貴方の色に染まりゆく


 闘争の世界で再会した恋人は、以前と変わらない姿で佇んでいた。
皆が元の世界で大なり小なりの時間を過ごしていたが、スコールの記憶はあれからそれ程長い時間を経過してはいないらしい。
事この話に関しては、二年と言う月日が経っていたクラウドが、最も長い離別を過ごしていたようだ。
この時間のズレの原因ははっきりとはしないが、どうしても解明しなければいけない問題、と言う程でもない。
ただ話の種に、どうしてだろうなあ、と言われる程度の事だ。

 元の世界で過ごしていた時、闘争の世界での記憶は明瞭ではなく、何処かで何かがあったような、と言う程度の認識だった。
それこそ夢に見た世界、と言う表現が合う位のもの。
だから元の世界で過ごした二年間の間、クラウドは神々の闘争について思い出す事はなかったし、偶に記憶の残像が脳の中で再生されて、夢に見る以外にその事を考える必要もなかった。
世界には二年前の戦いの爪痕があちこちに残っていたし、そうでなくとも、ライフストリーム依存の強かった世界の在り様からの変容について、誰も彼もが忙しくしていた。
クラウドも何でも屋として生業を立て、日々舞い込んでくる依頼に対応するのに忙しかったし、夢か幻か判らない曖昧な感覚について、立ち止まって深く考える余裕などなかったのだ。

 それはスコールも同じだったようで、闘争の世界の出来事については、時折奇妙な夢を見る、程度の感覚だった。
彼も彼で、自身の世界で起きた出来事への対応に忙殺されていたと言う。
話を聞くと、何でも屋と言うフリーな立場が選べたクラウドと違い、指揮官などと言う大層な役職に就けられた彼の方が、余程大変だったのではないかと思った程だ。

 それでも、闘争の世界で再会すれば、あっという間に二人の時間は巻き戻った。
他人と変わらない距離感から、少しずつ近くなる内に、いつの間にか触れ合う関係になった。
いつか終わると判っている限られた時間の中で、とかく触れ合う事に固執したのはクラウドの方だ。
他者に依存する事を良しとする事が出来なかったスコールを、説き伏せ宥めて包み込んで、自分の体温と形を教えて忘れられないようにした。
それは世界と時間を越えても、一時忘れていた時間があっても、なかった事にはならない。
新たに創造された闘争の世界で、変わらない、変わった姿になった恋人を見た瞬間、あの頃の熱が一気に蘇って来たのである。

 討つか討たれるかと言う、常に背中に消滅=死と言う現実があった以前の闘争と違い、今回の闘争は何処となくカジュアルだ。
それだけに、いつ終わるのか判らない、元の世界に帰してくれるのかさえ怪しいと、不安要素の多い新たな秩序の女神に対する不審も募るが、この世界では秩序と混沌の神の力は絶対的なものである。
彼女に某か訴えかけても徒労でしかない事は、既に秩序の戦士の多くが経験済みで、これに関しては諦めて長い目で見るしかなかった。

 新たな戦士も折々に召喚されるようになり、まるで大会でも催すかのような雰囲気も構築されていく。
暢気だな、と言っていたのはスコールだ。
彼は元の世界で残してきた、前日の様々な雑務であったり、任務であったりが心配らしい。
独裁している訳ではなく、補佐もいるそうなので一先ずは其方に任せれば良いとは言うが、彼自身の責任感がそれを容易く良しとはしてくれないようだ。
かく言うクラウドも、召喚された前日、日付指定の宅配の依頼が来ていたな、あれはどうなったか、と思ったりもするのだが、此処で幾ら考えても詮無い話であったので、早々に諦めている。

 元の世界の心配事や、新たな闘争の世界のあらましについて、気になる事は幾らでもあるが、クラウドはさっさと気持ちを切り替えた。
そう言う事が出来る位には、クラウドも年を重ねたのだ───と言ったら、ジェクトには「青二才が生意気言ってんじゃねえよ」と笑われたが、年若い者が多い秩序の戦士達の中で、クラウドが年長者であったのは事実なのだ。

 心配事より、今は嬉しい事を感じていたい。
嬉しい事とは他でもない、可愛い恋人との再会だ。
スコールは相変わらず思春期真っ盛りのようで、初心な所も変わりなく、クラウドが少し触れると真っ赤になって恥ずかしがる。
しかし強く拒否する事もしないので、再会を喜んでくれている事は判るし、触れるとおずおずと応えてくれる。
次の別れの事を考えては不安になる所も、変わっていなかった。
スコールのその不安にだけはクラウドも何と返して良いのか判らなかったが、今は目の前にいる存在の事を感じて貰おうと、クラウドは精一杯の誠意と熱で彼を包み込む。
そうして縋り、甘えてくれる彼を抱きしめては、クラウドも彼の中へと自身の情を注ぎ込むのであった。




 バッツとセシルとチームを組んで戦闘に向かったのは、久しぶりの事だった。
以前の世界でも交流があり、且つ年長組の枠で括られるメンバーとの共闘は、中々楽しいものであった。
バッツは以前の世界では使わなかった、自身が有する力を以てトリッキーな戦い方をし、セシルは光と闇の力を共に己のものとして受け止めた事により、以前よりもその技に磨きがかかっている。
これは負けてはいられないと、クラウドも気合が入った。
入り過ぎて少々勇み足気味に前線を押し上げ、メンバーの壁替わりになった事で痛いものを食らった位だ。
おまけに相手がジェクト、スノウ、ゴルベーザと言うメンバーだったものだから、ほとんど正々堂々正面衝突、などと言うある意味では珍しい勝負となった。

 結果はドローに終わったのだが、なんとなく清々しい気持ちで、今日の闘争は終わった。
スポーツ染みた空気があるとはいえ、この手が握っているのは命を屠る力である。
それでも、「またやろうな!」等と笑って言ったバッツに、「楽しみにしてるぜ」と答えたジェクトを誰も諫めも咎めもしない雰囲気と言うのは、悪くない。

