あかいろ、夢幻


 相変わらず汚いな、と運ばれた先の部屋を見渡して、スコールは独り言ちた。

 男性メンバーは皆、それぞれ一人部屋を持っているが、スコールの部屋は、同じ女性のティナと同室になっていた。
その分、部屋の面積も男性メンバーの部屋に比べると、広い作りになっており、ベッドもセミダブルが二つ、クローゼット等も大きく、デザインの凝ったものが用意されていた。
スペースが広いとは言え、空間的にはやはりティナとの共同であるから、スコールは自分の持ち物の置き場などには非常に気を使っている。
潔癖症ではないけれど、散らかっているのは自分としても落ち着かないし、同室のティナに迷惑をかけるのも嫌だ。
ティナも自分の持ち物は自分のスペース───ベッドの上やチェスト等───にまとめているから、二人の部屋の中が必要以上に散らかる事はなかった。

 それに対して、男性メンバーの部屋は様々である。
一人部屋だから完全個人スペースだし、散らかろうが片付けようが、それは部屋主の自由である。
ウォーリア・オブ・ライトやセシルのように持ち物が少ない、または散らかる事を嫌う人物であれば、部屋の中はいつも整然としている。
対して、何かと貴重品や鉱物を持ち帰るジタン、なんでも持って帰って眺めるバッツ、貧乏性とマニア精神でついつい物を集める癖があるクラウドの部屋などは、いつもごちゃごちゃとしていた。
恋仲になってから週に何度かクラウドの部屋に来るようになったスコールだが、掃除しなくて平気なのか、といつも疑問に思う。

 しかし、クラウド曰く、これでも大分片付けている方だと言う。
スコールと恋人関係になる前は、特別他人を部屋に上げる必要もなかった為、もっと散らかっていたらしい。
恋人になったスコールが、自分の部屋ではティナがいるから嫌だ、と言うので、自分の空間に招く事になった時、大急ぎで片付けをしたと言う。
以来、せめてそれ以上に散らかる事はないようにキープをしているそうだ。
それにしてもスコールからしてみると、汚い、と言う印象になってしまうのだが。

 ぼんやりとベッド周りを見渡していたスコールの頭を、こつん、とクラウドが小突く。
こっちを見ろ、と言わんばかりの主張に、スコールが振り返ると、そのまま唇を重ねられた。


「ん……ふ、…」


 唇の形を舌でなぞられて、そっと隙間を開けば、直ぐに舌が中へと滑り込んできた。
頬に添えられた手に促されて上向かされ、咥内をねっとりと舐られる。


「ん、ちゅ…ふぁ……っ」


 逃げを打つ舌を絡め取られ、ぴちゃ、ちゅく、と水音が鳴る。
その傍ら、クラウドが細い肩を押してやれば、スコールは抵抗する事なくベッドに身を沈めた。

 溢れた唾液がスコールの口端から零れて伝う。
離れた唇の間を銀糸が光って、ぷつりと切れた。


「ふ、あ……」


 クラウドの大きな手が、布越しにスコールの胸の膨らみに触れる。
庇うものがない柔らかな感触に、クラウドがくすりと笑みを漏らす。


「ブラ、してなかったのか」
「……んっ…!」


 つん、と膨らんだ蕾を摘まれて、鼻にかかった声が漏れた。


「今日、外に…出る、つもり…なかった、から、……っ」


 スコールは昨日、聖域に戻って直ぐにシャワーを浴びた後、部屋に籠城した。
それから一夜が明けても、気分の落ち込みも回復しなかった為、ずっとベッドの上で蹲っていたので、薄手のシャツにスパッツと言う夜着のままだったのだ。

 クラウドは、片手で収まるサイズの柔肉を掌で包んで揉み始めた。
自分の手の形、指の形で歪むそれを見ていると、ぱしん、と頭を叩かれる。


「…どうした」
「見るな」


 真っ赤な顔で睨まれても、クラウドが応える筈もなく、


「……可愛いな」
「ば……んっ!」


 馬鹿な事を言うな、と言いかけた声は、頂きを摘まれた感覚の所為で、小さな嬌声に取って変わられた。
きゅ、くりゅっ、と薄布越しに乳首を転がされて、スコールは唇を噛んで声を殺す。


