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「三蔵、お腹空いた」



いつもの決り文句を言って、悟空は目の前の保護者を見た。
現在ジープは止まっていて、その車体の上で野宿。
何が哀しくて野郎と、などとぼやいていたのは悟浄だったか。



「ねぇ、三蔵ってば」



突然起されて何かと思えば、いつものことで。
三蔵は苛立ちを覚えながら悟空を見る。



「なんもねぇ」
「お腹空いたっ」



きっぱりと無駄だと告げたにも関わらず、悟空は馴染みの台詞を繰り返している。
夜中で、他の二人が寝ている所為もあって、声は小さい。
けれど後ろから聞こえてくる声は、三蔵にはっきり届いて。



「お腹空いたってば、三蔵。ねぇってば」



人の気も知らないで。

小猿の目の前で絶対の信頼を寄せる三蔵。
けれど彼の胸中は苛立ちばかりが募っていて、近付こうものなら瞬殺決定。何故なら。



(これでこの邪魔者共がいなけりゃ)



運転席と後部座席に座る、二人の人物。
こいつらの所為で…
三蔵は苛立ち、後ろを見る。



「ねぇってば、なんかないの?」



悟空らしい台詞の後ろで、寝息を立てている悟浄。
それから運転席──こちらも寝ているようだ。



(据え膳、だな)