 バッツの雑談を肴にしながら秩序の塔へと帰還すると、同じタイミングでもう1チーム───スコール、ティーダ、ヴァンも帰って来た。
彼等もクラウド達と同様、今日の戦闘を終えて戻った所で、此方はクラウド達に比べると少し疲れた様子があった。
混沌側からの出撃にケフカがおり、彼には儘ある事だが、敵も味方も滅茶苦茶に魔法を撃ち始めた為にそれはそれは大変な目に遭ったのだそうだ。
お疲れ様、と労う年長組に、17歳組はそれぞれ溜息を吐いて、疲れ切った体を休めるべくさっさと部屋へと引き上げて行った。

 仲間達を食卓を囲み、今日の戦績と、世界探索組の報告を聞いて、クラウドは部屋へと引き上げた。
風呂は自室に備え付けられたシャワーで済ませた頃、クラウドは自身が未だ昂ぶりを残している事に気付いた。
一人静かな部屋の中で、濡れた髪を拭きながら見下ろした中心部が、判り易く頭を持ち上げて戻らない。


(まあ、今日は中々激しかったしな)


 男の生理現象としては仕方のない事だ。
何せ今日のクラウドは、あのジェクトと正面から競り合ったのだ。
クラウドのバスターソードを物ともせずに拳一つで弾き返すような猛者を相手に、昂らない筈がない。
そのお陰で、横腹に食らったパンチの痕が今もくっきりと痣になって残っているのは、勉強料と言う奴だ。

 そんな訳で、中々に心地の良い戦闘ではあったが、下腹部のそれを放置するのは難しい。
帰路の道中は脳が興奮していた事もあって気にしていなかったが、これから休もうと思っているのに、このままでは無理だ。


(抜くか。いや、しかし───)


 自己処理で済ませても良かったが、なんだかそれは寂しい気がした。
人肌を常に恋しがるような繊細な情緒は持ち合わせていないつもりだが、それはそれとして、頭に浮かぶ顔がある。

 年下の恋人と前に繋がり合ったのは、ほんの二日前の話だ。
彼との甘やかな時間はとても心地良く、ふとした時に触れては味わいたくなる麻薬のようだ。
記憶にない状態であったとは言え、クラウドにとっては二年ぶりの再会である。
嘗ても繋がり合い、その時から深く虜にされたその魅力は、短くはない時間の空白を持って尚───だからこそ更に───クラウドを魅了して已まない。
一人適当に事を済ませてしまう位なら、この熱を彼の中に注いで、彼と溶け合い共有したいと願ってしまう。

 とは言え、帰還時に見た彼の顔は、疲れ切ったものであった。
食事の際には他の二人も一緒に同席しているのを見たが、表情はまだ少し眠そうだった。
判り易く疲れていた彼の下に、欲望をぶつけに行くのは如何なものか。

 ────等と考えていたクラウドであったが、その足はいつの間にか自室を出ていた。
スコールの部屋はクラウドの隣にある。
そんな距離も、クラウドの足を部屋に留める事を放棄させる理由の一端にはあったかも知れない。

 コンコン、とノックをすると、少し時間を置いてから「……はい」と言う小さな返事があった。
眠ってはいなかったようだと、空振りにならずに済んだ事にほっとしていると、ドアがスライドして、濡れた髪にタオルを被ったスコールが立っていた。


「…クラウド」
「邪魔しても良いか?」
「………」


 スコールは答えなかったが、代わりにくるりと背を向けた。
ドアが開いたままなのが、入室許可だ。
クラウドは敷居を跨ぐと、部屋の主に変わってドアを閉め、ロックをかけた。

 スコールはベッドの縁に座って髪を拭いている。
その隣に断りなく座ると、蒼の瞳がちらりと此方を見た後、長い前髪に伏せられるように隠れた。
唇を引き結んで、がしがしとやや乱暴に髪を吹き続ける彼は、判り易くクラウドの来訪とその存在を意識している。
その事にクラウドはこっそりと喜びを感じながら、スコールが髪を乾かし終えるのをのんびりと待った。

 そのまま長いような短いような、妙にゆっくりとした時間が漂う中を過ごして、スコールがようやくタオルを髪から降ろす。
落ちる水滴はなくなったが、程好く水分の残ったしっとりとした髪が、スコールの目元に微かなカーテンを落としていた。
その隙間から見える蒼灰色が、落ち着きなくうろうろと迷っているのを見付けて、クラウドはそっと細い肩に腕を回す。


「……!」


 厚みのある皮に覆われたクラウドの掌が、肩を抱き寄せるのを感じて、スコールが小さく息を詰めた。
意識し過ぎだろうとクラウドは笑みが零れそうになるのを堪えつつ、スコールの耳元に触れるだけのキスをする。


「……ク、ラ…ウド……」
「ん?」
「……っ」


 名を呼ぶ恋人に返事をしてやれば、ふるりと小さく体が震えたのが伝わった。
少し緊張しているようにも見え、それも間違いではないのだが、タオルを握る手が迫る男を振り払おうとしないのが、漏れるスコールの本音と言えた。

 耳元から頬へ、目尻、米神へとキスを繰り返す。
スコールは赤い顔をして、ぎゅうと瞼を閉じて、クラウドの触れ合いを受け止めていた。
肩を縮めているのは、こう言う時のスコールの癖だ。
元々、触れ合う事には慣れていない性格だから、どうしても体が構えようとするのだろう。
クラウドはそんなスコールの体を抱き寄せて、そっと背中を撫でながら、シャツの裾に手を入れる。