「ん、ぅ…ふっ……」
「脱がすぞ」
「……っ」


 シャツが捲り上げられて、外気に肌が晒される。
羞恥心からか、嫌がるようにスコールの手がシャツの端を掴んで抵抗されるが、クラウドは構わずにシャツを胸の上までたくし上げた。
慎ましい膨らみの上で、ピンク色の蕾がツンと膨らんで存在を主張している。

 もう一度、クラウドの手がスコールの胸を包んだ。
直に触れている手の温もりに、一日振りの安堵感を感じながら、胸の奥で鳴る鼓動に気付かれてはいないかと、スコールは緊張する。
クラウドは、ト、ト、と掌に伝わる早い鼓動を感じ取りつつ、優しい力で柔肉を揉みしだく。


「ぁ、ん…!あっ……!」


 皮の厚い指先が、ツンと立った乳首を掠める度、スコールの喉から甘い声が漏れる。

 クラウドの顔がスコールの喉元に寄せられた。
頬にかかる金糸のくすぐったさに、スコールが顔を逸らすと、耳の後ろにクラウドの唇が触れた。
ちく、と小さな痛みにスコールが眉根を寄せる。

 クラウドは、首筋に、鎖骨に、キスの飴を降らしながら、ゆっくりと頭の位置を下げて行く。
ツン、と尖った蕾の色に小さく笑みを漏らして、吸い付いた。


「あっ……!」


 ピクン、とスコールの体が跳ねて、白い喉が反る。
思わず出た声の高さに、スコールは顔を真っ赤にして掌で口を塞ぐ。
それをちらと上目に見た後、クラウドは右の乳首を指で、左を舌で転がし始めた。


「ん、んっ…や、ぅ……」


 乳輪の形をなぞるように舌で撫でられて、むずむずとした感覚がスコールの背を昇る。
膨らみが硬さを帯びるに連れ、スコールの感度は上がって行き、指先で乳頭をピンと弾かれるだけで彼女の体震えてしまう。

 クラウドが乳首を口に含んで、ちゅぅ、と強く吸い上げると、また高い音が漏れる。
そのまま柔らかな乳房を下から掬い上げるように揉む。


「は、う……ん、やぁ…っ」


 尖らせた舌先で乳首の先端をぐりぐりと刺激して、軽く歯を立てる。
固い感触に緊張したように、スコールがびくん、と身を縮めたのが判った。

 右の乳首をきゅっと強く摘まんで引っ張り、左の乳首を強く吸う。
敏感になった乳首への連続する攻めに、スコールは堪えるようにシーツを手繰り寄せて強く握り締めた。


「あ、っあ…、んぁっ…!ふ、ぅ……」


 唇を放せば、唾液で濡れそぼった乳首が切なげに震えて、クラウドは誘われるようにもう一度舌を這わした。
反対の乳首からは手を放し、くびれのある細い腰をゆったりと撫でて、少女の下肢を隠す薄布に指をかける。


「あ、や……!」


 するり、と下肢を布が滑って行く感覚に、スコールは沸騰しそうな程に顔を赤く染める。
ぴったりと肌にフィットしていた布がなくなって、小さな白いフリルがあしらわれた、シンプルなショーツが露わになった。


「お前が履くにしては、随分可愛いな」
「煩い!これは、ティナが…た、たまにはこういうのもって言うから……」


 真っ赤な顔で睨んで口早に言うスコールに、クラウドは「だろうな」と小さく呟いて、ショーツのクロッチに指を這わした。


「んっ……!」
「濡れてるぞ」


 しっとりと湿った感触に、クラウドはくすりと笑みを漏らす。

 布越しに指を押し付ければ、くっきりと淫筋が浮かび上がる。
擦り付けるように指を上下に動かすと、クロッチの沁みが広がり、薄らと内側の淡色が透け始めた。


「ふ、くぅん……んっ、ん……っ」


 もどかしそうに膝を擦り合わせるスコールの姿に、クラウドは己の熱が昂って行くのを感じていた。
指を突き立てて淫部の口を押してやれば、は、とスコールの唇から甘い吐息が漏れる。
そのまま、ぐりぐりと指の腹でクロッチを押してやる。


