溺れる指先、溶ける息


 クラウドが目を覚ました時、秩序の聖域一帯はしんと静まり返っていた。
賑やか組の誰か一人でもいれば、何処からかその話声や、それに相槌を打つ仲間の気配があるものだが、今日はそれもない。
かと言って、秩序の戦士達に何か起きたと言う訳でもなく、昨日今日とクラウドだけが非番として聖域の守りについているに過ぎない。

 聖域に置いて、静寂の中で目覚めると言うのは、久しぶりの事だった。
聖域に誰かがいれば、朝食に下りて来ないクラウドを誰かが起こしに来るし、それでなくともクラウドの部屋はよく賑やか組の突撃対象になっている。
遠征先で色々な物を拾って帰って来ては、モーグリショップに持って行かずに溜め込んでいる為、ジタン曰く「お宝の匂いがプンプン」しているらしい。
それに興味を持った面々が、折についてはやって来て、色々と探って行くのだ。
その都度、彼等は、クラウドすら忘れていた拾い物を見つけ出したりしているので、行き過ぎた空き巣行為等に走らなければ、クラウドは好きにさせる事にしている。

 そんな訳で、何かと賑やかなクラウドの身辺であるが、彼自身は静寂も嫌いではない。
とは言え、日常的に賑やかさが傍にあるからだろうか、ふとした静けさと言うものが少し落ち着かなくも感じる。
遅めの朝食をもそもそと食べながら、そろそろ誰か帰って来るかと思っていた頃、屋敷の扉が開く音が聞こえた。

 食べ掛けのパンを皿に置いて、リビングを出る。
直ぐ傍の玄関を見ると、玄関扉に寄り掛かっているスコールの姿があった。


「スコール」
「……あんたか」


 声をかけると、スコールは視線だけを此方に寄越した。
疲れていると全身で示す細い躯は、ジャケットのあちこちが煤けていて、ガンブレードの所為だろう、火薬の匂いも残している。
然程遠くはない過去に、戦闘があったのは想像に難くない。


「かなり疲れているようだが、大丈夫か?傷は?」
「問題ない。歩き疲れただけだ」
「確かジタンとバッツと一緒だっただろう。他の二人は?」
「……歪の中で逸れた」


 歪の中で仲間と逸れてしまうのは、儘ある事だ。
歪の中が不安定な空間と言う事もあり、特に次元城などでは次元の歪みが起こり易い。
歪内でこれに巻き込まれると、中にいる戦士達は強制的に何処か別の場所へと転送される。
テレポが使える人間なら、歪みが広がり切る前に外へ脱出する事も可能だが、魔法が使えない者は天運に任せるしかない。
これで見覚えのある場所に転送されるならまだ良い方で、何処だか全く判らない場所に送られる事も少なくなかった。
同行者とバラバラに離されてしまう事も多いのも辛い。
しかし、転送先で悲観している暇はなく、混沌の戦士やイミテーション、魔物に襲われる前に、早く仲間と合流するか、帰投の当てのある場所まで速やかに移動しなければならない。

 今回のスコールも、通例と言えば通例通り、歪内の変調によって、ジタンとバッツと引き離されて転送された。
転送された場所はアース洞窟のある三角島であったと言う。
不幸中の幸いは、此処には一つだけテレポストーンが確認されている事だ。
スコールは、三角島の端の浜辺へ転送された後、ほぼ逆位置にあるテレポストーンへ向かって島を半周した。
その後も順調とは言い難く、屯する魔物の群れを避ける為に道を迂回したり、地形の変動で通れなくなった道の代わりを探したりと、想定よりも遥かに長い距離を一人歩き続けて、今ようやく帰還したと言う所だった。


「大変だったな。お疲れ」
「……ん。ジタンとバッツは戻ってないのか」
「ああ。二人だけじゃなく、他の皆もまだ帰っていない」


 屋敷の中の静寂の理由を聞いて、そうか、とスコールは呟いた。
その横顔が、心なしか寂しそうに見えて、クラウドはこの場にいない二人の賑やか組にこっそりと妬く。
その気持ちは隠して、クラウドはスコールの埃を被った髪をくしゃりと撫でた。


