欲しい形の探し方


 サイファーに触れるよりも、自分に触れたい───自慰をしてしまいたい気持ちになって、スコールはどうして良いか判らなくなった。
体中が熱くて、脳まで茹ったように、思考回路が回らない。
ただサイファーへの対抗心だけが、ねだる事を制する最後のストッパーだった。
だが、それだけでは事は進まず、サイファーを待たせるばかり。


「スコール。次、お前だぜ」
「ん……わ、わか、ってる……」


 急かされて、起きないと、とようやくスコールは思った。
痺れたような感覚が抜けない腰を庇う格好で、のろのろと体を起こす。
じくん、としたものが体を駆け抜けて、スコールは息を詰めた。

 胡坐を掻いたサイファーの前で、スコールは四つ這いになっていた。
サイファーの股間を見れば、自分が触っていた時よりも、更に一回り大きくなった雄が勃起している。
根本に血管を浮かせたそれを見て、スコールの喉がごくりと鳴った。

 サイファーの一物を握って、スコールは手を上下に動かしてゆるゆると扱き始めた。
ピクピクと震える雄を見下ろしていたスコールが、ちらりと頭上に視線を遣れば、また余裕顔の男が見下ろしている。
鼻の孔が膨らみ、興奮している事がよく判るが、汗は滲んでいても、まだ果てには遠いらしい。


(このままは…駄目だよな……)


 スコールが拙い手で幾ら攻めても、サイファーには大した効果は見られない。
彼はスコールの攻め手に反応する事はあっても、それ以上の所へは行かないようだった。
サイファーと違い、積極的に相手に触れる事、昂らせる事を知らないスコールでは、仕方がない。

 だが、このままではいけない。
どうすればサイファーの表情を崩せるか、湯気の立つ頭でぐるぐると考える。
考えて、考えて───思い付いた事を試すまで、スコールに迷いが生まれる事はなかった。


「ん……」
「…!」


 小さな口を開け、恐る恐ると伸ばした舌が、サイファーの中心部に触れる。
瞬間、頭上で男が息を飲んだのが判った。

 熱いものの温度を確かめるように、舌先でつんつんと先端を突く。
なんとも言えない苦い味が敏感な舌先の神経から伝わり、独特の匂いが鼻孔を上って来て、スコールは眉根を寄せた。
が、ちらと見遣った男の貌が、判り易く目を丸くしているのを見て、少し気分が上向く。
それならもっと、とそそり立つモノに顔を近付け、括れのある場所をぺろぺろと舐める。


「……っく…お前……」
「ん、ん……あ…む……っ」


 信じられないものを見る目で見下ろすサイファーを、スコールは上目に見ながら微かに笑う。
したり顔をしていると気付いたサイファーが、この野郎、と憎々し気に言った。

 頭に当てた舌で、括れの舌から上を何度も撫でる。
握った根本がピクッピクッと震え、じっとりとした汗が滲んでいるのが判った。
サイファーの腹筋も息を堪えるように戦慄いているのが見えて、効いてる、とスコールは感じ取る。
それならもっと、とスコールは口を開けると、サイファーの頭の部分をぱっくりと口に含んでしまった。


「んむぅ……っ!」
「……っ…!」


 怒張したそれは、スコールの小さな口には少々大き過ぎた。
咥えるだけでスコールの咥内は一杯になり、早々に顎が辛くなる。
それでもスコールは離す事はせず、頭の裏側に当てた舌を左右に振って、サイファーの敏感な場所を懸命に刺激する。


「んぁ、ん、んっ……、む…っ!」
「おっ前…、この……っ」
「ふ……ふっ、ふぅっ……!」
「何処で覚えてきやがったんだ、オイ」


 呼吸を乱すサイファーの言葉を、スコールは聞いていない。
スコールは今、何時であったか、サイファーが持ってきたAVで見た女の行為を思い出していた。
あの頃は大して興味もなく、碌に見てもいなかったので、多分こうしてた、と思う程度の朧な記憶で辿る口淫は、手でするそれと同じで酷く拙い。
だが、ぴちゃぴちゃと音を立てながら、苦しそうに喉奥で呻く声を漏らしつつも、離すまいと懸命に食い付いている様子は、サイファーにはいじらしく映って見えていた。

 スコールはサイファーの雄を舐めながら、握った竿を扱いてやった。
じわりと先端から苦味の強いものが染み出て来る。
その頃にはスコールの舌も疲れて、咥えたまま舐めるのが辛くなって来た。
んぁ、と吐息混じりの音を零しながら離れると、今度は竿を舐め始める。
猫が毛繕いをするように、竿の裏筋を丁寧に舐め上げるスコール。
その瞳には大きく反り返った雄だけが映っており、スコールは釘付けになったように視線を逸らす事が出来なくなっていた。