「…ん……っ」


 シャワーを浴びてからそう時間は経っていないのだろう、スコールの肌はほんのりと温かい。
クラウドがスコールの首元に顔を近付けると、爽やかな石鹸の匂いがした。
すん、と鼻を鳴らせば、鼻息が首筋を擽ったようで、細身の体がひくんと弾む。

 逃げるように反らされる首は、クラウドには反って差し出されているように見えた。
誘われるままに唇を寄せ、柔らかく歯を当ててやれば、はあっ、と詰めた吐息が零れるのが聞こえる。
シャツの下に侵入した手は、円を描く動きで悪戯しながら、スコールの躰を這い上がって行く。
その手が胸の頂きに触れようとした所で、


「ちょ…待、て……っ!」


 ぐっ、とスコールが強く腕を突っ張って、クラウドの胸を押し退ける。
少々意外だった抵抗に、クラウドが目を丸くしながら少年を見れば、スコールは真っ赤な顔を逸らしながら言った。


「こ、この間…したばかりだろ……っ」
「ああ」
「今日は疲れてるし……」
「そうだろうなとは思った」
「だったら」
「だが、俺はお前を感じたい」
「………!」


 クラウドの真っ直ぐな言葉に、スコールの顔が益々赤くなる。
まるで沸騰したポットのように、頭から湯気が出そうな程に真っ赤だ。
そんな初心な所も変わらない恋人に、クラウドはその肩を掴んで、貪るように小さな唇に吸い付いた。


「んむぅっ」


 話を聞け、と言わんばかりのくぐもった音が上がったが、クラウドは構わずその隙間に舌を入れた。
侵入者に気付いたスコールの肩がビクッと跳ねている間に、スコールの舌を絡め取る。
逃げたがる舌の表面を、べろりと舐ってやれば、スコールの躰が判り易くぶるりと震えたのが伝わった。

 舌を絡めて、唾液を塗し、濡れそぼった感触のあるスコールのそれを啜ってやる。
じゅるり、とわざと音を響かせると、スコールはうぐうぐと唸りながら弱々しく頭を振った。
やだ、と言う訴えだったが、クラウドはスコールの後頭部と背中に手を回し、体を密着させて更に深くキスをする。


「ん、んむ…、んんぅ……っ!」


 スコールの腕が今一度クラウドを押し退けようと力を籠めるが、伸し掛かる重石の所為でバランスを崩した体が、ベッドへと倒れ込んだ。
するとクラウドはスコールの上へと覆い被さって、スコールの舌を吸い出す。


「んんぁ……、あ、ぷ……あむぅ……っ!」


 誘い出された舌がクラウドの咥内へと招かれる。
抵抗の術を知らないスコールは、素直にクラウドの咥内へと舌を入れてしまった。
クラウドは顎の力を加減して、痛みを与える事のないよう気を付けながら、スコールの舌の腹を甘噛みする。


「はんっ……!」


 固い歯の感触を得て、スコールの背中にぞくんっとしたものが奔った。
背中を抱いたクラウドの腕に力が籠り、覆い被さる男の体と、スコールの躰が密着する。
どくん、どくん、どくん、と逸る互いの鼓動が感じられて、それが益々互いの熱を高めていく。

 何度もクラウドが甘噛みしている内に、スコールの舌の動きはすっかり鈍くなった。
ひく、ひく、と震えるスコールの舌の根を、クラウドの尖った舌先が擽る。


「は、は……あぁ……っ」


 悩ましい声が喉の奥から漏れたのを聞いて、クラウドも堪らず鼻の孔が膨らむ。
下腹部の熱が更に固くなるのを感じて、そろそろ辛いな、と思った。

 クラウドがゆっくりと唇を開放すると、スコールの頭がかくんと落ちて枕に沈む。
恥ずかしさから抵抗していた腕は、いつの間にかクラウドの胸元を緩い力で握るだけになっていた。
キスが終わればその力も解けて、薄い胸の上へと落ちる。


「は……、は…っ…、あ……っ」
「……可愛い顔だな」
「…ふ…あ……見る、なぁ……っ」


 笑むクラウドの瞳の中に、蕩け切った自分の貌が映り込んでいるのを見付けて、スコールは両手で顔を隠した。
勿体無い、と呟いて、クラウドはその手首を掴んで退かせる。
涙と熱に溺れた蒼の瞳を、触れそうな程の距離で覗き込んで、クラウドは満足げに笑った。


「スコール。服、脱がして良いな?」
「や…あ……」


 スコールの返事を待たず、クラウドの手は既にスコールの服を脱がせに掛かっている。
スコールは拙い抵抗でその手を払おうとしたが、ゆらゆらと腕を振るだけの抵抗など、意味もない。
シャツが捲り上げられて、万歳の格好で腕も頭も抜けると、今度は下だ。


「膝を曲げて」
「…んぅ…う……」


 促すクラウドに、スコールはいやいやと首を横に振る。
しかし、クラウドの手がやんわりと太腿を撫でると、まるで操られるように、スコールの躰はクラウドの指示に倣う。

 膝を揃えて曲げると、クラウドの手がスコールのボトムにかかり、


「下ろすぞ」


 言い終えると、直ぐにクラウドはズボンを脱がした。
黒のボクサーパンツが晒され、その中心部が膨らんでいるのを見付けて、クラウドの口角が上がる。


「お前も今日は大変だったらしいな」
「んっ……!」


 言いながらクラウドの手が膨らんだ場所に触れると、ビクンッ、とスコールの肩が跳ねる。
噤んだ唇の隙間から、ふっふっと短く逸る呼気が漏れていた。

 クラウドはボクサーパンツも下ろすと、ズボンごとスコールの足から引き抜いた。
すっかり生まれたままの格好にされて、スコールは妙な肌寒さを感じてふるりと身を震わせる。
暖を求めてシーツを手繰り寄せている間に、クラウドも服を脱いで裸になり、もう一度スコールの上に覆い被さった。