「あ、あ、やっ…!は、んん…んあっ…!」


 ぴくっ、ひくっ、とスコールは細い腰を戦慄かせて悶える。
布越しの刺激でも、敏感な彼女の身には耐え難いもので、下着越しに秘部がどんどん湿って行くのが判った。

 シーツを握っていたスコールの手が、クラウドの肩を掴んで、引き寄せる。
ふるふると小さく頭を振る彼女の訴えを察して、クラウドは両手をショーツのサイドに差し込んで、ゆっくりと引き下ろして行く。
男の前に晒された彼女の陰唇からは、とろりとした蜜が糸を引いていた。


「や、う……見るなっ…」
「無理だな。見たい」


 赤い顔で睨むスコールを正面から見返して、クラウドは言った。
益々スコールの顔が赤くなる。

 膝に絡ませていたスパッツごとショーツを脱がせて、白い太腿を押して足を開かせる。
そうしてクラウドは、太腿の内側に小さな傷痕が残っている事に気付いた。


「これは?」
「……?」
「此処の、傷」


 抱えた太腿に舌を這わして場所を示す。


「やっ…舐め、るな……っ」
「それで、これ、どうしたんだ?」
「ん…!知、らない……あっ!」


 傷のすぐ傍に、ちゅ、と吸い付く。
ビクッと白魚のような足が跳ねるのを見て、クラウドは気を良くした。


「この前はなかったから…昨日か?掠ったのか、ぶつけたのか…」
「ふ、や、…んっ!やぁん……!」


 殆ど消えている、よくよく見なければ気付かない程の小さな傷。
それの形をゆったりと舐めてなぞりながら、クラウドは太腿の裏側から膝の裏まで手を這わした。
其処に傷の痕跡がないか、確かめるように。


「痛いか?」
「あ…っ、んっ……んん…」


 ゆっくりと撫でられる感覚に身を震わせながら、スコールは痛くない、と首を横に振る。


「他に、何処か。傷、あるか?」
「ん、ん……だから、知らないっ…て……や、あっ…!」


 クラウドは、スコールの尻がベッドから浮く程に膝を押し上げてやった。
腰を突き出して、淫部を曝け出す格好になっている事に気付いて、スコールが嫌、と涙の滲んだ目でクラウドを見詰める。


「他に傷がないか、確かめような」
「い、いらないっ!」
「言っただろう?お前が傷付くのが嫌なんだ。だから他に怪我した所がないのか、ちゃんと確認しないと不安なんだ」
「こんな状況で言われたって、嬉しくない!」


 押し上げた足の間から覗き込んで、にやついた笑みを浮かべて言う男に、スコールは叫ぶ。
噛み付きそうな勢いのスコールだが、主導権は完全にクラウドに奪われていて、じたばたと膝下を暴れさせるのが精々であった。

 羞恥心で憤死しそうなスコールの顔を眺めながら、クラウドはスコールの腿に手を這わせた。
白いシーツの上で、尚白く映える細く淫靡な肢体に、クラウドは愉悦の篭った双眸を細める。


「は、…あ、…やぁ……」


 じっと検分するように、爪先から秘部からを眺められて、スコールの胸が上がる呼吸に合わせて上下する。

 とろ……とスコールの秘口から蜜が零れるのを見て、クラウドはくすりと笑った。


「見てるだけなのに、感じてるのか?」
「んぅ……や、ぁん…」


 ふるふると頭を振るスコールだったが、躯の熱は彼女の意思を無視して高まるばかりだった。
それを示すように、彼女の白い肌はほんのりと赤らみ、覚え込んだ熱を欲しがるようにヒクヒクと淫部が痙攣していた。


「怪我、他にはないみたいだな」
「んぅ……や、クラ、ウドぉ……」


 甘えるようなスコールの声があって、細い腕がクラウドに向かって伸ばされる。
前髪を掠める彼女の手に頬を寄せれば、スコールは心なしか安心したように表情を綻ばせた。

 クラウドは、スコールの膣口に顔を寄せた。
あらぬ場所へと突き刺さる視線に、スコールは赤い顔を腕で隠して肩を震わせる。
ヒクヒクと伸縮する其処に指の腹を当てて、ゆっくりとなぞれば、甘い声が零れた。