「は…っ、はふ……っ、は、ふ……っ」
「…お前、やらしい顔してんなぁ」
「……ん…?ん、ぇ……ちゅ、ん……っ」


 サイファーの声に、スコールはちらりと目を向ける。
ぼんやりとした瞳はしばらくサイファーの顔を見上げていたが、直にまた雄へと戻された。

 スコールの咥内で、雄は苦しそうに震えている。
サイファーの押し殺した呼吸に合わせて、どくん、どくん、と露骨な脈を打っているのが感じられた。


(あとは…あとは、どうすれば良い……?)


 丹念に竿を舐めながら、スコールはまた考える。
その脳裏に、ついさっき、サイファーにされた事が浮かんで、窄めた口を頂点へと持って行き、ちゅう、と吸う。


「っ……!」


 判り易くサイファーの腰が震え、息を詰まらせたのが判った。
これだ、とスコールは勢い付き、窄めた口で鈴口をちゅうちゅうと啜る。


「んちゅっ、んっ、んっ…!」


 ストローからジュースを飲むように、スコールは夢中で先端を啜る。
禁欲生活と、先のスコールからの刺激もあって、サイファーの雄はみるみる内に固さを増していく。
穴からじわじわと苦いものが染み出してきて、スコールは益々調子が乗った。
イかせたら俺が上、と夢中になって精を絞り出そうとする姿は、積極的を通り越して貪欲さすら感じさせる。

 先端を吸いながら、スコールは両手で握った雄を扱く。
もう両手を使わないと包み込めない程、サイファーの中心部は大きくなっていた。
密着した掌に伝わる凹凸感で、血管がくっきりと浮き上がり、張り詰めているのが判る。
いつも胎内で感じていたサイファーの熱は、こんなにも大きく逞しいものだったのだと、スコールは初めて知る。
それを咥え込み、奥地を突き上げられる快感を知った身体が、じくりと熱を持ってしまうのが判った。
だが、いつも自分が翻弄されるばかりで、しっかりとした意識の中で認識する事のなかったそれを感じ取れる事に、初めて自分が優位に立っているような気分もあって、スコールの心が高揚していく。

 ───しかし、時間切れになった。
サイファーの手がスコールの頭を掴み、吸い付く雄から引っ張り剥がす。


「んぷっ……!何だよ、折角…」
「交代だ、交代」
「嫌だ。後少しなんだ」


 額に汗を滲ませているサイファーの顔を見て、スコールは駄々を捏ねた。
スコールが此処までサイファーを追い込んだのは初めての事だ。
この機を逃せば次はいつ、いやそれ所か、此処で勝たねば次はないと決まっているだけに、スコールは引き下がれない。

 が、サイファーとて譲れないのは同じことだ。
股間に縋ろうとするスコールの肩を掴み、放り転がして仰向けにして、腰を捕まえて持ち上げる。
体を折り畳むようにして、下半身を曝け出し高く掲げる格好にされると、スコールは真っ赤になってばたばたと足を暴れさせる。


「サイファー!嫌だ、まだ───」
「フェア精神ってのがねえのか、お前は」
「あんたにそんな事言われたくない!」
「良いから大人しくしてろ。お前がイかなきゃ、また十分で交代してやるよ」
「あ……っ!」


 まだ何事かを言おうとしたスコールを、サイファーは彼の雄を握って黙らせた。
根本を軽く握って、揉みしだくように動く器用な手に、スコールは言葉を奪われる。


「あ、あ……っ!う、んぅ……っ!」


 サイファーの昂ぶりを感じている内、夢中になって忘れていた、自分の体のこと。
動けない程に張り詰めていた雄は、軽い刺激だけで敏感に反応してしまう。

 はふ、はふ、と必死で熱の昂ぶりを逃がそうとするスコール。
サイファーはそんなスコールの雄に顔を近付けると、肉厚の舌で竿をべろりと舐め上げた。
指とは違う生々しい這う感触に、「ひぃんっ!」とスコールの口から高い声が出てしまう。
しまった、と慌てて手で口を覆うスコールだったが、見上げた先では碧眼がにやりと笑い、わざとらしくじゅるじゅると音を立てながら、スコールの竿を舐め続けた。