「そう心配しなくても、あいつらの事だ、直に帰って来るさ。取り敢えず、お前は風呂に入ってゆっくり休め」
「…別に心配なんかしてない」


 クラウドの言葉に、スコールは微かに頬を赤らめて言った。
頭を撫でる手を払い除けると、憮然とした顔で風呂場へ向かう。
素直になれない恋人に、可愛いな、と思いつつ、クラウドはリビングへと戻った。




 クラウドが食事を終え、食器を片付けた所で、風呂上りのスコールがリビングに来た。
いつもならきちんと乾かしてからリビングに来る髪が、今日は濡れたまま、タオルを被せているだけ。
屋敷にクラウドしかいない事、疲労疲れで帰って来た事で、身嗜みを整える気力もないのだろう。

 ふらふらと、見るからに重い足取りでソファに向かったスコールは、そのまま四人掛けのソファに倒れ込んだ。
此処まで疲労している時、いつもなら風呂上りには自室に引き籠るスコールであるが、今日は階段を上るのも面倒なようだ。
屋敷にいるのがクラウドのみであり、可惜な襲撃を警戒する必要が無いと言うのもあるだろう。

 クラウドはキッチンに戻り、冷蔵庫を開けて、桃のコンポートが入ったビンを取り出した。
三切れをフルーツ皿に移して、フォークと一緒にソファへ運ぶ。


「スコール、桃、食べるか?」
「……食べる」


 クラウドがローテーブルに桃を置くと、スコールはソファに投げ出していた体をのろのろと起こした。
疲労し切った体は、起き上がるだけでも面倒臭がっていたが、甘味は体力回復にも良い。
歩き通しで腹も減っているし、空っぽの胃袋がスタミナ源を求めているのも確かだった。

 いつもティナが抱えているモーグリ柄のクッションを抱いたまま、スコールは桃のコンポートに手を伸ばす。
フォークに実を差して口に運び、一口齧る。
もくもくと顎を動かして食べるスコールに、クラウドは隣に座って、


「美味いか?」
「……ん」


 このコンポートは、フリオニールがスコールからレシピを教わって作ったものだ。
フリオニールは保存食としての砂糖漬けの果実は知っていたが、こうした趣向品に当たるものは知らなかったようで、スコールやジタンから菓子類のレシピを教わっては、料理試しのように菓子作りに勤しんでいた。
スコールから教わるレシピは、分量も細かく指定されており、フリオニールもこの手のものには几帳面な所がある為、余程の事がなければ失敗する事もなく、美味い菓子が出来ている。
甘いものは若い戦士達の休息にも役立っており、特にティーダやティナが美味しい美味しいと言って食べるので、フリオニールは益々興が乗って、保存の利くものはまとめて作り置きするようになり、彼が不在の時でも、欲しい者は好きに食べる事が出来るようになった。

 スコールが教えたコンポートのレシピだが、やはり作る人間の趣向によって、多少の味の違いは出てくるものだ。
フリオニールは存外と甘いものが好き───と言うより、彼の世界では砂糖自体が貴重であった為、その反動もあって、甘いものへの執着が強いのだろう───なので、このコンポートも、教えたレシピに比べると砂糖が多目になっている。
しかしスコールも、甘いものは案外と好きだ。
あまりはっきりと思い出せないが、自身も幼い頃は、甘いものは特別な時にしか食べられなかったような気がする。
フリオニールのように極端に甘味に執着する事はないが、菓子類は決して嫌いではないし、特に疲労した時等は、好んで甘いものを口にする。

 元々大振りの桃を四つ切にして煮込んだだけなので、スコールの小さな口には、桃の切り身は大きかった。
それでも、スコールはもくもくと食べ薦め、気付けば皿には桃が一切れ残るのみ。
その桃にフォークを差そうとして、ぴたりとスコールの手が止まる。


「……あんたも食うか」


 自分ばかりが食べている事に気付いて、少し気不味くなったのだろう、スコールは隣に座っているクラウドに訊ねた。
クラウドは一瞬虚を突かれた気分で目を丸くしたが、スコールの気遣いであると察すると、小さく笑みを零し、