「あ、あっ…!」
「触ってないのに、びしょびしょだぞ」
「や、言うなぁ……んん…っ!」


 クラウドは二本の指でスコールの陰唇を広げ、くぱくぱと伸縮する其処に舌を乗せた。


「あっ、くぅん……!」


 直接触れられる快感に、悩ましい声が響く。
クラウドは彼女の蜜で濡れた膣口に舌を入れ、解すように舌先を動かしながら、奥へ奥へと挿入させていく。
スコールは淫部を押し広げる艶めかしい生き物の感触に、背を仰け反らせて嬌声を上げる。


「は、だめ、やぁ…!ん、あっ…!」


 ちゅぷ、ちゅく、と淫水音が鳴る度に、スコールの体がビクッビクッと跳ねる。

 クラウドは丹念に内壁を舐めて唾液で濡らし解すと、舌を抜いて人差し指を挿入させた。
ぬぷ……と入り込んでくる異物感に、スコールが眉根を寄せたものの、痛みを堪えている様子はない。


「や、ぁん……クラウド…あっ、あっ、」


 挿入させた指を曲げて内壁を圧迫する度、スコールの躯は素直に反応を示し、クラウドの目を楽しませる。
それを暫く堪能しても良いのだが、クラウドの下肢も既に痛いほどに張り詰めていた。


「この辺、だったな?」
「ん……────あぁっ!」


 クラウドの指が内壁の上部を押し撫でると、ビクン!とスコールの躯が強く跳ねた。
そのまま一点のみを撫で、爪先で擦るように刺激してやれば、甲高い声が部屋に響き渡る。


「あ、あ!や、そこっ…そこは…!」
「指、痛い位締め付けてるぞ」
「だ、ってぇ……あっ、あんっ、は、…ぁあん!」


 ぐりぐりと壁を押し抉られる感覚に、スコールは爪先を丸めて全身を強張らせた。
青灰色の瞳はすっかり熱に侵食され、恍惚に似た表情を浮かべている。


「やぁ、あ、ひっ、ひぃんっ!ふぁ、んん、くぅん…っ!」
「もういいか…?」
「ふ、ふあ…は、クラウド、クラウドぉ……っ」


 確かめるように呟いたクラウドに、スコールが繰り返し切なさを訴える。
奥へと欲しがる内壁を振り切って指を抜くと、クラウドの指にはスコールの蜜液がねっとりと絡みついていた。
それをスコールに見せつけるように翳すと、スコールは赤い顔で目を逸らすが、彼女が自分の有様にさえ興奮しているのは明らかだ。

 クラウドは自身の下肢を寛げると、スコールの足を肩に乗せ、濡れそぼった陰唇に肉棒を宛がった。
ヒクヒクと物欲しそうに痙攣するそれに先端を擦り付ければ、スコールの腰が先を促すように揺れ、伸ばされた腕がクラウドの首に絡まった。


「も、…早く……ぅ…」


 早く感じたい。
早く確かめたい。

 耳元で囁かれたその声に、クラウドはゆっくりと腰を押し進めた。
にゅぷ…と太い部分がスコールの秘口を押し広げ、内壁が奥へ奥へと誘うようにクラウドの雄を締め付ける。


「あ、あっ、ああっ…!や、んん……!」
「ふ…熱いな、スコールの中……」
「く、クラウド、も…あつ、おっきぃ……あぁっ!」


 内部で膨らんだ熱の塊に、スコールは思わず声を上げる。
同時にスコールの内壁は更に強く締まり、食い千切らんばかりにクラウドの雄を締め付けた。


「く、スコール…っ、きつい……!」
「やあ、あっ、抜いちゃっ、だめぇ…!」


 思わず腰を引きかけたクラウドに、スコールは全身でもってしがみ付く。
その拍子に雄が彼女の奥へと進み、スコールは圧迫感と充足感で甘い悲鳴を上げた。

 いつも中々甘えて来ない恋人の思わぬ行動に、クラウドは目を瞠っていたが、その間もスコールはクラウドにしがみ付いたまま離れようとしない。
淫部はきゅうきゅうとクラウドを締め付け、まるで離したくない、と訴えているかのようだった。