「スコール」
「ふ…う……っ」
「寒いか?」
「んん……」
「大丈夫だ。直ぐ熱くなる」


 耳元で囁いたクラウドの言葉に、スコールの耳が赤らんだ。

 クラウドはスコールの浮き出た鎖骨にキスをして、皮膚を吸った。
ちくん、と小さな痛みにスコールの頭が跳ねる。
唇を離すと、其処には赤い鬱血の華が咲いて、スコールの白い肌の中で存在を主張する。
その様が無性にいやらしく見えて、クラウドは無意識に自身の唇を舐めていた。

 クラウドの手が細い腰を滑り、小ぶりな尻を捕まえる。
バスターソードを握る、厚みのある大きな手なら、包み込めてしまいそうな双丘を揉みながら、クラウドはスコールの首筋に顔を寄せた。


「う、ん……ふ……っ」
「汗の匂いがするな……」
「…言う、なぁ……あっ……!」


 すん、と鼻を鳴らすクラウドに、スコールはふるふると頭を振る。
恥ずかしがるスコールの声を聞きながら、クラウドは両手の指に力を入れて、スコールの臀部を揉みしだく。
肉付きの薄い尻に指先が僅かに食い込む度、ヒクッ、ヒクッ、とスコールの躰が跳ねた。

 クラウドは右手を双丘の谷間へと滑らせた。
見付けた秘部に触れると、あ、とスコールの唇から甘い音が漏れる。
明らかに期待を宿したその声に、クラウドが笑みを据えると、それを視界の端で捉えたスコールの顔が泣き出しそうに赤らんだ。


「クラウ、ド…ま、待て……っ」
「うん?」


 再度のストップの声に、クラウドは触れる手はそのままに、顔を上げる。
するとスコールは、手を止めて貰えると思っていなかったのか、虚を突かれた顔でクラウドを見返した。


「は…クラ、ウド……っ?」
「待てと言うから。それとも、続けようか」
「ん、うぅ……」


 ふるふる、とスコールは首を横に振った。
じゃあ待とう、とクラウドが言うと、スコールは、止めた割には離れるつもりのないらしい手の感触に感じ入りながら、


「お、一昨日、ヤったばっかりだろ」
「ああ」
「今日、疲れてる、し……」
「ああ」


 さっきも同じ話をしたな、と思いつつ、クラウドはスコールの言葉に一つずつ頷く。


「だ、だから…、今日は……っ」
「そうは言うが、お前も辛そうだぞ。これは、放っておいて良いのか?」
「お…俺は、別に……」
「ほう?」


 視線を逸らし、枕に顔半分を埋めながら言うスコール。
だが、その言葉を聞いて、クラウドは指先に触れるものの主張を無視せずにはいられなかった。

 すり、すり、とクラウドの指がスコールの秘部を擦る。
スコールは体を小さく震わせながら、その刺激に耐えていた。
しかし、───つぷんっ、とクラウドの人差し指が新入すれば、


「あうんっ!」


 思わず高い声が上がって、秘孔がクラウドの指を締め付けた。
まるで生き物のようにもぐもぐと蠢きながら絡み付いて来る内肉の感触に、クラウドは薄く笑みを浮かべながら、指を半分まで押し入れて行く。


「ああ、ああぁ……っ!クラウドぉ……っ!」
「もう此処まで入ったぞ、スコール」
「うぅん……っ!」


 第二関節まで入った指を、秘孔の中でそっと曲げてやれば、媚肉を圧された快感でスコールが悶える。
押した場所を指の腹でトントンとノックすると、ビクッ、ビクッ、とスコールの腰が震えた。


「あっ、あっ、あっ…!クラ、やめ…あっ!」
「気持ち良いか?」
「……っ!」


 クラウドの囁きに、スコールはふるふると首を横に振った。
嘘吐きだな、とクラウドが言うと、濡れた蒼の瞳がクラウドを睨む。
が、そんな眼光も、奥をくりゅっと穿ってやれば直ぐに蕩けてしまう。


「はうっ、んくぅ……っ」
「一度抜くか。その方がお前も楽になれる」


 奥を苛められる快感に、唇を引き結んで耐えようとするスコール。
クラウドはそんなスコールの上から退くと、隣に横になって、スコールを半身にし、自分に対して背中を向けさせた。
後ろから抱き込む格好になって、右手でスコールの秘部をくちくちと乱しながら、左手をスコールの前へ。
此処まで碌に触れられていない筈なのに、すっかり勃起して、鈴口から涙を流している雄を包み込む。


「やっ、触るな、あ……っ!」


 濡れた其処を大きな手に扱かれて、堪らずスコールの唇から声が漏れる。
響く声に慌ててスコールは片手で口元を覆うが、今更だ、とクラウドは思う。
しかしそうやって恥ずかしさに耐えるスコールの姿が愛しくて、クラウドは攻める手を止められない。

 スコールが滲み出していたものを掌で掬い、竿に塗るように擦り付けてやる。
ぬるぬるとした感触が滑りの助けになって、クラウドが少々強く扱いても、スコールが痛みを訴える事はなかった。
寧ろスコールの呼吸は更に早くなって行き、雄は膨らみを増して、刺激に対して敏感になって行く。


「あ、ん、ん……っ、ふ…ん……っ!」
「スコール、足を上げてみろ」
「や…そん、な…したら……見える……っ」
「ああ。見たいんだ」
「バカ、あぁ……っ!」


 クラウドの言葉に、スコールが顔を赤らめて睨む。
そのタイミングを狙って、クラウドはスコールの秘部に埋めた指を動かした。
くちゅっと音が鳴って、びくりとスコールの体が弾む。

 スコール、と耳元で名を呼びながら、クラウドは丸い耳朶を食んだ。
柔らかいような硬いような感触。
それを堪能しようと、耳の裏側に舌を這わせると、ゾクゾクとした感覚に襲われたスコールの躰が縮こまる。
クラウドはそんなスコールの片膝を掬い上げて、脚を大きく開脚させた。