「んっ、ん、んん……っ!ふぅう……っ!」


 其処で押し留めているものを押し出そうと、促すような動きをするサイファーの舌に、スコールはぶるぶると全身を震わせていた。
耐えろ、耐えろ、と自分に言い聞かせて、スコールは涙を浮かべながら、下肢を襲う切迫感に抗う。


(次…、次、俺の番で……っ、イ、イかせ、れる……っから……っ)


 サイファーの限界は近い。
スコールはそう感じ取っており、今のこの熱を自分が遣り過ごしさえすれば、次こそサイファーを落とせると思っていた。
スコールの方はと言うと、少しの刺激だけで甘い痺れが腰を襲い、下半身から力が抜けそうになる程だ。
だけど後少し、今さえ乗り切れば、と言う気持ちだけで、スコールは直ぐ其処に迫っている極まりを抑え込んでいる。

 サイファーの目の前で、スコールの鈴口から、とろりとしたものが溢れ出した。
我慢していてもどうにもならない体の反応で、零れ始めた競り上がり。
それを更に育てる為に、サイファーはスコールの雄の先端を握り、爪先でくりくりと苛めてやった。
弱点をピンポイントで刺激されて、スコールは声にならない声を上げながら、必死に官能の波に耐える。


「ふっ、ふーっ、ふぅう……っ!うんん…っ、んんー……っ!!」


 口を開いたらもう終わりだと、そう悟っているかのように、スコールは目一杯の力で歯を噛んでいる。
荒くなる鼻息も途切れ勝ちで、声と一緒に呼吸も止めようとしているスコールに、サイファーは竿を舐めながら言った。


「あんまり我慢してると、窒息するぞ」
「ふぐ、ふ、ふぅ……っ、ううんんっ!」


 サイファーの言葉に、それは嫌だ、と生き物の本能から呼吸を求めたスコールだったが、べろりと根本を舐められてまた口を噤んだ。
これもサイファーの作戦なのだと、回らない頭で考えて、油断してはいけないと自分を律する。
だが、体の反応は全く隠す事は出来ず、


(や、だ……あっ、ああ…っ!そ、そこばっかり舐めたら……はっ、うぅ……っ)
「辛そうだな」
(他人事みたいに……あんただって…あんただって……っ!)


 辛うじて聞こえたサイファーの呟きに、スコールは眉間の皺を深くした。
スコールを攻めるサイファーは、余裕顔を作ってはいるが、中心部はピクピクと常に震えている程に張り詰めている。
しっかりと反り勃ったその先端が、丸められたスコールの背中に当たって、じわじわと染み出る精がスコールの背筋を濡らした。

 だからこそ、次の番になれば、とスコールは思っている。
しかし、今与えられている刺激を耐える程に、スコールの体はより敏感になって行く。
サイファーの指が雄の括れをピンッと弾くだけで、スコールは体を竦ませてしまう。
其処に追い打ちをかけて、サイファーの尖らせた舌先が、穿るように根本の海綿体の集合地を弄る。
スコールは足の指をぎゅううっと丸めて、ぞくぞくと全身を奔る官能の電流に耐えた。


「んんん……っ!んっ、ふーっ、ふくぅう……っ!」


 スコールの雄がビクッ、ビクッ、と弾んで、ぴゅくん、と蜜を噴いた。
見下ろす碧眼がにやりと笑ったのを見て、スコールは違う、と頭を振った。
イってない、イったんじゃない、と主張する事で、まだ勝負は終わっていないと言うスコールを、サイファーは咎めなかった。

 鈴口をぐりぐりと親指の腹で苛められながら、スコールはデスクの時計を見た。
攻守の交代まであと何分あるのだろう。
そもそものスタート時間を把握していないスコールには判らなかった。
それ所か、時計の存在を意識した事で、一分程度の時間すらも酷く長く感じられて、まだかまだかと考えている内に、その間に与えられ続ける快感に一層敏感になってしまう。


(早く……っ、早く、終わ、れ、よぉ……っ!)