「スコール、」
「やだ、やだ、やぁ…あっ、あっ、もっと…もっと、奥、ぅ…!」
「そういうのは、嬉しいんだけどな……」


 急かすように甘える恋人に、ちょっと待ってくれ、と言うクラウドだったが、スコールは聞かなかった。
夢中になって縋る少女の背を抱いて、クラウドは身を起こす。
スコールはクラウドの雄を咥えたままで膝上に下ろされて、自重で膣の最奥まで男を受け入れる事となる。


「あっ、ふあぁあぁんっ!」


 スコールはクラウドの首を抱くようにして齧りついた。
小さい、柔らかな乳房がクラウドの顔に埋められる。
クラウドはツンと尖った乳首に顔を寄せ、吸い付きながら、下から突き上げるように腰を動かした。

 ずちゅっ、ぐちゅっ、と言う淫らな音と、スコールの甘い悲鳴が部屋に反響し、ベッドのスプリングの音が煩く鳴る。


「は、あっ…あっ、あん…!も、もっと、クラウド、もっとぉ…!」
「ん、ちゅ…ふっ、んん……」
「あっ、あっ、胸、やぁっ…!んぁ、あん、あっ、あっ、」


 じゅる、ちゅう、と音がする程に乳首を吸ってやれば、連動するように秘口がクラウドの雄を締め付ける。


「んぁ、もっと、もっと、あ、あ、」
「っは……随分、甘えたがり、だな…っ」
「う、ん、……だ、め……?」
「いいや」
「────ひぅんっ!」


 ぐちゅんっ!とクラウドの雄がスコールの膣内を貫いて、奥壁にぶつかった。
其処をゴツゴツとノックするように突き上げられて、スコールはクラウドに縋り付いたまま、前後不覚に陥っていた。


「は、あ、あっ!奥、奥ぅっ…!当たって、るぅ……!」
「でも、ちょっと…動きにくい、かな。ちょっとだけ離れて、いいか?」


 ちょっとだけだから、と囁くクラウドだったが、スコールはいやいやと子供のように首を振って、益々強い力でクラウドに縋る。

 甘えたくても素直に甘えられない、そんなスコールが全身で甘えてくる姿は、とても愛しくて、可愛らしいと思う。
夢中で求めて来る事も嬉しいし、そうして見られる痴態にも興奮する。
反面、どうしてこんなに甘えてくれるのか───増して昨日スコールを怒らせたばかりだし───疑問に思えて、「どうした?」とクラウドは訊ねた。


「あっ、あっ、んぁ、もっと、もっと…は、クラウド、ん、んあ、」


 しかし、スコールは快感を追い駆ける事に夢中になっていて、クラウドの問いに応える余裕はない。
止む無くクラウドが律動を止めると、スコールはなんで、と言う表情でクラウドを見詰めた。


「ん、ぅ…くら、う、どぉ……」
「質問、答えてくれたら続きだ」
「ふぁ……」


 意地の悪い笑みを浮かべてキスをすれば、スコールははくはくと唇を戦慄かせた。
スコールが腰を動かすと、くちゅ…と淫部で音が鳴ったが、クラウドがスコールの腰を抱いた為に、それ以上の快感を得る事は出来なかった。

 続きを欲しがって見詰める蒼を見返すと、スコール赤い顔でぽつりと言った。


「お、俺、も……」
「ん?」
「俺も、…確かめ、たい、…から…ぁ…っ」


 ────昨日のあの出来事から、今の今まで、ずっと拭いきれない幻視が、本当に幻である事を。
今此処にある恋人の体は、何一つ失われる事なく、自分の傍にある事を。

 確かめたいから、繋がりたくて、確かめたいからもっと深くまで交わりたい。

 途切れ途切れにそう言って、スコールはクラウドを見詰める。
熱の篭った潤んだ瞳が欲しがっているものを、クラウドはきちんと理解して、スコールの細い背中を抱き寄せ、律動を再開させた。


「あっ、あっ、ああっ!クラ、ウドぉ、あっ…!は、げし…!」


 雄が抜ける限界まで引いて、最奥まで貫いて、引いて、貫いて。
繰り返される激しい抜き差しに、スコールはされるがままに揺さぶられる。


「は、あんっ、あんっ!あ、クラウド、もっと、んあっ!」
「もっと?」
「もっと、もっと、…ひぃんっ!あん、あっ、はっ…!んく、んん、ふぁん…!」


 ずちゅっ、ずちゅっ、とクラウドの肉棒が内壁を擦り、突き上げる快感に、スコールは言いようのない幸福感を感じていた。
同じようにクラウドも、縋る少女の腕に、耐え難い愛しさを感じて、喘ぐ彼女の唇を捉まえてキスをする。