「あ、う……、はぁ、あ……っ」


 自身を曝け出す格好にされて、スコールの躰は羞恥で熱が高ぶった。
連動して指を咥えた秘部がきゅうっと締め付けを強め、クラウドの指にぴったりと密着してしまう。

 ひく、ひく、と戦慄く肉の感触を得ながら、クラウドはもう一度スコールの中心部を包み込んだ。
根本を柔く握ると、細い腰が震えて、また陰部に埋めた指が締め付けられる。
肉壁をそっと指の腹で撫でながら、雄を上下に扱いてやると、スコールの体が判り易く強張って行く。


「や、あ、あ……っ!クラ、ウド…んっ、ぁあ……っ!」
「来てるな?スコール」
「は、はふっ、う…っ!ん、んんぅ……っ!」


 スコールの躰の事なら、クラウドは何でも判る。
背中を仰け反らせ、頭の天辺から足の爪先まで強張っている時は、絶頂が迫っている時のサインだ。
しかしそれを告げてやれば、スコールは真っ赤になって、ふるふると首を横に振る───のだけれど、


「大丈夫だ、スコール」
「う、んっ、んん……、んっ、ふっ、」
「イけば楽になるって、教えただろう」
「ふ、ふぅ、うぅ……っ!」


 耳元で囁くクラウドの声に、スコールの体は勝手に力を抜こうとしてしまう。
そうなると、刺激を与えられる度に背中に走るゾクゾクとした感覚がより明瞭になって、スコールは息を吸うのを忘れてしまいそうな程、荒い呼気を吐き出すしか出来なくなる。
雄を包み込んだクラウドの手が上下に皮膚を擦る度、腰が勝手にびくんびくんと跳ねて、我慢を忘れた蜜が零れて行く。


「はっ、ふっ、ふぅっ!クラ、んっ、クラ、ウドぉ…っ!」
「ああ。中が締まってきた」
「や、や……はっ、来てる…っ!来てる、から…ぁ……っ!」
「判ってる。もう直ぐだな」
「あぁ、あ……!ん、うっ、あぁっ…!クラウド……っ!」


 声を抑えようと努力していた筈のスコールの手は、いつの間にか背後の男に縋るものに変わっていた。
後ろ手に回された腕が、クラウドの腕を、肩を捕まえて、強く握る。
競り上がって来る衝動がより明確になって来るに連れ、縋る力はセーブを忘れ、クラウドの腕には爪が立てられていた。

 くちくち、くちくち、と言う音がスコールの陰部で鳴っている。
濡れる筈のない場所なのに、日々クラウドに抱かれている内に、スコールの其処はすっかり咥える準備をする事を覚えてしまった。
それがまだ性に初心なスコールには恥ずかしくて堪らない事なのだが、熱に溺れつつある少年の頭からは、そんな気持ちさえも抜け落ちていた。


「はっ、ああっ、クラウド…っ!もう、もうぅ……っ!」
「良いぞ、出せ。ほら、これで────」
「あっ────!」


 ぐりっ、とクラウドの指がスコールの直腸の壁の薄い場所を捉えた。
びくん、とスコールの躰が弾むと同時に、もう一息とクラウドの指が同じ場所をぐりぐりと穿れば、


「はっ、あっ、あっ!ああぁぁあ……っ!!」


 上擦った嬌声を上げながら、スコールの躰は絶頂を迎えた。
天井を向いた足の爪先がピンと張り詰め、ビクンビクンと弾むのが抑えられない。
クラウドの手に包まれた雄からは、びゅるるるっ、と勢いよく蜜が噴き出して、ベッドシーツに大きな染みを作った。
指を咥え込んだ秘孔は、ヒクヒクと小刻みに戦慄きながら、クラウドの指をきゅうきゅうと締め付けている。

 スコールは四肢を強張らせたまま、はふ、はふ、と拙い呼吸を繰り返す。
射精を終えた雄が柔らかくなって頭を下ろすが、クラウドがその根本に触れると、まだまだ熱は其処に残っていた。


「スコール」
「ふ…ふぁ……は…っ」
「少しは落ち着いたか?」
「あ……、あ……、」


 クラウドが耳元で囁き問いかけると、スコールはふるりと肩を震わせるばかりで、返事はない。
判っていた事だった。

 スコールが出したもので汚れたクラウドの手が、ひくひくと震える薄い腹を撫でる。
ぬるりとした感触が皮膚を舐めるのを感じて、スコールの体が捩られる。
その拍子に、咥え込んだままの秘部の中で、指が壁に擦り付けられてスコールは胎の奥が切なく鳴くのを感じた。

 秘孔を苛めていた指をゆっくりと抜いて行くと、スコールの体が寂しがって指を締め付けた。
吸い付き、密着して、もう一度中へと誘い込む動きを見せる秘園に、クラウドの唇に笑みが浮かぶ。


「スコール。気持ち良かったか?」
「あ…う……」


 やはり答えられない様子のスコールに、縋る媚肉の壁を指の腹で摩ってやると、細い肢体がビクンビクンと可哀想なほど正直に弾む。


「あっ、あっ!や、やぁ……っ」
「正直に言ってみろ、スコール。その方が楽になるって、前にも教えただろう」
「あう…うぅ……ん……っ」


 クラウドの言葉に、スコールは葛藤するように唇を噤む。
その堰を崩さんと、クラウドはスコールの中へとまた指を埋めて行く。


「ああぁっ、あっ、あぁんん……っ!」


 再びの侵入に、スコールの秘奥が嬉しそうに絡み付いて来る。
感じる事を、感じる為の強請り方を覚えてしまった体の反応に、スコールの僅かに残った理性が恥を感じていた。
クラウドはその理性を剥ぎ取ろうと、スコールの奥───一番奥には僅かに足りない場所を狙って、指を抜き出しして中を擦る。


