?」
「は……ん……っ」


 こくり、とスコールが小さく頷く。
もっと、とばかりにスコールが身を寄せて来るので、クラウドは両手で左右の乳首をそれぞれ摘んだ。


「あっ……!」


 思わず、と言ったように高い声が上がる。
直ぐにスコールは自分の声に気付いて、顔を真っ赤にして手で口を塞ぐ。
勿体ない事をする、と思ったが、恥ずかしさで堪えようとするスコールの姿を見るのも悪くない。
クラウドはそのまま、スコールの胸を愛撫し続けた。


「ん…っ、あ……っ、…ふぁ……っ」
「感度も……前と同じで、良好だな」
「や…あ……言う、な……」
「恥ずかしいか?」
「……っ!」


 判っているなら、とスコールがクラウドを睨む。
赤らみ、潤んだ瞳で睨まれても、クラウドはちっとも怖くない。
そもそも、クラウドがスコールを怖いと思った事は、過去も含めて一度もなかった。

 きゅ、と軽く乳首を摘んで引っ張ってやると、ビクッ、とスコールの体が跳ねる。
シャツをたくし上げて、露わになった胸に顔を寄せる。
スコールが真っ赤な顔で見詰めている視線を感じながら、クラウドはスコールの乳首をぱっくりと口に含んだ。


「ひぅ……っ!」


 クラウドの咥内は、ねっとりとした湿気と熱を含んでおり、敏感なスコールの乳首はその空気だけで感じてしまう。
舌の腹でゆっくりと膨らみを撫でれば、スコールは必死に声を殺しながら、ビクッ、ビクッ、と体を震わせていた。


「ん…っ、んぅ……っ!」
「んちゅ、……っ、」
「ああ……っ!」


 乳首を一つ強く吸えば、細い肢体がビクンッ、と跳ねる。
クラウドはスコールの腰と背中に腕を回して、ちゅう、ちゅう、と何度も乳首を吸った。
スコールは背中を仰け反らせ、ぱさぱさと短い髪を振り乱しながら、恋人から与えられる快感に悶えている。


「はく…あ……っ!ク、ラ…ウド…ぉ……っ!」


 やだ、と子供が駄々を捏ねるような仕草だ。
しかし、零れる声は甘酸っぱく、涙も滲みながら、甘えたがっている。
スコールの手がクラウドの頭を抱えるように、金色の髪を掻き乱した。

 唾液塗れになった乳首に、軽く歯を立てる。
「あ…っ!」と甘い声を聞きながら、クラウドの片手が下へと滑り、スコールの小振りな尻を撫でた。


「…脱がせるぞ」
「……ふ…んん……っ」


 クラウドが囁くと、スコールはこくりと頷いた。
手を前に回し、スコールのベルトを外して、前部を緩めてやる。
スコールは膝を立てて力を入れて、少しだけベッドから腰を浮かせた。
タイトなズボンは脱がせるのに手間がかかったが、その内スコール自身も手を使ってずり下ろして行った。
下着ごと脱がせたそれを、スコールの足が蹴ってベッドから追い出す。


「クラ、ウ、ド……」


 喘ぎの混じる息をしながら、スコールが足を開く。
二年ぶりに見るスコールの其処は、やはりクラウドの記憶と変わらず、初々しい色をしていた。

 するりとクラウドの手がスコールの太腿を滑って行く。
少し乾燥した、皮の厚い手に撫でられた白い足が、ピクッ、ピクンッ、と小さく震える。
爪先がもどかしそうに動いて、しゅるしゅるとシーツが衣擦れの音を立てた。

 クラウドの指がスコールの足の付け根をなぞり、慎ましく閉じている秘部に触れる。
ふに、と触れた其処はぴったりと口を噤んでいたが、クラウドが指先でノックするように突いてみると、ヒクッ、ヒクッ、と何かを期待するように膨らむ。
その中がどんな感触であったのかを思い出して、クラウドの興奮が増すが、急いてはいけない、と理性が訴えた。


「…久しぶりだからな。慣らさないときついだろう」
「う……」
「ゆっくり入れるぞ。痛かったら直ぐに言え」
「……んぁ……っ!」


 つぷり、と先端が口を拡げた瞬間、ビクンッ、とスコールの体が跳ねて強張る。
眉根を寄せ、歯を噛んでいる様子のスコールに、クラウドはそっと覆い被さって眦にキスをする。