「いや、俺はさっき飯を食ったばかりだから。全部お前が食べれば良い。それはまだ冷蔵庫にもあるしな」
「……そうか」


 それなら、とスコールは最後の桃にフォークを差した。
噛み切った果実が、スコールの口の中で転がり、頬袋が膨らむ。
先に食べた二切れで、気力も少しは回復して落ち着いたのか、食べる速度はのんびりとしたものだ。
桃の味と、シロップになった果汁の甘さを堪能するように、スコールはゆっくりと桃を噛んでいる。

 クラウドは徐に、スコールの膨らんだ頬袋を指で押した。
平時は専ら鉄面皮だからか、あまり柔らかくないように見えるスコールの顔だが、こうしてみると大福のような感触がある。


「……?」


 突然頬を突かれて、スコールは眉根を寄せてクラウドを睨んだ。
なんだ、と言いたげなスコールだが、口の中にはまだ桃がある。
躾が良いのか、食べ物が口に入っている時には先ず口を開かないので、クラウドは彼が黙っているのを良い事に、つんつんとスコールの頬袋を突いて遊んでいた。

 スコールは眉間に深い皺を寄せたまま、もくもくと桃を噛んでから飲み込むと、改めてクラウドを睨む。


「……鬱陶しい」
「ああ、悪い」
「何がしたいんだ、あんた」
「いや、特に何も」
「………」


 笑みを梳いたままで応えるクラウドに、スコールは益々不可解そうな表情を浮かべる。
が、考えが読み取れない事を、余計に悩んでも仕方がないとでも思ったか、それ以上言及して来る事はなかった。
ただし、また突かれては堪らないとは思ったようで、スコールは最後の桃を口に入れると、明後日の方向を向いてもぐもぐと噛み始める。

 クラウドはそのまま、背を向けたスコールの後ろ姿を眺めていた。
濡れた髪に乗せていたタオルは、ずり落ちて首にかけられた状態だ。
水分を含んだ髪の毛の先が、白いタオルの上で少し散らばっている。
我知らず伸ばしたクラウドの指が、濃茶色の髪をくすぐると、気配を感じ取ったのか、スコールが嫌がるようにゆるゆると頭を振り、


「あんた、本当に何がしたいんだ?」
「いや、特に何も」


 先と同じ台詞をそのまま繰り返してやると、スコールからじっとりとした視線が向けられる。
意味の分からない事は止めろ、と言わんばかりの強い視線であったが、クラウドは気にせず、スコールの後ろ髪を指で弄る。

 スコールはフォークを皿に放ると、クラウドに触られている首を隠しながら、ソファの端へと逃げた。


「もう止めろ。痒くなる」
「くすぐったいの間違いじゃないか?その辺り、お前はかなり敏感だからな」
「判ってるなら触るな」
「判ってるから触りたくなるんだろう」


 三度手を伸ばしてきたクラウドに、スコールは抱えていたクッションを投げつけた。
顔面に当たったクッションだが、綿は大したダメージを与える事もなく、ソファの足下へと落ちる。

 伸びる手から逃げようと躯を仰け反らせるスコールだが、背中は既にソファの肘掛に当たっている。
このまま仰け反り続けていれば、頭の重さで体勢が崩れ、後ろへ落ちてしまうだろう。
それが判っているから、スコールもそれ以上逃げる事は出来ず、あっさりとクラウドの手に捕獲される。


「離せ!」
「断る。良いだろう、偶には。誰もいないんだから」
「そう言う問題じゃない!」


 恋人になってそれなりに長い時間が経っているのに、未だにスコールはスキンシップを嫌がる。
正確には照れているだけなので、クラウドはじたばたと暴れるスコールを離そうとはしなかった。

 ────大体、本当に触れられるのが嫌なら、ソファから離れてしまえば良かったのだ。
それが出来るだけの猶予はあった筈だし、本気で嫌ならクラウドを蹴飛ばしてでも逃げる筈。
ジタンやバッツが相手なら、其処までして逃げても追い駆けて来るのはよくある事だが、今日の相手はクラウドだ。
強引ながらも、決してスコールが本気で嫌がる事はしないから、逃げてしまえば、クラウドはそれ以上追って来ない。
スコールもそれを判っている筈なのに、逃げようとしないのだから、最初からスコールの負けは決まっている。
ただ、それを素直に認めて自分から近付く事は出来ないのが、スコールと言う人間だ。