「あっ、あっ、あっ…!そんな、所…あぁっ、ひっ、んんっ」
「スコール。ほら、素直になれ」
「はうんっ!ひっ、あっ、クラウド…っ、む、胸は、やだ…あぁっ!」


 クラウドの片手がスコールの胸の蕾を摘まむ。
不意の刺激にスコールの躰が判り易く跳ねた。


「体はもう正直だ。奥を擦ると、締め付けながら濡れて来る」
「や、濡れて、なんか……あぁ…っ!」
「音が聞こえるだろう?こんな風に……ぐちゅぐちゅしてるのが判るか?」
「はひ、はっ、あぁ…っ!やだ、やぁ…クラウ、ドぉ……っ!」
「足を下ろさないようにな。そう、上げたままだ。また勃ってきた、後ろしか触ってないのにな」
「はっ、はっ、ん、ああ……!だ、め、また…っ、また、来るぅ……っ!」
「来るって言う事は───判るな?スコール……」


 また迫る感覚に耐えてぶるぶると全身を震わせるスコールに、クラウドは囁きながら奥を掻き回す。
スコールの躰はいよいよ意思を喪って、背後の男が与える快感に悶えて右へ左へと腰を捩る。
浮かせた足は男の言いつけを守り、局部を曝け出した格好のまま、ビクビクと爪先を震わせていた。

 涙を浮かべた蒼の瞳が、懇願の光を宿して、クラウドを見る。
指が中を擦る度に、耐え難い感覚がスコールの全身を襲って、思考を絡め取って行く。
やがてそれは、スコールの既に形骸化していた理性をも押し流して、


「クラ、ウド……クラウド…っ、」
「うん?」
「きも、ち……きもち、いぃ……よぉお……っ!」


 そう言うのが正しいのだと、少年は教え込まれた。
そう答えるのが、楽になるのだと、クラウドに繰り返し囁かれその身に刻まれ、


(───同時に、もっと、気持ち良くなれる)


 クラウドのその目論見の通り、スコールの躰は告白と同時に一層の熱を帯びて艶を増す。
抱き締める男の腕の中で、彼が与える刺激を受け止める事を覚えた躰から、雄を食らう為の芳香が溢れ出してクラウドを誘う。

 蕩け切った貌を見せ、唾液塗れの舌を覗かせて喘ぐスコール。
指を咥えた秘部がきゅうぅっと締まって、指では足りない、もっと奥に来て欲しいと訴えた。
その媚肉を指で強く抉るように引っ掻いてやれば、


「あぁあっ!あ、あう……ああん……っ!」


 高い声を一つ上げて、スコールの雄がびくんっと跳ねた。
まだ頭を半分程度は下げたままだと言うのに、鈴口からぴゅうっと蜜が噴く。
続け様にクラウドが奥壁をぐりぐりと苛めてやると、スコールは腰をしきりにくねらせ、臀部をクラウドの手に押し当てるように突き出しながら悶え喘ぐ。


「あう、あっ、ひんっ!クラウド、クラウドぉ……!」
「気持ち良いか、スコール」
「ん、ん、いい……っ!きもち、いい、からぁ……っもっとぉ…!」


 クラウドの指の動きに合わせ、尻を上下左右に揺らして、スコールは強請る。
箍が外れて素直になった恋人の艶姿に、クラウドの熱もまた昂ぶり、自身が滾るのが判った。

 締め付けが増していく中、秘部に埋めた指を抜く。
にゅるん、と抜けた指にスコールが「あぁんっ!」と喘いだ。

 クラウドが服を汗の滲んだ服を脱ぎ捨てて行く間、スコールはベッドに身を俯せにして、ビクッ、ビクッ、と全身を震わせる。
体の内側から溢れ出す劣情を抑えられなくて、スコールは尻を持ち上げた格好で、腰を揺らす。
指の形に広がり、くぱくぱと伸縮を繰り返す恥部を突き出すスコールに、クラウドはごくりと唾を飲み込んだ。


「クラウド…クラウドぉ……、早く……っ」
「ああ。でも、お前の貌が見たいから、仰向けが良いな」
「ん……」


 くねくねと尻を振っていたスコールだったが、クラウドの言葉に、素直に従う。
縋るようにベッドシーツに掴まっていた手を離し、ころん、と転がって仰向けになった。


「足を開いて」
「う……んん……」
「膝、持てるか?」
「うん……」


 クラウドに言われるまま、スコールは閉じていた膝を割り、その膝を裏側から掬い上げて抱える。
スコールは背中を丸めて、蜜液で濡れそぼった陰部を見せつける恋人に、妖しい光を宿した魔晄の眼が雄を宿す。
それを見たスコールの唇から、はあ……っ、と興奮を隠さない吐息が漏れた。

 固く張り詰めたクラウドの雄が、スコールの秘孔に宛がわれると、それだけでスコールの躰がひくりと震えた。
待ち侘びたものが其処にあるのを、スコールは自身の抱えた脚の間から見詰めている。
クラウドはスコールの汗ばんだ太腿を捕まえて、ヒクつく媚壺の中へと自身を押し入れて行った。


「あっ、あぁあん…!ふ、うぅん……っ!」
「は……っ、スコール……熱いな……っ」
「あっ、クラウド、ぉ……っ!」


 太く逞しい雄肉が、自分の中に入って来る歓喜で、スコールの躰が震えている。
嬉しそうに絡み付いて来る内壁の持つ熱で、クラウドはただでさえ滾って已まない其処が、早々に爆発しそうになるのを歯を噛んで堪えた。

 スコールの中は狭くきついものだが、溢れ滲み出る腸液のお陰で、侵入そのものはそれ程苦しくはない。
寧ろ熟れた肉が艶めかしく蠢いて絡み付いては雄を揉んで苛めるので、クラウドは其方を耐える方が一入であった。
それはスコールも同様で、雄の侵入が深くになるに連れ、その逞しさと雄々しさに圧倒されてしまう。