 泣き言染みた祈りがスコールの胸中を支配する。
じゃないと、じゃないと───と体の限界が否応なく心に流れ込んできた瞬間、にゅぷっ、とスコールの秘孔に異物が進入した。


「あぁっ!!」


 堪らずに声を上げたスコールに、細められた双眸が見ている。
にやりと、明らかに笑うその貌に気付いて、スコールが抗議しようとした時には、侵入者はくちゅくちゅと音を立ててスコールの中を掻き回し始めた。


「あっ、あっ、あぁっ…!サイ、なっ、んぁっ!」
「やっぱりこっちだな、お前は」
「はっ、ひぃ、んんっ!そん、そんな所…あっ、ずるい、ひぃんっ!」


 まだ数える程しか褥を共にしてはいない中で、サイファーが拓いたスコールの性感帯。
解され、貫かれ、突き上げられる事で、スコールを一番高い場所へと昇らせる場所。

 サイファーは、挿入した人差し指に、艶めかしく濡れた肉壁が絡み付くのを感じていた。
穴口はいやらしい色に染まり、ふくふくと膨らみを伸縮させている。
それが其処に咥えるものを締め付ける時の動きである事を、サイファーはよく知っていた。


「物欲しそうにしてんじゃねえか。疼いてたんじゃねえか?」
「ああ、あっ、んぁ……あ、あ…っ!」


 サイファーの言葉に、スコールはふるふると首を横に振る。
しかし、スコールの内部はサイファーの指をきゅうっと締め付けた。
Yes、と取れてしまう反応を返すスコールに、サイファーは指先を鉤のように曲げて、小刻みに動かして肉壁を引っ掻いてやる。


「ふぅんんっ!んっ、サイ、だめ、やだ、あぁ……っ!」


 腹の奥に熱くて重いものがふつふつとマグマのように湧き上がるのを感じて、スコールは足を暴れさせて抵抗した。
暴れた足がサイファーの顎を蹴り、スコールは半身になってベッドシーツの上を這い逃げようとする。
やだやだ、と子供が駄々を捏ねるような仕草を見せるスコールだが、勿論男がそれを赦してくれる筈もなく、片膝を掴んで大きく開かせると、ずぷんっ、と二本目の指を挿入させた。


「はぁんっ!」


 堪らず大きな声を上げたスコールを、サイファーは休ませない。
二本の指で奥の窄まりと壁の側面を擦られて、スコールの躰がビクンビクンと跳ねる。


「あっ、あっ、あっ!やだ、サイファー、やだ……っ!そんなっ、あぁっ、卑怯者……んぁあっ!」
「勝負に卑怯もクソもあるか」
「んんっ、んく、ふぅうっ!ひんっ、ひっ、あっ、あぁっ…!」
「イきそうだな。良いぜ、イけよ」
「ふーっ、うーっ!うぅうんんっ!」


 煽るようなサイファーの台詞に、スコールは顔を真っ赤にして、ぶんぶんと頭を振る。
嫌だ、イかない、とスコールは必死に抵抗していた。
しかし、その顔は汗だくになり、鼻血が出そうな程に紅潮しており、口を開けば与えられる刺激に合わせて喘ぎ声が出てしまう。
雄の方はすっかり堪えが効かない所まで来ていて、スコールがビクビクと体を跳ねさせる度に、ぴゅっ、ぴゅっ、と少量の蜜を吹き出していた。

 秘孔内が細かく蠢き、サイファーの指に絡み付き、奥へと誘うように吸い付いた。
くちゅっくちゅっ、くちゅっ!と淫らな水音を立てながら、サイファーはスコールの内部を掻き回す。
イきたくない、と堪えようと力む度、スコールの秘孔はくぱっと口を開けた。
それを狙ってサイファーが指を奥へと捻じ込むと、スコールは弓形に背筋を反らして悶え啼く。


「ふぁんんっ!だ、だめ……あぁっ、ああんっ!」


 耐えようとすればする程、スコールの体は敏感になっていく。
秘孔はきゅうきゅうと締まってサイファーの指に絡み付き、挿入されているものの感触を具に伝える。
我慢しなければいけないのに、耐える程スコールは追い込まれていた。
堕ちてはならないと理性を保とうと歯を噛めば、反って防衛の為に構えてしまう躰が些細な刺激に過剰反応を起こし、スコールの思考回路を壊していく。


「はひっ、はっ、あぁ……あっ、あっ、んんーっ!」
「イくか?」
「やだ、イかな、イかない…っ!」
「じゃあこうだ」
「はくぅうっ!」


 ぐりっ、とサイファーの指がスコールの一際敏感な場所を圧した。
ピンポイントで与えられた刺激に、スコールの腰が大きく痙攣し、更に続け様に円を描くように同じ場所をぐりぐりと押し潰されると、駄目だった。


「ああっ、ひっ、あぁっ!来る…っ、んっ、来るぅ……っ!や、なの、にぃ、あっ、あっ、我慢っ、できっ、なぁあ……っ!」


 千切れそうな程に頭を振って、限界を訴えるスコール。
持ち上げられた足が爪先までピンと伸び、指を開いた形で釣りそうな程に強張った。
これ以上は嫌だ、と延ばされた手がサイファーの腕を掴んだが、サイファーの指が弱点をぐちゅんっ、と抉った瞬間、