 恋人を腕の檻中に閉じ込めて、クラウドはスコールの柔らかな髪に手櫛を通す。
痒い、と言うよりはむず痒いのだろう、スコールは唇を一文字に噤み、唸るような声を漏らしている。
人に不慣れな子猫をあやしているような気分で、クラウドは笑みを堪え乍ら、スコールのチョコレート色の髪を撫でていた。


「……なんなんだ、あんた。何がしたいんだ……」
「特に何も」
「………」


 三度目になる同文の返答に、スコールが腕の中で顔を顰めたのが判った。
意味不明だ、と小さく愚痴る鈍い恋人に、仕方がないな、とクラウドは唇を緩め、形の良い耳に顔を寄せる。


「強いて言うなら、お前に触れていたい───そんな所だな」
「……寝惚けた事を……」


 クラウドの言葉に、スコールの反応はやはり鈍く素っ気ない。
が、言葉の割に、顔は益々赤くなっているし、クラウドの胸を押していた手からは力が抜けている。
代わりに、クラウドの服を緩い力で握っており、やはり猫が甘えている時に見せる仕種と似ている、と思う。

 桜色に上気した頬にキスをすると、きゅ、とスコールが唇を噤む。
言わない代わりに仕種で見せる“待っている”合図に、クラウドは誘われるまま、唇を重ねてやった。
触れるだけの優しいキスを繰り返している内に、スコールの唇が綻ぶと、隙間から舌を挿入させる。
ピクッ、とスコールの肩が微かに震えたが、拒まれる事はなかった。


「ん…ん……っ」


 舌先が触れ合うと、スコールの喉から甘味を含んだ音が零れる。
クラウドは唇を重ねたまま、スコールの耳に指を当てた。
ピアスの縁をくすぐるように撫でて、耳朶をなぞった後、その手はスコールの首へと向かう。
髪の毛の隙間から覗く項を撫でてやれば、ピクッ、ピクッ、とスコールの体が震えたのが判った。


「う…ん……っ」
「……嫌か?」


 首の後ろの感覚から逃げるように身を捩るスコールに、クラウドは小さな声で問う。
スコールは何も言わず、相変わらず赤い顔で、項をくすぐられる感覚に耐えていた。

 是とも非とも言われなかったので、都合良く解釈する事にして、クラウドはスコールの項を撫で続ける。
段々とスコールの心臓の音が早くなって行くのが伝わって、クラウドは嬉しくなった。
緊張もありながら、スコールがこれからの事を想像して、期待しているのが判る。
これは応えなければなるまい、とスコールの背を抱いていた手をシャツの下へと潜らせようとする────が、


「ちょ…っ、と、待て……」
「ん?」


 口を開けば零れる甘い吐息に、スコールは途切れ途切れになりながら、クラウドを止めた。
これからが良い所なんだが、とクラウドは些か出鼻を挫かれた気分になりつつ顔を上げる。

 真っ赤になったスコールが、クラウドを上目に見上げながら言った。


「……此処で…するのか?」


 いつ誰が帰って来るとも判らないのに。
帰って来たら、真っ先にこのリビングにやって来るに違いないのに。

 スコールの言う事は最もだ。
スコールと逸れたジタンとバッツは、きっと少しでも早く帰投しようとしているだろうし、他のメンバーもトラブルがなければ直に帰って来るだろう。
クラウドとスコールが恋人同士である事は、余程鈍いメンバーを除けば知られているが、リビングで交わっている所を見られると言うのは、とんでもない事故案件である。
それを考えながらリビングで交じり合うのは、スリリングな刺激となってより一層燃え上がる事も想像できたが、本当に事故が起こったら目も当てられない。

 クラウドはスコールを抱いていた腕を解くと、細身の体を横抱きで持ち上げた。
ひょいっと軽く持ち上げられたスコールは、突然の浮遊感に「うわっ」と慌てた声を上げて、咄嗟に落ちるまいとクラウドにしがみ付き、