「スコール、息を」
「…う…んぅ……」
「声を出して良い。その方が楽になる」
「……っあ……」


 久しぶりの性交で、興奮と共に緊張もあるのだろうスコールに、クラウドは努めて柔らかく囁いた。
耳元で吐息と共に心を擽るクラウドの声に、スコールは閉じていた目を薄らと明け、間近にある魔晄色の瞳を見詰める。
その途端、じわり、と蒼灰色の瞳に大粒の雫が浮かぶ。


「…ク…ラ……ウド……っ」
「なんだ?スコール」
「…ふあ……っ!」


 名を呼ばれて、呼び返せば、スコールの内肉がきゅうっと締まった。
クラウドはそんなスコールの背中を撫でながら、ゆっくりと秘孔に指を挿入していく。
あ、あ、と言う音だけを零しながら、スコールはヒクッヒクッと腰を震わせつつ、久しく感じていなかった違和感に熱を膨らませる。


「あ、あ…んんぅ……っ」
「スコール、痛みは?」
「……っ」


 ふるふる、とスコールは首を横に振った。
痛くない、と言うそれが嘘ではないか、本当は我慢していないかを表情を見て確かめながら、クラウドはそっと指を曲げる。


「あんぅっ……!」


 クラウドの指に内壁を押されて、スコールの喉が反る。
クラウドはその首筋にキスをして、内肉をくち、くち、と音を立てながら柔らかく掻き回し始めた。


「あっ…!あ……っ!」
「狭いな。一人で慰めたりは、していなかったのか?」
「んぁ……そんな、事……あっ…!」


 言いたくない、と頭を振るスコール。
答えずとも、クラウドには指先に引っ掛かる肉の感触で、大体の事は察することが出来た。

 恐らくスコールは、自分自身で此処を慰めてはいない。
一切かどうかはともかく、少なくとも、最近から今日に召喚されるに至るまでは、自分で触れていない事は確かだろう。
しかし、過去に覚えた快感の得方は忘れ難いらしく、クラウドが覚えている場所を何度か指で擦ってやると、


「あっ、あっ…あぁ…っ!やあ…ん……っ!」


 以前にも況して発露される素直な反応に、クラウドの劣情もまた昂って行く。
久しぶりに再会して、目の当たりにした少年の艶姿は、中々に強烈なものがあった。

 きゅ、きゅう、と締め付けの増す内肉を、指の腹でそっとなぞりながら広げる。
ヒクヒクと戦慄く壁を軽く押してやると、ビクンッ、とスコールの体が跳ねた。


「んっ、うっ…!ふ……っ!」
「指、もう一本入れるぞ」
「……っ」


 無理をさせないようにと声をかけてから、クラウドは中指を秘部に宛がう。
ぬぷ……とゆっくりと入って来る指に、スコールが一瞬息を詰まらせた。


「…あ…ふ……っ!」
「きついか?」
「……ん、う……」


 平気、とスコールが首を横に振る。
クラウドはスコールの額に、眦にキスの雨を降らせながら、スコールの中を広げて行く。
二本の指で狭い道を撫でるように擦ると、きゅう、と肉が絡み付いて来るのが判った。

 確か、と記憶を頼りにスコールの中を探っていくと、奥まった場所を撫でた瞬間、


「んぁっ……!」


 一つ高い声がスコールの口から零れたのを聞いて、これも記憶の通りだと、クラウドは同じ場所を何度も擦ってやる。
スコールの体がビクッ、ビクッ、と跳ねて、細い腰が悶えるように捩られた。


「や、んっ…、クラウ、ド……っ!」
「気持ち良いか?」
「んぅう……っ!」


 認めるのが恥ずかしいのだろう、スコールは真っ赤な顔で唇を噤んでいる。
クラウドはスコールの耳朶を甘く食んで、きゅう、と締まった秘部の弱点を軽く突いてやった。
そのまま何度も同じ場所を刺激してやると、スコールはクラウドにしがみつくように抱き着いて、甘い声を響かせる。