「ああぁぁんっ!」


 スコールは高い嬌声を上げながら、絶頂した。
いつ果てても可笑しくない程に固く膨らんでいた雄から、勢い良く精子が噴いて、ベッドとスコールの体を白濁に汚した。

 スコールの快感は長く長く尾を引く。
一回目の受け手でサイファーに高められた躰を、攻守交替した事で疼きの中で待ち惚けを食らい、再度与えられ始めた快感に流されまいと必死に我慢した。
そうして蓄積された官能の量は嘗てない程で、まだ行為に慣れ切っていない青さの躰を飲み込むには十分であった。


「はっ、はうっ、あああっ!イっ、イくっ、イくぅう…っ!とま、らなひっ、ああぁっ!」


 サイファーの指を食いちぎらんばかりに締め付けながら、スコールは絶頂に続く絶頂に泣かされる。
我慢の限界を越えても耐え続けた躰は、その反動を知らしめるかのように、絶頂から戻って来ない。
びゅくっ、びゅくっ、と蜜を噴く度に、スコールの細い腰がかくかくと前後に弾む。
スコールはベッドシーツを握り締めて、強張った体を震わせながら、波が終わるまで悶えるしかなかった。

 ようやく射精が終わった時には、スコールは放心状態になっていた。
散々我慢した見返りは、余りにも強烈なダメージになってスコールに跳ね返り、指一本も動かす事が出来ない。
はー、はー、と荒い呼気だけを繰り返す顔は、果てながらぼろぼろと零れた涙に濡れて、仄かに被虐的にも見えたが、赤らんだ頬と、濡れた唇が薄く開いている様が、見下ろす雄の支配欲を刺激する。

 サイファーはスコールの秘部からゆっくりと指を抜いた。
大波は過ぎたが、余韻に浸かったままの躰は、肉壁が撫でられるだけで、きゅぅんと切なげに反応を示す。


「あ……っ、あぁ……っ」


 スコールの半開きの口から、甘い音が漏れた。
抜き取る時には、穴口が我儘を言うように吸い付いてくる。
その時にも、スコールの唇からは「あふぅ……っ」と艶を孕んだ声が零れた。

 サイファーが抱えていた膝を離すと、スコールの脚はぱたりとベッドに落ちた。
投げ出すように全身の力が抜け、ベッドに沈んだスコールは、虚ろな瞳で宙を見詰めている。
サイファーはその上に覆い被さるように体を重ねると、掌で軽くスコールの頬を叩いて、覚醒を促す。


「おい、スコール」
「ふあ…あ……」
「トんでるみたいだけどな。俺はまだなんだ」


 呆けた反応しか返せないスコールは、眼前の男との距離も判っていないようだ。
それだけスコールを襲った絶頂の快感は強烈なもので、重ねた我慢もあって、疲労困憊しているのだろう。
それはサイファーも理解するが、しかし此処で今夜を終わりには出来ない。
散々我慢を強いられたのは、サイファーも同じ事なのだから。

 サイファーはスコールの体を俯せにし、腰を持ち上げた。
膝を立たせ、尻を高く掲げる格好になって、スコールはふるふると体を震わせる。
サイファーの大きな手が尻たぶを掴むと、それだけでビクッと細腰が跳ねた。
秘孔に指を這わせ、縁を摘まんでぐにぃっと広げてやれば、卑猥な色をした内肉が露出する。
やあ、と涙混じりの声が恥ずかしそうに言うのが聞こえた。
その媚肉にサイファーの固く猛った雄を宛がえば、


「は…っ、あ……っ、」


 熱の存在を感じたスコールの唇から、甘い声が漏れる。
それは、これから与えられる物の心地を知っている者の反応だった。
ゆら、とスコールの腰が揺らめいて、蜜を雄に擦り付けるように、秘口が頭を摩った。

 溢れ出した腸液で濡れそぼった入り口を、ぬるり、と艶めかしい感触を纏わりつかせながら、雄が入って行く。
あ、あ、とスコールの唇から声が漏れる度に、きゅ、きゅん、と口が閉じてサイファーを締め付けた。
それが中へと欲しがる時の動きであると知っているから、