「部屋なら良いんだな?」


 何が良いのか、と言わずとも、スコールにもそれは判っていた。
耳朶を擽る吐息に、心臓の音が跳ねるのを聞きながら、スコールは何も言わずにクラウドにしがみ付いていた。




 スコールが歩き通しで帰還してから、それ程時間は経っていない。
風呂と甘味ですっきりはしたものの、一番の回復手段であろう睡眠には至っていない為、スコールの体が疲労の色を残しているのは変わらない。
それでも───だからこそ、とでも言うべきか───、若い身体は覚えた快感には真正直で、触れば直ぐに反応を示した。

 裸身になってシーツの波の中で、汗を滲ませて悶える体。
クラウドの筋のある手が太腿を撫でる度、もどかしげに細い腰が揺れた。
期待を表すように緩く頭を上げていた中心部を包み込み、上下に扱いてやると、あっと言う間に身を起こす。


「は…あ…っ…!んん……っ」


 微かに強張った足先が、手触りの良いシーツの上を滑る。
理性が残った状態では、声を出すのが恥ずかしいのだろう、スコールは枕を抱えて顔を埋め、声を殺している。
それでも零れてしまう程、スコールの躯は快感に対して鋭敏になっており、会陰をくすぐるだけでも腰が浮いてしまう程だ。


「一回抜くか?」
「ん…う……」


 勃たせてから時間を置かず、とろりとしたものが鈴口から溢れ出しているのを見てクラウドが訊ねると、スコールは赤い顔でふるふると首を横に振った。
それは、いらない、と言うよりも、恥ずかしいから答えたくない、と言う仕草だ。

 少し意地の悪い事を聞いたか、と苦笑しつつ、クラウドはスコールの足をM字に開かせると、脚の間に体を入れた。
スコールの足首を掴んで固定したまま、膨らんだ雄に舌を這わす。
ぬるりとしたものが敏感な皮膚を舐めるのを感じて、スコールは身体を弓形に撓らせた。


「あっ、あ…!」
「ん、……んむ、」
「ふあっ……!」


 大きく開けたクラウドの口が、スコールの中心部をぱっくりと頬張った。
吐息と唾で湿気を帯びた生温かい咥内の感触に、スコールは膝を揺らして悶える。


「クラ、ウド……んっ、舐めるな…っあ…」
「ふ、ん…、ん、ん、」
「やっ…、は、鼻息…あっ、当たって……」


 一物を含んだまま、クラウドが頭を上下に揺する。
その揺れに合わせて、クラウドの鼻息が当たっては離れ、離れてはまた辺りと下腹部を擽った。
ヘソの下を何度も掠める鼻息に反応して、クラウドの口の中で、スコールの雄が膨らみを増して行く。

 今にも弾けんばかりに質量を増した肉に、舌を絡めて、ゆっくりと舐める。
弾力のある舌の触感をまざまざと感じ取って、スコールの体がぶるりと大きく震えた。
直後、クラウドがぢゅうっ、と啜ってやれば、若い肢体は呆気なく果てを迎える。


「うっ、あっ…あぁあ……っ!」


 綿を飛び出させんばかりに枕を強く抱き潰しながら、スコールは堪えきれなかった声を漏らして、絶頂した。
ビクッビクッと震える性器から、どろりとした濃い粘液がクラウドの口の中に吐き出され、快感の余韻に苛まれた体が強張ったまま小刻みに震える。

 クラウドが口の中のものを喉へと落とすと、いつもよりもずっと粘り気のあるそれが、喉の奥に絡み付きながら流れて行くのが判った。


「大分濃いな。疲れの所為か」
「っは……はぁ……っ」


 いつもなら真っ赤になって怒るであろうクラウドの呟きにも、スコールは無反応で、ぐったりとベッドに身を沈めている。
顔を埋めたままの枕の端から、赤い耳が覗いていた。

 口端に残った白いものを舐め拭った後、クラウドはスコールの腕から枕を取り上げた。
微かに抵抗するようにスコールの指が引っ掛かったが、労なく取り上げた枕をベッドの下に投げ捨てる。
隠れる場所を失くしたスコールの顔は、蒼灰色の瞳をぼんやりと熱に燻らせ、無防備に緩んだ潤んだ唇からは、艶を孕んだ呼気が零れている。