「はっ、あっ、あ……っ!そこ…や、あ……っ!」


 久しぶりに与えられる快感に、スコールの体は瞬く間に上り詰めて行く。
クラウドの腹に、反り返ったスコールの中心部が擦れ、鈴口からじわじわと涙が溢れ出していた。

 はあ、はあ、と甘い吐息を零すスコールの顔は、快感で蕩けて緩んでいる。
雫を滲ませた蒼灰色の瞳が、熱を持って碧を見上げていた。
濡れた舌が桜色の唇から覗いて、クラウドは吸い込まれるように引き寄せられてキスをする。
舌を絡め取り、ちゅく、くちゅ、と音を立てながら愛撫しつつ、秘孔の奥を激しく掻き回してやれば、スコールの体はビクビクと跳ね、


「んんっ、んっ…!んふ、ぅう……っ!」
「ん……っは……スコール、イくか…?」
「ふあ…あっ、あぁ……っ!」


 クラウドの声に、スコールは答える余裕もない。
クラウドは、指先に絡み付く肉が柔らかく解れながら、じっとりと汗を掻いている事に気付いていた。

 きゅうぅ……と吸い付く感触を味わいながら、クラウドはスコールの秘孔から指を抜いて行く。
やあ、と駄々を捏ねる子供のようにスコールが頭を振り、秘孔がクラウドを引き留めるように強く締まった。
指先に窄まりが引っ掛かるのを感じながら、ぬぽっ、と指を引き抜けば、スコールの口から「んあ……っ!」と切なげな声が漏れる。


「あ…ふぁ……っ…」


 咥えるものを失った秘孔が、ヒクン、ヒクン、と寂しそうに戦慄いている。
薄らと色を浮かせた其処を見下ろしながら、クラウドは自身の前を緩めた。
取り出した雄は大きく膨らみ、血管を浮かせており、クラウドが興奮している事を如実に示している。

 クラウドの手がスコールの太腿を押し、足を大きく開かせる。
スコールは顔を赤らめたが、嫌がる様子はなく、クラウドにされるがままに従った。
土手を膨らませた秘穴に膨らんだ雄を宛がえば、脈打つその感触に、スコールの体がふるりと震える。


「クラ、ウ…ド……」


 呼ぶ声には、熱と共に期待が交じっている。
クラウドがゆっくりと腰を進めれば、太い雄が穴を広げて入って行く。

 スコールにとっては数ヵ月振りに感じる、恋人と繋がれる瞬間。
クラウドにとっては二年振りとなる、愛しい少年の熱の感触に、互いの呼気は上がって行く。
これが欲しかった、とでも言うように絡み付いて締め付けるスコールに、クラウドは唇を噛んで己の衝動を堪えた。


「く……スコール……っ」
「んぁ…は…ああぁ……っ!」


 きゅうきゅうと絡み付いて離さないスコールに、クラウドは息を詰めた。
背中を競り上がって来るぞくぞくとした快感に、頭の芯まで溶けて行きそうなのを、寸での所で踏み止まる。
しかしそれはクラウドだけで、スコールは表情からも完全に蕩け、理性等と言うものは既に役目を果たしていない。


「あ、あ…っ!クラ、ウド……んんぅ……っ!」
「スコール……動く、ぞ……っ」
「ん、んっ……!」


 クラウドの言葉に、スコールは腰に足を絡める事で応えた。
早く、と言うように肉壁も締め付けを増し、クラウドの熱を煽ろうとする。

 クラウドはスコールの体に覆い被さって、腰を前後に振り始めた。
指で解したとは言え、久しぶりに雄を受け入れた秘部はやはり狭く、締め付けも少し苦しい程だ。
だが、クラウドの背中に回されたスコールの腕は、止めないで欲しいと全身で訴えている。


「はっ、あっ、あっ…!」
「スコール……、良い、な…っ?」
「ん、んぅ……っ!は…あ…あぁ……っ!」


 何度も奥を突き上げる度、徐々に二人の繋がりは深くなって行く。
クラウドが腰を大きく動かすようになると、雄は根本まで受け入れられる程に広がり、スコールは自分の中がクラウドの熱で満たされるのを感じていた。
背中に回したスコールの腕に力が籠り、其処にいる存在を確かめるように、爪が立てられる。


「クラ、クラウド……っ!ん、あ、っんぁ……!」
「スコール……っ、く…う……っ!」


 ぐちゅっ、と一点を突き上げた瞬間、スコールの体がビクンッと反るように跳ねた。
同時に雄を咥えた秘孔が強く締まり、みっちりと全身で絡み付いて締め付ける。
中に溜め込んだものを絞り出さんばかりの締め付けに、クラウドは唇を噛みながら、一層激しく腰を振る。