「一気に入れるぞ」
「ふあ……っ待────」


 ぐぷ、と一番太い所が穴を潜る。
あ、とスコールがその感触にびくりと体を震わせた直後、───ずぷんっ!と太く逞しい強直がスコールの淫部を貫いた。


「はぁぁあんっ!」
「ぐぅううっ……!」


 根本まで一気に捻じ込まれた雄が、スコールの狭い直腸内を一杯に満たす。
窮屈な内部は絶えず小刻みに痙攣し、重なり合った肉筋のヒダがサイファーを包み込んで、まるで生き物のように吸い付く。
その味わいだけでサイファーは一気に登り詰めそうになったが、歯を食い縛ってなんとか堪えた。

 だが、いつまでもこのままでは過ごせない。
サイファーはスコールの腰を両手で掴むと、激しく腰を打ち付けた。


「はあんっ!あっ、あっ、ひぁんっ!」
「っは、は…っ、くっ、こいつは、やべぇ……っ!」
「あっ、あっ、サイファ、激し…っあぁ!やっ、だめ、今っ、そんなに…ああっ、したら、あぁっ!」


 加減も容赦もない突き上げに揺さぶられ、スコールはあられもない声を上げる。
今までにない激しい攻めに、スコールはストップをかけるが、サイファーは聞かなかった。
聞く余裕もないのだと、スコールには判らない。


「はあ、あっ、サイ、サイファー……っあっあっ!」
「奥でぐねぐねウネってやがる。締め付けすげえな……っ」
「う、ふ、うぅんんっ!また、また来る……ああっ、サイファー…っ!イ、イくのが、またぁっ!」


 逞しい雄に秘孔内を強く突き上げられる度に、スコールの躰が熱くなる。
ついさっきあれ程の絶頂を見たばかりだと言うのに、体は再び同じ感覚に持ち上げられようとしていた。
やだ、と頭を振るスコールの背に、サイファーの躰が覆い被さる。
どくん、とスコールの胎内で雄が脈を打つと、スコールの躰も熱が膨らみ、


「あっ、ああっ、来る、うぅんっ!あーっ、あぁーーーっ!」


 スコールはシーツに齧り付くように縋りながら、二度目の絶頂を迎えた。
一回目から殆ど間を置かず襲った快感の大波に、スコールは悲鳴交じりの喘ぎを上げながら射精した。
同時にスコールの秘孔が強烈な熱を持って締まり、咥え込んだサイファーの雄を締め付け、


「くぁ……ああああっ!」
「ひぅうううっ!!」


 堪え切れない雄叫びを上げながら、サイファーはスコールの中へ射精する。
スコールの体は自身の昂ぶりの頂点にいて、其処にサイファーからの欲望を注ぎ込まれた事で、また高みへと昇り、三度目の絶頂が襲った。
休む暇もなく連続して訪れる快感に、スコールは頭が真っ白になった。

 挿入からこんなにも早く、サイファーが射精したのは、初めての事だ。
サイファーは苦い表情で、くそ、と零したが、ねっとりと絡み付いて来る肉壺の味を感じながら、無理もないとも思う。
スコールも必死で我慢していたが、サイファーも自分を抑えるのに相当の苦労をしていたのだ。
そんな状態で恋人の甘く蕩け切った極上の肉褥を味わえば、登り詰めてしまうの当然であった。

 熱の放出が収まって、サイファーは一つ息を吐いた。
自身の呼吸を整える為だけのものだったが、弾みで少し腰が震えると、スコールの躰がヒクンと震えた。


「はふ…はう……あうぅぅ……っ」


 体の中が、内臓が、燃えるように熱くなっているのを、スコールは感じていた。
サイファーが少し身動ぎをするだけで、納められたままの肉剣が壁を擦り、びりびりとした快感がスコールの躰を襲う。


(何だよ、これ……こんな、こんなに……)


 気持ち良いなんて───と。
茫洋と霞のかかるスコールの頭に、そんな言葉が過ぎる。

 そう、気持ち良い、気持ち良すぎるのだ。
我慢に我慢を重ねて、サイファーの指で上り詰めた時もそうだが、それ以上にサイファーの熱を胎内で感じる事が。
挿入されて、腸壁を隙間なく擦られて、膨らみ切った雄の迸りを受け止める事が。
行われている事は、これまで何度か経験したセックスと同じ筈なのに、今日は嘗てない程に大きな波が来るのは何故だろう。
剰え、未だ胎内で質量を喪わない熱の存在に気付くだけで、またスコールの躰は熱くなって行く。

 ひくん、ひくん、と疼く秘奥を悟ったように、サイファーが律動を再開させた。
ずちゅっ、ぐちゅっ、と注いだ精子を掻き混ぜながら、猛った肉剣がスコールの体を突き上げる。