 クラウドの唾液と、スコール自身の蜜で濡れた雄は、まだ頭を持ち上げている。
クラウドが指先で鈴口をくすぐってやると、スコールの足がビクッ、ビクッ、と跳ねた。


「あ…あっ……!や…あ……」


 弱々しい拒絶の言葉を口にしながら、スコールはクラウドの服端を掴む。
クラウドはその手を握り、手の甲にキスをして、彼の躯を抱き起こした。
一度果てた事ですっかり弛緩した体は、恥ずかしがって抵抗する事もなく、従うままにクラウドに身を預ける。


「は……あ……んん……っ」
「後ろ、解さないとな」
「あ……っ!」


 抱き寄せたスコールの腰のラインを辿り、小振りな尻を撫でて、秘所に触れる。
指先が当たっただけで甘い声を上げるスコールに、クラウドは機嫌を良くしながら、ゆっくりと指を埋めて行く。


「あ…あ……っ」
「苦しかったら言え」
「……は…んん……っ」


 クラウドの言葉に、スコールはふるふると首を横に振って、恋人の首に腕を絡める。
もっと、と強請る仕種に、クラウドの雄が昂って行く。


「あまり煽るなよ。我慢が出来なくなる」
「……?」


 忠告交りに言ったクラウドだったが、スコールはきょとんとした顔で首を傾げている。
やっぱり鈍いな、と苦笑しつつ、クラウドは出来るだけスコールの負担を軽減してやる為、埋めた指をゆっくりと動かし始めた。


「あ…う……っ、…っあ…クラ、ウド……っ」


 くちゅ、くちゅ、と中を掻き回される感覚に、スコールの体が快感で震える。
慎ましく閉じていた筈の秘口が、ヒクヒクと動いて、クラウドの指を迎え入れるように開いている。
奥に侵入した指先はと言うと、スコールが躯を震わせる度、きゅっ、きゅっ、と締め付けて、クラウドを楽しませていた。

 クラウドの指に撫でられて、段々とスコールの中が解れて行く。
二人の躯の間では、スコールの一物がまたとろりとした蜜を溢れさせていて、スコールの股間とクラウドの腹を汚している。
クラウドの方はと言うと、此方は未だ一度も刺激されていないにも関わらず、すっかり熱を持って頭を持ち上げていた。

 クラウドはスコールの体を抱き寄せて、ぴったりと密着すると、膨らんだ雄をスコールのそれに擦り付けた。
どくどくと脈を打つ熱棒の感触に、ビクッとスコールの体が跳ね、指を咥えた秘孔が一層締まる。


「んん……っ!」


 首に絡み付いたスコールの腕に力が入り、クラウドの肩に爪が立てられる。


「は、あぁ……っ、クラウ、ド…ぉ……」
「……ああ」


 甘える声で名を呼ばれて、クラウドは小さく頷いた。

 秘孔に埋めていた指を抜いて、スコールの両足を掬い上げて膝上に乗せる。
スコールは足をクラウドの腰に絡み付かせて、全身で縋るように抱き付いた。
クラウドは膝上に乗ったスコールの股間に、自身の竿を擦り付かせてより大きく膨らませた後、汗の滲んだそれをスコールの秘孔に宛がう。
これからの事を期待してか、スコールの唇からは止め処なく甘い吐息が零れていて、クラウドの耳を擽った。

 抱え持ち上げていたスコールの体を、ゆっくりと下ろして行く。
自重で下りて行く秘部に、太いものが押し入って行く感覚に、スコールは息を詰めてクラウドにしがみ付いた。
何度経験しても慣れない圧迫感に身を震わせる姿が、どうにも無体を働いているような気分にさせて、何とも言えない罪悪感がクラウドを襲う。
しかし、縋る腕は決して拒絶を示す事は無く、ただ身構えているだけなのだと教えてくれるので、クラウドはスコールの耳元にキスをして、子猫をあやす。