「んぁっ、あっ、や…ッ!ク、ラ、ああ……っ!」


 秘奥を抉るように押し上げられる度に、スコールの息が上がって行く。
呼吸の暇すら奪われる程の激しい攻めに、蒼灰色の瞳が宙を彷徨い、彼の意識は明滅を始め、頭の中が白熱する。

 スコールの中で、クラウドの雄が脈動を早めて行く。
絶頂が近いと悟ったのはクラウドだけではなかった。
己の中で昂ぶりを増して行く雄の感触を感じ取ったスコールの中は、一層妖しくうねりを帯びて男を誘う。


「あっ、ひ、あ…ッ!クラ、ウド……も、もう……っ!」
「ああ……、俺も……っ」
「はっ、ん、ん……っ!あぁ、っあ、あっ、あっ…!!」


 剛直と化した雄が、何度もスコールの中を出入りして、スコールの視線が宙を彷徨う。
涙に濡れた其処に自分を映して欲しくて、クラウドはスコールの開きっぱなしの唇を、己のそれで塞いだ。
ちゅく、とスコールの舌に絡む唾液を舐めてやれば、ひくん、とスコールの肩が震え、蒼の瞳が此方を見る。

 深い口付けを交わしながら、スコールはクラウドの奥をぐぅっと強く押し上げた。
スコールの喉奥から、くぐもった悲鳴が滲み、ビクンッ、ビクンッ、と一際強く四肢が跳ね、


「んっ、んんっ…!んんぅうう……っ!」


 逃げを打つように体を仰け反らせて、スコールの体が絶頂を迎える。
びゅくっ、びゅくっ、と濃い蜜液がスコールの中心部から吐き出され、二人の腹をぐっしょりと濡らした。

 果てを迎えて強張ったままのスコールの体を、クラウドは更に攻め立てて行く。
自身の限界へと上り詰めるクラウドに、スコールは頭を振るが、


「んぁ、んっ、ひぁっ!クラ、あ、そこ、やっ、今…あぁあ…っ!」
「は…すまん……っ、スコール……、止まれそうにない……!」
「う、ん……いい……いい、クラウドぉ……っ!」


 慮ってはいるつもりだったが、やはり此処まできて止まる事など出来ない。
本能を剥き出しにして激しい律動を続けるクラウドに、スコールは涙を浮かべながらも、そんな彼を受け入れた。
絶頂の余韻の残る体に与えられる攻めは、それまでよりも遥かに強烈な快感をスコールに齎している。
前後不覚に陥りそうな程の快感は、時としてスコールに恐怖を与える事もあったが、それですらも愛おしく、激しく求められるように与えられる悦楽が、今はただ嬉しい。
そんな気持ちを伝えるように、スコールの秘部も艶かしく蠢いて、己を抱く男に絡み付いて離れなかった。


「んっ、あっ、クラウド…お……はっ、あぁっ…!」
「スコー、ル……っ、俺も……っ」
「はっ、いい……いい、から…あっ、早く、んん……っ!」


 早く出して、と言う小さな声が、クラウドの耳に届く。
途端、どくん、とクラウドの雄としての欲望が増して、スコールの中で雄が膨らみ、


「う、あ……っ!」
「あっ、ああ…っ!んんんんっ!」


 どくっ、どくんっ、と脈を打ったかと思うと、クラウドの雄はスコールの中へとその劣情を吐き出した。
注ぎ込まれる熱の感触に、スコールの喉から甘い悲鳴が上がる。
その声すらもクラウドには官能の一つとなり、射精は一度では終わらず、濃厚な蜜液がスコールの内側を満たして行く。

 長い射精を終えて、クラウドの体から力が抜ける。
覆い被さった恋人を圧し潰さないように、寸での所で体を支えた。
スコールはと言うと、内肉にまとわりつく粘液の感触に身を震わせながら、うっとりとした表情を浮かべている。


「は……スコー、ル……」
「あ……ふ……っ」
「ん……」
「んん……っ」


 虚ろな瞳のスコールの頬に手を添えて、クラウドは唇を重ねた。
熱の籠った吐息で濡れたスコールの咥内を、労わるように、煽るように舌で舐る。
スコールの首筋にぞくん、とした感覚が奔り、咥えたままの雄にうねる肉が吸い付いた。