「あっ、あっ、あっ、あっ!さいふぁ、だめ、今だめっあぁ!」
「駄目じゃねえ。お前の中、最高に気持ち良いんだ」
「は、はうっ、ひぃんっ!あぁっ、あぁっ……!!」


 スコールの涙ながらの訴えも、サイファーには効かなかった。
それ所か、益々腰の動きは激しくなり、スコールが息を吐く暇もない程の早い抽送を繰り返す。


「はふ、あっ、あっ、んんっ…!や、また…あっ、来てる……!サイファーっ!」
「止まんねえんだな、スコール。こっちが良くて堪らねえんだろ?」
「はっ、んっ、ひぃんっ!あぁっ、あぁんっ!」


 ずんっ、ずんっ、と最奥を強く突き上げられて、スコールは最早男の声に応える事も儘ならなかった。
言葉の代わりにお喋りなのは躰の方で、秘孔が咥え込んだ雄を締め付ける。
挿入時には口を開き、抜く時にはきゅうと締め付けて、自分が気持ち良くなる方法を知っているような動きだった。

 スコールはベッドシーツを握り締め、枕に顔を埋めて、ビクンビクンと腰を痙攣させた。
びゅるるっ、と吐き出した蜜がシーツに染みを作る。
ずるりと半分まで抜けた雄が、いやいやと締め付ける形のままの道をまた上り、天井を打つ。
スコールはくぐもった悲鳴を上げながら、力の入らない下半身をがくがくと震わせて登り詰めた。


「ふくぅううっ!ふっ、ふーっ……っ、んっ、あぁっ…!」
「こっちだけで十分イけるって位、お前は気持ち良くなってんだよ…っ!」
「あぅっ、あ、あんっ!はっ、はっ、あぁ、ああっ!」


 サイファーが奥を突き上げる度に、甘い声ばかりがスコールの唇から零れ出る。
最早シーツにしがみついている事しか出来ないスコールの背に、サイファーは覆い被さった。
シーツを握るスコールの両の手首を掴んで、ベッドにしかと縫い留める。
距離が近くなった事で、ずぷぅ、と雄が更に中へと侵入し、頭が最奥の壁をぐぅっと押し上げた。


「んうぅぅう……っ!」
「は……っ、嬉しそうだな、ん?」
「はっ、はふ……ふぁ…ああぁ……っ」


 スコールはビクビクと四肢を震わせ、秘孔内は振動するように小刻みに戦慄いている。
そんな時に耳元で囁かれた心地の良い声音に、スコールの背中にぞくぞくと快感が走る。
背後の男が与えるものが、熱が、スコールの全身に散りばめられた細胞全てを昂らせていた。


「ああ……サイファー…、サイファー……っ」
「なんだ?」


 繰り返し名を呼ぶスコールに、サイファーが丸い耳に吐息をかけながら返事をする。
それだけで、ああ、とスコールは官能の声を漏らしてしまった。


「ああっ、サイファー……っ、も、やぁ……っ」
「嫌なんて言うなよ」
「あっ、あっ、ああっ……!」


 サイファーが腰をぐっぐっと前に押し出すと、スコールは応えるように尻を後ろへと突き出す。
スコールの尻とサイファーの腰がぴったりと密着しても、スコールの体はまだ貪欲に男を欲していた。
その体を、ノックするように奥壁をコツコツとサイファーが突くと、刺激のリズムに合わせてスコールは喘ぐ。


「はっ、あっ、あっ、」
「もう良いだろ?スコール。俺がお前を気持ち良くしてやるから」
「ふっ、ふあっ!んっ、あっ、あっ、あっ」
「上とか下とかもうナシな」
「あう、あっ、やぁんっ!あっ、そこ奥は、だめぇえっ!んあぁあん…っ!」


 奥をぐりぐりと押し潰されて、スコールは甘露たっぷりの声を上げた。


「はあ、だめ、ああ……!へん、変になる……、おかしくな、ああっ!」
「可笑しくねえ。気持ち良いんだ、スコール。こいつは、気持ち良いって事なんだ」
「んっ、んっ、ふくっ、ふぅんっ…!サイファー…あっ、きもち、い…あぁんっ!」


 囁く声が、蕩けたスコールの脳へとするすると流れ込んで行く。
躰はそれを感じる事を覚えていても、心が意地を張って認めまいとしていた事柄が、大きく開いた網目の隙間を通ってしまう。
そうして一度でも受け入れてしまうと、スコールの躰はまた一層熱を孕み、