「う…ん……っ」
「……痛いか?」
「……、く、…ない……」
「少しこのままでいるか?」
「……いい……」


 続けて良い、と言うスコールに、無理はするなよ、と囁いて、クラウドはまた挿入を再開させる。
ともすれば息を詰めて、全身を強張らせてしまうスコールの為、何度もキスを繰り返して、体の力を緩めるように促した。
スコールは、はっ、はっ……と短い呼吸を詰まり詰まりで繰り返しながら、クラウドの熱を受け入れて行く。

 全てが収まるまでには、少しの時間を要した。
幸い、スコールの顔に苦痛の色は見られず、うっとりと光悦に似た色が滲んでおり、秘部も心地良い弾力でクラウドを締め付けている。
これなら、とクラウドは直ぐに律動を開始させた。


「あっ、クラ、ウド…っ、んん…っ!」
「ふ…ん…っ!スコール……っ」


 互いの名前を呼ぶ声が、甘く劣情に満ちていて、お互いの熱を煽る。
名を呼ぶ度にスコールはクラウドを締め付け、ぴったりと沿う肉から伝わるクラウドの形を感じ取っては、スコールの体は痺れるような電流に見舞われた。
その電流が消えない内に、内側を擦られ、奥を突き上げられて、スコールの口からは甘い声が絶えず響く。


「ふ、あ、あぁ……っ!んっ、んっ…、…ふくぅ…っ!」
「スコール……っ!」
「あっ、ひっ、んむっ……!」


 名を呼ぶ声にスコールの体が答えた瞬間、クラウドはスコールの唇に噛み付いた。
喘ぎ声すら飲み込む程に深い口付けに、スコールも舌を絡めて応える。
クラウドの腕に絡んでいた腕が、金糸を掬うように撫でて頭を抱く。


「んむ、ん…んっ、ふぅ……っ、うぅ…ん……っ!」


 奥をぐりぐりと押し上げてやれば、スコールの細腰がビクビクと跳ね、内肉が痙攣するように震える。
幾重にも重なり動く内肉の感触に、クラウドの雄も限界まで怒張して、スコールの中を限界まで拡げていた。


「ん、っは……はっ、あぁっ…!ク、クラウ、ドぉ……っ!」
「う、く……スコール…もう……っ」
「あっ、あぁっ!」


 クラウドはスコールをベッドへと押し倒すと、上から覆い被さって腰を激しく打ち付け始めた。
スコールは男の下で、揺さぶりに耐えようとするように、クラウドの体にしがみ付く。
激しい攻めに秘奥がきゅうっきゅううっと締まり、クラウドの溜め込まれた熱を搾り取ろうとしていた。


「あっ、うぅっ…!はっ、はぁっ、あぁあっ…!」


 同時にスコールの躯も性急に燃え上がり、二度目の絶頂が見えてくる。
頭の中が真っ白に灼けて行くのを感じながら、スコールはそれを齎す男に縋り、より一層の熱を求めて彼を包み込んだ。


「くぅう……っ!」
「ふあっ、あぅうう……っ!」


 全てを根こそぎ持ち去らんばかりの快感を与える淫らな躯に、クラウドは自身の欲望を一気に注ぎ込む。
熱い迸りが自分の中を満たして行くのを感じながら、スコールも果てを迎え、一度目と変わらない濃い蜜を噴き出させた。

 スコールの躯を駆け巡る快感の痺れは、絶頂を終えても簡単には引かない。
長く尾を引く余韻の中で、スコールの媚肉が、咥えたままのクラウドを締め付けて熱の再発を煽る。
その誘いに抵抗など出来る筈もなく、殆ど条件反射のように、クラウドの肉は直ぐに硬度を取り戻していた。

 汗が滲み、髪をまとわりつかせた項を撫でると、ピクッとスコールの躯が震え、秘奥がクラウドを締め付ける。
再び始まる律動と、響く嬌声の向こうで、仲間の帰還の声がする。
しかし、それが聞こえているのはクラウドだけで、快感と恋人の熱に夢中になっているスコールは気付いていない。
クラウドもまた、どちらを優先すると問われるのは愚問でしかなく、甘えたがりの恋人を目一杯愛する事に集中したのだった。




『クラスコでほのぼのいちゃいちゃ』のリクを頂きました。
何をする訳でもなく、人目を気にする事もなくイチャイチャして貰った。楽しい。