「ふ…ん……クラ、ウ、ド……」


 唇を離せば、甘い声で名を呼ばれる。
煽ってくれるな、とクラウドは思ったが、スコールの瞳は意図せずともそれを求めていると判る熱で染まっていた。

 ────もっと。
濡れた唇がそう紡いだのを見て、クラウドは誘われるままに、何度目か判らない口付けを重ねた。




 クラウドが目を覚ましたのは、部屋に取ってつけたように嵌められた窓の向こうが、薄らと白んだ頃であった。
時間で言えば朝になるのだろうが、新たに構築された闘争の世界は、以前の世界に比べると一層不安定であるらしく、天候にもそれは及んでいる。
昨日は僅かに夕焼けが望めたような気がするが、今朝の空はどんよりと重く、朝日と言う清々しい代物は拝めそうにない。
 
 曇の目立つ空をガラス越しに見詰めながら、クラウドは散らかっていた服を拾い集める。
几帳面な性質のスコールが脱いだ服は、軒並み床に落ちており、それだけ彼が性急に己を求めていたのだと報せているようで、クラウドの頬が緩む。


(しかし……少し無理をさせたかも知れないな。今日には出発するんだから、加減するつもりではあったんだが……)


 ちらりと見遣るベッドには、すぅすぅと寝息を立てている恋人の姿。
裸でシーツに包まっている姿は、暖を求める猫にも似ており、以前は見慣れたものであった。
それを再び見る事が叶うとは思っていなかっただけに、またクラウドの胸中が熱を膨らませる。

 が、もう恋人と甘やかな時間を過ごしてはいられない。
部屋の外では活動を始めた仲間達の気配がある。
恐らく、フリオニールやティーダ辺りが目を覚まし、朝食の準備でもしているのだろう。
くいっぱぐれだけは避けたい、と思いつつ、服を着込み、さてスコールはいつ起こしたものかと考える。
早めに起こして出立の準備をさせるべきとは思うが、昨夜の事を思うと、もう暫くゆっくりと休ませてやりたい。


(…そんな事を思うなら、もう少し早く止めるべきだったんだろうが……俺もまだまだ青いか)


 結局、昨夜はスコールが気を失うまで、二人は熱い夜を過ごしていた。
頭の隅では、微かに残った理性が、明日の為に眠らなければと訴えていたのだが、欲しいと全身で訴えて来るスコールの声に、クラウドも己を止める事が出来なかった。
二年振りの恋人との再会で、情交も同様となれば、無理もない事だろう、と誰に対してか判らない言い訳を胸中で繰り返す。

 クラウドが服を着終えた所で、もぞ、とベッドの上の布の塊が身動ぎする。
スコールの体がごろりと寝返りを打って、閉じた瞼の長い睫毛がふるりと震えた。
重いのであろう瞼がゆっくりと持ち上がると、ぼんやりとした光を湛えた蒼が覗く。


「………」


 ぱち、ぱち、とゆっくりと瞬きをするスコール。
寝惚けているのだろう瞳がクラウドを捉え、じっと見詰めていた。
まだ夢現の境界にいるスコールの表情は、起きている時に比べると険が抜けており、随分と幼い。
クラウドのその顔に手を伸ばし、微かに涙の痕を残す頬を撫でた。


「おはよう、スコール」
「……クラウド……?」


 声をかけると、ぱちり、ともう一度瞬き。
触れる手の感触を確かめるように、すり、と頬を寄せて来る仕草が、仔猫のようで可愛らしい。

 クラウド、と舌足らずに名を呼ぶ声。
触れる手にスコールの手が重ねられ、小さな唇が、夢じゃない、と呟くのが聞こえた。




NT発売おめでとう!という事でいそいそと世界を都合よく構築しようとしています。
以前はフォームと言う扱いだったACクラウドがその年齢で参戦した事で、ACクラウド×17歳スコールがとても美味しい。
元の世界で色々あって、一つ落ち着いた風のクラウドと、[本編ED後で少し丸くなって素直になり易くなったスコールとか考えると楽しい。

ネタバレと言う程の話は特にしていませんが、ルート分岐にかかっているので、一応ネタバレ注意に指定してみました。