第一、今まで散々待たされていたのだから、我慢も効かなくなるというもの。
悟浄のように性欲のことではないが、元来三蔵は我慢をしない。



「悟空」
「…なに?」
「こっちに来い。喰わしてやる」



──少し、違うがな。


悟空は空腹感を隠さないまま、三蔵の後ろをついていく。
この無邪気さに、どれだけ我慢するハメになったか。
それに惹かれた自分にも呆れてしまうが。



「さっさと来い。置いてくぞ」



勿論、そんなつもりはない。
しかし悟空は慌てるように、三蔵に駆け寄った。
置いて行かれる事を極度に嫌っている所為だろう。



「何処まで行くんだ?」



そうは聞いても、深くは探ろうとしない。
ジープから離れていく事に、微塵も三蔵を疑わない。


これから何をされるかも知らないで。


唐突に、小さな身体を引き寄せた。
そのまま適当な気に背を押し付けて、頭一つ分高い位置から見下ろして。



「……さんぞ…?」



それでも自分を見る目は、輝いている。



「黙ってろ」



ゆっくり唇を押し付けて、悟空の腰と後頭部に手を回す。
以外にも悟空は逃げる事も、暴れる事もしなかった。



「何するの……?」



やはり何も判っていなくて、三蔵は喉の奥で笑った。
何をされるかも判らないで、僅かに脅えた金の瞳。
それでも逃げないで。



「いいから俺に、全部委ねろ。いいな?」



見下ろしてくる紫闇の瞳に────悟空は、ゆっくりと頷いた。

貪るようなキスに、悟空が酸欠になりそうなのに気付いた。
やはり子供だ。
キスだけで既に頬は朱色になっていて、身体の力も抜け始めているのが判る。



「───んっう……」



息苦しさに耐え切れず悟空の口から漏れる、小さな声。
咥内に舌を入れる。
悟空がビクンと身体を跳ねさせ、三蔵にしがみついた。



「んふっ…む…ぅン…ふぅ……っ…」



咥内で舌を絡め、キスは尚も深くなる。
ゆっくり唇を解放すると───銀の糸が、名残惜しそうに引いて。#



「…もうダウンか?」



もたれかかってきた悟空を支え、言う。



「だって……っ…」
「これで終わりじゃねぇんだぞ」



飲み込みきれなかった唾液が、悟空の口元から零れていた。
悟空の衣服を全て剥ぎ取って、地面に押し倒した。
真っ赤な顔をしたまま悟空は俯いている。



「……顔あげろ」
「やっ…やだっ」
「いいから顔見せろっつってんだよ」



顎に手をかけて、強引に上を向かせた。



「さんぞ……」
「あん?」
「…お腹すいた」



聞きなれた言葉に、三蔵はがくっと力が抜けてしまった。
悟空からすれば、何か喰わしてくれるというからついて来たようなものだ。
三蔵はもう一度、悟空を見た。



「今から喰わしてやる」
「…でも…なんか、変じゃない?」



気付くのが遅ぇよ、とばかりに、その首根っ子を吸い付けた。



「やっあ……っ!」



上半身だけを脱いだ三蔵に、悟空はやっきになってしがみついた。



「……これだけでイキそうだな」



胸の突起を弄ばれて、悟空はただ喘ぐ。
熱っぽい視線で三蔵を見れば、ますます三蔵を煽るだけだとは、知らない。



「やっ…あっ! やだ、さんぞっ…!!」



胸の突起を吸い上げて舐めて。
悟空からすれば、判らないことをされて、されるがままで怖いだけ。

なのに逃げたいと思わないのは、何故だろうとぼんやり考えて。



「……考え事してんじゃねーよ」



ぽつりと聞こえた低い声は、不機嫌を象徴していて。
いきなり、秘部を握られた。



「んぁああっっ!!」
「何考えてんだか知らねぇが、考えるんなら俺のことだけにしろ」



きっぱり言い放って、手の中にある肉棒を扱いた。



「やっ! さんぞ、いや…ん、はっ……あっ、あンっ!」



正直に反応する身体と、上がる声。
女みたいな声に、悟空は口を押さえた。



「余計なことすんな。声出してろ」
「だっ……てェ…ヘンだ…よ…ォ……」
「普通だ」
「あぁっ、や、あふっ…ヒァんっ!!」



脚を限界まで広げられ露になった秘部。
悟空にとっては自分でも滅多に触れない場所を、三蔵に見られているだけで───。



「濡らさねーとな…」
「? ───! いやぁっ、や、さんぞっ……だめっ……! ダメぇ!」



悟空の秘部に、三蔵の舌が這う。

ぴちゃ、とそんな音が絶え間なく続いて、悟空は震える。
その震えは、今していることに対するものなのか、それとも快楽の所為か。



「やぁ…きたなっ…ん、ひゃぅっ……」
「汚かねぇよ。全部お前のだからな」
「んっ……!」



今度はいきなり抱き寄せられ、胡座をかいた三蔵の上に座る。
そして────




ずぐっ!!!




「やぁぁぁあっっ!!」



突然襲ってきた得体の知れない衝撃に、悟空は叫んだ。
秘所内部から伝わる、何かの感触。
悟空の視界端に、埋め込まれたモノが映り込んだ。



「バカがっ、力抜けっ……!」
「やっ、いやぁ! 痛いぃっ……!」



泣き叫ぶ子供に、三蔵は舌打ちした。
埋め込まれた剣はそのままで、悟空の華奢な身体を抱き締める。


「泣くな」
「んっ、いやっ……はなしてっ……」



ただ脅える子供。
もう一度、強く抱き締めて──。



「ちゃんと息しろ」
「できなっ…いたいぃっ……さんぞ…怖いっ…、たすけ…て……」
「息しろ。じゃねぇと余計苦しいだけだ」



荒い呼吸をしていただけだった悟空は、言われて、ゆっくり息を吸い、吐く。
少しずつ整ってきた呼吸に、三蔵も一息ついた。



(無理…か。しかしここでやめるってのは、余計にキツいな)



膨れ上がった悟空の剣に、三蔵は考える。

動くぞ、と耳元で囁いた。
一瞬ビクっとしたのが見えたが、このまま終わらせるより、と。



「さんぞっ…や、やぁっ……やだっ…」
「…すぐ終わる。だから、いい子にしてろ」



あやすように撫でてやって、三蔵は律動を繰り返す。



「あっ、あンっ……さ、んぞぉ……っ……」



向かい合った体位のお陰で、お互いの表情が判る。
痛がる顔は消えて、悟空は三蔵にすがり付いていた。



「…まだ、怖いか?」



三蔵の問いに、悟空は緩く、首を横に振る。



「無理させて悪かった」
「んっ…だいじょぶっ……も、こわ…ない…っから……」



本当はまだ怖いんだと判っている。
それでも止めることは出来ないから。



「やンっ…あ…さんぞぉ……な、なんかヘンっ…」



張り詰めた肉棒に、三蔵は律動を早めた。



「いいぜ、イっちまえ」
「んっ…さん、ぞぉ……っ、は、ンはぁっ…! あ、ああぁっ…!!」



限界は───既に、超えられていて。



「や、あぁあンっ!!」

「────くっ…」



悟空が吐き出すと同時に、三蔵も悟空の中に、熱を注ぎ込んだ。





















あのまま悟空は気を失ってしまい、目覚めても立てない状態。
それでも傍らに三蔵がいてくれたことが嬉しかったらしい。
そんな悟空を負ぶって帰って、最初の一言。



「ど〜〜〜〜こいってたんでしょぉねぇ?」



八戒はいつもの笑顔、いつも以上の怒気を振り撒いていた。
ジープの上でぐったりしている悟浄は、八つ当たりに合ったようだ。



「夜中に悟空を連れてお散歩ですか?」
「……そんなとこだな」



フンと一蹴して、ジープに向かう。



「悟浄、生きてる?」



蒼白になっている悟浄を見て、悟空がおそるおそる聞いた。
悟浄はひらひらと手を振って、生きてる事だけは主張した。



「三蔵、三蔵」



走るジープの上で、悟空がくいくいと法衣を引っ張った。
振り返った先にあるのは、ほんの少し頬を染めた顔。



「……怖くなかった」



それだけ言うと、悟空は悟浄とじゃれはじめる。
三蔵は何時ものように煙草に火を点けた。





細い煙は少し風に乗って───消えた。






FIN.



後書。
タイトルがこれと言って思いつかなかったため、ノータイトルになりました。
初めて…ってことにしたんですが、どうでしょ?