「ん、んっ…、んく、ふぅん…!…ふぁっ、あっ…!」
「は…ん、スコール……もう、出すぞっ…!」
「ん、うん…っ、来てっ、クラウド、来て、はっ、あっ、あっ、」


 律動のリズムが早くなり、秘奥をゴツゴツと突き上げられて、スコールの腹がヒクヒクと震える。
己の内部で膨らんでいく熱の塊にを感じながら、スコールが一際甘い悲鳴を上げると、クラウドが限界を迎えたのは、ほぼ同時だった。





 スコールが目を覚ました時には、体はすっかり清められており、気だるさと腰の痛みが残っているだけだった。
一糸まとわぬ格好でシーツだけを巻き付けた格好でも、寒さを感じる事はなく、それは自分を抱き締める男の腕のお陰だと直ぐに気付いた。

 抱き寄せられていた胸板は厚く、やはり、女である自分とはそもそもの構造からして違う生き物である事が判る。
以前はそれが恨めしく思えた事もあったが、こうして抱かれている今は、恋人の逞しさや力強さが感じられる気がして、安心している自分がいた。


(……弱くなってるな……)


 失う事に怯えて情緒不安定になったり、クラウドがいないと恐怖で頭が一杯になったり。
クラウドと一緒にいると安心すると言うのは、反面、彼が傍にいてくれなければ自分が自分でいられなくなる、と言う事を示していた。
クラウドの全身に穴が開くような幻視に捉われたのも、その弱さの証明を突き付けられたようなものだった。

 けれど、そんな自分を自覚しても、スコールはクラウドから離れる事は出来ない。
捨てた筈の“女”に戻って行く事に、戸惑いは拭えないけれど、嫌悪と呼ぶ程のものはなかった。
それは多分、クラウドがこうして包み込んでくれるからだろう。

 自分を抱き締める男の腕に、そっと触れる。
魔女の矢を受けて開いた穴は、其処にはない。
けれど、きっとまた、クラウドが傷を負う日は来るのだろう。
此処は戦場だから。

 ふる、とクラウドの長い睫が震えて、瞼がゆっくりと持ち上がる。
至近距離で碧眼に見つめられて、スコールの心臓の鼓動が早くなった。


「……起きたのか」
「……ああ」


 ついさっき。
付け加えて言うと、そうか、とクラウドは言った。


「体、辛くないか」
「……辛い。腰が痛い」
「悪い」


 宥めるように髪を梳かれて、額にキスされる。
宥めて誤魔化されているような気がするが、今だけはいいか、と思う事にした。

 とす、とスコールがクラウドの胸に顔を乗せると、武骨な手が頬を撫でた。
それを甘受しながら、スコールは呟く。


「……クラウド。…悪かった」


 詫びの言葉に、クラウドが「ん?」と首を傾げる。
そんな彼の頬に薄らと残る痕に、スコールはそっと手を重ねた。


「勝手に怒って。…殴って。……ごめん、なさい……」


 語尾が小さくなって、叱られる事に怯える子供のように縮こまるスコールに、クラウドはくすりと笑う。


「気にしてない。俺の方こそ、不安にさせて悪かった」
「そんなの……」
「ああ。ありがとう」


 クラウドの所為じゃない、と続く筈だった言葉は遮られて、額の傷に柔らかなキスが触れた。
それをスコールが大人しく受けていると、次は頬にキスが落ちて、それから唇が重なった。

 スコールの腕がクラウドの首に回されて、口付けが深くなっていく。
丸一日顔を合わせられずに不足した温もりを取り返すには、まだまだ足りない。

 スコール、と呼ぶ声が、いつか消えない事を願いながら、熱を与える手に身を委ねた。




好きになれば好きになるだけ、幸せだと思う分だけ、スコールって不安になると思う。
それもひっくるめて、クラウドに幸せにして貰えば良い。