「はっ、イくっ……!サイファー、イくっ、おれ……っんん!」
「ああ、イけよ……っ!好きなだけ俺がイかせてやるよっ!」
「ふっ、はくっ、はっ、ああぁっ!あぁああんっ!」


 追い詰めていく動きで攻め立てる男に、スコールは逆らう術を知らない。
抵抗などと言う不毛な行為を考える事も出来ないまま、スコールは今日何度目か判らない高みへと上って行く。
サイファーが一際強く秘孔を抉った瞬間、スコールは声も出せない程の強烈な快感の中で絶頂した。
同時にスコールの色の薄い雄から透明な飛沫が飛び散り、秘孔はビクッビクビクッと脈を打つように痙攣しながら咥え込んだ太く逞しい雄を締め付ける。
直後にサイファーも、肉壺の求める誘いのままに、スコールの中に己の欲望を注いだ。

 サイファーの長い射精を受け止めながら、スコールは二度目の内臓が熱くなる感覚に酔っていた。
手首を掴んでいた手が離れ、スコールの頬に触れる。
こっちを向け、と言われたような気がして、スコールが重い頭を傾けると、温かいものがスコールの眦を掠める。
サイファーのキスだ、と気付いて、無性に胸の奥が柔らかいもので満たされるような気がした。




 サイファーが満足してスコールを開放したのは、外界の空が薄らと白んできた頃だ。
その間、スコールはサイファーの軽く倍以上は極めており、終わった時には声も出せない程に疲れ切っていた。
長期任務の後のセックスは絶対にやめよう、とスコールが密かに決意していた事を、サイファーは知らない。
ほぼ間違いなく叶わない決意なので、知らなくても問題はないだろう。

 当然ながらスコールが起き上がる事は出来なかった訳だが、サイファーも似たようなものだった。
スコール程ではないが、酷使された腰が地味な鈍痛を帯びており、張り切り過ぎたと反省した。
一応、動く事は出来るので、スコールを風呂に入れたり、彼が目を覚ませば食事を用意したりと、甲斐性を見せる程度の事は出来ている。
しかし休みたい気持ちもあるので、やる事が終われば、ベッドでシーツに包まっているスコールの隣に腰を下ろして、だらだらと過ごしていた。

 そうして午後三時頃に、二人揃って遅い昼食を採った後。
腹が膨れた満足感で、このまま昼寝をしようかとスコールが思っていた所で、サイファーが声をかけた。


「おい」
「……何」
「もう文句ねえな?」
「……何が」


 明らかに主語を飛ばしているサイファーの言い方に、スコールは眉根を寄せながら問い返す。
と、サイファーは決まってるだろ、と言い、


「セックス。どっちが上か下か。決まりだからな」
「……」
「先にイったのもお前だし」
「……あんなの……」


 サイファーの指摘に、スコールは唇を尖らせた。
ずるい、と蚊の鳴くような声で呟いて、視線を逸らすスコールの顔は、赤くなっている。
サイファーはそんなスコールの頭に手を伸ばして、濃茶色の髪をくしゃくしゃと撫ぜ、


「ンな顔すんじゃねえよ。俺が気持ち良くしてやるって言ってんだぜ。こんな贅沢あるか?」
「……確かに、こんな横暴は他にはないな」
「可愛くねーな」


 スコールの返しを受けて、サイファーは憎々しげな顔でスコールの耳を抓る。
痛い、とスコールが抗議をしてその手を払おうとすると、先にサイファーの手が逃げた。
そして今度はスコールの頬を擽って、


「とにかく、だ。もう文句言うなよ。そう言う約束だったんだからな」
「……」
「代わりに、俺がお前に最高の天国見せてやるからよ」
「………バカ」


 吐き捨てるように言って、スコールは寝返りを打って、サイファーに背を向ける。

 判った、とスコールは言わなかった。
しかし、嫌だ、とも言わない。
判り易く拗ねてはいるが、真っ赤になった耳や首筋を見て、サイファーは満足げに口角を上げた。



『[何もかもが初めての]の続きで、受ポジションを納得させられるスコール』のリクエストを頂きました!

このスコールはサイファーに対して徹底抗戦の構えなので、体で納得させるのが一番だろうと思いまして。
実際の所、根っから嫌な訳ではなく、プライドもあって意地っ張りが引っ込められなくなっている所もあるから、そう言うのがどうでも良くなってしまう位に蕩けさせられてやっと素直になれる。
サイファーも最初からそのつもりだけど、一応スコールにチャンスをあげる位には甘やかしてる。