「あ、クラウ、あぁあ……っ!お、大きい……んぁあ……っ!」
「は、はぁ……っく、スコール……見ろ……っ」
「ふ、ふぁ……あうぅん……っ!」


 クラウドの呼ぶ声に、スコールが瞑っていた目を薄く開ける。
すると、自分の尻とクラウドの腰がぴったりと密着し、彼の雄が根本まで自分の中に入っているのが見えた。
瞬間、胎の奥にクラウドの存在を感じ取って、ぞくん、と脳が悦びの聲を上げる。


「あふぅうう……っ!ク、クラウド、おぉ…っ!は、入ってる……クラウドが…奥までぇ……っ」
「は…はぁ……っ、スコール……、気持ち良いか……?」


 息を切らせながら、クラウドはスコールに覆い被さり、整った貌を近付けながら囁いた。
その声だけで、スコールはぞくんぞくんと背中が震え、


「きも、ちい……っ、クラウド…きもちいい……っ!」
「……っああ…俺も……!」


 答えた瞬間、それにクラウドが応じた瞬間に、スコールの意識は熱と悦で真っ白になった。
ふわりと意識が宙に浮くような幸福感があって、胎の奥で雌の本能が動き出す。

 ヒク、ヒク、と戦慄くスコールの腰を掴んで、クラウドが律動を始めた。
力強い腰遣いで、強く激しく、スコールの奥を突き上げる。


「あっ、あ、っあ!クラウ、ド、あっ、あぁんっ!」
「お前の中が、うねって、はあ…っ!絡み付いて来るぞ……!」
「はひっ、ひんっ、激し、い、すごいぃっ!」


 腰を打ち付ける音が広くはない部屋の中に響いている。
スコールの抱えた膝が、クラウドの動きに合わせて、ぷらぷらと揺れた。


「は、はあ、ああっ、んんっ!」
「スコール、キスを」
「ふ、ふ、んむぅ……っ!んっ、んっ、」


 クラウドに促されて、スコールは頭を持ち上げる。
クラウドが顔を近付ければ、スコールの方から唇が重ねられた。
揺さぶられながらなので、唇は触れては離れてを繰り返し、ちゅ、ちゅぷ、ちゅ、と唾液が触れ合う音が続く。

 クラウドが一つ強く腰を打ち付ける。
ずぷんっ!と奥を強く突かれて、スコールが声にならない悲鳴を上げた。
はくはくと音を忘れて戦慄く唇を、クラウドの方から捕まえる。
閉じられなくなった咥内に舌を捻じ込み、スコールのそれを絡め取れば、秘部がきゅううぅっと雄を締め付けた。


「んむ、んむぁ……、はむ、は、んんぁ……!」
「ふ、ん…ふっ、ふぅ……っ!」


 鼻息を荒げながら、クラウドはスコールの咥内を激しく貪る。
唾液塗れになった舌を啜れば、スコールは喉元からビクビクと舌を震わせて感じ入った。

 スコールの膝を抱えていた腕が解け、クラウドの首へと回される。
自由になった足もクラウドの腰へ絡み付いて、スコールは全身で縋り付く格好になっていた。
それを可愛い恋人の甘えと要求と受け取って、クラウドはキスをしたまま腰を動かし、スコールの躰の奥底を掻き回してやる。


「んぷぅうっ!うっ、うふぅ…っ!うぅんん……っ!」


 体中を余す所なく、骨の髄まで快感を与えられるのを感じて、スコールはクラウドに縋り付いたまま、ビクビクと四肢を痙攣させた。
二人の腹の間で、びゅくっ、びゅるっ、とスコールの蜜が飛び散る。

 果ての余韻の中にいるスコールの中を、クラウドは続けて擦り上げる。
太い雄が敏感な媚肉の中を前後に動き、固い頭が柔らかく捏ねられた壁を抉る。
クラウドは戦慄くスコールの舌を外へと誘い出しながら、長いキスを終えた。
途端にスコールの唇からは、あられもない声が上がる。


「はっ、あっ、はっ、はぁんっ!クラウド、だめ、らめ、あっ、あぁんっ!」
「お前が離さないんだ、スコール……!」
「はひっ、だっ、だって、ああっ!きもひ、い、んんっ!クラウド、クラウドぉおっ!」
「スコール、スコール、は、く……!また締まって……!」
「あっ、あっ、ドクドクしてる……っ!クラウド、イ、イって…!中で、あっ、んぁっ、おれの、なか、あ、あ、ああぁぁっ!」
「………っ!!」


 クラウドが歯を食いしばり、スコールの腰を手形が残る程に強く掴んだ直後、スコールの胎内で大きく張り詰めた雄が頭を震わせた。
どくん、どくん、と脈打つ感覚が具に伝わったと思ったら、熱い迸りがスコールの中へと注ぎ込まれる。

 熱くて濃いものが胎内を満たして行くのを感じながら、スコールは夢現に蕩けた貌を曝していた。
開きっぱなしの口から舌が覗き、飲み込めなかった唾液が口端から垂れている。
赤らんだ顔は涙と汗ですっかり濡れていた。
それを至近距離で見詰めるクラウドの唇からは、はあ、はあ、と未だ熱の冷めない呼吸が零れて、スコールの耳元を擽っている。

 ようやくの射精を終えても、クラウドの雄は未だスコールの中で固くなっていた。
熱を受け止めたスコールの胎内は、一層艶めかしく蠢き、咥え込んだ雄をもっと貪ろうとヒクヒクと震えて誘っている。


「……スコール…」
「……っあ……!」


 名前を呼ぶと、それだけでスコールの躰がビクンと跳ねた。
秘奥が咥えた雄を締め付け、ねっとりと絡み付いている。

 クラウドはスコールの涙で濡れた頬を撫でた。
茫洋としていた蒼の瞳がクラウドを映し、潤んで細められ、ピンク色の唇が「もっと」と囁いた。




 時計を見るのも忘れていたので、いつまで交わっていたのか、スコールは勿論、クラウドも覚えていない。
たっぷりと熱を共有し、クラウドが何度か果てて、その倍はスコールが絶頂して、心地良い疲労の中で意識を飛ばしたのが終わり。
それから当分の時間が経ってクラウドが目を覚まし、中々の有様となっていたベッドからスコールを抱いて抜け出して、自分の部屋へと移動してから程なく、スコールも目を覚ました。

 目を覚ましてから、スコールは不機嫌だった。
ベッドで一緒に横になっていたクラウドの顔を見るなり、背中を向けてしまう位にはご機嫌斜めだ。
しかし後ろから抱き締めるクラウドの腕を振り解こうとはしないので、クラウドは特に焦る気持ちもなく、臍を曲げた恋人を抱いてのんびりと過ごしている。


「今日はやだって言ったのに……」


 ぽつりと零れたスコールの言葉に、クラウドはふむ、と思考する。
確かに、嫌とはっきりとは言われなかったが、今日は余り乗り気ではなかったなと思い出しつつ、


「それなんだが。どうして嫌だったんだ?」


 今更ながら訪ねてみると、スコールが恨めし気な視線を向ける。
訊くならもっと前に訊けよ、とブルーグレイが若干腹立たしさを滲ませていたが、スコールは溜息を吐いた後で答えた。


「……一昨日もしただろ」


 もう三日前だろうけど、と日付が変わっている事を修正しつつ、スコールは続ける。


「こっちであんたとまた会えてから、……ヤってばっかりいる気がする」
(まあ、否定は出来ないか)


 スコールの言葉に、クラウドは自重していないからなと自分の行動を振り返りつつ開き直る。
何せ、クラウドにとっては二年ぶりの再会なのだ。
長い離別を越えてもう一度出会えた恋人を前にして、男の本能は馬鹿のように正直だった。
そんな自分をスコールも受け止めてくれるものだから、ついついクラウドはスコールの存在を確かめたくなる。

 それがスコールには少々鬱陶しかったりするのだろうか。
抱かれる側であるスコールの方が負担が大きいのも否めないし、やはりもう少し我慢を覚えるべきか───とクラウドが考えていると、


「あんたとするのは、……別に、嫌な訳じゃない。でも、する度に俺、変になるから……」
「変?」
「………」
「俺にはそうは見えないが。変と言うのは、どういう感じだ?」


 詳しく聞いてみようと訊ねてみると、スコールは口を噤む。
話が話だし、デリケートなスコールには言い難いか、と思っていると、スコールはベッドシーツを手繰りながら言った。


「……あんたとするの、どんどん、気持ち良いのが大きくなってる気がして。最近、あんたに触られるだけで、ゾクゾクするし。こんなの変だ。俺の体、おかしい……おかしくなる……これからもずっと、こんな調子だったら、俺、もっと……────」


 言葉尻が小さくなって行くに連れ、クラウドの眼に見えるスコールの項が、ぽかぽかと赤らんで行く。
それを見詰めながら、クラウドは彼の言葉の意味を考えて、ごくりと唾を飲んでいた。


(それは、つまり────)


 以前の闘争を終えて離別したクラウドと、この世界でもう一度出会えて、熱の赴くままに互いの体温を貪る日々。
動物的にも思えるその衝動は、重ねる度に強くなり、スコールの躰を作り替えていく。
まるでクラウドの求めに応じるように、彼の手で、声で、熱で与えられる快感に、日に日に敏感になって行く。
それは、良くも悪くも抑制的な性格をしており、まだ年若く成熟し切っていない青少年にとって、簡単には受け入れ難い事だった。

 しかし、再会できた恋人と共に過ごせる夜は、決して厭ってはいない。
だから今夜も、クラウドが部屋に来た時、その理由を薄ぼんやりと感じ取りながらも、追い出す事は考えなかったのだ。
クラウドが触れてきた時も、俄かの抵抗をして見せた位で、本気で逃げようとはしない。
ただ、そのまま受け入れるにはどうにも恥ずかしくて、言い訳をするように拙い抵抗をするだけだ。

 そして受け入れてしまえば、後は────最中のスコールの様子を思い出せば、よく判る。
触れられるままに感じて、溺れて、クラウドを求めずにはいられない。
始まるまで恥ずかしがっていた自分の事さえも忘れたように、クラウドが欲しくて欲しくて堪らなくなる。
そうして躰は益々クラウドを求め、いやらしくなって行く。
理性的な自分でありたいと願うスコールにとって、そんな自分のあられもない行いは、思い出すに耐え難いものがあるのだろう。

 ───だが、そんな話を聞いてしまったクラウドにしてみれば、赤くなる年下の恋人が益々愛しくて堪らない。
そんな気持ちは、それはそれは判り易くクラウドの体にも影響して、


「……クラウド?」
「ん?」
「……なんか…当たって……」
「うん」
「うんじゃなくて───あ、ちょ……!」


 待て、と今夜何度目になるか判らない制止の声は、此処でも役に立たなかった。




するのは嫌いな訳じゃないけど、する度にどんどん敏感になって気持ち良くなる事に抵抗がなくなっていく自分の事が恥ずかしく思ってるスコールが書きたくて。
そんなスコールが可愛くて可愛くて益々蕩けさせたいクラウドとか、そんなクラウドにリードされて恥ずかしいけど拒めないスコールとか。
クラウドはスコールにぞっこんですが、スコールも恥ずかしがってるだけでクラウド好きで好きで堪らない。
クラウドの手でどんどんやらしい子にされていくスコールを見たいと思ったのです(作文)。